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2006-04

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髪長姫は最後に笑う。第五章(55)

第五章 「友と敵」(55)

 玉木の家にガクを預けた後、荒野は気配を絶って町中を疾走する。気配を絶って……とはいえ、白昼、市街地で全力疾走するのは、久しぶりのことだ。
 走りながら、携帯電話を取り出す。
 まずは、孫子にかける。呼び出し音三回で、孫子が出た。
「おれだけど……もう、いい十分だろ? 玉木はこちらで保護した。あいつには後でちゃんと謝らせるから……」
 先ほど、用件だけを告げて通話を切られたばかりだから、荒野は勢いこんで話し出した。
『……わたくしのほうが停めても……あの二人は、止まらないのではなくて?』
 孫子はそれだけいうと通話を切り、後は呼び出しても出なかった。

 ……どういう結果になるかは解らないが……後はもう、やつらがやりたようにやらせてみせるしかないか……と、荒野は腹を括った。
 と、すれば……荒野がやるべきことは、観察と監視である。周囲に、余計な被害を出さないこと。被害がでそうになったら、即座に食い止めること……ということにさえ、気をつけていれば……。あとは、楓、孫子、ノリ、テンの戦い方を……じっくりと観察しておけばいい。
 これから付き合いのためにも……ということもあったが、楓と孫子に関しては、ある程度手の内は分かっているが、最近、新しい師匠についてからの成長についてはよく把握していないし、ノリ、テンについては、未知数の部分のほうが多い。
 そう思えば、今回の騒動は、荒野にとっては「デメリットばかり」……とも、言い難いのであった。

『……正確だなぁ……』
 ノリは孫子の弾道を、そう評価する。そして、昨夜、背筋を伸ばして食事をしていた孫子の姿も合わせて思い起こし、
『冷静で几帳面な、常識人』
 と、孫子の性格を規定した。
 ……もっとも、孫子の性格に関するノリの評価に関しては、荒野あたりが聞いたら即座に否定しそうな気もするが……とりあえず、異論を挟みそうな荒野は、この場にはいない。
『……だとしたら……』
 出来るだけ、誰も思いつかないような……突拍子もない、反撃方法が、いい……。
 ノリはひと目を避けるように、細く曲がりくねった裏道を走っているに、同じように気配を絶ちながら孫子のいる方向に向かっている楓の背中に遭遇する。
 楓のほうは、ノリに背中を向けていることと、それに、なにやら考え事をしているらしく、ノリの存在に気がついた様子はなかった。
 それを幸いに、ノリは楓の進路を避け、楓から少し距離をとって、併走するような感じで孫子がいると予測される地点に向かう。
 すると今度は、テンと合流することになった。三人とも、同じ地点から出発して同じゴールを目指しているのだから、どこかではかち合う筈なのだが。
 ノリは早速、先ほど屋根で目撃した破片のこと、そこから推測されることなどをテンに報告する。テンの反応は、ノリの推測を面白くなさそうな顔をして拝聴した後、頷いただけだった。ガクがああいう状態になっている以上、なんらかの薬物が使用されたことはほぼ確実なわけで、その物証がみつかったとしても、今の時点で事態が好転するわけでもない。せいぜい、孫子の手口の一つが明らかになった、という程度のことでしかないのだった。
 ノリとガクは、なにか困ったことがあると、テンにどうすればいいのか相談することにしている。普段、ぼーっとして反応が薄いように見えるテンは、そのような相談事の際、特に考えるそぶりも見せずに即答することが多かったが、その回答はかなり確実な打開策であることが多かった。
 そんな普段の経験から、ノリとガクは三人のブレーンとしてのテンを信頼している。
 そのテンは、今回、
「確実な方法と、トリッキーな方法がある」
 と答えた。
 孫子の性格を「冷静で几帳面な、常識人」として読んでいたノリは、即座に、
「トリッキーな方法にしよう」
 といった。
 その後、テンが口にした策は、たしかに「トリッキー」な物だった。

 荒野は、いくつかのルートを想像し、その一つでノリとテンの姿をみつけた。
 二人は、気配を絶っていることで安心しているのか、それともそもそも「後をつけられる」という経験に乏しいため、警戒心が働かないためか、荒野の存在に気づいた様子はない。
 二人は、走りながらしばらくなにやら話し込んだ後、顔を見合わせて頷きあって、一足跳びに近くの家の屋根に昇った。
『……おい!』
 荒野は心中で小さな叫び声を上げた。
 荒野には、二人の動きはかなり不用心なものに思えた。
 案の定、二人に向かって次々と銃弾が飛来するのを、荒野は視認する。
 孫子は、弾丸数に余裕があるらしく、弾丸をケチっていなかった。また、最初の銃弾から予測される位置からも、やはり若干の移動を行っているようだった。
 しかし二人は、軽々と孫子の狙撃をかわし、むしろ、孫子の注意をどこかにひきつけようとするかのように、ことさら挑発するような動きを見せながら、少し離れた場所へと移動していく……。
『……あの二人……』
 なにか、考えがあるらしい……と、荒野は思った。

「ノリ……荒野にーちゃんが、出てきた。追跡されている……」
 テンは鼻をうごめかせて、小さな声でノリに告げた。
「荒野にーちゃん、邪魔する? 使える?」
 ノリは、背後に視線を向けないように気をつけながら、テンに聞く。
「……どっちも、なしだと思う……。
 荒野にーちゃん、孫子おねーちゃん以上に冷静だし……でも、今回は様子見してくれるかと……」
 テンの答えを聞いて、ノリは小さく笑った。
「なぁんだ。毒にも薬にもならないってやつだね」
「そうだね」、とノリに同意しながら、テンはさらに続けた。
「……あと、遠くから、こっちをバラバラに見ている奴らが、いっぱい……」
「それは……気づいている……」
 三人の中で一番遠くまで見通せるノリが、テンの感触を裏付けた。
「……そっちはあれ、じっちゃんがいってた奴らじゃないか?」
「うん。ぼくらがどこまでやれるのか知りたい奴ら、予想以上に数が多いみたいだ……」
 そう返事をしながらも、テンは、
『……遠くで見ているだけの奴らよりも……荒野おにーちゃんの側にいたほうが、面白そうかな……』
 と思いはじめている。

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彼女はくノ一! 第五話 (13)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(13)

 孫子の予備のスコープの中には、顔に落書きをしたガクを置いてきた場所に標準を合わせていた。孫子がここまで移動している間に、荒野、楓、ノリ、テンの四人が集まっている。スコープの中の四人は、しばらくなにやら話しこんでいたが、すぐに荒野が眠ったままのガクを背負って他の三人から離れた。
 荒野が確実に三人に背を向けたのを確認して、孫子はトリガーを引く。
 孫子の予測通り、初弾は三人を散会させるだけに終わった。孫子自身、最初から命中するとは思っていない。三人の反応を確認することが、初弾の主な目的である。
 三人娘のうち、ノリは一度屋根に上がり、テンは地上面を走っているのだろう、家の隙間に隠れて姿が見えない。楓も同じだった。
 孫子は、わざと見通しの良い場所に身をさらしているとしか思えないノリに、次弾を撃ち込む。ノリは一度顔を上げ、スコープ越しに孫子と目を合わせたかのようににやりと笑い、すぐに地上に降りて姿を消した。
『……残りの二人は、最初のよりは単純ではないってわけ……』
 孫子は、次の狙撃場所に移動するため、ライフルを片付けはじめる。
 ヒット・アンド・アウェイは狙撃戦の基本だし、日本の市街地でライフルを剥き出しのまま持ち歩くわけにもいかないのであった。

『……どうしよう、どうしよう、どうしよう……』
 気配を絶ち、路地裏をすり抜けるように走りながら、楓はまだ悩んでいる。
 これから、自分が、これからどうしたいのか、と……。
 ……さっきの様子だと、あの二人が孫子への攻撃を止めることは考えられない……。
 かといって、二人に荷担して、一緒になって孫子を止めようとすることも、なにか違うような気がする……。
 ガクをあのような状態にすることで、孫子は、玉木をかばった三人に対して宣戦布告してしまった。玉木へのお仕置きを欲している、という一点にのみ、楓は孫子に同調する所だが、その玉木は、今では荒野が身柄を確保している。つまり、今では、楓は三人と対立する理由もないし、孫子と対立する理由も、ない……。
 だったら、「無関係だから」といって、この場からこのまま逃げても、いいのだろうか?
 ……いや。
 楓は、少し考えた結果……孫子と残り二人の対立を止めたい、と思った。
 玉木を荒野が取り上げた今、この対立には、意味がない……。
『でも……』
 一体どうしたら、孫子とノリとテンが戦いを停めるのか……楓には、次ぎにうつべき手が思いつかないのであった。
 とりあえず、楓は、先ほどの射撃から予測される、孫子の居場所に足を向けていた。

 テンは、楓よりも先行して孫子に近づいていた。鼻が効くテンは孫子の体臭を記憶しているし、三百メートルくらいの距離に近づけば、なんとかかぎ分けて臭いを追うことも出来る。それにテンは、ノリや楓とは違って、生来、なにかを考えるとか悩む、とかいうことを苦手とする。
『……とりあえず、才賀ねーさんを、動けなくしちゃえばいいんだ……』
 テンは、ガクほど力が強くはないし、ノリほど速くも思慮深くもない。
 だか……。
『……速く走れないのなら、先にスタートすればいい。
 力が強くないのなら、策を用いればいい……』
 テンは、考えるとか悩むとかいうことが、嫌いだ。体を動かすことも、同じくらいに、嫌いだ……。
 だから、もっとも効率的に……楽に目標を達成する方法を思いつくことにかけては、三人の中でも抜きんでた資質を持っていた。
「テン、なにか思いついた?」
 いつの間にか、ノリが併走していた。ノリは、三人の中で一番走るのが速い。遅れてスタートしても、楽にテンに追いつける。二人とも、当座の目的地は孫子のいる場所であり、同じなのだ。追いつかれても不思議ではない。
「ガク……やっぱり薬でやられたみたい……」
 ノリは、簡単に屋根でみつけたもののことをテンに話した。
 テンのいうとおりに動けば、一番ラクができる……ノリとガクは、経験的にそのことを知っている。
 だから、なにかあると、テンに指示を仰ぐ。
「……確実なのと、トリッキーなの思いついたけど……」
 テンが、ノリに答えた。先ほどの、「なにか思いついた?」という質問の答えだ。
「トリッキーなほうで、行こう」
 ノリは即答した。
「孫子ねーちゃん、冷静で常識的な人だから……確実な手は、だいたい防がれると思う」
「……そうだね」
 テンも頷く。二人とも、孫子を過小評価しているわけではない。
「じゃあ。トリッキーなほうの手ね。
 第三勢力を、孫子ねーちゃんにぶつける。そして、混乱した隙に、ボクらが襲う……」
「……第三勢力……」
 ノリは瞼を忙しく開閉させた。
「……どこにいるの? そんなもん?」
「楓おねーちゃん。
 ノリがいったんじゃないか、二人とも絵描きのおにーちゃんにらぶらぶだって……。
 そこをつつけば、簡単に喧嘩するよ、あの二人……」

 荒野は再度うお玉の裏口に入り、眠ったままのガクを玉木に預けた。
 対応にでた玉木は、
「預かるのはいいけど……今、弟と妹がいるから、この顔のガクちゃん預かっていると、さらに悪戯されると思うけど……」
 とかいいながらもガクを背負った荒野を自室に招いた。荒野はガクをフローリングの上に降ろすと、「まだちょっと用事が残っているから。こいつは、すぐに目を醒ますと思う」といって、すぐに出ようとする。
「もう一度、念を押しておくけど……」
 その背中に、玉木はいった。
「あとで、ちゃんと説明してよね……」
「うん……」
 荒野は振り返らずに、答えた後、
「……玉木には、ちゃんと説明しておいたほうが、なにかと面倒がなさそうだしな……」
 とつけ加え、再び何処かへと去っていった。

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髪長姫は最後に笑う。第五章(54)

第五章 「友と敵」(54)

「……おお、タマ……帰ったか!
 つい今しがた、学校から電話があって、また呼び出し食らったぞ! 今度はお前、なにやった!」
「今、いろいろややこしいことになっているから、学校の呼び出しは、なんか理由つけて明日以降にしておいて……」
「……って、あれ? ケーキ屋んところのモデルさんじゃないのか、お前の後ろにいるの?」
「うん。このモデルさん。学校での、知り合い」
「じゃあ、おれたちは、今日はここで……」
「……ちゃんと、後でなにがあったか教えてよ……」
「……あ……ああ……また後で、連絡する……」
 玉木珠美を家にまで送り届けた荒野たちは、ぞろぞろとうお玉の裏口から離れた。
『……いくら才賀のヤツでも、親御さんがいる家に銃弾放り込むこともないだろう……』
 と、荒野は思った。
 つまり、これで玉木の身は、当面、安全だということだった。
「で、お前らは……どうするんだ?」
 荒野は、楓とノリとテンに尋ねた。
「おれはもともと、玉木の安全確保、それに、取り乱したお前らが目立つような真似をしないよう、見張るために来たわけだけど……。
 玉木が家に入った今は、もう目的達しているようなもんだしなぁ……」
 荒野は、意味ありげなニヤニヤ笑いを顔に浮かべていた。
 暗に、「どちらかに、荷担するつもりはない」といっている。
「もちろん、誰かが必要以上に目立つような真似をしようとしたら、力ずくで止めるけどな……。
 ノリとテンは、ガクに加勢するんだろ?
 楓……お前は、どうする?」
 荒野が楓に尋ねた時、荒野の携帯が軽やかな呼び出し音を響かせた。
「はい……ん。おれだけど……え? もう? あ、ちょっと……って、もう切りやがった……」
 荒野は、小さく息を吐いて手の中の携帯を見つめた。
「……才賀……もう、ガクを倒したって……。
 一方的に自分のいいたことだけいって、切りやがった」

 数分後、荒野、楓、テン、ノリの四人が孫子が示した場所に向かってみると……額に油性マジックで「バカ!」と大書きされ、それ以外にも顔中に落書きをされたガクが、道ばたで平和に寝息を立てていた。
 この挑発行為は、テンとノリの闘争心に火をつけた。口汚く孫子を罵りながら、二人は奇声と気炎をあげる。
 そんな二人をみて荒野は、
「……お前ら……も、勝手にやってろよ……。
 あ。せいぜい目立たないようにはしておけよな……」
 呆れたように言い放って、寝息を立てているガクを背追い、楓には「ガクの身柄を、一旦玉木の家に預けてくる」と言い残して去っていった。

『……楓にも、そろそろ自分で考えて動いてもらわなけりゃな……』
 十分以上の実力と、不釣り合いに過小な自己評価に基づいた優柔不断と自己判断回避癖。その消極的な性格故に、本来持っている能力を十分に発揮しきっていないのが、楓の現状だ。
 それに……。
『……大きな力を奮う者には、相応の責任が伴う……』
 楓ほどの力を得た者が……いるまでも他人の判断を仰いでからでなくては動けない……というのは、極めて危険な事でもあった。早急に、楓に自立心を植えつける必要を、荒野は感じている。
 だから荒野は、この機会に、なんの助言も与えず、楓自身の判断で動くようにしむけた。

『……えっとぉ……』
 テンとノリとともに取り残された楓は、いつまでも文字通り地団駄を踏んで孫子の悪口を言い続けている二人を目の前にして、途方に暮れていた。
『……いつまでもこんな所にいると、いい的だと思うんだけど……』
 それを二人に助言するべきなのか否か……楓は、決めかねていた。
 楓が、孫子の側につくか、それとも二人の側につくのかを、まず決定しなければ……そうした些細なことすらも、判断できないのだ。
 だが、楓には、十分に悩む時間も与えられなかった。
 三人は、慌てて跳びさすって、散る。
 三人が固まっていたあたりの地面にゴム製のスタン弾が突き刺さり、十字型に破裂した。
『……やっぱり……』
 孫子がガクの顔に落書きをし、ガクを放置した場所を荒野に知らせた理由は……残りの二人を怒らせ、冷静な判断力を失わせるため……つまり、挑発。
 もう一つは……。
『……標的を、労せず一カ所に集めるための、囮……』

『……ふむ……』
 ノリは、遮蔽物の多い地上を別々に逃げはじめた楓とテンとは違い、一人だけ近くの民家の屋根に飛び乗った。見通しの良い場所に出れば、それだけ狙われやすくなるわけだが、先ほどの着弾で、だいたいの狙撃位置は掴めている。だとすれば、注意を向けていれば良い方向も自ずと明らかになるわけで、ノリの目と速度を持ってすれば、発射弾を確認してから逃げることも可能だった。
 それより、ノリはガクがどのような方法で、あのように無傷でしとめられたのか、その方法のほうが気になった。三人の中で一番力が強いガクは気分屋の直情型で、怒りに我を忘れた時のガクが、どれほど御しがたい存在であるのかは、ノリとテンは過去の経験からよーく思い知らされている……。
 視力のいいノリは、屋根の上にきらりと光る破片をすぐに発見した。
 その破片は、帯状に細長く分布していて、その帯を延長すると、ちょうどガクが倒れていた地点になる……。
『……なるほど……遠方から、薬を打ち込んだか……』
 解ってしまえば、実に単純な方法だった。
 だが、自分の接近戦能力に過剰気味の自信を持ち、銃弾ぐらいは余裕ではじき飛ばせるガクは、敵の姿を認めたら、なりふり構わず直線的に突進していたろう……。
「ガクを相手にした場合」という条件付きだが……効果的な手段だった。
 一瞥して相手の手の内を読み、「冷静、かつ、油断をしない相手」と孫子を評価したノリは、すぐに楓やテンと同じように、地上の上に飛び降りた。
 ノリ飛び降りるのと同時に、それまでノリがいた場所を、孫子のスタン弾が通過していく。

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彼女はくノ一! 第五話 (12)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(12)

 才賀孫子は駅から少し離れた場所にあるマンションの非常階段にいた。
 玉木への狙撃を阻止した三人うち、一人が、すでに六百メートルくらいの距離にまで近づいている。
 その子への何度目か狙撃を行い、すぐに場所を移そうとした時だ。
 孫子はすぐに移動しようとした。狙撃する場所がすでに知られている場合、反撃を裂けるために一発撃つ毎に移動を繰り返すのが、狙撃戦のセオリーだった。

 今までの、その子への狙撃は、弾道からいえば命中しているはずだった。が、その子には、目に見える形でダメージを受けた様子はみられない。命中しても平気なのか、それとも全ての弾丸をたたき落としているのか……。
 その子は、一旦は商店街のアーケードの下に潜り込む、視界から消えたが、またすぐにアーケードの天蓋の上に姿を現し、まっすぐにこっちのほうに走ってくる。
 ライフルを構えた恰好を解こうとすると、スコープの中に、ふと、異変を感じた。なにか丸い塊が、もの凄い勢いでこっちに飛んでくる。
『……まさか……』
 孫子は、反射的に身を起こし、ライフルの銃身を置いていたコンクリートの手すりの中に身を隠す。その動作とほぼ同時に、外から飛び込んで来た「何か」がライフルのスコープに、凄い勢いで激突した。その「何か」は、スコープをひしゃげさせ、ライフルの銃身からもぎ取る。
 それだけでは飽きたらず、壁や階段、それに孫子が遮蔽物にしているコンクリート製の手すりなど間を忙しく跳ね回る。
『……なにか、弾性のあるものが……投げ込まれた?』
 五百メートル以上の距離を置いて、なおかつこれだけの跳ね回るだけの運動量を残している、となると……十分に脅威だった。
 孫子は、急いでライフルと使い物にならなくなったスコープをゴルフバックに収容する。そのさなかに、敵の反撃の第二弾が来た。
「それ」は、第一弾と同じように、いや、第一弾よりも勢いを増して、非常階段の中を跳ね回る。
 壁を背にしてゴルフバッグで自分の身をかばいながら階段に座り込み、「跳弾」から身を守りながら、孫子は、敵がなにで反撃してきたのか、その武器の正体を、視認する。
 孫子の視力は、なんの変哲もないゴルフボールを捕らえていた。
 たかがゴルフボール、といっても、これだけ狭い、空間で、これだけの勢いで跳ね回っているとなると……十分な脅威といえた……。少なくとも孫子は、しばらく身動きが取れなくなった。
 そのボールの動きが鈍くなった頃、もう一つのボールが投げ込まれる。

『……あと、十発……』
 ガクは、民家の屋根を伝い走りながら、孫子が潜伏している位置まで、あと三百メートルほどにまで迫っていた。三百メートル、とはいっても、ガクの足を考慮すれば、すぐそこといってもいい。
 ゴルフボール二発を投げ込む事で、孫子の動きはある程度封じることができたはずだった。なにより、初弾で運良くスコープを潰せたのが、大きい。
 遠距離からの精密射撃を行えない相手と、この距離で「撃ち合い」になるのなら……負ける気はしなかった。
『……これで、詰み……かな?』
 ガクは、そう思った。
 ガクは……楓や荒野ならともかく、孫子相手なら、接近戦で負ける気はしなかった。

『……相手は精密射撃を必要とせず、こちらはスコープを壊された……』
 孫子は考えた。
 ただし、あまり悲観的にはなっていない。
『……なら……あれを試してみる、いい機会ね……』
 幸い、相手は猪突猛進しか能のない、獣並の体力と知性の持ち主であり……なにより、こちらは風上に位置していた。
 孫子は、 シルヴィ・姉崎から渡された香水の瓶を取り出した。もちろん、中身は香水ではない。無味無臭、揮発性の液体だった。

『……いた!』
 ガクの視界にライフルを抱えた孫子が飛び込んできた時、基本的に他人を疑うことを知らないガクは、特にそれに不審を覚えなかった。
 孫子は、わずか百メートル程度の近距離で、ライフルを越しだめに乱射にしながら、棒立ちになっている。
 ガクは、孫子のライフルから発射された弾丸を片っ端から棍でたたき落としながら、孫子のほうに突進していった。この程度の距離なら、スリングを使うよりは、接近して仕留める方が、早い。
 もう、標的の孫子は、すぐ、そこ……。
『……あれ?』
 と、思ったところで、がくん、と膝が落ちた。
 ガクは運動と狩りの高揚で興奮していたため、弾丸をたたき落とした時の感触が、今までとは違っていたことに気づかなかった。
 足が思うように動かなくても、ガクの体は、慣性の法則に従って前方に飛んでいく。ちょいとした屋根の段差に足を取られ、ガクの体がゴロゴロと転がる。
『……あれ? あれ?』
 意識は、明瞭だ。
 しかし、体が……足も、その他の部分も……明瞭な意識とは裏腹に、とても重くて……動いて、くれない……。
 四肢が鉛に変わったように感じながら……ガクは、民家のトタン屋根の上をごろごろと転がり……そのまま縁から、落下した。

「まずは、一人目……」
 孫子は、道ばたに転がってすぴょすぴょ寝息を立て始めたガクを見下ろしていた。
 正面から向かっても適わない相手には、絡め手で……というシルヴィの教えと指摘は、まことに正しい。ことに……こういう、単純な相手なら、単なる即効性の薬物も、効果は絶大だった。
 孫子は、その薬を入手した後、「炸薬で打ち出す時の衝撃には絶えられるが、着弾時には破砕する」弾頭用のカプセルを実家に送るように申しつけておいた。シルヴィの薬ほど即効性のある代物は、表向き現代にはないことになっているが、才賀衆も似たような薬品を使用することもあった。
 揮発性の薬物を入れたアンプル弾を打ち込む……などという手は……集団相手に無差別に使用するか……こういう単純な……「勇猛果敢な愚者」相手にしか、使いようがない手ではあるが。大抵の人間は、銃口を向ければ、逃げるか遮蔽物に隠れる。
 むざむざ銃口に突進してくるような特殊な相手にだけ、有効な手段だった。
 孫子は携帯電話を取り出した。
「……あ。加納? 一応報告しておきますわ。
 今、一人目、仕留めたわよ……場所は……」

 数分後、荒野、楓、テン、ノリの四人が孫子が示した場所に向かってみると……額に油性マジックで「バカ!」と大書きされ、それ以外にも顔中に落書きをされたガクが、道ばたで平和に寝息を立てていた。

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髪長姫は最後に笑う。第五章(53)

第五章 「友と敵」(53)

「……お仕置きの邪魔するですか!」
 突然現れた楓は、荒野の予測以上に興奮していた。
「場所柄を考えろっての! 注目されてるじゃないか!」
 いきなり地面にはいつくばったり、楓が放り投げた子供を空中でキャッチしたりした荒野は、たまたま周辺にいた買い物客たちからの注視を浴びていた。
 ようやくそのことに気づいたのか、楓は、顔を赤くして荒野のいうことを聞く態度を示した。
「で、でも! 今回の玉木さんは……やりすぎです!」
 楓がそう叫んだのは、周囲のことを見る余裕を無くしていたことを自覚した楓の照れ隠し、でもあったのだろう。
「それはな、おれも認める。
 だけどな。
 それ、今、ここで、無理に始末つけなけりゃならないことなのか?」
 荒野は楓を説得しながら、胸元に抱えたままだったテンを、猫の子かぬいぐるみであるかのように軽々と楓の目線の高さまで持ち上げて見せた。
「人目、ということ以外にも……こいつらにも、事情を説明して、なぜお前らが怒っているのか納得して貰わないと……。
 こいつら、お前らを、理由もなく玉木を襲う悪人だと思ってるぞ……」
 荒野に持ち上げられたテンが、空中でじたばたと手足を振りだしたので、荒野はテンの体を地面に降ろす。
 地に足が着いたテンは、だっ、と玉木とノリのほうに駆け出しながら、
「どんな事情があろうが、こうなったら、もう同じだよ!
 ガク、一旦飛び出していったら、ボクたちでもなかなか止められないんだから!」
 捨てぜりふのように荒野と楓に向かって声をかけた。
『……よりによって……最初に才賀を追って飛び出していったやつが、そういう性格なのか……』
 荒野は、内心で密かに嘆息する。
 一度頭に来たら、理性を、失い疲れ果てて動かなくなるまで暴れ回る……という気質の持ち主が、二宮の中に、時たま、いる。
『……まあ、そっちは後で考えることにして……』
「……楓、玉木のことは、とりあえず、棚上げにしておけ……。
 こいつらの話しだと、ガクはバーサーカー・タイプの二宮に近いそうだ……。
 大げさな話しになる前に、止めなけりゃならない……」
 楓には、それで通じる。
 不承不承……という表情をありありと見せながらも、楓はなんとか頷いた。
「……さて、玉木……。
 さっきもいったが、実をいうと、今回の件は、おれもお前のやりすぎだと思っている……。だから、お前のことは、かばうつもりはない。逆に、お前らを守ろうとする三人のことも、邪魔だてするつもりはない……」
 荒野は、玉木に向かってそう声をかける。実際には、そばにいる楓、ノリ、テンに、自分の思惑を言い聞かせている。
「……こいつらが暴れるのは、こいつらの勝手だ。
 ただ、おれのほうにも都合というものがある……目立って貰っては、困る。
 だから、『これ以上は、人目につくような真似はしない』と約束するのなら、好きにやらせておくつもりだ。
 才賀や楓にも、三人にも、だ。
 玉木は……そうだな……お前、一旦家に帰っておとなしくしていた方がいいぞ。情勢が落ち着くまで。実家のうお玉、すぐそこだろ?」
 孫子に、狙撃される可能性は、まだ残っていた。
「……一旦家に帰るのはいいけど……」
 雰囲気で、意外にシリアスな話しである、ということを理解したのか、玉木も真剣な顔で頷いた。
「……落ち着いたら、一体なにが起きているのか、ちゃんと説明してよね……」
 そう、付け加えるのを忘れなかったが。
「それから……お前ら……これ、玉木が作ったもんだ……」
 荒野はポケットから取り出した例のけばけばしい「号外」を、玉木の目の前で、ノリとガクに手渡した。
 玉木は露骨に、視線を宙に泳がせる。
「えー! ……なに……これ?」
「え? えええ?」
「ボクたち、楓おねーちゃんとあのおにーちゃんの子供ってことにされてるしっ!」
 荒野が提示した実物をみて、ノリとテンは、ようやく「何故玉木が狙われているのか」ということを理解した。玉木の方にふりかえり、ジト目で顔を睨む。玉木は、二人の視線から目を反らし、わざとらしく口笛を吹き始めた。
「……玉木さん……」
 ゆらり、と、楓が玉木に近づく。
「……わたし……三人の子持ちですか……」
 目が、据わっていた。
 楓の形相をひと目見た玉木は、「ひっ!」と小さな悲鳴を上げて、三歩ほど後ずさる。
「……だから、それは後にしろって……」
 荒野は、楓の肩に手を置いて、楓の動きを抑制した。
「……楓ねーちゃんが怒るのはわかったけど……」
 テンが、本当に不思議そうな顔をして、みんなを見渡して、尋ねた。
「才賀ねーちゃんは……なんで、これで、怒るの?」
「……テンは鈍いなぁ……」
 荒野や楓が答える前に、ノリがテンの耳元に囁く。
「……昨日一晩泊まって解らなかったか? 楓ねーちゃんも才賀ねーちゃんも、あの絵描きさんにらぶらぶなのっ!」
「え? 嘘! 本当に!」
「はい。漫才は、そこまで!」
 荒野は、パンパンと手を打ち合わせた。
「とりあえず、玉木をうお玉に送っていったら……ガクと才賀を一端止めて……その後は、まあ、人知れず仲良く喧嘩でもなんでもしてくれ……おれとか茅とか周りの堅気の衆に迷惑かけない限り、止めやしねーから……」
 この時点で荒野は、これで大方の問題は片づいた……と、思っていた。
 しかしそれは、甘い見通しだった。

「……おじさん、これ、箱ごと貰う。おつり、いらない!」
 一人で飛び出していったガクは、孫子の狙撃のいい的になるばかりだった。何発かのゴム弾を棍ではたき落とし、狙撃地点を確定すると一端商店街のアーケードの中に戻る。
 そこで、たまたま目に入ったスポーツ用品店に入り、素早く目当ての物を探し出し、店員の対応を待たずに何枚かの紙幣を商品のあった場所に置いて外に飛び出した。
『……こっちも、飛び道具使うもんねー……』
 走りながら、今買ったばかりの、ゴルフボールの一ダース入り箱を開け、一つだけ手元に残し、それ以外の中身を、パーカーの中に詰め込む。ベルトを抜き、それを二つ折りにしたものをさらに半分におり、その中央部にゴルフボールを置く。
 そして、素早く跳躍して、アーケードの上に出た。
 途端に、孫子の狙撃が再開される。反撃を予測してか、先ほどの狙撃地点からは、移動していた。
『……そこ!』
 ガクは、ノリほど目も耳もよくない。しかし、飛来するライフル弾の音を聞き、どこから発射されたのかを瞬時に判断するくらいは、できた。ましてや、今回の場合、だいたいの方向くらいは前もって予測がついている。
 だから……。
 孫子のライフルが打ち出した弾丸が届く前に、ガクは、即席のスリングでゴルフボールを孫子に向けて、打ち出した。
 今までの経験から考えても、標的が一キロにいれば命中させる自信もあったし、命中すれば標的にシャレにならないダメージを与える筈の速度で、ガクが放ったゴルフボールは、真っ直ぐに孫子のほうに飛んでいく。

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彼女はくノ一! 第五話 (11)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(11)

 その嵯峨野先生のとりなしがいいきっかけとなって、香也と楓は釈放された。
 担任の岩崎先生と一緒に生徒指導室を出たところで、三人で一斉に肩を落として盛大にため息をつく。
「……んー……疲れた……」
「……子持ち……三人の、子持ち……」
 ぶつくさと譫言のようなことを呟きはじめる香也と楓を横目に、岩崎先生は香也たちに向き直る。
「……でも、先生、狩野君のこと、見直しちゃたなぁ……。いつもはあれだけど、いざとなるとやっぱり男の子ねー……。
 先生、狩野君が落ち着いて、はきはきしゃべることができると思ってなかった……」
 聞きようによっては失礼なことを、いう。
「……んー……今日のは、まともにつき合うのも馬鹿らしかったし、はやく解放されたかったから……」
 香也はぼそぼそとそういって、「じゃあ、部活に戻ります。なんかあったら 美術室にいますから」と去ろうとする。
 楓も、岩崎先生にぺこりと頭を下げて香也の後を追う。
『……狩野君、あれで……』
 後に残された岩崎先生は、香也への評価を改める。
『自分の興味が向かないことには、とことん消極的だけど……いざとなればそれなりに、頭も廻るし、機転も利く子だったんだぁ……』
 岩崎先生の香也への印象は、他の学校関係者と同じく、「静かで目立たない、これといって特徴のない生徒」というものだった。だが、つい先ほどの生徒指導室での出来事を思い起こす限り……教頭先生を含む教師数人に囲まれて、あれだけ堂々と「自分は無関係」と言い切れる生徒が、校内に何人いることか……。
 岩崎先生は、「表面的な印象では、生徒の本質はわからない」……ということを、香也に教えられたような気がした。
『……まだまだ、経験が足りないな……』
 完全に香也と楓の後ろ姿が見えなくなってから、岩崎先生は、自分の頬を、両手で挟むようにして、軽く叩く。

「……なんですの、それ……」
 香也と楓が生徒指導室に呼び出されていた頃……。
「……はぁ? あのお馬鹿くノ一の隠し子? あの三人が……。
 そう、そう……ふーん……あの、玉木さんがねー……うふ。うふうふうふ。
 いえ、貴重な情報の提供、感謝しますわよ……茅」
 茅からのたれこみ電話を受けた時、才賀孫子は、狩野家の自室について制服を私服に着替えているところだった。
 着替えをすませ、普段、手入れする時以外は押入の奥に放り込んでいる自分のライフルを取り出して、本来は暴徒鎮圧用などに使用される、ゴム製のスタン弾をカートリッジに詰め始める。命中すると弾丸自体が放射状に裂けて的へのダメージを拡散する、という代物で、殺傷力や貫通力はないが、ダメージは通常の弾丸とたいして代わりはない、とも言われている。
 ライフルの準備がほぼ終わったところで、狩野荒野から電話がかかってきた。
 短いやりとりで、「玉木の現在地は、商店街の眼鏡屋」ということで、意見が一致する。というか、昨夜、玉木と三人娘の一人がそんなことを約束していたのを、二人同時に思いだす。
 荒野は、直接その眼鏡屋のほうに向かうといって、通話を切った。
「……この子を使うのも、久しぶりですわね……」
 孫子は、準備を終えたライフルの銃身に軽く口づけをし、まさか剥き出しのまま持ち運ぶわけにもいかないので、ゴルフバッグにつめて家を出た。

 楓は香也が美術室に入ったのを確認した後、「急用ができた」といって香也と別れた。
 そして、荒野へ電話をかける。
「……今、先生たちから開放された所なんですが、玉木さんの居場所に心当たりは……」
『今、商店街で探している。昨日の話だと、三人娘と一緒に眼鏡屋に来ている筈だ』
「了解しました。そちらに急行します」

『……お仕置きなのです……』
 楓に中には、玉木への怒りが沸々と煮えたぎっている。先生方が放送部員を差し押さえた、といっていたので今まで深く考えていなかったが……玉木が昨日のノリとの約束を守っていたら、今頃、玉木は校内にいない筈なのだ……。
 玉木は、昨晩のうちに「号外」の原稿をレイアウトまで含めて仕上げ、他の放送部員たちにはそれを放課後、プリントアウトしてばらまくように指示して、自分は直帰したのだろう……。
 そのバイタリティは、認めるが……。
 楓にしてみれば、香也と自分を、全校的ネタをしたのは、とうてい看過できるものではなかった。
 楓は校門を出て、足早に商店街のほうへと向かう。

 楓が眼鏡屋の前まで着いた時、すでに玉木の元には、荒野が立っていた。
 正確には、玉木と荒野の間にはさらに二人、三人娘のうちのテンとノリがいいて、ノリは玉木のすぐ前に、テンは例の六節棍を構えてなにやら荒野と押し問答をしている。
 楓は気配を消して、手近にいたテンの背後に歩み寄り、
「……お仕置きなのです……」
 と叫んで、テンの体を問答無用で放り投げた。
 ようやく楓の接近に気づいた荒野が、ぎょっとした顔をして、「馬鹿!」と楓に向かって叫びながら、放り投げられたテンの体を追いかけるように跳躍、空中で抱き留めて、着地した。
「……お仕置きの邪魔するですか!」
「場所柄を考えろっての! 注目されてるじゃないか!」
 言われて、楓ははじめてそこが夕方の、人通りの多い商店街であったことを思い出す。
 周囲が見えなくなっていたことを自覚した楓の頬が、かぁー!、と熱を持った。
「で、でも! 今回の玉木さんは……やりすぎです!」
「それは、おれも認める」
 照れ隠し気味に叫んだ楓に、荒野も頷き返した。
「だけどな。
 それ、今ここで無理に始末つけなけりゃならないことなのか?」
 荒野は冷静に指摘し、ゆっくりと首を振った。
「人目、ということ以外にも……こいつらにも事情説明して納得して貰わないと……こいつら、お前らを、理由もなく玉木を襲う悪人だと思ってるぞ……」
 荒野は、胸の中に抱きしめたままだったテンの体をひょいと持ち上げ、楓に示した。荒野に拘束されて顔を赤くして暴れていたテンは、いきなり荒野に背後から持ち上げられて、バツが悪そうな表情をして楓と目を合わせた。
「……い、いいから、とりあえず、離せって……」
 荒野に捧げ持たれながら、テンはそう叫んで、また、手足をばたばたと振って暴れ出した。
 荒野のような異性に抱きつかれた、ということと、楓と二人がかりでいいように玩具にされている、という事実とに、気恥ずかしさを感じているらしい。
「どんな事情があろうが、こうなったら、もう同じだよ!
 ガク、一旦飛び出していったら、ボクたちでもなかなか止められないんだから!」

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髪長姫は最後に笑う。第五章(52)

第五章 「友と敵」(52)

『……玉木は……』
 荒野は、一応、放送室に寄ってみる。が、そこでは、荒野と顔見知りになっている放送部員の生徒たちが教師たちに引きずられるようにしてしょっ引かれているところだった。
『……無理もないか……』
 あのけばけばしい色彩の「号外」とやらの束も、教師たちは回収したり没収したりしていた。廊下や校門の所で放送部員たちが配った分も、出来るだけ回収しようとしているらしく、窓から校庭をみると、校門の所でも数人の教師たちが大きな段ボール箱を置いて張り付いていて、下校する生徒たちに、例の「号外」を入れるように声をからしている。大半の生徒たちは、大人しく教師たちが用意していた段ボール箱に紙を入れていった。内容を既に読んでいる、ということもあったろうし、こっそり持ち帰ったとしてもまずばれることはないので、取り締まる教師たちも取り締まられる生徒たちも、こんなことは儀礼的な行為だと理解している筈で、それでも、学校というのは、そうした表層的な体面を取り繕うのに熱心な組織でもあった。
 校内放送で香也と楓が職員室に呼び出された頃、荒野の携帯が鳴った。
 孫子からの呼び出し、だった。
『……加納! 玉木の居場所、見当つく?』
「おれも探しているところだけど、校内には、いないらしい……」
『……こっちは、今、家にいるところですけれど……たった今、茅から電話があって、玉木の巫山戯た号外とやらの話しを聞きましたの……』
「そっちにもいないのか……じゃあ、まだ玉木の家のほうに……」
 と、荒野がいいかけたところで、ほぼ二人同時に、
『あ!』
「あ!」
 と、小さく叫び声を上げた。
『眼鏡屋!』
「商店街だ!」
 昨夜、三人娘の一人、ノリと玉木がそんな約束をしていた筈だった。

 荒野が商店街についた頃、また荒野の携帯が鳴った。
『……今、先生たちから開放された所なんですが、玉木さんの居場所に心当たりは……』
 今度は楓からだった。先ほどの孫子の時と同じように、声に怒気を含んでいた。
「今、商店街で探している。昨日の話だと、三人娘と一緒に眼鏡屋に来ている筈だ」
 荒野が手短に説明すると、
『了解しました。そちらに急行します』
 といって、楓は通話を切った。

『……さぁて……玉木……あいつら敵に回したら、怖いぞー……』
 荒野はそんなことを考えながら玉木の姿を探した。
 荒野が玉木を捜しているのは、玉木を捕まえようとしている二人に協力するためではなく、二人を監視するためだった。
 楓も孫子も、香也のこととなると、見境がなくなる傾向がある。できれば、二人よりも先に玉木をみつけて、二人の行為に行きすぎがあるようなら、手遅れにならないうちに止める必要があった。
『……いた!』
 荒野が目当ての眼鏡屋を視界に入れた時で、ちょうど店内から玉木珠美が三人の少女たちを引き連れて出てくるところだった。眼鏡が必要なのはノリという少女だけだった筈だが、他の二人も突いてきたらしい。玉木は一度帰宅して着替えたのか、私服だった。
 荒野が四人に近寄って玉木に声をかけようとした時、
『……え?』
 ……ひゅん……、という聞き覚えのある微かな音を聞いた荒野は、反射的に地面にはいつくばった。
 そろそろ、夕方の買い物客で人出が多くなる時間帯だったので、荒野の近くにいた人々が、何事かといきなり地面に伏せた荒野のほうを注視する。
「……危ないなぁ……もう……」
 玉木の前に立ちはだかるように、ノリが、立っていた。あの六節棍を、全ての関節を折り短く畳んだ状態にしたものを、手にしていた。
「……おねーちゃん、狙われてる……ゴム弾みたいだけど……当たると、かなり痛いし、下手すると骨を折るかもしれない……」
『……才賀、か……』
 荒野は姿勢を低くしながら、内心であれかえった。行動が速い、というのは、称賛に値するのかもしれないが……。
 一般人に向かって、町中でライフルを使用するほど……孫子は、頭に血が上っているらしい……。
「……ガク、狙撃点、分かる?
 おねーちゃんはボクとノリがみてる。ガクは狙撃者のほう、お願い」
 テンがそういうと、ガクは、
「よっしゃぁ!」
 と短く叫んで、その場で気配を絶って、弾かれたように跳躍。
 荒野の目には、ガクが正確に、弾が飛んできた方向にむけ、一直線に飛んでいったのが認められた。
「……ねー……」
 荒野がガクの動きを目で追った僅かな隙に、棒状に連結した六節棍を構えたテンが、荒野のすぐそばまで迫っていた。
「おにーちゃんも、あの狙撃者の仲間?」
「……どちらかというと、お前らを狙撃者から守ろうとして来たんだがな……」
 臨戦態勢で荒野を見ているテンを刺激しないように、荒野はゆっくりと身を起こした。三人の中で一番目がいい、というノリが、鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしている玉木を遮蔽物の中に追い込んでいる。
「……狙撃者の狙いは、お前たちが守っている、おねーちゃん……玉木だ……。
 玉木は、少々いろいろなことをやりすぎて……狙撃者と、もう一人のおねーちゃんとが、かなりご立腹なわけだ。おれもどちらかというと、その二人に同調して玉木をやりこめたいくらいなんだが……今、あの二人、少し見境がなくなってきているから……おれ、二人がやりすぎることがないように、見張りに来た……」
「……なんだか、よくわからないんだけど……」
 テンが可愛らしい仕草で首を傾げる。
「だろうな……詳しい事情を話せば、長くなる。
 ごく簡単にいうと、……。
 そこの玉木は、お仕置きされるようなことをやった。
 二人が、そのお仕置きをしにこっちに向かっている。
 おれは、玉木にお仕置きすること自体には賛成だが、その二人がやる過ぎることを心配している……。
 ……っていう説明で、わかるか?」
 荒野は、わざと隙のある構えをとって、テンに敵意がないことを示しながら、そう説明した。
 この場で三人と敵対するつもりはなかったため、だ。こんな理由で、三人と敵対するのは……あまりにも、馬鹿馬鹿しすぎる。
 が……。
「……お仕置きなのです……」
 いつの間にか、テンの背後に楓が立っていた。
 テンが振り返る間もなく、楓はテンの両脇に手を突っ込んで、テンの体を軽々と放り投げる。
「……馬鹿!」
 慌てて、荒野は空中のテンの体を追いかけた。
「……お仕置きの邪魔するですか!」
 その隙に、楓は玉木とノリの前に移動していた。
 ノリは、玉木と楓の間に立ちふさがるようにして、仁王立ちになっている。

 こうして、三人娘対楓と孫子連合軍の戦い、in、商店街の幕は、切って落とされた。

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彼女はくノ一! 第五話 (10)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(10)

 放課後の美術室。
「……はぁ……。
 昼休みにそんなことが……」
 香也がいつもより元気がない様子だったので、樋口明日樹はなにかあったのか、と、尋ねてみた。香也の答えを聞いて、尋ねたことを後悔する。
『……狩野君と一緒にお風呂、一緒にお風呂……』
 明日樹には、香也が気にかけているらしい昼休みの出来事よりも、昨夜の三人と香也とのことのほうが、よほど気にかかった。
 しかし、「相談に乗る」という形で半ば無理矢理いい渋る香也から昼休みのことを聞き出した手前、自分の動揺を必死になって香也に悟られまいとする。
『……で、でも、みんな子供だし……狩野君も最初、男の子だと思っていた、っていうし……』
 明日樹は、今朝、登校時に見かけた三人の様子を思い起こす。体もちいさければ、胸も平ら、しかし、いかにも元気そうな子たちだった。たしかにあれであは、言われなくては、性別の判断は難しいだろう……。
 だから、香也が子供の世話をするつもりで、三人と一緒に風呂に入ったのが不自然とは思わない。が……。
『……狩野君と一緒にお風呂、一緒にお風呂、一緒にお風呂……』
 ……気がつけば、香也が不思議そうな顔をして、急に黙り込んだ明日樹を見上げていた。
「……な、なんでもないのよ! なんでも!」
 そのことに気づいた明日樹は、香也の前でパタパタと無意味に両手を振った。
 その時、ぽんぽんぱんぽーん……と校内放送の開始を告げるチャイムが鳴り響き、香也と松島楓を職員室に呼び出した。

「……こういう怪文書が校内で配布されているのだが……」
 慌てて職員室に向かった香也は、そこで楓と鉢合わせし、二人の担任であるかなり動揺した様子の岩崎硝子先生に先導されて生徒指導室へと案内された。
 そこには校長先生、教頭先生、それに一年の学年主任である嵯峨野先生が揃っており、香也は訳が分からないながらも、「……い、意外に、大事なんじゃあ……」と思いはじめた。香也の隣にいる楓も、緊張した顔つきをしている。

「……あー。来ましたか……。呼び出したのは、他でもない……。
 校内に、こういう怪文書が出回っていましてね……」
 香也たちが生徒指導室に入ると、教頭先生は一枚の紙を香也たちによく見えるように提示した。

「一年のKK君とMKさんに三人の隠し子! か?」
 などという煽り文句が目を引くけばけばしい色彩で印刷された紙きれで、新聞の紙面を模したレイアウトで、目線は入っているが明らかに香也や楓のものと判明する写真を掲載している。よく見ると、紙面の下のほうに、昨日狩野家に来たばかりの三人娘の顔写真も、やはり目線入りで掲載されていた。
『……あうぅー……』
 香也は、思考も体もたっぷり三分ほど、その場で硬直させるハメになった。
 ……こんなことをしそうな人間……さらにいえば、このようなことをしでかしそうなモチベーションと実際に実行に移せるスキルと機会を持った人間は、香也にはたった一人しか思いつかない……。
「……放送部の生徒たちが、学校の備品でプリントアウトする端から配っていたものなんだが……まあ、十中八、九、悪質な悪ふざけかと思うが……この、内容が内容なんでな……。
 万が一、ということを考えて、当事者と思われる君たちの意見も、参考までに聞いておこうと思って呼び出したわけだが……」
 ……教師側とすれば、当然の対応だとは思うが……香也や楓にしてみれば、いい迷惑だった。
『……んー……』
 しかし、香也の思考は、このような不測の事態には慣れておらず、パニックを起こしてフリーズしている。
「……あたりまえです!」
 香也の代わりに、とういうわけでもないだろうが、楓が、バン、と目の前の机を両手ではたいて猛然と抗議しはじめた。
「よりにもよって、か、か、か……隠し子だなんて! この写真みてください! いったいわたしが何歳の時に産んだ子供ですか! わたし、三人の子持ちに見えますか!」
 普段、どちらかといえば控えめな態度で大人しい印象がある楓は、この時ばかりは完全に感情的になっている。
 二人の担任の岩崎先生も、慌ててと楓を宥めはじめた。
「松島さん、落ち着いて! わかっているの! わかっているの! 狩野君や松島さんがそういう生徒じゃないって先生、よく分かっているから!」
『……岩崎先生も、落ち着いたほうがいいんじゃないかな……』
 と、香也はぼんやり思った。
「……今、別の所で、こんな悪戯した放送部の生徒たち集めて事情聴取しているから。今、松島さんと狩野君に来て貰ったのは、あくまで念の為、ということで……」
 教頭先生がハンカチを取り出して自分のこめかみのあたりを拭いつつ、楓にそう諭しはじめる。
「いや……分かってますよ。分かってます。いくらなんでもこの内容はあまりにも馬鹿げています。でもですね。一端こういう噂が広まってしまったら、その真偽は一応、確認しておくのが我々の立場というもので……」
 そういう教頭先生も、うんざりした顔をしている。
 いつもの癖で、……んー……と唸りそうになって、今は教師たちの目の前にいることを思い出し、香也は危うく唸るのを止めた。
 代わりに、軽く深呼吸をして、これからしゃべる内容を考える。
 よし、と思って、背筋を伸ばし、おもむろに口を開いた。
「……よろしいでしょうか?」
 香也が姿勢を正し、明瞭な発音でなにやら語り出した。
 普段のほーっとしている香也の様子をよく知る楓や岩崎先生が、目を丸くする。
「お話しを伺っていますと、ぼくや楓さんは、どうも一方的な被害者のようで……疑いが晴れたのなら、部活に戻りたいので、もう帰ってもよろしいでしょうか?
 この紙もここに来て初めて目にしたわけでして、なんでこんな中傷をされなくてはならないのか、よく分からないくらいなのですが……正直、これ以上、この件には関わり合いたくありませんので……。
 なにか聞きたいことがあるようでしたら、早めにお願いします」
 香也がすらすらとそうしゃべると、その場にいた先生たちが困惑した顔でお互いの顔を見合わせる。
「……んんー……そうだなあー……」
 誰もなにも言い出さなかったので、それまで黙ってやりとりを見守っていた一年の学年主任である嵯峨野先生が、重々しい口調で言った。
「……狩野は、どうせ下校時刻ギリギリまで美術室で粘るんだろう?
 どうです、先生方? この子らになにか聞きたいことがでてきたら、また後ででも後日ででも呼び出す、というのは?」

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髪長姫は最後に笑う。第五章(51)

第五章 「友と敵」(51)

 三人のことについて茅とゆっくり話し合いたかったが、ランニング中におしゃべりをした分、帰宅したのもいつもより遅くなり、あわててシャワーと朝食、身支度を整えて外に飛び出す。
 結局、いつも一緒に登校する面子の中では一番遅くなり、狩野家の前にたむろしていつもより賑やか過ぎるほどに騒いでいた。騒ぎの中心は珍しく香也のようだったが、詳しい話しの内容までは聞き取れなかった。
「……そろそろ学校に向かわないと、遅くなるぞー」
 と荒野が注意をすると、ぞろぞろと全員が動き出す。
 その場にいた全員は、例の三人娘に見送られて登校した。

 途中で、もはやお馴染みとなった玉木珠美がにこやかに合流し、岩崎先生が自動車教習所に通い始めた、とか、学校関係者の他愛もない噂話を披露しはじめる。すっかり顔なじみなった通り道のご近所の人たちや、同じ学校に通う生徒たちと挨拶を交わし合いながら、歩いていく。
『……いつもの、登校風景……だよな……』
 この町に来てから三月ほど、学校に通うようになってからは、まだ半月もたってない。にもかかわらず、荒野は、こうした「いつもの光景」の中にいる自分、というものを、ごく自然なものだと思いはじめている。
 つい一年前……いや、半年前までの自分に……日本の田舎町で、こんな平和な生活を営んでいる自分自身が、想像できただろうか?
『……そういや、そのころ……おれ、なにやっていたっけ?』
 一歩間違えれば途端に転落する……危ない綱渡りをやっていたことは確かだが……詳細となると、もはや記憶はおぼろげである。ミッション一つ一つの記憶自体は鮮明するぎるほどだが……頻繁にあちこちに移動していたため、日付の感覚が、ひどくあやふやだった。
『……あの頃は、刹那刹那の時間に生きていたんだな……』
 と、改めて、思う。
 長く一つ所にいること自体、荒野にとっては数年ぶりなのだが、加えて、ここ日本には、はっきりとした四季がある。着いたばかりの頃は少し肌寒いくらいだったが、今では、一歩外に出れば肌を刺すような寒気にさらされる。これから二月にかけてが、この辺で一番寒さが厳しくなる時期だと、聞いていた。
『……こんなことを気にすることができるのも……』
 一カ所で、継続して生活しているからだった。
 こういう「普通の生活」を、荒野はできるだけ長びかせたかった。
『……そのためにも……』
 あの三人のこと、はっきりしなくてはな、と、荒野は思う。

 その日の昼休み、荒野は屋上への出入り口前の踊り場に上がり、携帯電話を取り出す。どんずまりで袋小路になっていこの場所には、滅多に人が上がってこない。仮に上がってくる者がいたとしても、荒野なら、かなり早い時期に気配を察知することができた。
 荒野はまず、涼治の番号にかける。昨日、こちらから通話を切ってそのままにしていたので、涼治からも改めて情報を収集する必要があった。
 荒野はしつこく食い下がり、あの手この手で揺さぶりをかけて涼治から三人の情報を引き出そうとしてみたが、その手の交渉に関しては年季の入った涼治のほうが荒野よりも一枚も二枚も上手であり、三人を育てたとかう「じっちゃん」の正体とか、何故涼治があの三人の住居などを手配しているのか、など、荒野が当然疑問に思うことについては、のらりくらりと回答を回避し続けた。
 肝心の情報をなかなか開示しようとしない涼治に半ばキレかかった荒野が、
「……じゃあ、あの三人はおれたちとは無関係だから、なにやっても放っておいて良いんだな!」
 と凄むと、隣りの家に住み、今度の春から同じ学校に通うと決まっているらしい三人が何かしらしでかせば、荒野や茅にとばっちりが波及する、ということを見越した上で、
『……そのほうがお前に都合が良ければ、放っておくのもよかろう……』
 などと空とぼけた返答をする。
 荒野が、三人を放置できるわけだがない……と、踏んだ上で、そうシラを切るのである。
『……じじいはあくまでおれ自身に判断させるつもりか……』
 そう見て取った荒野は、別れの挨拶もそこそこに涼治との通話を切った。
『……多分、おれがどう動くのか、見極めたいのだろう……』
 と、荒野は思った。
 以前から荒野は、この茅との同居生活をはじめてからこっち、一連のことは、荒野のことを試すための仕掛けではないのか、と、疑っている。

『……となると、あとは……』
 三人についての情報を収集できそうな先は、一時期三人を預かっていたという、野呂良太の所しかない。野呂良太の連絡先は、年末に名刺を貰った時に携帯に記憶させておいた。
 さっそくその番号にかけてみたが、野呂の電話は「圏外」にでていて繋がらなかった。
『……今度は……いったい、どこで仕事をしているんだ、あの人……』
 昨日、三人をここまで送ってきたばかり、という話しなのに……。
 忙しない人だ、と、荒野は思った。

 気づけば、涼治との通話が思ったよりも長引いたため、すでに予鈴が鳴る時間となっていた。荒野は携帯の電源を切り、午後の授業を受けるために教室へと向かう。

 放課後、荒野は保健室に向かった。保健室には、三島百合香がいる筈で、今度の日曜日に、三人の分の健康診断を頼んでおく必要があった。この日はたまたま茅の定期検診の日でもあったので、どうせついで、ではあるのだが、機材の手配などの都合もあるため、早めに連絡しておく必要があった。
 ノックをして保健室に入ると、三島百合香とシルヴィ・姉崎がなにらやけばけばしい色彩が印字されたチラシのような紙切れを手にして熱心に読み込んでいた。
 荒野が中に入っていくと、三島は、
「おう。荒野。ちょうどいいところに来たな!」
 と、持っていた紙を荒野に見せた。
「ここに書いてあること、どこまで本当だ? お前ならわかるだろ? ン?」

 三島とシルヴィの持っていた紙には、けばけばしい色彩で目元に細い黒線の入った香也と楓の写真がプリントされており、その周囲に、どでかいゴシック体で、
「一年のKK君とMKさんに三人の隠し子!」
 とあり、その最後の「!」の文字の十分の一くらいの小さな字で、
「か?」
 とかいう小さな文字が、申し訳程度に添えられていた。
 下の方に、ピースサインをして笑っている例の三人娘の顔写真も、黒目線入りで掲載されていた。

「……いや、玉木のヤツがな、この間の壁新聞、教師に撤収させられたもんで、今度は取り上げられない号外だって、これ、学校中に景気よくばらまいているんだが……」

 みなまで聞かず、荒野は保健室を飛び出していった。
 楓と才賀の暴走が懸念されたし……二人が暴走しはじめれば、抑えきれるのは荒野くらいしかいないのであった。
『……玉木のヤツ……』
 あいつ、命が惜しくないんだろうか……と、荒野は思った。
 いっそのこと……このまま、かなり危ないところまで、楓と才賀を止めないで置こうかなぁー、とも……。
『……玉木は、一度あの二人の怖さを、身を持って知った方がいいかも知れない……』
 そう思ってしまう、荒野だった。

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彼女はくノ一! 第五話 (9)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(9)

 狩野香也の場合、「学校で待っているいつもの日常」というやつは、ようするに「授業を受けて放課後まで無事にやり過ごし、下校時刻ギリギリまで部活をやって帰宅する」ということなのだが、この日は残念なことに「大過なく」とはいかなかった。

「……さて、今日は、昨日から狩野君の家に越してきた三人の少女について、狩野家の関係者にお尋ねしてみたいと思いまーす……」
 また、昼休みに玉木珠美が有働勇作を伴って、香也たちの教室に訪れたのだ。
「……んー……」
 玉木にマイクを突きつけられた香也は、唸った。
 それから急にはっとした表情になって、
「……楓ちゃん! 茅ちゃんに携帯、使わせないで!」
 と叫ぶ。
 この間みたいに才賀孫子までこの教室に召還されたら、それこそ目も当てられない……。
「……はっ!」
 楓は音もなく茅の席まで移動すると、今まさに茅が取り出した携帯を、すばやく取り上げた。楓にしてみても、孫子がちょくちょくこの教室にくる習慣ができてしまうのは、できれば避けたいのであった。
 茅は、いきなり自分の手から携帯が消失したことで、目をぱちくりさている。しばらくして楓を見上げたが、特に不満そうな様子でもなかった。……もっとも、基本的にポーカーフェイスである茅の表情は、かなり読みにくいので、本当に不満に思っているかどうかは、なかなか判断がつけにくい所なのだが……。
「ねー、ねー……」
 不審顔のクラスメイトを代表して、柏あんなが香也と玉木のほうに近寄ってきた。
「……その、狩野君の家に越してきた三人の少女について……」
「君の聞きたいことは、わかぁーる!」
 玉木はマイクに向かって何故か拳を効かせた口調でそういって、制服の胸ポケットから葉書大の紙の束を取り出し、景気良くあたりにばら撒いた。
「このプリントアウトを見よ!
 この、おめめの大きな子がガク、眠そうな垂れ目がノリ、吊り目がテンちゃんだー!
 この三人の女の子が、昨日から突然、狩野家に住むことになったのだねー!」
 玉木がばらまいたデジカメのプリントアウト用紙を手に取り、お互いに見せあっていた香也のクラスメイトたちが、一斉に「おぉおおおおおぉー!」とどよめく。
『……い、いつの間に……』
 プリントアウトの中の三人は、カメラに向かってにぱーっと笑いながらピースサインなど送っていた。たぶん、玉木は公然と三人を撮影したのだろう。
 食事と風呂の時を除いてプレハブに籠もっていた香也は、玉木がこのような撮影をしていたことにも気づかなかった。
「……そこで、だ、諸君!
 我が放送部としては、二年の才賀孫子さん、一年の松島楓さんという二大美少女に加え、さらに三人のろりっこが参入した狩野家の人々にその心境を問いただしてみることしたぁー!」
 再び、玉木は香也にマイクを突きつける。
 今や、香也のクラスメイトたちは香也と玉木を取り囲むようにして人垣を作っている。
「……んー……」
 と唸りながら、香也は、めぐるましく頭を働かせている。
 どういえば、この場をうまくやり過ごすことができるのか、と……。
「……かわいい子たちだとは思うけど、まだまだ子供だし……最初は全員男の子かと思ってたくらいで……」
 実際、香也は、三人に対し、特に思うとところはない。
 昨夜の風呂場ので騒動みたいなのは、できれば今後は勘弁していただきたいところだが……。
 香也の返答が面白くなく、なおかつ、どうやらそれが香也の本音であるらしい、と、判断した玉木は、人混みをかき分けて今度は楓のほうにマイクを突きつけた。
「……松島さん! 今後の抱負などをぉ!」
「……ほ、ほぉふ……ですかぁ?」
 不意にカメラと有働が構えるビデオカメラを突きつけられた楓は、覿面に狼狽した。
「……狩野君の周囲に突如現れた新たな美少女! しかも三人!
 この事態に関して、狩野家の先住人として思うところを訥々と吐き出したまえ!」
 あくまでハイテンションかつアグレッシブに詰め寄る玉木に、楓はさらにたじたじとなった。
「……お、思うところっていうか……子供の世話は、前に居たところで慣れてますしぃ……」
 以前いた養成所では後輩たちの世話を率先して焼いていた楓であった。
『……あー……だから、か……』
 そばで聞いていた香也は、なんとなく納得した。
 昨日、風呂場で……どうも、楓の叱り方が、手慣れていると思った……。
「……子供? 本当に彼女たちのこと、子供としか思っていませんか?」
「……子供、でしたよねー……香也様……」
 なんでそこでこっちに話しを振るのか、と、香也はその場から一目散に逃げ出したくなった……。ぎっしりクラスメイトたちが香也の回りを取り囲んでいたため、現実に逃げ出すことはまず不可能だったが……。
「……昨日、一緒にお風呂に入った時、どう思いました?」
 楓が無邪気にそう追い打ちをかけてきて、一瞬にして香也の顔から血の気が引いた。
「……なにぃー!」
「風呂だと! 一緒に風呂だと! この可愛い子たちと風呂だと!」
「はーれむだよ! ロリロリハーレムだよ!」
「それどこのエロゲですか!」
「てめえこのかのうおまえたった今から全クラスの男子の敵に回したからなそう思えいますぐそう思え……」
 ……などなど。
 香也や楓がなんらかの返事をする前に、クラス中のそこここから、怒号とも悲鳴ともつかない叫び声が上がる。
 男子生徒たちは嫉妬混じりの不満の声を、女生徒は主に「やーねー」とか「不潔」とかいう軽蔑の声とまなざしを香也に送る。
『……あ。あ。あ……』
 香也は急速に沸騰した周囲の反応を目の当たりにし、がくがく震えながら、落ち着きなく、あたりを見回した。
「……狩野君……」
 さも同情したような表情を作って、柏あんなが香也の肩に手をおいて、囁いた。
「……強く、生きるのよ……。
 ……ロリコンは、病気だと思うけど……」
 なにげに追い打ちをかけていた。

 一言でクラス中を騒がせた張本人である楓は、自分の発言のなにがこういう反応を引き起こしたのか理解できず、香也と同じように落ちつきなくあたりを見回していた。
 ……こちらはこちらで、天然だった……。

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髪長姫は最後に笑う。第五章(50)

第五章 「友と敵」(50)

 三人の少女たちと荒野が会話を続けている間、茅は黙っていた。好きで会話に参加していなかったわけではない。走っている最中に気楽におしゃべりできるほどのスタミナを、茅はまだ持っていなかった。
「……そういや、お前ら、夕べは向こうの家の人に迷惑かけるような事、しでかさなかったろうな?」
「や、やだなぁ……」
「そ、そんなこと、するわけないじゃないか……」
「そうそう。お、お世話になっているんだから……」
「……お前ら……声がうわずってるぞ……」
 そんな茅の横に併走しながら、荒野と三人は気軽に会話を続けている。
『……むぅ……』
 茅は、不機嫌になった。
 長距離走のペースとしては、現在の速度が、茅にとっての最速に近い。
 当然、会話はおろか、呼吸を乱す余裕さえない有様で……その速度に併走しながら、荒野と三人の少女たちは苦もなく通常通りの会話を続けている……。
 フィジカルな能力において、格差があるのは承知していたが……こうもさりげなくその差を見せつけられると、やはり、面白くないのだった……。

 そうこうするうちに、荒野と茅、それに三人は町中を抜け、河川敷へと到着した。
 後は、川沿いにまっすぐ走るコースになる。
「……お前らなぁ……まあ、過ぎた事だし、ほじくり返しはしないけど……あの家の人たちはいい人ばかりなんだから、本当に、あまり手をかけさせるようなことするなよ……。
 真理さんや羽生さんのいうこと、ちゃんと聞くんだぞ……」
「「「うん!」」」
「うん、じゃない。はい、だ。
 お前ら、四月からは学校に入るって話しだろ? そういうところも見られるからな。失態を見せたら、苦労してお前らを育ててくれたじっちゃんの名折れになるぞ……」
 荒野がそういうと、三人は、「おう!」とか「まかせて!」などとバラバラに返答する。
「返事は、『はい』」
 荒野が念を押すと、ようやく、
「「「はいっ!」」」
 と、声を揃えた。
『……素直で元気なのは、いいけど……』
 荒野は、内心ではかなり心配している。
『……いろいろと、先行き不安な連中だ……』
「……あと、三島先生って人に今度時間作ってもらうから、簡単な健康診断くらいしてもらえ……」
 元気すぎる三人が健康を害している、とも、見えなかったが……念のため、ということもある。この三人の自出や、三人を育てたという「じっちゃん」の正体は不明だが……連中が狩野家にいる、ということは、確実に、なんらかの形でじじいも関与しているわけなので……と、すれば、結局は荒野のほうに管理責任が結果として押しつけられるのだろう……。
 仮にそうでなくとも……三人が暴れたり尻尾をだしたりした場合、荒野たちも少なからずダメージを受けることは確実であるわけで……だから、荒野は、三人が取り返しのつかないへまをしないことを、切実に願った。
「……三島先生?」
「のらさんあたりから聞いてないか?
 お前らより小さいくらいの人だが、歴としたお医者さんだ。おれたちの助言役でも、ある」
「……えー……」
「医者なら、こっちにもちゃんといるもんねー」
「ノリも、ちゃんとしたお医者だよ?
 傷口を消毒して縫う程度のことは、ガクでもテンできるけど……」
「それぐらい、おれにもできる。
 そういう応急処置とかでなくてだな、正規の教育を受けたお医者さんだ、っていうことだ。ナリと言動は……だが、いざというときには……んー……た、た、た……頼りになったこと、あったかな……あの人……」
 説明しているうちに、だんだんと自信がなくなってくる荒野だった。
 咳払い一つ。
「とにかく! お前らの身体データ、こっちも欲しいし、できれば週末あたり、時間空けておいて欲しい……」
「……えー……今度の週末って……」
「夕べの晩御飯の時、眼鏡のおねーさんが歓迎会してくれるって……」
「ばーべきゅー……食べたことないのに……」
「だから、それは土曜日のことだろ!」
 荒野は、効率の悪い三人との会話に苛立ち始めている。
「その次の、日曜日でいい!」
「うん。じゃあ、今度の日曜日、予約ね」
「けんこーしんだん、けんこーしんだん……」
 ここまで会話が進んだ所で、いつもなら折り返し地点にしている橋のたどり着いた。いつもなら、ここで五分ほど小休止をとる。
 茅は、いつものように足を止めた。肩で、息をしている。
「……ねえ……」
 茅は、呼吸を整えながら、三人の新参者に向かって尋ねた。
「……この中に、見たことや聞いたこと、全部覚えている子、いる?」
 荒野は、息を呑んだ。
 いきなり、核心をついてくるとは……。
 もし、そういう奴がいるとすれば……それは、茅と同じく、六主家のうち、佐久間の因子を色濃く受け継いでいる、ということになるわけだが……。
「……それ……テン……」
「テン、テン!」
 ガクとノリが、囃し立てるようにして、答えた。
 当のテンは、恥ずかしそうにもじもじしながら仲間の背中に隠れようとしている。
 ……どうやら、自分たちの特性を、隠そうという気はないらしい。
 それに、三人の態度をみるかぎり……まんざら、嘘でもなさそうだった……。
「……じゃあ、三人のなかで飛び抜けて力が強いのとか、速いのとかはいるのか?」
 念のため、荒野は尋ねてみる。
 強大な筋力を持っていれば二宮、反射神経や足が速いのは野呂……の、因子を強く受け継いでいる公算が高い。だからどうだ……ということはないのだが……今後のこともあるし、三人の特性に対する知識は、多く持っているのにこしたことはない。
「はいはーい! 一番の力持ちは、ボクー!」
 ガクが、元気よく手を挙げた。
「……動きが速いのは、ボク……」
 ノリの返事はガクよりよほど静かだったが、その平静さがかえってノリの自信のほどを裏付けているようにも、思えるのだった。
『……昨日の戦い方だと、それぞれの特性を生かし切っているようにも、見えなかったけどな……』
 それをいったら、マンドゴドラでの邂逅の仕方自体、かなり間が抜けている……。

 この少女たちを育てた「じっちゃん」とやらは、一族の基本的な技は伝授しても、彼女たちを「実戦要員」としては、教育しなかった……の、だろう……。

 そういえば……茅も、そうなのだ。
「一族の一員」としては、教育されていない……。

 荒野は、そこになにかひっかかるものを感じたが、その時点では、それが具体的な思いつきにまで育つことはなかった。
『……後で、茅にでも話して、意見をきいてみよう……』
 荒野は、そのひっかかりを、とりあえず「保留」することにした。

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彼女はくノ一! 第五話 (8)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(8)

 十時半を過ぎると、誰からともなく「今日はここまでに……」といいだし、香也をさりげなく止める。一度集中しはじめると、時間経過の感覚が鈍くなる香也は、二人が来るまではこういう時もついつい体力の続く限り、明け方までキャンバスに向かっていることがあり、そのような傾向も以前の不登校の原因にもなっていたのだが、最近では、良くも悪くかなり規則正しい生活を強いられている。大体決まった時間に寝るし、決まった時間に起きる。
『……いや、多分……良いこと……ではあるんだろうけど……』
 漠然と香也はそんなことを、思う。
 例えば、樋口明日樹がこの家に来るようになってからも、「ともかくも、真面目に学校に通うようになった」というそれなりの変化はあったわけだが……明日樹は、楓と孫子とは違って同居しているわけではないし、それ以上に「絵を描く」という香也の行為に甘い部分もあり、で、二人ほど有無をいわせず香也に干渉してくることはなかった。

 母屋に帰ると玉木珠美はすでに帰宅した後で、居間に残っていた真理の話しによると、今日到着した三人は疲れているのか早めに就寝した、ということだった。玉木の方の作業は、すでに峠を越えているらしく、この家に通い始めた頃ほど遅くまでは残っていなかった。羽生譲のほうの作業は、今回は動画の量が多いとかで、なかなか苦戦している様子だった。今夜もまだまだ佳境、のようで、羽生の部屋には灯りがともり、部屋の前を通りかかると、マシンのハードディスクの作動音とか冷却ファンの物音、マウスのクリック音が、かすかに聞こえてきた。
 三人は大きめの部屋をあてがわれ、そこで一緒に寝起きすることになったらしい。三人とは別便で送られてきた荷物は当座の着替えと人数分の布団くらいの、だったらしい……。
 楓と孫子と顔を見合わせ、誰からともなく「様子を見に行こう」ということになり、三人の部屋にそっと忍び込む。
 三人は、掛け布団を跳ね上げたかなり寝相の悪い恰好で、思い思いの姿勢で熟睡していた。苦労して手足を布団の中に押し込み、布団をかけ直してその部屋を出る。

 一夜明けると、いつも通りの朝が、一日が始まる。
 平日には学校があり、香也も早めに起き出して支度をしなければ、またあの二人にたたき起こされる。いつぞやのように、二人に朝の生理現象を観測されるのも決まり悪いので、最近では香也は、目覚ましを頼りに自発的に起きるようになっている。
 パジャマのまま洗面所で顔を洗い、制服に着替えて居間にでると、すでに他の住人たちは勢揃いして、全員で声をあわせて「いただきます」と唱和し、朝の食事を摂る。
 世間話をしながらしばらく食事をしたところで、何故か玄関のほうから昨日の三人組がどやどやと帰ってきて、真理が慌てて三人の分の茶碗と箸を用意する。
 ほかの住人と合流して元気よくご飯をかき込みながら、三人は、外で軽い運動をしてきた、といった後、
「昨日の、おとなりのかのうこうやとかやちゃんも走ってたー!」
 と報告してくれた。
 二人が朝、スポーツウェアに身を包んで走っている姿は、バイト帰りの羽生譲が何度か目撃しているところで、特に感銘を受ける、という情報でもなかった。

 朝食を済ませた後、楓と孫子と一緒に玄関をでると、飯島舞花と栗田精一の二人がすでに立っていて、鉢合わせになった。少し離れた所に、樋口明日樹と大樹兄弟の姿も見える。
 玄関先まで香也たちを見送りに来た三人組が、舞花たちに「おはよー!」と声を揃えて元気よく挨拶をした。香也たちと同じ制服に身を包んでいるところから、香也たちの知り合いか友人だと見当をつけたのだろう。
「……なに、この子たち……ひょっとして、また新しい……」
 舞花が三人に「おはよー!」と挨拶を返してから、香也に尋ねる。
「……んー……その、まさか……また、住人が、増えた……」
「……次から次へと……よくも、まあ……」
 舞花も、困ったような顔をして、笑う。
「……ええと、三人かぁ……
 三人が三人とも女の子だったら……また一歩、家庭内ハーレムの布陣が完璧なものになったなぁ……」
 舞花はもちろん、軽い冗談のつもりでそういった。
 しかし、舞花がそういった途端、楓と孫子の顔が軽くひきつり、香也は顔を伏せてくらい表情を作る。
「……え? え? え? そうなの? 本当にみんな、女の子なの? いや、でも、みんな小さな子だし……」
 香也、楓、孫子の表情の変化に気づいた舞花は、慌てて取り繕うように、言葉を重ねた。
「ちいさいっていうなー!」
「四月からは同じ学校に通うんだぞー!」
「昨日はおにいちゃんと一緒にお風呂入ったもんねー!」
 舞花の言葉に反応して、三人が玄関口からわらわら出てきて、香也に抱きつきながらそういった。
 ちょうどその頃、香也たちのすぐそばに到着した樋口明日樹の手から、どさり、と、鞄が落ちる。
 明日樹の顔は、蒼白だった。
「……ええと……今度の四月からうちの学校に通う、っていうことは……楓ちゃんや茅ちゃんと、一歳違い?」
 舞花は、相変わらず困ったような愛想笑いを浮かべながら、そんなことをいった。
「……いや、たしかに、外見的には格差がある年頃だけど……こいつは失礼しました!」
 舞花は素直に、深々と三人に向かって頭を下げた。
 三人の反応は、舞花に向かって「えっへん!」と得意そおうに胸を張ったり、下をだしてあかんべをしたりと、様々だった。
「……なにぃ! 今度の入居者は、妹系ろりっこ! しかも三人も!」
 ようやく事態を理解した大樹が、叫ぶ。
「それどこのエロゲですか!」
 明日樹は、ほぼ反射的に大樹の頭を後ろからはたいている。
『……実態は、そんなにいいもんじゃないんだけど……』
 昨夜の風呂場での騒動を思い浮かべながら、香也はそんなことを思う。

 仮に。
 仮に、香也が、同居者の少女たちのうち、誰か一人を特別扱いし始めたら……。
『……まかり間違うと、血を見るようなことになるんじゃあ……』
 香也自身が傷つくよりも、自分のために誰かが、彼女たちがいがみ合うような事があり得る……という想像は、香也の気分をひどく暗いものにした……。
『……こういうの、苦手なんだけどなぁ……』
 などと香也が思っていると、マンションの方から加納兄弟がこちらのほうに来て、
「……そろそろ学校に向かわないと、遅くなるぞー」
 と言ってくれた。
 それを機に、学生たちはぞろぞろと学校に向かう。
 学校では、いつもの日常が待っている筈だった。

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髪長姫は最後に笑う。第五章(49)

第五章 「友と敵」(49)

「鳥でしょー。魚でしょー。畑も作ったし、田んぼも作った。
 みんなでおいしいもの、いーぱいつくったし、摂ってきた……」
 荒野たちの不審そうな表情にも気づかない風で、ガクは自慢そうに続けた。
「……田んぼや畑、それに魚はともかく……鳥って……みんなでハンティングでもやったのか?」
 羽生譲が、鉄砲を構えるジェスチャーを交えながら尋ねた。
「ううん。
 そういう鉄砲じゃなくてね、こう」
 テンがにぱーと笑いながら、羽生の言葉を訂正する。
 いいながらテンは、なにかを投げる動作をしていた。
「礫投げとか印字打ちっていってね……じっちゃんは、古来からある由緒正しい技で、本来なら鳥獣を相手に使うもではないっていっていたけど……」
「……みんなそこそこいけるけど、一番巧かったのは、ノリだな……。
 ノリは、目が遠いから、一番遠くまでねらえるんだ……その代わり、手元とか近くはぼやけるらしいけど……」
 ガクはテンの言葉に補足説明をした。
「……ああ……。
 遠視、かぁ……」
 それ以前の、突拍子もない部分はスルーして、玉木はそんなところで反応した。そろそろ、三人娘の突拍子もない設定に思考が麻痺しはじめているのかも知れない。
「……じゃあ、明日あたり、おねーさんと一緒に、眼鏡屋さん行こうか?」
 玉木は、ノリのほうに顔を近づけ、優しい口調でいった。
「……近くのもんも、すかっとくっきり見えるようになるぞ……」
 玉木自身、眼鏡をかけているし、多分、自宅が商店街にある関係で、なんとなく自分が懇意にしている店に客引きしてしまうのだろう。
 玉木にそういわれたノリはきょときょととあたり、特に、仲間であるテンとガクの顔を見回す。テンとガクは、「いいんじゃないか?」というように頷いた。
 それを確認してから、ようやくノリは「う、うん」と玉木に返事をする。
「……そっかぁ……じゃあ、明日、学校に引けたらこっちの家に寄るから……」
 と玉木はいいかけ、それからなにかに気づいたかのようにハッとした表情になた。
「……あ。そういや、学校!
 君たち、こっちでの学校はどうすんの?」
 三人の娘たちは意味ありげな表情を浮かべ、お互いの顔を見合わせた。
 そして、同時に立ち上がって胸を張り、
「「「……ボクら、春から、新入生やります!」」」
 と、宣言した。

 三人が、この春から、荒野たちが通う学校の新入生として入学する……ということを周囲の人間が理解するまでに、またしばらくの質疑応答を必要とした。

 三人について……理解できたか、それとも納得できたか、ということはとりあえず置いておいて……一通りの質問をし終えると、食後のお茶会はお開きとなり、香也はプレハブへ、羽生と玉木は羽生の部屋へ、荒野と茅は茶器を抱えて自分たちのマンションへと、それぞれに散っていった。
 三人は居間に残り、テレビのリモコンの争奪戦を賑やかに開始した。

 マンションに戻り、茶器を洗って片づけると、荒野は茅に三人の印象と心証について問いかけてみた。
「邪気は、ない。害意も、たぶん、ないの」
 茅の答えは明瞭だった。
「でも、潜在的なチカラは、大きい。とても、大きい……」
「……ようするに、敵には回すな、ってことか……」
 荒野は軽くため息をついた。
 能力がどうこう以前に……先ほどの風呂場の一件を感挙げても分かるとおり……あの連中、お隣りの家に、少なからず波紋を呼び起こす存在にはなるだろう……。
「……に、しても……」
 もちろん、どんな状況下に於いても、敵は少なく、味方は多い方がいいわけで……『敵に回すな』、というのは分かるのだが……。
 いずれにに、せよ……。
「……やっかい……だよなぁ……」
 ソファに体を投げ出した荒野の頭を、「いいこ、いいこ」といいながら、茅が撫で回していた。

 翌朝、いつもの時間に起き、軽く室内ストレッチを行ってから、茅と外に出てランニングをはじめると、お隣りの狩野家からあの三人が飛び出てきて、茅と荒野に併走しはじめた。茅と荒野のようなスポーツウェアではなく、昨日と同じ半ズボンにハイソックス、パーカー姿だった。
「お前ら、ひょっとして、手持ちの服、少ないのか?」
「いや、それなりにあることはあるんだけど……そういう服は、ないなぁ……」
 三人を代表して、ガクが荒野の服を指さしながら、答えた。
「昨日、真理さんに預けたカードで、適当に見繕って貰え。
 どのみち服は必要になるし、真理さん、女の子の服、見立てるの好きだし……」
「うん。相談してみる」
 三人は、意外なほど素直に頷いた。
「……それからな……」
 早朝の朝は、人通りが限られる。
 いい機会だから……と、荒野は三人に話しかけてみた。
「……これは、お願いなんだが……おれたちは、ここで、平和に暮らしたいんだ……。
 だから、お前らにも、できるだけ大人しく……目立たないようにして欲しいんだけど……」
「ああ……それそれ。
 ここに来る時、のらさんに、しつこいくらいに念を押された……」
「……のらさん?
 ひょっとして、野呂良太のことか?」
 速度を緩めず、荒野は目を見開いた。
 意外なところで、意外な名前が出てくる……。
「フルネームは……そんなん、いってたっけかな?」
 荒野とやりとりをしていたガクが首を捻ると、
「野呂良太、で、正解だよぉ、のらさんの本名……」
 ガクの脇を肘で小突きながら、ノリが小声で補足する。
「うん。じゃあ、その、のろりょうたとかのらとかいう人が、一月かけてボクたちにこっちの常識とかを教えてくれたから……その辺、大丈夫だと思うよ……」
 そう聞いて、荒野は突然、不安になった。
 野呂良太は……師弟の教育とか、そうしたデリケートな仕事にはまるで向いていないのだった……。
 それに、昨日のマンドゴドラの一件とかのことも、ある。
『……露骨に手を抜いたな……のらさん……』
 荒野は、内心でひそかに確信した。

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彼女はくノ一! 第五話 (7)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(7)

 楓は、その場で正座して背筋をしゃんと伸ばした香也と三人娘を仁王立ちになって睥睨した。
 その顔が、迫力があって、怖い。
「……な、に、を、し、て、い、た、で、す、かぁー」
 一音節づつ区切るようにして、再度同じ質問を四人にした。
「……ななな、なに、って……」
 香也の額に、この日何度目かの冷や汗が流れる。
「……ななな、なにも!」
『……なんでぼくが、こんなにも怯えなくてはならないのだろう……』
 とか思いながら、ようやく、それだけ言うことが出来た。
「……なにも!」
「……なにも!」
「……なにも!」
 香也がなんとか返事をしたことで、三人娘も呪縛が解けたかのように一斉に唱和しはじめる。
 楓は、四人の顔を時間をかけてジロジロと胡散臭そうに見回してから、
「ほ、ん、と、う、に……なにも、なかったですね?」
 と、もう一度念を押す。
 香也と三人娘は、その場でブンブンブンと首を縦に振った。
 不意に、楓が動いた。
 ぶん、と凄い風切り音がして、楓が持っていたおたまを香也たちのほうに突きつける。
「……じゃあ、もう一度暖まって、お風呂から出るのです!
 もうすぐ晩ご飯ができるのです!」
 そういうと、楓はきびすを返して足音荒く風呂場から出て行った。
 楓が風呂場の戸を後ろ手に閉め、脱衣所の戸も閉めて、足音が台所のほうに去っていくと……風呂場に残された四人は、タイミングを計ったかのように、一斉に盛大な吐息を突いた。
 なんとなく全員で顔を見合わせ、ひきつった顔をしながら、おとなしく黙々と湯船に入る。
 その後もなにかえっちなことをしようとする気力は、四人には残されていなかったので、ごく普通に暖まってごく普通に風呂から上がった。
 一度ヒートアップしかけたところに、急激に冷や水を浴びせかけられたような気分だった。
 ……実際に冷水を浴びせかけられたのは、加納荒野一人だったわけだが……。

 この出来事以降、『楓は、怒らせると、怖い』……という教訓と認識を、四人は無言のままに共有することになる。

 その後の夕食の時には部活で遅く照っていた才賀孫子も帰ってきていて、おまけに普段は留守がちな二宮浩司までもが珍しく着流し姿で同席していた。これに狩野真理、羽生譲、玉木珠美、再度着替えてきた加納荒野、メイド服の加納茅、さらに今日から同居するという三人の娘と香也までが加わるわけで、これといった行事もない平日の夜にしては大人数での食事となった。
 香也は、昨年末からこっち、急に同居人が増えることに慣れてきている自分が怖かった。もっとも、三人娘の件については、真理が加納涼治から事前に相談を受けていたようだが。

 夕食時の話題は自然に今日から同居することになった三人のことになる。玉木や羽生などが主な質問役になって、様々なことを聞くのだが、一向に要領を得ない部分も多かった。
 まず、「どこかから来たのか?」という質問に対して、彼女らは「島」としか答えない。どこにある、なんという名称の島なのか、彼女たち自身も知らないようだった。
 好奇心の強い玉木珠美などは、その他諸々のことを根掘り葉掘り聞き出そうとするのだが、その度にどことなくピントのはずれた回答がかえってきて、質問した玉木のほうが釈然としない顔をして別の話題に移す、ということが繰り返された。
 態度などを観察するかぎり、答える側の三人娘のほうには、誤魔化そうとかいう気持ちはさらさらないようだが……その、正直な答え自体がかなり非常識な者だったので、玉木にしてみればどこまで真面目に受けとっていいのか判断に困っているようだった。
 一方、香也を初めとする狩野家の人々は、非常識な自出の人々の出現に慣れはじめていたこともあり、特に気にしすぎるということもなかった。
 なにしろ、くノ一が空から降ってきたり、謎のニンジャ集団の頭目の孫がお隣さんやっていたり、財閥のお嬢様が越してきたりするのが狩野家の日常なのである。いい加減、その辺のことには鈍感になってくる。
 なんとなく、
「……たいていのことは、アリ」
 という気分に。

 そのお隣りの加納兄弟、特に兄のほうの加納荒野は、三人娘を露骨に警戒しているようだった。しかも、警戒していることを、隠そうとしていない。
『……こんな小さな子たちが……一体なにをできるのだろう?』
 というのが香也の感覚だが、荒野のほうは、あえて三人に対してうち解けない様子を見せつけることで、三人を牽制しようとしているようだった。

 荒野に露骨に警戒されている方の三人は、一通りの質疑応答と夕食が終わると、居間のテレビに興味を示した。
 島にも、本土に来てからも、テレビ自体はあったけど、いろいろな理由で自由に見せては貰えなかったらしい。
 食器を片付ける頃になると、三人でテレビのリモコンを奪い合いしはじめた。
 それを尻目に、香也は庭に出てプレハブのほうに向かった。
『……また、ひときわ、うちが騒がしくなるな……』
 と思いながら。

 プレハブに入り、灯油ストーブのタンクに燃料を入れてから火をつけ、イーゼルに向かうと、自然に気持ちが落ちつく。
 習慣化した動作が、香也の心理的なスイッチを切り替えるのか、それまでの騒がしい日常から逃れて、香也は、目の前の画布に、完全に気持ちを集中させる。
 絵を描いているうちに、才賀孫子とか松島楓とかが、自然に出入りするようになっている。順番に風呂に入る都合もあったし、二人は二人でなにやら用事があるらしく、夜間に外に出ることがあるようだが……香也はあまり気にしていない。
 彼女たちに限って……夜間の外出も、さほど危険ではあるまい。
 彼女たちになにも用事がない時、香也はどちらか、あるいは二人同時に、一日一時間前後づつ学校の勉強を教えて貰う。この勉強会は、以前は居間などで行われていたが、最近では専らプレハブ内で、香也の作業の合間を縫うようにして行われるようになっている。
 二人とも、時間の都合がつくときはこうしてプレハブに来るようになっていたし……それ以上に、二人とも、香也の絵を一番に優先してくれていた。

 香也は、勉強は好きでも嫌いでもなく、単に興味が持てないので、二人にこうして教えられるようになるまでは、自宅でなにかを勉強する、ということは絶えてなかった。やってみると……勉強も、さして苦痛ということは、ない。積極的に、自発的に行おうとは、思わなかったが。

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髪長姫は最後に笑う。第五章(48)

第五章 「友と敵」(48)

 夕食が済むといつものように茅が人数分のお茶を丁寧にいれ、なんとなく三人を囲んだ座談となった。
「……へー……じゃあ、今まで島に住んでたんだ?」
「うん。島。名前は知らないけど、ここよりずっと温かいところ……」
「……温かい……じゃあ、南のほうなのかなあぁ……沖縄とか、小笠原とか……」
 質問を担当するのはだいたい好奇心旺盛な玉木珠美で、三人娘の誰かがその質問に適当に答えている。
「九州とか瀬戸内海あたりかも知れまませんわよ……。
 小さすぎて人が住まなくなった小さな島、あのあたりにありそうだし……」
「……あー。この間、テレビのサバイバルなんとかって番組で、そういう島、使ってたなぁ……たしかに、地元の人しか知らないような島、結構ありそうだ……」
 孫子や羽生も、後追いでチャチャを入れる。
『……日本……海に囲まれた、島国だもんなぁ……』
 荒野も、二人の意見に内心で同意する。
 一般の航路からも外れ、目立たない無人島は……それなりに、あるだろう。
『……茅は廃村、こいつらは無人島、か……』
「……なーなー。
 その島には君たちとそのじっちゃんって人しかいなかったわけだろ?
 そうすると、食べ物とか飲み物とか、不自由しなかった?
 誰かかが定期的に運んできてくれたん?」
 羽生譲が、当然でてくる質問をする。
「んー。水はねー、わき水が出てくるところがあって、飲むのとか、お料理に使うのはそれ使ってたー……。
 体洗うのは、結構海水とか雨水とか使ってたけど……。一年の半年くらいは、夕方になると雨が降ってきたしー……」
 ……スコール? すると……もっと南の方……ひょっとすると、日本ではない?
 周囲の大人たちがそんなことを考えながら顔を見合わせているのにも構わず、三人のうちの一人、テンという少女は、
「……これ、おいしいね!
 へー! これが紅茶っていうんだ! 話しには聞いていたけど、初めて飲んだ!」
 と続け、にんまりと笑顔になった。
 茅が無言のまま、ぺこり、と、一礼する。
「……お前ら、読み書きはできるのか?」
 おそるおそる、荒野が尋ねた。
「できるよ!」
 ノリが平坦な胸を張って答える。
「読み書きは日本語、英語、中国語! 中国語にいたっては四種類の方言も発音しわけることが可能。数学も物理も生物も医学も、それに、コンピュータだって、じっちゃんがちゃーんと教えてくれたもんね!
 じっちゃんが、本土の子たちよりもずっと頭がいいって褒めてくれたんだもんね! じっちゃん、すっごい物知りで、なんでも教えてくれたんだもんね!」
 涙目に、なっている。どうやら、彼女たちの「じっちゃん」の教育方針を貶された、と、受け取ったらしい。
「あー……」
 荒野は視線を宙にさまよわせた。
「別に、じっちゃんのことをどうこう、いうつもりではないんだ……。
 お前ら、学校には行っていなかっただろうから、どうしたのかなーって……」
「ちゃんと通ってたよ、学校! じっちゃんの学校!」
 ノリに続いてテンも、ムキになりはじめる。
「毎日毎日、平日はちゃんとみんなで学校にいってたもん!」
「……ほー……じゃあ、そのじっちゃんという人は、先生だったんかー……」
 羽生譲が、あまり納得していない表情で問い返す。
 テンやノリのいうことが信じられない、というより……その「じっちゃん」という人が、無人島で先生をやりながら孤児を引き取って何年も育てている……というのが……一体どういう状況なら、そういう事が起こりえるのか……にわかに想像できなかっただけだ。
「じっちゃんは、じっちゃんだよ! 学校にいるときは先生だけど!」
 ガクが当たり前のことを聞くな」という、もっともらしい顔をして羽生に答えた。
「じっちゃんが、じっちゃん以外の、何者だっていうだ?」
「……加納!」
 それまで黙ってやりとりを聞いていた孫子が、荒野のほうに顔を向け、小さく叫んだ。
「……おれに聞いても知らなねーぞ……。
 おれ、こいつらのことに関しては、なにも聞いていないんだ……」
 荒野は、悠然とお茶の味を楽しみながら、答える。
『じじい……またそぞろ、やっかいなのこっちに押しつけてきやがって……』
 半ば、自棄になっていた。
「……それで、食べ物のほうは、どうしていたの?」
 玉木が、話題を元の方向に戻す。
「やっぱり定期便かなにか、あったの?」
 そう考えるのが、普通だ。
 単なる育児……だけではなく、「学校の先生」まで兼任しながら、三人の子供をここまで育て上げる、というのは、並大抵のことではない。玉木自身、長女であり、年の離れた妹や弟の世話や遊び相手をすることが多かったから、なおさらそう思った。
「ううん。船って、ボクら、この間お迎えの船が来るまで見たことなかったんだ!」
 元気よく、ガクはそう答えた。
「あと、ボクらとじっちゃん以外の人間も!」
 ノリが、そうつけ加える。

 玉木の目が……点になった。

「つまり、ボクらは、ほぼ自給自足していたわけですねー」
 何故かニヤニヤ笑いながら、ノリは説明しはじめた。
「衣服や文房具、それに最低限の家電を動かす発電機のための燃料、とかだけは、どこからか届けられましたが……そういった荷物が届く場に、ボクらが居合わせたことはないんですよ……」
 そして、意味ありげに、荒野と茅の顔を交互にみやった。

『……こいつ……』
 そこで、荒野は悟った。
『茅の過去のこと……知っている……』
 その「じっちゃん」とやらが茅のことを教えたのか……それとも、「島」を出た後、何者かに教えられたのかは知らないが……。
 いずれにせよ、この少女たちが茅の経歴を知っているのだとすれば……自分たちの過去の境遇との類似にも、すでに気づいている……と、みなすべきだった。

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彼女はくノ一! 第五話 (6)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(6)

 香也ははじめて女性器を間近に見た。
 間近に……というよりは、文字通り、目と鼻の先、に、ガクのアソコが存在する。ガクが、うっすらと毛の生えた割れ目の上端を、香也の鼻の先に、優しく押しつける。
「……ここ……触ると……優しく擦ると……体が……ピクンとなるの……」
 香也の教えるかのように擦れた声で囁いて、ガクは、自分の言葉を証明するように、陰核を香也の鼻に擦りつける。
 少し、つんと小便の臭いがした。
 あっ、あっ、あっ……と、ガクは遠慮がちな喘ぎを漏らしながら、香也の頭を両手で固定して、自分の股間を香也の鼻先に擦りつける。
 左右から、ノリとテンとが至近距離でその接触ポイントを観察している。
 二人の鼻息が香也の頬にかかってきて、香也は、その熱さと早さから、息を詰め見ている二人も、相当に興奮していることを知った。もちろん、香也も、かなり興奮している。
 もともと免疫がない……どころか、若い異性の存在さえあまり意識したことのないガクは、この異常な状況と、自分の意志で腰を動かし快楽を貪っているという事実とで急速に昇り詰め、数分も待たずに、「ああっ!」と小さく叫んで、がっくりと全身の力を抜いた。
 香也の両隣で、ノリとテンも、同時に、「ほうぅ……」とため息をついた。
 頬が真っ赤に上気しているところを見ると、すっかりガクに感情移入して、興奮していたらしい。そのせいかどうか、香也の両腕にしがみつく力が、かなりゆるまっていた。
「……んー……でないと……みんな、のぼせちゃう……」
 いい機会だ、と、思った香也は、三人を刺激しないように、できるだけ穏当、かつ、平静な声をつくりながら、ゆっくりと拘束を解いて湯船の中で立ち上がった。
 すっかりピンク色に染まったこの場の空気を、出来れば、日常的な雰囲気へ押し戻そうとする。なにかの拍子にそういう気分になっても、別のきっかけがあれば、我に返ることもある……筈……。
 と、香也は今までの経験で判断する。
 このあたりの呼吸の見た方は、香也とて、だてに襲われ慣れているわけではないのであった……。
「……あ……う、うん……。
 そ、そうだね……」
 はっとした表情をして、真っ先に我に返ったのは、ノリという三人の中で一番小柄な少女だった。
 胸も、一番小さい……というより、ほとんど膨らんでいない……と、考えたところで、香也は、はっとして目を反らした。
『……いけない、いけない……』
 彼女たちのペースに呑まれては、いけない……と、香也は内心で自分自身を叱咤する。
『……今のは、一時的に盛り上がっちゃっただけだから……彼女たちだって、ほんの好奇心からちょっとハメを外しちゃっただけだろうし……』
 思えば……彼女たちくらいの年頃の時、香也も異性の羽生譲にいきなり風呂場に乱入されてドギマギした経験があるわけで……。
『そういうのは……後で笑ってすまされる程度に、しておかなくてはいけない……』
 幼少時の香也を羽生が大切に扱ったように、彼女たちのことも、香也は、大切に扱いたかった。
「……順番に、体……」
 洗おう……と、続けようとして、香也は絶句した。

 素早く浴槽の中から出てきた三人が、洗い場にいる香也の所に、一斉に躍りかかってきたからだ。
 香也は逃げようとしたが、逃げると勢い余った彼女たちが転ぶのではないか、という懸念がふと頭を掠め、動きが鈍くなったところに一気に抱きつかれ、よろけて、香也自身が転びそうになったところを、三人に支えられてなんとか床に腰を降ろした。
「凄いよ! 凄いよ! おにいちゃん! 今ね、全身にびびびっって来た!」
 目を輝かせて嬉しそうに報告するのは、正面から抱きついてきたガクである。先ほどとは別の意味で興奮している。顔が、香也の顔に接触しそうなほど近づいていることにも、気づいていないようだった。
「こんなに凄い気持ちいいの、初めて!」
 本気で、それも無邪気に、飛び跳ねんばかりに喜んでいた。
『……この子……』
 香也は思った。
『えっちなことがいけないとか、背徳感とか……そういう感覚……ない?』
 この時点で、香也は三人の生い立ちなどは聞かされていない。三人については、「涼治の紹介できた新しい住人」と、真理に簡単に説明されているだけであって……。
 それでも、この屈託の無さは……かなり、異常なんじゃないか?
『……こういうことを……こんなにあっけっらかんと……』
 まるで、昆虫採取にいって、一番大きなカブトムシをとったとか、テレビゲームで最高のスコアだしたかのような……そんな感じで目を輝かして、ガクという少女は、自分が感じた快楽を、とくとくと香也に説明している。
「次、ボク! ボクにもやるの! 気持ちよくなりたいの!」
 テンという少女も、香也におねだりする。
「……むふー……仲間外れは、いやなのです……」
 ノリという少女は、ぎゅっと香也の腕をかき抱いて、香也の顔に息を吹き付けるようにしてそんなことを言ったが……自分がしていることが媚態になっている……ということは、あまり意志しいていないようだった。
『……ああ……』
 香也は、唐突に理解した。
『……この子たちは……』
 まだ、性的な知識が、完全ではない……。
 いや、表面的、医学的な仕組みとかは理解しているのかも知れないが……それと、男女間(あるいは同性間)の好意とを、関連させて考える価値観が……どうした加減か、すっぽりと抜け落ちているようだ……。
『……この子たちのいう気持ちいい、は……』
 本当に、「気持ちいい」、というだけ、動物的な反応だけを求めているのであって……。
『だとすると……どう、しよう?』
 ついさっきまでのぼせていたのに、今では香也は、冷や汗をかき始めている。
 どうおしたら……この子たちを納得させた上で、今の状況から抜け出せるのだろうか……。
 香也は、もともと、さほど機転が利く性格でもない。
 三人に抱きつかれ、押し倒されたまま固まっていると……。

 がらり、と、引き戸を開け、唐突に加納荒野が顔を出した。

「きゃー!」
「えっち!」
「へんたい!」
 香也にとっては救いの神にも等しい存在であった荒野は、なにかいう前に、三人娘に罵倒されながら、シャンプーのプラスチック・ケースとか、手桶とか、腰掛けとか、その場にあったあらゆるものを投げつけられ、終いにはシャワーのノズルを向けて冷水を浴びせかけられ……早々に退散させられた。
『……あ。あ。あ……』
 香也は、這々の体で退却していく荒野の背中を、呆然と見守る。
 ……せっかくの脱出のチャンスが……。
 それに……なんなんだ、この、ぼくと彼の扱いの差は……。

 荒野と入れ違いに、騒ぎを聞きつけた楓が風呂場に来たことで、事態は一気に収拾した。
 風呂場に入ってきた楓は、あたりの惨状を把握するなり、
「……なにしているですかー!」
 と、三人娘にカミナリを落とした。
 その効果は覿面で、三人娘だけではなく、香也までもがその場で正座して、しゃんと背筋を伸ばした。
 いや、反射的に。

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髪長姫は最後に笑う。第五章(47)

第五章 「友と敵」(47)

 マンションに戻って制服を着替えてから、荒野は涼治に電話をかけた。三人のことを、問い合わせるために、だ。

『……おお。無事にそちらに着いたかね……』
「無事に着いたか、じゃねーだろ! なんなんだよ! あいつら……」
『古い知り合いが引き取っていた子らでな。
 その知り合いが亡くなったので、引き取ることにした。
 まあ、不憫な子らだ……可愛がってやってくれ……』
 ……じじい……あくまでとぼける気か……。
「……あいつら、おれたちを倒せと誰かに命じられたそうだけど……」
 そう思いながらも、荒野も粘る。
 この手の駆け引きついてには、荒野と涼治は年期が桁違いだ。だから、まともに太刀打ちできるとは、初めっから想定していない。
 それでも、食い下がれるところまで食い下がるつもりだった。
『おお。元気のいい子らでな。あんまり元気がいいから、なんならお前たちに挑戦してみろ、と、けしかけてやった……。
 お前たちにとっても、いい退屈しのぎになったろう……』
「あんなの、退屈しのぎにもなりやしませんよ……。
 最初はおれと楓で相手したんだが、しまいには楓一人に任せておいて十分でした……」
『……なに?』
 それまで平静だった涼治の声に、珍しく動揺が走った。
『そんな筈は……。
 うん。そうか、あの子ら……』

 ……お前らを油断させるため、わざと手を抜いたな……。
 と、涼治は、言い切った。

 荒野は無言で通話を切り、キッチンで茶器の準備をしていた茅に「一足先にお隣りにいっている!」と一声だけかけて、全力疾走でマンションを出た。
 挨拶もそこそこに、靴を脱ぐのももどかしく、狩野家の玄関を抜け、まっすぐ台所に向かう。
 真理と楓がエプロン姿で夕食の準備をしているところだった。
「楓! 無事か!」
「無事って……なにかあったんですか? 加納様?」
「あの三人は!」
「……あの子たちなら……香也様と一緒にお風呂に入っていますけど……」
 荒野はやはり後を見ずに風呂場へと向かう。
 脱衣所にはたしかに見覚えがある三人の服と香也の服が、乱雑に脱ぎ散らかしていた。
 それらを一足に跨ぎ越して、がらり、と、引き戸を開ける。
 と……。

「きゃー!」
「えっち!」
「へんたい!」
 荒野は三人娘にさんざん騒がれた末、洗面器や腰掛け、お湯などを浴びせかけられた。

 三十分後……。
「わはは。そうか。
 カッコいい方のこーや君は、この子らのこと、男の子だと思っていたのか……」
 茶碗と箸を持ちながら、羽生譲は、
「こんなに可愛いのにねー!」
「……ねー!」
 と、頷きあう。
 あって間もないというのに、三人娘とすっかり意気投合していた。

 一端マンションに戻って着替えてきた荒野は、茅とともに狩野家の食卓に招かれている。
 荒野は、いいわけをする気にもなれず、「あの時」の状況を思い浮かべつつ、黙々と箸を使う。
『……あの時、おれが飛び込んでいかなければ、香也君の貞操が、非常にやばかったような気がするのだけど……』
 荒野が飛び込んでいった、「あの時」……。
 全裸の香也の上には、全裸の三人娘に馬乗りになっており……どうみてもそれは、「じゃれている」とか「巫山戯ている」という雰囲気などではなく……少なくとも三人娘のほうは、明らかに性的な興奮状態にあった。
 あのまま、放置していたら……十中八九、その場の勢いで、とんでもない乱痴気騒ぎが勃発していたことだろう……と、荒野は予測するのだが……。
 香也のために、この場では口を噤むことにする。
『……しかし、香也君も……』
 荒野は、つくづく、そう感じた。
『……女性に無理矢理……という状況に陥ることが、やたらと多いよなぁ……』
 女性に好かれる割には、女難の相がある。
『……こんなことが続くと、そのうち女性不信になるぞ……彼……』
 その香也は、いつもより一層肩を小さくすぼめ、ちょこちょこと箸を使っては、小さく、そっとため息をついている。
 真理、楓、孫子……などのこの家の住人の他に、玉木珠美とメイド服の茅、それに、今夜は珍しく在宅していた、二宮荒神なども、にこやかに食卓を囲んでいた。
 この場で上機嫌でないのは、香也と荒野くらいなものだろう。
「……んでな、タマちゃんの作業の方も、こっちの作業のほうも、ようやく終わりが見えてきてな……こうして三人も新しい住人が増えたことだし、歓迎会と完成披露も兼ねて、今度の週末に庭でバーベキューパーティでもやろうかなーって……」
 羽生譲がみなにそんなことをしゃべっている。機嫌が良いのは、今やっている作業の終わりが見えてきたから、ということも、あるらしい。
『……なにかというと、宴会やりたがるなぁ……この家の人たち……』
 それについては、平和でいいことだ……と、荒野は思う。
『……しかし、こいつらは……』
 荒野は、今日知り合ったばかりの三人娘に目を向けた。
 今は、三人でじゃれ合いながら、真理の料理に舌鼓をうっているが……そうしていると、年齢相応の無邪気な表情をみせるのだが……。
 ……いろいろと、得体が知れない。
 涼治の反応も意外だったが、それ以上に……。
『……こいつら……一体、なにを企んでいやがる……』
 それとも、見かけ通り、「なにも考えてない」のか……。

 いずれにしろ……また一つ、荒野の心配の種が増えたことだけは、確かだった……。

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彼女はくノ一! 第五話 (5)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(5)

 三人の少女たちは、香也の視線など気にせず平然と服を脱ぎだした。そして、体の曲線を直にみるにつけ、香也は内心ぎょっとする。
 三人の胸は、心持ち、膨らみかけていた。ブラはしていない。する必要もない大きさだったが……香也は、目のやり場に困った。
 相手は子供、とはいえ……香也とて、異性を過剰気味に意識する年頃である。
「……どうしたの? にいちゃん?
 脱がないと、風呂、入れないよ……」
 三人のうちの一人、たしか「イバラキガク」と名乗った子供が、不思議そうな顔をして大きな瞳で香也を見上げる。
『……この子、目が大きいな……』
 と、香也は思った。
「……んー……君たち、女の子……」
 からからになった喉から、香也は、何とか声を絞り出す。
「……ああ。そんなことか……」
 茨木岳は大人びた仕草で肩をすくめた。
「気にしなくて良いよ。ボクらも、気にしないし。っていうか、自意識過剰。
 じっちゃんものらさんも、ボクらの裸なんかみたって欲情なんかしなかったよ」
「……じいしきかじょー! じいしきかじょー!」
 ガクの尻馬に乗るように囃したてたのは、羅生門法。みなからはノリと呼ばれている。ノリはすでに、靴下しか履いていなかった。局部も胸も、香也の目線から隠そうとする気配もなく、堂々とさらしている。香也はノリの股間にうっすらと、陰毛が生え始めているのを確認し、慌てて目をそらせる。
「……あー……ひょっとして……」
 みなかからは「テンちゃん」と呼ばれている酒展天は、靴下さえ履いていないすっぽんぽんだった。そのまま、白い裸体を密着させるようにして、香也の下半身に、手足を絡ませる。
「……おにーさん、勃っちゃった? ボクらの裸みて、欲情した? 欲情した?」
 自分の股間を香也の太股に擦りつけながら、そんな本質的な問いかけを行う。
「……どれ、確かめてみようねー。
 恥ずかしがらなくてもいいんだよー。生物として当然のことなんだからー。ほんのーに忠実っていうかぁー……」
 子供らしからぬ口調でそんなこといいながら、手足を香也の下半身に巻き付け、香也が逃げるのを封じながら、香也の服を脱がしにかかる。
 三人とも、香也の胸くらいまでの背丈しかない。
「……ホンノー! ホンノー!」
 意味が分かっているのかいないのか、ノリもはしゃぎながら香也のベルトを外しはじめた。
「……ちょ、ちょっと、君たち……」
「いいから、いいから」
 いつの間にか香也の背後に回ったガクが、後ろから手を回して香也の服を脱がし始めた。
「ボクら、じっちゃんのしか男の裸みたことないんで、ちょうどいいや……。
 じっくり観察させてね……」
 そういいながら、ガクは、服をめくりあげた香也の裸の背中に、柔らかくて暖かい体を、ぴとっ、と密着させる。
「……ほら、ノリ、テン……ちゃんとおにーさん脱がせなけりゃあ……お風呂に入れないじゃないか……」
「……ほいほーい!」
「お風呂! お風呂!」
 といいながら、ノリ、テンは香也の服を手際よく全て脱がした。
「……おちんちんだー!」
「……うーん……あんまり大きくない……ふにゃふにゃ……なんか、くやしい……」
「馬鹿! 気持ちよくしないと大きくはならないんだよ!」
「そっかぁ! じゃあ、これから大きくすればいいんだ!」
「そうそう! 三人でやればなんとかなるよ!」
「おにーさん、暴れないで!」
「面倒だ! このままお風呂まで担いでいく!」
「「「おー!」」」
 素っ裸になった三人に担がれたやはり素っ裸の香也は、三人に羽交い締めにされたまま、湯船に放り込まれた。
 三人も次々と湯船に入り、香也の体のそこここにしがみついてくる。
「おちんちんってどうやると大きくなるのー?」
「気持ちよくすればいいんだって!」
「だから、どうすれば気持ちよくなるのかって聞いてるの!」
「わかんないよ、そんなの! 適当にいじくってみれば?」
「……うーん……こう? なんか、へんなかんしょくー……」
「次、ボクね、ボク!」
 左右からしがみつかれたまま中央に来た子供に、適当に局部を悪戯されている、という構図で……股間への刺激よりも、密着した部分の感触とか体臭とかのほうが、香也を刺激した。
 香也にとっては、このシシュチュエーション自体、刺激が強すぎた。
 すぐにむくむくと、香也自身が大きくいきりたつ。
「あっ。立った立った」
「すっげぇー。こんなに大きくなるんだ……」
「かってー。形も変わっているし……」
 子供の一人が、つんつんと先端の敏感な部分を指でつつくと、香也は体全体を大きく振るわせた。
「……馬鹿! 乱暴にするなって! 敏感な所なんだぞ!」
「……むー……じゃ、じゃあさ。ボクらばっかりやるのも不公平だから、おにーさんにもボクらの触って貰おう!」
「……こ、こうかな? ひゃっ!」
 香也の左手の中指の指先が、なにかなま暖かいものに接触した。
「……こ、こんなところを触らせるの……おにーさんが始めてなんだぞ……」
 香也の左手にしがみついたまま、ノリは香也の中指で自分自身の入り口を探らせ始める。最初のうちは、こわごわと動かしていたが、すぐに自分でも腰を振りながら、早く動かすようになる。
「……はっ……なんか、おにーさんの、指……」
 はっ、はっ、はっ、と呼吸を早くしながら、ノリは切れ切れにそんな不明瞭なことを言いはじめる。
「……ノリだけ狡い……ボクも……」
 どこか熱に浮かされたような表情で、テンも香也の指先を自分の入り口にあて、動かし始める。
 ノリもテンと同様、入り口の浅い部分に、ほんの少し香也の指をいれて上下に動かしているだけ、なのだが……内部から、じっくりとした粘りけのある液体が、香也の指に絡みついてくる。
「……もー……二人とも……」
 香也の指を道具にして擬似的な自慰に興じはじめた二人を交互にみながら、ガクは湯船の中で直立した。
「じゃあ、しょうがないから……ボクは、おにーさんに、ぼくのをちゃんと見せてあげる……」
 そういいながら、ガクは、香也の首を太股で挟むような体勢になって、自分の股間を香也の目前に晒した。
 恥ずかしそうにしながらも、ガクは香也の鼻先に自分の恥丘をこすりつけるように近づけていった。
「ん……鼻息、当たってる……」

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髪長姫は最後に笑う。第五章(46)

第五章 「友と敵」(46)

「……なんでだよぉ!」
 随分悪あがきをして、三人がかりでも楓一人に対抗できない、ことがいよいよ明確になって……三人の想いを代弁するように、一人が叫んだ。
「なんで、こんなに!」
『……こいつら……今まで、自分以上の能力の持ち主に、会ったことないんだな……』
 と、荒野は思った。
「……それが、今のお前らの実力……ということだな……」
 口に出しては、荒野はそういった。
 外界に出てきて、初っぱなに「最強」の一番弟子と二番弟子に当たるのは、不運といえば不運なのかも知れないが……荒野たちが本気で子供を殺すような人種でないことは、三人にとっては、十分に幸運だった筈だ。
 あれだけ公然と「倒す、倒す」と公言していれば、当の相手に返り討ちにあっても文句は言えない……荒野が属し、三人が一歩足を踏み入れようとしたのは、そういう世界だった。
 そういう世界では、自分の能力への過信は、確実に身を滅ぼす。
 これにこりて、三人の妙な慢心が今後いくらかでも抑制されれば……それに越したことはなかった。
「まだやるか? やれるか? お前ら全員、汗だくでじゃあないか?」
 荒野がそう念を押すと、三人の子供たちはお互いに顔を見合わせ、息一つ乱すことなく立っている楓のほうを、薄気味悪そうにみた。
『……楓も、友達を殺して食ったこと、あるんだろうな……』
 荒野は、そう予測する。
 三人と楓との根本的な違いは……つまるところ、そういうところだ、と、思った。
 本当の殺意や暴力を、身を持って知っているか否か……。
 能力的なことは鍛えればある程度まではフォローできるが……そうした、根本的なメンタリティの違いは、咄嗟の時の思い切りの良さに関係する。
 その意味で、楓や荒野と、三人の属する世界は、根本的な部分で違っている……ともいえた。
 無邪気な暴力と、自分の意志で、自分のために友と認めた存在を殺すこともできる暴力、とでは……質が、根本的に、違う。

 三人が地面に平伏して、荒野たちに負けを認めると、荒野はきびすを返して帰ろうとした。
 まだ、夕食用の食材を、買っていない。
 そんな荒野に、三人は、
「待ってください!」
 と、縋りついてきた。

 三人の話しを総合すると、どうやら、三人はしばらくこの町に逗留する手筈がついているらしく、「これ、いくようにいわれている、宿泊先です」と、ひじょーに見覚えがある住所の書かれたメモ用紙を、荒野たちにみせてくれた。

 その住所がどこのものであるのか確認した途端、荒野は、くらくらっと目眩を感じた。

「……これ、うちの住所ですぅ」
 楓が、いった。
 いわれるまでもなく、それは、荒野たちが住んでいるマンションの隣り、すなわち、楓や香也や孫子が住んでいる、狩野家の住所だった。
『……じじい……なにを考えていやがる……』
 こう来られては……この三人の黒幕は、十中八九、加納涼治だろう……。
「……お前ら、誰の命令でここに来た!」
 荒野は、射すくめるような眼光を放って三人に問いただすと、途端に三人はガクガクと震えはじめた。
「……そ、そんな、命令、なんて……」
「……お、おれたち、じっちゃんが死んだんで……いわれていた通り、信号弾あげて……」
「……そしたら、迎えの船が来て、本土に来て、しばらくいろいろな事ならって……」

 狩野家まで送っていく道すがら、三人に話しを聞く。
 それを総合し、要約すると、
「三人は、無人島で育てられた。
 育てたのは、三人が『じっちゃん』と呼ぶ、初老の男。棍の使い方、その他の技も、その『じっちゃん』に仕込まれた。『じっちゃん』の姓名は不明。
『じっちゃん』の死亡後、かねて教えられた通り、信号弾を空に打ち上げる。すると、二時間もせずに、迎えの船が来て、三人を本土に連れてきた。
 それからは、どっかの倉庫みたいなところで、一月にわたって、一般人の社会生活について一通りレクチャーを受ける。寝起きをともにし、そのレクチャーをしてくれた男は、今日、車でこの土地まで送ってくれて、そこで別れた。
 その後は、
『荒野、茅、楓の三人を倒せ』ということと、『それが終わったら狩野家にしばらくご厄介になれ』としか、聞かされていない……」
 ということになった。

 三人は、茨木岳、羅生門法、酒展天、と名乗った。
『……それで……ガク、ノリ、テン……か……』
 いかにも偽名臭いが……物心ついたときからそのように教え込まれていれば、それが本名だ。書類上も、それで手配がついているのだろう。
「荒野……それ、鬼の名前……」
 茅が、珍しく横合いから口を出す。
 なるほど……
 茨木童子、酒呑童子、それに、羅生門の鬼……。
『……童子、という……いや、こいつらは鬼子のようなものだ、という符号……なのか?』
 もとは、コードネームのようなもの、だったのだろう。
 それがそのまま、実際にこの子たちの名前になった……。
『……そんな冗談みたいな名前を名乗らなければならないこいつらにとっては……いい迷惑だよなぁ……』
 などと、思う。
 口には、ださなかったが。

 荒野は玄関口に出迎えに来た真理に三人を紹介し、三人に深々と頭を下げさせた。
 来る途中で、「くれぐれも、狩野家の人々に迷惑をかけないように」ということを言い含め、「お前らがもっているクレジットカードは、真理さんに預ける」といって取り上げた。
 三人は、表面上は荒野のいうことをよく聞き、クレジットカードもおとなしく渡した。
 もっとも……三人が「なにをすれば迷惑になるのか、判断できない」ということは容易に想像できたし、クレジットカードをおとなしく渡したのも、まだ三人が貨幣経済の実態について、よく理解していないことが大きいのだろう。
 荒野は、楓にも、
「……お前、居候の先輩だからな。
 こおいつらの手綱、しっかりとひきしめるように……。
 いざとなれば、頭の一つ二つ殴り飛ばしても構わないから……」
 と、申し渡しておいた。
 楓も真剣な顔をして頷いてはいたが……実に、心許なかった。

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彼女はくノ一! 第五話 (4)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(4)

 荒野は三人に対して、「なんなら、飛び道具つかってもいいぞ」と付け加えさえしたが、軽視されているのが不服なのか、それとも単に投擲武器を用意していないのか、三人のほうは棍を構えなおしただけだった。

 楓は、大きく息を吸い込むと、
「来なさい!」
 と叫ぶ。
 三人の能力を軽視しているわけではない。動きの鋭さは、先ほどまでのやりとりで、十分に理解している。
 しかし、……。

 三人は、楓の前後に回り込み、六節棍を別々の形態にして、一斉に躍りかかって来た。特に誰かが合図したようにも思えなかったのに、ほぼ同時に動いていた。
 ……息が、合っている。
 一人は、全ての関節をはずした鞭状にして、一人は、一つ目の関節だけを自由にして、スレイル様の武器として、最後の一人は、全ての関節を連結したまま、棒として振う。それぞれ、リーチも軌跡も違い、打点を予測しにくくなる……筈だった。
 が……。

 楓は、それぞれの軌道が……「読めた」。

 最小限の動きで三人の棍をかいくぐり、一人一人、軸足の足首を、払っていく。
 三人の子供たちは、面白いように地面に転がった。なぜ転んだのかわからない、という不思議そうな顔をしている。
 そして、地面に横たわりながら、学校指定のコートを身に纏ったまま、息ひとつ乱さず立っている楓を、不気味そうに見上げる。
 楓は、地面に転がった子供たちに追い打ちをかけることなく、指で招く動作をして、子供たちに再度挑戦してくるように即した。
 子供たちは、釈然としない顔のまま立ち上がり、再び、楓のほうに突進していく。
 スピードはたいしたものだが……フェイントもなにもない、愚直な突進だった。
 楓は、ゆらりと動いただけのようにみえて、やはり見事に三人の足下を掬っている。
 何度も何度も、倒されては起きあがり、突進していく子供たち。
 最初のうちは、三人で呼吸を図って、一斉に飛びかかるようにしていたのが、回数をこなすうちに、動きが徐々にばらついていき、すぐに、一人一人順番に楓におどりかかっては倒される、ということになった。
 楓一人を相手にするようになってから、まだ五分とたっていないのに、三人とも汗だくになって肩で息をしている。

「……なんでだよぉ!」
 耐えきれなくなったのか、三人のうちの一人(たぶん、仲間内からガクと呼ばれていた子供)が、叫んだ。
「なんで、こんなに!」
「……それが、今のお前らの実力、ということだな……」
 荒野は、しれっとして答えた。
 三人が何者かは知らないが……「最強」の二番弟子にいきなり挑もうというのが、どだい無理なのだ……と、荒野は思っている。
「まだ、やるか? やれるか? お前ら全員、汗だくじゃないか?」
 三人は、楓のほうみる。
 コート姿を乱すこともなく、平然と立っている……だけ、だった。

 もはや、六節棍でようやく自分の体重を支えている態の三人は、お互いに目配せを交わしあって、突如、地面に平伏した。
「「「……参りましたぁ!」」」
 荒野たちの中で「一番の下っ端」として認識していた楓とさえ、ここまで実力差があるのなら……三人が勝てる可能性は、万に一つもない……と、納得したようだった。

「……じゃあ、お前らの用事はもうこれで済んだな?
 おれたち、もう帰るから……」
 荒野は、楓に鞄を渡しながら三人に申し渡した。
 正直、「これ以上、つき合っていられない」という気分だった。
「ま、待ってください!」
 荒野たちがその場から去ろうとすると、三人は口々に荒野たちを呼び止めた。
「い、行く前に、この住所への行き方、教えていってください!」

 三人は、メモ用紙を荒野たち三人に示した。
 そのメモに書かれた住所をみて、荒野たちの目が、点になる。

「……実は、おれにも事情がよく把握できていないんですけど……」
 狩野家の玄関口で、荒野は三人の子供たちに深々と頭を下げさせる。
「……こいつら、こちらのお宅にお世話になるって話しで……」
「はいはい。涼治さんからちゃんと聞いてますよ」
 対応に出た真理は、実ににこやかなに三人を出迎えた。
『じじい……また、真理さんに過分な下宿代、預けたな……』
 と、荒野は思った。
「……こちらのカードは、真理さんが管理してください。こいつら、大食らいですし、なにか壊した時とかの弁償代なんかも、こちらから遠慮なくさっ引いてください……」
 荒野は、三人が持っていたクレジットカードも、真理の手に預ける。先ほど、三人から強制的に没収したものだった。
「……お前ら、後で真理さんに暗証番号も教えておけよ!」
 と、これは、三人の子供たちに、念を押す。
 三人の子供たちは、コクコクと頷いた。
「……いいのよー。そんな気を使わなくともー」
 真理はそういいながらも、三枚のカードを受け取った。
「……それより、みんな、汚れているじゃない。荷物も届いているから、着替えをもってお風呂場に……そうね、楓ちゃん、ちょっとプレハブのほうにいって、こーちゃん呼んできてくれない?
 荒野君と茅ちゃんも、せっかくだから、今日は一緒にこっちで御夕飯していきなさい。今日は三人の歓迎会ということで、かなり多めに作っているから……」

 荒野と茅は、制服を着替えたり鞄を置いたりするために一旦マンションに帰った。
 楓は、真理のいうとおりに庭に出て香也を呼び出してくる。三人にあてがわれた部屋まで香也を案内し、三人と香也を合わせて、自分の部屋に着替えに戻る。
 香也は、三人と名乗り合ってから、三人を風呂場まで案内した。途中、
「……ついでだから、こーちゃんも三人と一緒にお風呂に入っちゃいなさい……」
 といわれ、何の気なしに、
「……んー……」
 と、頷く。
 風呂場に入って、三人と一緒に服を脱いだ……ところで、激しく後悔した。

 三人は、女の子だった。

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髪長姫は最後に笑う。第五章(45)

第五章 「友と敵」(45)

 三人は、荒野が動き出す前から、予備動作を見切って、迎撃態勢を整えようとしていた。三人のうち、両脇の二人が楓の弾幕を棍ではじき、中央の一人が、まず、荒野に向かって棍の切っ先を突き入れる。
『……誰に仕込まれたか知らないけど……』
 三人の連携は、確かなものだった。
 だから、なおさら……。
『……動きが、読みやすいんだよなー……』
 飛来する楓の六角をあらかたはじき飛ばした二人も、中央のにならって棍を荒野に突き入れる。
 その頃には、荒野は三人の目前に迫っていた。
 荒野は、突き出された三人の棍を掴んで、手前に勢いよく引っ張る。
 ちょうど、楓が六角から手裏剣に得物を持ち替えたばかりで、三人の足元には、極めて不安定な状態になっていた。
 手裏剣を弾くべき棍は、荒野に握られて、強い力で引っ張られている。
 足元に飛来する手裏剣を避けようとすれば、踏鞴を踏んでいるような形になり、当然、足元に力なんか入りはしない。
 三人の上体が、大きく泳ぐ。
 荒野は、姿勢を低くして、三人の足元に潜り込む。

 そのまま、三人の体を、上方にはじき飛ばした。
 三人の体重が軽かったこともあって、三人の体は、高々と宙に躍った。

 前後してどさどさと地面に落ちてくる。
 三人とも、流石に受け身くらいはとっていたから、物理的なダメージはあまりないようだったが……こうもいいようにあしらわれたのは、精神的には、かなりきつかったらしい。
 三人とも、揃って蒼白な顔をして、下唇を噛みしめていた。
『井の中の蛙、だな……』
「……その年にしては、訓練されているとは思うけど……」
『……なんのためにここに来て、おれたちにちょっかいを出してきたのかはわからないけど……』
「お前らのやりかたってのは、根本的なところで実践的じゃないのな」
『こんなんじゃあ……性能試験、にも、なりはしないじゃないか……』
 身体能力だけでいえば……あれだけの弾幕を全てはじき飛ばした三人は、たしかに、同年配の二宮以上……なのかも知れない……が……。
「忍相手に正々堂々と果たし合い申し込んでどうするって……。そんなんじゃ、勝てるもんも勝てないだろう。そんなことしたら、みすみす相手につけいる隙をつくってやるようなもんだよ……」
『……忍、として根本的な所が仕込まれていないから、こいつら……どんなに高性能でも、実戦の場では、使い物にならないよなぁ……』
 荒野は、三人の中に、「殺気」とか「気迫」というものを認めることが出来なかった。
 そのため……どうにもこの三人を相手に、本気を出すことができない……。
「ふん。不服そうな顔をしているな、お前ら……」
 その顔じゃあ、お前ら……。
「実力を発揮する暇もなかった……とでも、いいたいのか? こっちがその気なら、全員死んでいるところだぞ? 」
 ……友達を、自分の手で殺して食ったことなんか……ないんだろ?
「まあいい。今後もつきまとわれるのもうざいしなぁ……。
 ……楓。
 ちょっと、こいつらの相手をしてやれ。
 素手のお前一人と、武器を持ったこいつら三人で、ちょうど釣り合いが取れるぐらいだろう……」
 荒野がそういうと、楓は目を丸くした。
 楓も、たしかに甘い部分があるのだが……この三人ほどでは、ない。
 それに、楓の動きは、日に日に鋭くなっている。楓自身は、あまり自覚していないようだが……。
 荒野の見立てでは……現在の楓は、「並の二宮以上」のこの三人を同時に相手にしても、十分に凌げるほどになっていた……。
『……ここいらで、楓にも……もうちょい、自信を持って貰わないとな……』
 そう思って、荒野は楓にウインクする。
「……それともお前ら……三人がかりで、素手の楓一人を相手にするほどの自信もないか?」
 今度は、多少芝居がかった調子で、三人のほうに振る。
「……ば、ばっかゃねーの!」
「そいつ、ソッチの中では、一番下っ端なんだろう!」
「やるよ! やってやるよ! その代わり、怪我しても知らねーからな!」
 三人は、頬を紅潮させ、荒野の挑発に易々と乗った。
「なんなら、そっちは飛び道具使ってもいいぞー。
 そんくらいのハンデやらないと、不公平だからなー」
 わざとのんびりした口調でそういいながら、荒野は、ゆっくりと茅がいる位置まで後ずさる。途中で楓に、
「手加減しながら、たたきのめせ。奴らが起きあがれなくなるまで」
 と、厳しい声で耳打ちするのも忘れない。
 楓に、荒野が本気で命じている、ということを分からせる必要があった。
 納得したのかしないのか、ともかくも、楓は頷いて、三人の方に近づいていく。
 ようやく立ち上がった三人に向かって、楓は、一度大きく息を吸ってから、
「来なさい!」
 と、大声を出した。

 楓は、荒野の命令を、忠実に実行した。

 さっき見た時はかなり素早く思えた三人の挙動は、近寄って対峙してみると、かなり余裕を持って対処できる速度でしかない……ということに、楓は気づいた。
『……荒神さんの動きに比べれば……』
 止まっているようなものだ……と、思えてしまう。
 楓は、三人の棍を難なくかいくぐり、近寄り……殴りつける、というのもアレなので、足元を掬って転ばせたりした。
 三人のほうからは、楓の動きが速すぎて視認できないようだった。
 最初のうちは、何故自分が転んだのか理解できない……といった、不思議そうな顔をしていたが、何度か転んでいるうちに、段々、自分らが楓の動きを追い切れていない、ということを悟り始め……三人は、徐々に、ムキになり始めた……。
 結果、棍を振る動作が、大振りなものになって、かえって隙が大きくなったりする……。
『……ああ……』
 楓も、ようやく三人のことを理解しはじめた。
『パワーとスピードはあるけど……戦いの場で、感情を統御することすら、学んでない……』
 見た目の通りの、子供たち、なのだ……と。

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彼女はくノ一! 第五話 (3)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(3)

 三人の子供たちは、荒野が少し声を高くすると、面白いようにその指示に従う。
『……なんだか……』
 引率の先生と生徒みたいだ、と、楓は思った。
『……第一……』
 子供たちは、荒野と茅、それに自分を含めてた三人を倒すこと……が、目的らしい。少なくとも、そう自称している。
 にもかかわらず、荒野が主導権を握って場の進行をコントロールしている現在の状況というのは……。
『……かなり……変……』
 そう思いながらも楓は、荒野の指示に従って六角や手裏剣、くないなどの投擲武器を鞄からごそごそ取りだし、いつでも使用可能な状態にする。
 ……数日後、学校で抜き打ち持ち物検査をされた際、いろいろと物偽を醸したりすることになる、通学時の楓の標準装備類だったが……その持ち物検査うんぬんというのは、また別の話。
 三人も各々の武器を取り出して、構える。その構えをみて、楓は表情を引き締めた。
 姿勢や構えをみれば、ある程度は、相手の実力も見極めがつく。
 油断できない……と、楓は判断した。

 荒野が、楓に弾幕を張ることを命じた。荒野自身も、指弾でパチンコ玉を多数、同時に弾く。
 パチンコ玉自体はたいした質量でもないのだが、荒野の指に弾かれれれば拳銃弾以上の速度を得る。五メートルと離れていないこの距離で命中すれば、確実に骨肉に食い込む。それが何十発と同時放たれる。
 楓からも、荒野のパチンコ玉ほどには連射はできないが、代わりに重い六角が幾つも投擲される。
『……荒神様なら、下忍の戦法だと笑うだろうな……』
 楓は冷静に、荒野の指示について、そんな感想を持つ。
 荒神は投擲武器の多用を「下策」と位置づけているが、弟子である荒野はそうは思っていないようだ。
 もっとも、荒神の仮想的は専ら一族でもある程度以上の技量を持つ者たちであり、荒野が今までに相手にしてきた「敵」はあまり場数を踏んでいない一般人である……という違いがあるので、どちらの方法論が正しい、とは、一概にいえないのだろう。
 荒神が敵として前提にしているのは、投擲武器など難なく回避できる能力の持ち主であり……事実、三人は、棒状に連結したままの六節棍で、楓と荒野の攻撃を全て弾いた。弾いたが、三人に攻撃のいとまを与えず、こちらのペースにつき合わせる、牽制の役割は十分に果たしているわけで……。
「次は、足止め!」
 いうが早いか、荒野は今まで以上にパチンコ玉をばらまき、三人のほうに突進する。
 早い。
 荒野の意図を察知した楓が、六角を八方手裏剣に持ち帰る間に、荒野は三人の目前に立っていた。
 楓が、三人の動きを牽制するために、足元を狙って、八方手裏剣を打つ。
 扁平な形状をしている関係で、棒手裏剣に比べると貫通力が弱くなるが、八方手裏剣は、その分連射がきく。この場合、重要なのは、単位時間あたりにどれだけの数を打てるか、ということだった。
 長い得物を持った三人の中に素手で、単身、荒野が躍り込んだ……という形だが、楓の牽制も功を奏し、荒野は……あっという間に、三人を、無力化した。

 三人の目前に荒野が迫る。
 三人は、持っていた六節棍を槍のように荒野に突き入れる。
 突き出された三本の六節棍を、荒野は、まとめて掴み、自分のほうに引き寄せる。
 勢い余った三人はバランスを崩し、前方へと倒れ込みそうになる。楓が足元に向かって手裏剣で弾幕を張っているので、地を蹴って姿勢を持ち直したり、踏ん張ることも出来ない。
 姿勢を低くしたまま、荒野は三人の足元に自分の体を潜り込ませ……そのまま、足腰のバネを使って……跳ね上げた。

 三人の体が、高々と、空中に放り出される。

 どさり、と、三人の体が地面に落ちると、
「……まだ、やるかい?」
 荒野は、微笑みながら、三人の手からもぎ取った六節棍の切っ先を、三人の目前につきつけた。

 地面に寝そべったまま、三人は、返事をできなかった。

「……その年にしては、訓練されているとは思うけど……」
 つまらなそうな顔をして三本の六節棍を地面に放り出した荒野は、三人に向かって滔々と解説しはじめた。
「お前らのやりかたってのは、根本的なところで実践的じゃないのな。
 忍相手に正々堂々と果たし合い申し込んでどうするって……。そんなんじゃ、勝てるもんも勝てないだろう。そんなことしたら、みすみす相手につけいる隙をつくってやるようなもんだよ……」
 荒野の言い分は、楓にはよくわかった。「自分たちを倒す」と公言する割には……三人のやり方は、全般に、杜撰すぎる。
 あれだけの弾幕を全て弾いた反応速度は確かに凄いとは思うが……自分たち忍同士の戦いは、公正なルールの下で行われるスポーツとは、根本的なところで違うのだ。
 正直、楓には……三人が、いや、三人に、「荒野たちを倒せ」と指令した何者かの思惑が、まるで想像できなかった。本気で目的を達成するつもりなら……なんで、この三人だけでこの場に当たらせたのだろう?
 これだけの身体能力を持つ者が、的確な判断能力を持った指令のもとに動いていたら……かなり、脅威なのだが……。

「ふん。不服そうな顔をしているな、お前ら……」
 楓がそんなことを考えているうちにも、荒野は三人へ、何事か話し続けている。
「実力を発揮する暇もなかった……とでも、いいたいのか? こっちがその気なら、全員死んでいるところだぞ?
 まあいい。今後もつきまとわれるのもうざいしなぁ……。
 ……楓。
 ちょっと、こいつらの相手をしてやれ。
 素手のお前一人と、武器を持ったこいつら三人で、ちょうど釣り合いが取れるぐらいだろう……」
 荒野は、そんなとんでもないことをいいだして、楓に向かってウインクしてみせた。

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髪長姫は最後に笑う。第五章(44)

第五章 「友と敵」(44)

 荒野が現金を引き出してマンドゴドラに戻ると、三人の子供たちは見事なまでに意気消沈して待っていた。
『……こいつら、今までどういう育ち方してきたんだ?』
 茅のように人里離れた場所で育てられて、最近世間に……人間界に出てきた、というところだろうか? それにしては、カードを持っていたり、と、知識と経験が、半端すぎる気がするが……。
『……茅に対するおれ……一般人の社会生活のことを教える役目の奴が、手抜きして、適当な所で放り出した……とか?』
 ふとそう思いついて、荒野は自分の思いつきをすぐに否定した。
 それは……あまりにも無責任すぎる。茅はたまたま身体能力に偏重しない調整をなされていたようだが……他の『姫』たちが、二宮クラスの身体能力を持ったまま、世間知らずなままで、そこいらに放置されたら……周囲の人間にとっては、いい迷惑だった。
 荒野がレジで三人が暴食したケーキの代金を精算している所に、呼び出した茅と楓が、店に入ってきた。
 二人は、三人と荒野を見比べて、不思議そうな顔をしている。

『……茅たちに事情を説明するのも、骨だよなぁ……』
 なにせ、荒野にしてからが、三人の目的と正体が、まだわかっていない。

 とりあえず、人目だけは避けたかったので、荒野は三人の子供と茅と楓を伴って、河原まで歩いていくことにした。
 河原で、荒野はとりあえず自分の名を三人に改めて明かし、茅と楓も紹介する。それから三人の正体と目的を尋ねると、途端に、三人の仲間内で漫才が始まった。ようは、大雑把な目的は与えられているが、その結末へ至るまでのプロセスを誰も真剣に考えておらず、「荒野たちに自分の名前を名乗るべきか否か」などという根本的な部分で、今更ながらにもめている。
 それら、三人の態度から、荒野はいくつかの結論を引き出した。

一、こいつらは……能力はともかく、「プロフェッショナル」としては、教育されていない。
「プロフェッショナル」どころではなく、性格的気質的な面で判断するなら、こいつら、単なるガキである。
二、三人の中で序列や命令系統は存在しない。
 いつまでも内輪もめがやまないところから考えても、自明。
三、こいつらの目的は、荒野たちを「倒す」ことではない。
 まず「目的ありき」であるのなら、闇討ちでもなんでも試みればいいのだ。ケーキ屋なんかで油売らないで……。

 総評。
「恐れるに足らず」。

 しかし、いつまでも三人に内輪もめさせておいても日が暮れるばかりなので、荒野は適当なところで三人を怒鳴りつけ、三人が緊張したところで、強引に三人の目的を聞き出した。
 三人は、
「荒野たちを倒すためにここに来た」
 と声を揃えて怒鳴った。

 その回答を確認してから、荒野は楓と茅に「戦闘準備」をさせた。茅はすぐに頷き、楓は子供が相手であることから、最初かなり渋っていたが、荒野が「相手が『姫』である可能性」を示唆すると、ようやく紐で繋がれた一連の六角を取り出し、その他、見えないところで武装を整えた。荒野自身も、指弾用のパチンコ玉をすぐに取り出せるようにしておく。
 相手が子供だからといって、荒野は油断したり手加減したりするつもりはなかった。

「そっちのおねーちゃんはいいの? どちらかといえば、ボクら、その子が目的なんだけど……」
 荒野たちの中でただ一人、鞄を抱えたままでなんの準備もしていない茅を指さして、子供たちの一人がいった。
 三人とも、パーカーに半ズボン、ハイソックス姿の……小学校高学年、程度にみえる子供で……お互いに「ガク」、「ノリ」、「テン」と呼び合っているのは確認しているが、荒野はまだ、その呼び名と顔が、一致していない。
 三人は、三十センチくらいの長さの、折り畳んだ棒を取り出して、それを伸ばして連結し始めた。
 六節棍。
 繋げば棒として使え、関節部を緩めれば殻竿(フレイル)様の武器としても使える。関節を全部はずせば、鞭になる。
『……マニアックな代物、持ち出しやがって……』
 使用法を習熟するのが難しい得物だが……それだけに、熟練者が使うとなると、対処が難しい武器だった。
 第一、「棒」だけでも、達人が使えば十分な殺傷能力を持つ武器となる。
 三人の、リーチの不足をカバーするための、武器なのだろう。

 六節棍を持った三人の構えには、隙がなかった。
「楓。本気でかかれ」
「……これでは、気が抜けません……」
 荒野が注意するまでもなく、楓は三人の構えを見ただけで、緊張している。
「連携して、くる。こっちは、茅がやられたら、それで終わりだ。
 だから……」
 荒野は、三人の構えを見ても、楓ほどには緊張しない。
 三人の力量は、確かに凄いものなのだろう。しかし、それは……。
『……所詮、武術家的な強さ、なんだよね……』
 ……おれたちは、武術家じゃない……。
 忍、だ……。
 と、荒野は思う。

 荒野は、ポケットから取り出したパチンコ玉を、次々と指で弾いて三人の手元を狙う。三人は、荒野の意図に気づき、荒野が連射するパチンコ玉を昆で弾く。荒野は指先だけでパチンコ玉を弾いているので、かなりの高速度で連射することが可能であり、三人は、それが直接手に当たらないように弾くだけで手一杯になる。
 その速度と、飛来するパチンコ玉を視認し、弾くできる視力と速度は、十分に称賛に値した。
「楓、やつらの武器を潰せ!」
 荒野の叱責によって、楓が動く。
 六角がうなりをあげて、三人の手元に飛ぶ。
 三人は、パチンコ玉と同じように、楓の六角を弾いた……が、重く、スピンしながら飛来する六角は、パチンコ玉と同じようにはいかない。
 棍で弾いた際、手に痺れを残す。
 若干、三人の手の動きが、鈍った。
 楓は次々に六角を連投する。三人はことごとく、それを弾く。
 ……徐々に、手が痺れ、握力が効かなくなってくるはずだった。
「次は、足止め!」
 楓にそういいながら、荒野は残りのパチンコ玉を一斉に三人のほうに放る。
 それまでの狙いをつけた弾き方ではなく、パチンコ玉は広範囲に広がった。
 ほぼ同時に、三人の足下を狙って、楓の八方手裏剣が飛ぶ。
 三人の間に、軽い動揺が走る。動揺しながらも、三人は素早く手足を動かし、楓の手裏剣を避けながら、荒野のパチンコ玉を棍で弾いた。
 まずは、懸命に荒野たちの攻撃に、堅実に対処していた、といえる。
 しかし……。

 自分が投げたパチンコ玉を追うようにして、荒野が三人に肉薄していた。

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彼女はくノ一! 第五話 (2)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(2)

 その日の放課後、楓の携帯に荒野からの呼び出しメールが入った。あらかじめ決めて合った符丁でで「緊急」、「マンドゴドラに集合」とのみ記されている。
 放課後、楓は部活にでているか、茅の帰りを待って美術室で時間を潰しているかのどちらかで、この日は部活がない日だったので、楓は美術室にいた。
 香也たちには、
「……加納様に呼ばれたので、今日はこれで失礼します」
 とのみ告げて、楓は鞄を持って美術室を後にした。
 途中の廊下で、茅とも合流する。
「茅様もですか?」
「荒野に、マンドゴドラに呼ばれたの」
 二人は頷きあって、昇降口でもどかしげに靴を履き替え、マンドゴドラへと急ぐ。といっても、茅の歩速に合わせたため、せいぜい早歩き程度の速度だったが。

 楓と茅がマンドゴドラにつくと、荒野がレジで精算を済ませている所だった。
「……いったい、どうしたんですか?」
 楓は、荒野に尋ねた。
 マスターとの取り決めにより、荒野と茅は、この店ではフリーパス状態になってる筈で……。
「……こっちが聞きたい。
 こいつらの尻拭いだということはわかっているんだけど……こいつらが何者なのか、おれ、知らないんだ……」
「いやいやいや。この子たちも悪気があったわけではないようだし、あんまり叱らないでやってくれ。
 今、うちの店もネット通販の開始に合わせてカードの取り扱い、準備しているところでな。この子たちは、タッチの差で間に合わなかったな……」
 と、荒野の説明に付け加えたのは、顔なじみのマンドゴドラのマスターだった。
「……ええっ、とぉ……」
 楓は荒野の隣りに固まって居心地悪そうにしている三人の子供たちを指さし、
「この子たちが、このお店で飲み食いして、カード払いができなくなって……」
 荒野を指さし、
「加納様が、とりあえず立て替えている……」
「……そういうこと……」
 と、荒野は頷く。
「さて、ここの支払いも無事済んだし、いったい君たちがどこの誰で、この加納荒野になんの用事があるか、向こうでゆっくり聞くとしようか?」
 すっかりしょげ返っている三人の子供たちは、おとなしく荒野の後についていった。

 荒野は、楓と茅、それに三人の子供たちを連れて、河原まで歩いていった。
 三人の意向がわからない以上、常に荒事に備えなくてはならない。まだ日が暮れきっていない夕刻の町中で、全力でぶつかり合うような真似は避けたかった。ここなら、町中とは比較にならないほど人目が少ないし、第一、周囲に対する物損がほとんどない。
「……それで、このおれが加納荒野……」
 荒野は、土手の斜面に腰掛けて、三人を睨みつけた。
「こっちの髪の長いのが、加納茅。もう一人が、松島楓。
 おれの名前を知っている、ということは、こっちの二人も知っているな?」
 三人の子供たちは、こくこくと頷いた。
「ではあらためて、聞こう。
 君たちは、何者で、なんのためにおれを捜してたんだ?」
「ボ、ボクらは、さ、捜してたっていうか、なんていうか……」
「テンちゃん、駄目! 自己紹介されたらこっちも名乗らなけりゃイケナイんだぞ!」
「ノリ! こいつら、どうせこれからブチノメスだけだろ……」
「ガクもそういう言葉遣い駄目!」
 たちまち、荒野たちをそっちのけで、三人だけで議論を始める。

『……このまま放っておいて、帰ろうかな……』
 半ば本気で、荒野はそう思った。
「……帰ろうか、茅……」
 荒野が小さくそう呟くと、それまで勝手に騒いでいた三人の子供たちは、「帰らないでぇ!」、「見捨てないでぇ!」、と、一斉に荒野にすがりついた。
「……じゃあ、さっさと目的、お前らがここに来た目的、いってみろって!」
 荒野が怒鳴ると、三人は一斉にその場で硬直し、「きをつけ」の姿勢になる。
 ……こいつらの名前と正体を知るのは、かなり後になるだろうなぁ……と、荒野は予感した。かなり確実な、予感だ。
「名前は後でいい! 帰っては駄目、というのなら、おれたちとなにがしたいのか、さっさという!」
「「「はっ! はいっ!!」」」
「きをつけ」の姿勢のまま、三人は声をハモらせて、答えた。
「「「ボクたち、荒野さんたちを倒しに来ましたぁ!」」」

『……ようやく、結論かい……』
 と、荒野は思った。
 それにしてもなんと緊張感のない……対峙していて、やる気の削がれる刺客であろうか……。

「……というご所望だから、楓、それから茅。
 ……いくよ……」
 茅は頷き、楓は、
「……あ、あのぉ……」
 と言葉を濁した。
「茅は、とりあえず、鞄みておいて。
 楓、早く準備しろ。
 外見で判断するな。こいつら、『姫』である可能性が高い。
 油断していると、足下を掬われるぞ……」
 荒野が重ねていうと、楓はようやく頷いて、どこからか一連の六角を取り出した。紐で結ばれた六角は、重い鞭、としても扱える。
「茅の身は、極力守るつもりだけど……こいつらの戦力は未知数だから、いざという時は、できるだけ自分の身は自分で守ってくれ」
 荒野は「いざというときには、逃げろ」という意味を込めてそういった。
 茅は、
「大丈夫。茅、足手まといにはならないの……」
 と頷いた。

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髪長姫は最後に笑う。第五章(43)

第五章 「友と敵」(43)

 その日の放課後、荒野は珍しくマンドゴドラのマスターに電話で呼び出された。
「いやぁ。うちに今、君の知り合いらしい子が三人来ていてさぁ……」
 どのみち、この日は部活がなく、夕食の材料を買いにいく途中だった荒野は、足を早めた。「三人の子供」というのに心当たりはなかったが、今現在、マンドゴドラにいるというのなら、直接面談して確かめてみればいいだけの話しだ。

 マンドゴドラの喫茶コーナーには、確かに三人の子供がシートにちょこんと座っており、盛大にケーキを食べ散らかしている最中だった。
『……なんなんだ……この欠食児童たちは……』
 三人は、店内に入ってきた荒野に気づいた様子もなく、マスターとバイトの女子高生が差し出すケーキを片っ端から平らげている。
 その猛烈な食べ方から、荒野はなんとなく「飢えた野獣」という言葉を想起した。
「お。来た来た……」
 結局、荒野の来店に気づいたのは、三人よりもマスターのほうが先だった。
「いやあ。凄い食べっぷりだよな。鬼気迫るもんがあるっていうのか……。
 この子ら、君の知り合いか?」
「実の所、心当たりはないんですけど……」
 荒野はため息をついた。
「うちの遠縁、非常識なのが多いから、おれの知らない知り合いって可能性も、十分にあります……」
 マスターはしげしげと荒野の顔、特に頭髪のあたりを眺めた。
「……そういうもんなのか……なんか、君の所も複雑そうだな……」
「まあ、確かに単純ではないんですけど……」
 荒野はゆっくりと首を振った。
「……とりあえず、こいつらが食い散らかした分は、おれが払いますから……」
「ああ! いいんだいいんだ! これくらい!
 羽生さんが作っている今度の映像も、かなり出来がいいもんだし……」
 荒野は何度もマスターに頭を下げ、つかつかと相変わらず餓鬼のようにケーキを食い散らかしている三人にツカツカと歩み寄る。
 荒野だって人並み以上に甘いものは好きだ。だが、彼らのように下品な貪り方は流石にしない。もっと、味わって食べる。
 三人の口の回りにはべっとりとクリームが付着しており、三人の食べ方の品のなさを物語っていた。
『……いったい、どういう躾、受けてきたんだ、こいつら……』

 相変わらずケーキに顔の下半分を埋めるようにしている三人の背後に立った荒野は、「うほん」とわざとらしい咳払いをした。

 三人のうち、真ん中に座っていた子供が一瞬背後をちらりとみて、すぐにケーキに戻ろうとして……背中を、固めた。
 ギ、ギ、ギ……と錆び付いた擬音が聞こえそうなぎこちない動作で、荒野のほうに振り返る。
 目が、まん丸に見開かれていた。
「ん……どうした? ガク?」
 その真ん中の子供の異常を察知したのか、「ガク」の左側に座った子供が顔も向けずに声をかけた。こちらはこちらで、目前のケーキを平らげるのに余念がないらしい……。
「ガク」と呼ばれた子供は、震える手で荒野を指さし、
「……かのうこうや……」
 とだけ、呟いた。
「かのうこうやがどうしたって?」
 そういいながら、「ガク」の右側に座った子供が振り返り、「ガク」と同じように振り返り、荒野の顔をみて、硬直する。
「……か、かのうこうやじゃん!」
「ん? かのうこうやがどうしたって? さっきからうるさいな……」
「ガク」の左側の子供もようやく振り返り、がくん、と、顎がはずれんばかりに口を大きく開く。
「……ええと……おれ、その、加納荒野なんだけど……」
 荒野は、三人の子供たちに、精一杯の愛想笑いを送った。
「その加納荒野に、君たちは、一体なんの用があるのかな?」

 三人の子供たちは、いきなり目の前に現れた(ように、彼らには見えた)加納荒野の姿にすっかり度肝を抜かれた態で、しばらく、お互いに肘で隣の子をつつき合ったり、もじもじしたりしていた。
 荒野が彼らの返事を辛抱強く待っていると、ようやく真ん中の「ガク」が、他の二人に即される形で、
「……あ、あの!」
 と、直立不動になって叫んだ。
「お、おれたち! あなたたちを倒しに来ました!」
「……あのなぁ……君たち……」
 荒野は、深々とため息をついた。
 もちろん、何事かと様子をみているマンドゴドラのマスターたちへの芝居も考えている。
「なんのマンガに影響されたのか、どこの誰に吹き込まれたのか知らないが……。
 第一に、そういうことは、顔中クリームをつけていうことではない。
 第二に、ここ、マンドゴドラってお店の中だから。ちゃんとTPOってもの考える。おれに遊んで欲しいのなら、ちゃんといってくれればできるだけご希望に沿うけど……その前に、自分たちが食べ散らかした分の代金は、ちゃんと精算する。
 でないと、金輪際、相手してやらないよ……」

 三人が食い散らかしたケーキの代金を払っている間に、荒野は茅と楓に事の次第をメールで連絡した。
『……あんな奴ら、おれ一人で十分だけどな……』
 彼らは、歳恰好からいっても、茅とは別ヴァージョンの「姫」、三島のいうデザイン・ヒューマンである可能性が高い。正面から出てくる、ということはそれなりに「高性能」なのだろうが、いかんせん、間が抜けていた。
 なにせ、荒野の背後からの接近に、まるで気づかなかったくらいで……。
 そういう相手なら、どんなに能力が高くても、荒野はあしらう自信があった。
 実戦の場では、身体能力の高さよりも、経験の差のほうが雌雄を決する場合が、ままある。
 そして荒野は、若さに似合わず、実戦経験には不自由していなかった。

 マンドゴドラの店内から、
「えー!」
 という合唱が聞こえてきた。
 覗いてくると、レジの前で三人のお子様たちが泣きそうな顔をして困惑している。
「……こ、こうやさん、聞いてよ! この店、クレジットで引き落とし精算できないだよ!」
 荒野が様子を見に来たのに気づくと、ガクという子供が、荒野の胸に縋りついてきた。
「……お前ら……現金は、持っていないのか……」
 荒野は目眩を感じつつ、三人に確認する。
「も、もっているけど……全部合わせても、全然、足りない!」
 荒野は、レジのデジタル数字を慌てて確認する。
 総額……四万八千五百円。
 ……いったい、三人で、どれだけ平らげたら、こんな料金になるのか……。

 荒野は三人を店に待たせて、急いで最寄りのATMまで駆けていった。
 普段、三万円以上の現金を持つ習慣がなかったためである。
 マンドゴドラのマスターは「いいよいいよ」と言ってくれたが、三人のお子様たちへの手前もあり、荒野はそれくらいの手間は惜しまなかった。

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彼女はくノ一! 第五話 (1)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(1)

 野呂良太は高速に乗り、荒野たちの住む場所から数十キロほど離れたSAで一端車を止め、売店でコーヒーを求めて一服した。別段、うまい筈がないこんな所のコーヒーが飲みたかったわけではない。
 一月近く拘束された面倒な仕事をようやく片付け、どんな形でも良いから一息つきたい気分だっただけだ。
 煙草を二本、灰にする間、ゆっくりと休憩し、車に戻る。
 座席に座り、安全ベルトを締めて、エンジンをかけたところで、誰もいない筈の助手席から肩に手を置かれ、飛び上がらんばかりに驚いた。
「……のっらくぅぅぅぅん……」
 いつの間にか助手席に、「最強」二宮荒神が座っていた。
「つれないじゃないかぁ……挨拶の一つもなしで東京にとんぼ返りなんてぇ……」
「……こここ、これはどうも、荒神の旦那……」
 野呂良太は呂律が回らなくなるほどに緊張している。一族の関係者で荒神のことを知らない人間はモグリである。
 当然、野呂良太も、よーく知っている。
 荒神が……どんなことがあっても、敵に回してはならない存在だということを。
「い、いやなに。こちとらも貧乏暇なし、でして、次の仕事が詰まっておりましてね……」
「ふーん……そっかぁ……このぼくに挨拶できないほど忙しいの……。
 じゃあ、こっちも仕事、頼みづらいなあ……君向けの、新しい仕事、あるんだけど……」
「こここ、荒神さんの仕事を断るなんて滅相もない!
 他の仕事をさしおいても、やらせていただきます!」
 こういう言い方をされて断ったりしたら、後でどんなしっぺ返しを食らうか分からない相手だ。
「……是非、やらせてください!」
「……そういってくれると思ったよ、のら君……」
 荒神は目を細めてうっそりと呟いた。
「君に依頼したいのは、君好みの捜し物だ。
 行方不明の、加納仁明の所在を突き止めて欲しい。
 何分、ぼくら二宮は、調査とかまだるっこしいのが不得手でねぇ……」

「……送っていきましょうか?」
 すっかり下手にでている野呂良太だった。
「必要ない。
 じゃあ、仁明のことは頼んだよ」
 いうと、二宮荒神は助走もつけずに跳躍し、たまたま通りかかった四トントラックのコンテナの上に着地した。
 並の人間に可能な動作でもないし、荒神の動きは素早すぎたため、注意を払っていた野呂意外の人間の目には入らなかったようだ。荒神をコンテナの上に乗せたトラックは、野呂が来た方向、つまり、荒神や荒野たちが現在住んでいる町のほうへと流れていく。コンテナの上で、荒神は野呂に向かって暢気に手を振っていた。
『かなわねぇなぁ……旦那には……』
 野呂は自分の車に戻ってエンジンをかける。なにはともあれ、「荒神の仕事」である。手を抜くことはできないし、他の仕事よりは優先させたほうが良かった。
 ……自分の、身の安全のために……。

 一方、野呂良太に降ろされた三人は、物珍しそうにきょろきょろあたりを見回しながら、とりあえず人通りの多いほうに歩いていった。新しい住所である引っ越し先の地図は渡されていたし、くどいほど「この土地にきたら、真っ先にそこにいくように」と野呂良太には念を押されていたのだが、三人揃って目先の好奇心のほうが先に立つ性格であり、年頃でもあった。
「……都会だねぇ、ここ……人、いっぱい……」
「全然都会じゃねーだろ。みろよ。駅前だっていうのにシャッター、かなり降りているじゃん」
「……おなか減った」
「そっかー……でも、ボクたち、こんなに人多いところ、初めてじゃない……」
「そ、それは、今まで山にいたり、野呂さんの隠れ家に押し込められてたりしたから……」
「……おなか減った」
「見た感じ、道歩いている人、ボクらと同じだようにみえるけど……ちゃんと言葉しゃべるし、二本足でたっているし……」
「だから、大抵の人間は言葉しゃべるし、二本足で歩くものなの!」
「去年、三人で食ったクマも二本足で立っていたよねー……言葉はしゃべらなかったけど……」
「あー。お腹すいた……」
「……まったく、ガクはそればっかりだな……。じゃあ、お金ってやつ、いよいよ実際に使ってみるか……。
 あれ、たしかなんにでも交換できるって、野呂さんいってたろ?」
「……食べ物、って高いのかな? それに、どこで売っているの?」
「それは……こんだけ人がいるところだから、食べ物売っているところくらい、いくらでもあるだろう……」
「……あ……あった! 甘そうな匂い!」
「あっ! まてよガク! 追いかけろ! ノリ!」
「わかった! テンちゃんも急いで! ガク、足が速いから!」

 野呂に降ろされた三人の子供のうち、真っ先に駆け出したガクがたどり着いたのは、マンドゴドラの店頭だった。ようやくガクに追いついた他の二人は、ガクが店に入らず、店の前に棒立ちになっているのをみて、愕然とした。
『……ガクが……食べ物を目の前にして……他のことに気を取られている!!』
 ガクの人となりを熟知する他の二人からしてみれば、椿事、といってもいい。
 その店の中からは、砂糖とかクリームとかの、実に甘そうな匂いが漂ってくる。他の二人より嗅覚に優れるガクが、我慢できる匂いではない筈だった……。
 ノリとテンは顔を見合わせ、二人を代表してテンがガクに声をかけた。
「……どうしたんだ、ガク……お金、持っている筈だろう……」
 声をかけられたガクは、店内につり下げられている薄型液晶ディスプレイを指さした。

 その中では、猫耳装備の加納荒野と加納茅が、実に幸福そうな顔をしてケーキを食べている。

 その映像をみて、ガク意外の二人も流石に愕然とした。
「……これっ!」
「かのうこうやじゃん!」
 あの髪、あの風貌……。
 見間違いのしようがない。
 まぎれもなく、三人がこの土地に来た目標……が、……実に幸福そうな顔をしてケーキを食べていた。

 三人はお互いに顔を見合わせ、誰からともなく、
「中に入って、店の人に聞いてみよう」
 ということになった。

 中に入って……「かのうこうや」の名前を出すと、店の奥から厳つい顔の男の日とが出てきて、驚いたことに、
「なんだ、坊やたち。荒野君の知り合いか?
 そういや、可愛い子ばっかだな……。
 まあ、荒野君の友達ならケーキは好きに食べていってくれ。今日は……荒野君、部活の日じゃなかったよな? ちょっと今、電話してみるから」
 などといいだし、商品のケーキとグラスに入ったジュースをバイトの女子高生に用意させた。
 結果として、マンドゴドラの喫茶コーナーに通された三人は、荒野が駆けつけてくるまでそこに足止めにされた。
 次々と出されるケーキの誘惑に勝てなかったのだ。マンドゴドラのケーキは、それまで三人が食べたどんなものよりもおいしく感じられた。

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髪長姫は最後に笑う。第五章(42)

第五章 「友と敵」(42)

 そんなことをしているうちに一月も終わりに近づき、荒野たちは毎朝、平日はいつもの面子で登校していく。登校の必要がない週末や休日でも茅のランニングに付き合っているため、荒野の起床時刻は変わらない。毎日だいたい同じ時間に起きて、だいたい同じ時間に寝る。
 放課後、茅は部活のあるなしにかかわらず、学校の図書室に下校時刻ギリギリまで入り浸っている。荒野は、部活のある日は遅くなるが、それ以外の日は駅前商店街に寄って自炊のための材料を買って帰る。
 最初のうちは部活の時に使用する食材も買っていたが、最近では野球部や水泳部の連中が出来上がった料理を平らげていく代わりに食材を持ち寄ってくれるので、荒野自身が学校に材料を持ち込む量は以前よりは格段に減っている。このあたりは地方都市の郊外、というえば聞こえはいいが、要はこれといった地場産業のない田舎なわけで、そういった地域に住む運動部員の家は兼業農家が多かったりする。その関係で、市場価格の都合や形が悪かったりして売り物にならない作物には不自由しない。また、玉木のように商店を自営している家の生徒も数は少ないながらもそれなりに存在していて、現金のやりとりが一切ないわりには、材料に不自由しないようなシステムが自然に構築されつつあった。
「料理研は交代制にしでもして毎日部活を行うべきだ」などという無茶かつ勝手な要求をしてくる飢えた運動部員たちも多く、もちろん、荒野たちは彼らのために部活を行っているわけではないのでそのような要求は即座に却下しているのだが、自分たちの調理した料理がそれだけ良い反応をもって迎え入れられているとなると、やはり料理研の連中も俄然やる気になってくるわけで、以前にも増して研究熱心な生徒が増えてきたりしている。
 また、茅が放課後、図書室に入り浸っているように、放課後になると美術室に入り浸っている狩野香也のほうにも、幽霊部員たちが徐々に顔を出すようになってきていて、今度の週末はそうした連中が香也の絵を見にお隣に押し寄せてくる、とかいう話しも聞いていた。
 その話しを耳にした茅は、早速、新しいティーカップとティーソーサーのセットを新たに何客か注文して仕入れた。
 この間、紙コップに紅茶を注いだのが、茅にとってはよっぽど不本意だったらしい。
 マンションの前で集合して一緒に登校する面子に変わりはない。
 が、登校中、彼らに声をかけていく人数は日に日に増加しており、それは荒野たち転入生組の知り合いが増えてきたと言うこともあったし、それ以外に、香也たち元から学校に通っていた生徒たちにも新しい知り合いやらコネクションやらが増えてきた、ということでもある。
 例えば、学校にいく途中から荒野たちの集団に放送部の玉木珠美も合流するようになっていて、それまで自転車で通学していた玉木は明らかに荒野たちが通りかかる時間を調べ、それに合わせて家を出る時間を調整している節がある。
 何日か前の夜に荒野は玉木に「自分たちの事情についてあまり詳しい詮索はしてくれるな」とお願いをし、玉木も不承不承それに応じた筈だったが、かといって玉木の好奇心自体が消え失せるはずもなく、「いやぁ。君たち、一人一人それぞれに面白いからさあ」などと平然と笑いながら、玉木は公然と荒野たちと一緒にいる時間を増やしてそれとなく観察を続けているのであった。
 その玉木の関心は、夕方から夜にかけて狩野家に入り浸っている関係からか、最近では香也、楓、孫子の三人のほうにより重点が置かれているような気配があり、荒野にとっては自分や茅に興味を持たれるよりはそっちのほうがまだマシ、な筈ではあったが、楓の出現以来、なにかと迷惑をかけまくっている香也への心配も、それなりに増えているのであった。

 その玉木の話によると、ここ数日、毎日行われている玉木と羽生の動画編集作業もいよいよ終わりに近づいており、ちょうど今度の週末前後にケリがつく、という話しだった。
「……まあ、ラストの金曜日の夜あたりは、それで終わらなければ土曜いっぱいかけて終わらすけど……」
 玉木は登校中、荒野にそう説明した。
 一口に動画編集、といっても、演出や効果を考えてヒトコマ単位で操作する、とか、使える効果音や音楽のセレクトや入れるタイミングが、などと、玉木は荒野には良く理解できない世界の話しを喜々として語った。
「……しかし、そうなると、ちょうどこっちが終わる頃に絵描き君のお客が来ることになるなぁ……」
 一通り、羽生の部屋で自分がやっていることを説明し終わると、玉木はそんな風に嘯いた。荒野と区別する必要もあって、それに茅の呼び方にならって、玉木は、最近では香也のことを「絵描き君」と呼ぶようになっている。
「……それだけ人が集まる、ということになると……」
 孫子がちらりと飯島舞花に目線を走らせると、
「ああ。当然、わたしらもいく。
 多分、柏や堺も……」
 舞花は片手を挙げて応じた。
「……なんかそこいらへんの連中、なにかあるとすぐに集まってくるよなぁ……」
「いいじゃないか、お兄さん……みんなキレイドコロだし、料理うまいし……」
「自分でキレイドコロっていうなよ……そういや、玉木。
 お前、なんか料理作れるの?」
 荒野がいつものような舞花とのじゃれ合いを中断して玉木に水を向けると、
「わはははは。やだなぁ、カッコいいほうのこーや君!
 わたしに料理をさせると、食中毒患者が大量生産されたりしちゃうぞ!」
 などと、とんでもなく不吉な事を請け負ったりする。
 リアクションに困ったので、荒野は、
「そうかそうか……」
 と、とりあえず、頷いておいたら、玉木は、
「あー。どうせみんな集まるんなら、狭間先輩とかトクツー君とかも呼んで、DVDの完成会も兼ねようかなぁ……」
 などと言い出した。
「徳川を呼ぶなら、浅黄も連れてくるようにいうの」
 それまで荒野の横で黙って聞いていた茅が、突然、玉木に向かってしゃべり出す。
「はいはい。そうしましょー……」
 玉木は茅の要求に、軽い調子で答えていた。

 つまり、一月がそそろそろ終わりに近づいたこの頃、荒野の周囲は極めて平穏であり、荒野はそうした平穏な日々に、それなりに……いや、かなり満足していた。
『……この平穏さが、いつまでも続けばいいなぁ……』
 とは荒野も思ってはいたが、そういう願望は大抵、適わないものだということも、承知していた。

 事実、この一月の末の平穏は、主として二つの原因によってすぐに破られることになる。

 ひとつは、「バレンタイン・デー」が近づいてきたため。
 もうひとつには、この町に、新たに三人の住人が移住してきたために。

 この三人のことを、荒野は、後に「恐るべき子供たち」と呼んだ。

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彼女はくノ一! 第五話 (0)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(0)

「で……ぼくたちは、その加納本家直系が擁する二人を圧倒すればいいってわけ?」
「そうらしいな」
「なんだよ、野呂さん。やる気のない返事だなぁ……」
「……あいつらとはちょっと因縁があってな……。
 正直、ここまで案内するのも、あんま、気が進まないんだ……」
「あいつら? 本家の直系は分かるけど……女のほうにも?」
「ああ。昨年末、ちょっと売り込みに行った……。
 あの時はまさか、お前らのお守りを押しつけられるとは思わなかったからなぁ……」
「別にいいじゃん。うちの年寄りどもから、たんまりギャラふんだくっているんでしょ?」
「お前らのお守りなんざ、はした金じゃあ割に合わねぇって……。
 今までおれがどれほど苦労したと……」
「そんな情けない声ださないで欲しいなぁ……。
 こんなに可愛い子ばっかで、嬉しかったでしょ?」
「そういう台詞はあと十年たってから言え。
 ガキが別嬪でなにが嬉しい……」
「あ。今、ガキっていった……後でいじめてやろう……」
「後で、は、なしだ。おれは、お前ら降ろしたらとっととずらかる。
 荒野たちだけならまだしも、ここいら、最近は最強とか姉とか、性質の悪い奴らの巣窟になっているんだ……。
 もう料金分の仕事はしたし、どいつもこいつも、料金外の仕事で関わりになりたくない連中なんでね……」
「野呂さん……本当にいっちゃうの? ここでお別れ?」
「お別れ、だ。しがない雇われ稼業の身でな……。
 今度会うときは敵になっているかも知れねぇな……」
「もうちょっといなよ。せめて、引っ越しが終わるまでは……」
「いいや。お前らも、そろそろ自分たちだけで生活する術を身につけるべきだ。
 基本的な社会ルールは十分に仕込んだから、後は、自分らで憶えろ。
 さあ、降りた降りた。おれが貰ったギャラでは、お前らに一般社会のルール教えて、この町に降ろすところまで、だ。
 加納が抱えているお前らの同類は、もう普通に学校に通うところにまでいっているって話しだぞ。お前らもさっさとそこまで慣れろ……。
 さ。降りた降りた……」

 預かった兄弟たちを指定された場所で降ろし、野呂良太は車を発進させ、数キロ走ってから適当な路肩に停車し、連絡用に渡された携帯で雇い主に「任務完了」の連絡を行った。今回野呂が引き受けた仕事はここまで、で、それ以上、やつらの面倒をみることも打診されたのだが、あまり深入りすると決定的に加納本家と敵対することになる、と判断した野呂は、その仕事は引き受けなかった。
『……それにしても……』
 この雇い主に対する最後の連絡を終えた後、野呂は車を発進させながら、心中で呟く。
『荒野のヤツも、あの姫さん世間に馴らすのに、あんな苦労したのかねぇ。
 まあ、だとしても……』

 ……あいつはたった一人、こっちは三人だもんなぁ……。

 三人の手のつけられないガキどもから解放された野呂良太は、東京方面に向けて車を走らせる。

[つづき]
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第四話 登場人物紹介

第四話 夢と希望の、新学期!
 登場人物紹介

狩野香也
 自分の趣味にひた走るだけでほとんどなにもしない主人公。

松島楓
 影が薄い。

才賀孫子
 香也と並んで「人気投票」ではダントツの強さを誇る。
 リアクションの傾向とかが分かりやすいので、書きやすいキャラではある。

加納荒野
 見事に周囲に振り回されている心配性のおにーさん。

加納茅
 この子はどんな突拍子のない言動をさせても不自然ではないので、重宝していると言えば重宝している。
 「人気投票」では荒野とタメ位置保持だが、カップリング投票とかあると多少は上にいくのかな?

三島百合香
 学校編が始まって出番が減った人。
 もともと荒野のフォローが主な役割だったから、荒野が日本の生活に慣れてきた時点では、なかなか出しにくい。

羽生譲
 香也、楓、孫子の同居人。
 動かしやすいキャラということもあって、この人の出番はなかなか減らない。

樋口明日樹
 香也の常識人な先輩。

柏あんな
 香也のクラスメイト。
 目立たないが、割と香也や狩野家の人々をフォローしている。

堺雅史
 柏あんなの幼なじみで彼氏。 加えて、最近では香也の友人。
 香也とは割とうまが会うようだ。

飯島舞花&栗田精一
 最近では、登下校の時とかしか出番がないような……。

樋口大樹
 ……えーとぉ……。
 誰だっけ、こいつ?

二宮浩司(荒神)
 本業の都合もあって、荒神はかなり留守がち。
 浩司先生の勤務態度と授業出席率は、かなりいいようです。
 出番が少ないのは仕様です。
 ……だって、コイツが本気で暴れ出したら、ほかの年少組、出番ないよ……。

大清水潔
 教師。
 荒野と孫子のクラスの担任。

岩崎硝子
 教師。
 香也、楓、茅のクラスの担任。

シルヴィ・姉
 幼少時、荒野が預けられていた家庭で姉代わりをしていた人。
 彼女が活躍するのはこれからさ。

佐久間沙織
 「学園物やるのなら、一人ぐらい上級生キャラいれるべきだろう」ということで急遽登板が決定したキャラ。
 本人の出番は少ないが、おじいちゃん連れてきたり、荒野や孫子への部活の斡旋など、物語に与えた影響力はそれなりに大きい。

佐久間源吉
 狭間沙織の祖父。六主家の一人、佐久間の一員。昔、加納涼治とつるんでいたらしい。書類上では、既に死亡したことになっている。
 たまに、日曜日などに沙織と一緒に荒野たちのマンションに立ち寄る。

玉木珠美
 放送部部長。「女子アナ志望」と印刷された手製の名刺を常に携帯している。
 面白くて弄り甲斐のある人たちが好き。
 荒野たちは、彼女の嗜好に見事なまでに適合している。

有働勇作
 口数が少ない大柄な放送部の男子生徒。玉木と行動を共にすることが多く、玉木の避雷針役としてさまざまな苦難に遭う。

徳川篤朗
 特定の分野に特化したタイプの天才児。囲碁将棋部所属。
 沙織の計らいで、孫子と囲碁勝負することに。
 本人より姪とか猫とかのほうが重要なキャラ、という説もある。

徳川浅黄
 篤朗の姉の娘。現時点で四歳。篤朗の姉が留守をする時には、篤朗が預かることになっている。
 茅と意気投合し、いい友人になる。
 「奉仕戦隊メイドール3」という特撮番組のファン。

狩野真理
 うわぁ!
 最近、「たまーに名前がでてくる」、くらいの扱いになってるぅ!

柊誠二
 ナンパが趣味、異性命、な男子生徒。でも、特定の女生と親しくしているところは目撃されたことがない。
 香也のクラスメイト。

羽田歩
 香也のクラスメイト。押しが弱い性格が災いして、クラス委員を押しつけられている。

牧野と矢島
 香也のクラスメイトの女生徒。マン研所属。羽生譲を師匠と仰いでいる。楓と仲がいい。

旺杜臨
 美術教師。美術部の顧問でもある。
 絵を描くことよりも写真に凝っている。部活はほとんど放任状態。


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髪長姫は最後に笑う。第五章(41)

第五章 「友と敵」(41)

 もう少し残って作業をしていく、という玉木を残して狩野家を辞し、荒野と茅はマンションに戻った。
 明日も平日であり、通常の通りに通学しなければならない。そのためには、そろそろ風呂や就寝の準備をしなければならない時間となっていた。いつもは夕食の前に風呂を使うのだが、今夜は荒野がマンドゴドラに寄ったおかげで「食事後、狩野家に向かう」ということになってしまった関係で、食後、就寝までに時間を置くためにも、あえて風呂を後回しにした。
 湯船にお湯を張る間、特にすることもなかったので、二人でリビングのソファに座って観たくもないテレビをつける。二人ともノートパソコンはお隣りの羽生の部屋でLAN環境の材料として提供したままだったし、学校に通うようになってから、茅は、マンションから距離のある市立図書館から本を借りてくるのも止めていたため、他に適当な時間の潰し方もないのであった。また、いつもなら茅が紅茶をいれるところだったが、今夜は夕食後にケーキとお茶を胃に入れ、それに時間的にも遅かったので、新たに飲食する気にもなれなかった。
 茅は、二人でテレビを観るときいつもそうするように、荒野の膝の上に乗りながら、リモコンで適当にチャンネルをザッピングする。興味の持てる番組をやっていなかったのか、茅はかなり頻繁にチャンネルを変えていた。荒野も、もとよりテレビをみる習慣があるわけではなく、特にみたい番組があるわけでもなかったので、茅のしたいようにさせていた。
「……荒野……」
 そのうち、チャンネルを変え続けるのにもあきたのか、茅が荒野の胸に自分の頭を押しつけ、体重を預けて下から荒野の顔を覗き込んだ。
「……ん?」
「わたしたち……わたしと荒野、楓と才賀……いろいろあったけど、今のところ、うまくいっていると思うの……」
「そうだな」
 特に考えることもなく、荒野は同意した。
 荒野が孫子の事まで心配する余裕がある……というこは、裏返せば、それだけ平和だ、ということだった。
 ここのところ、一族の干渉は途絶えている……と、思った所で、荒野は、茅のいいたいことがおぼろげにわかったような気がした。
「……つまり……そろそろ、新たな動きがあってもいい頃だと、茅はいいたいのか?」
 荒野の言葉に、茅は頷いた。

 野呂良太、二宮荒神、シルヴィ・姉、佐久間源吉……これら、一族の者の出現と干渉は、荒野たちの生活が落ち着いた頃を見計らったようなタイミングで起こっている。荒野は、その全てが、とはいわないが、その半分くらいは、涼治がコントロールして意図的に手引きしているのではないか、と、疑っている。
「そうだな……そろそろ、そういう動きがあってもいい頃だよな……」
 最近では、荒野たちも、転入先の学校でもそれなりに友人が増え、新しい環境にもかなり慣れた。
 今までの例から考えれば、そろそろ新しい動きがあってもおかしくない……。
「今度は……どんなやつらが、どんな手で干渉してくるのかなぁ……」
 荒野は、茅に聞かせるため、というよりも、自分自身の思考をまとめるために呟く。
 三島などは、茅と同じような存在が別にいる可能性を示唆し、そいつらが、性能試験も兼ねて、茅に……ということは、茅を守ろうとしている荒野や楓も含めた一団に対して、ということを意味するのだが……挑戦してくる可能性を挙げていたが……そうした連中が、本格的に茅に向かってくるのは、時期的にみて、まだ早すぎるのではないか……と、荒野は思っている。
 茅がどんなに卓越した能力を示したとしても、一般人に紛れて普通に暮らせないようでは、所詮、使いどころはかなり限られてくるわけで……通常の「埋伏任務」一つ務まらないようでは、どんな能力の持ち主でも、忍びとしては、半人前以下なのだ。

 荒野は、茅に一族の手の者が差し向けられるのは、以下のようなパターンがあると考えている。
一、茅が、当初の予想以上に能力を開花させ、放置しておけば一族全体に害を及ぼす、と判断された時。
 この場合は、粛正が目的であるため、可能な限り戦力を充実させた刺客が送り込まれる筈だった。
二、茅が、単独でも「埋伏任務」を支障なく行うことが出来、なおかつ、他の一族以上の秀でた能力を持つに至った、と、判断された時。
 この場合は、文字通り「性能試験」であるから、茅の能力を推し量るための人材が送り込まれてくる。茅と同じような「姫」か、それとも、その任務をこなすために特化された、特殊な編成のチーム、だろう。
三、茅が、「二」の条件を満たしているかどうか、探りをいれる時。
 あるいは、
四、茅が潜在的にもっている筈の能力を引き出すための、いわば、「当て馬」ないしは「噛ませ犬」として。
 この「三」と「四」の場合も、送り込まれるのは、「二」と同じように、その任務をこなすために特化された、特殊な編成のチーム……に、なる筈だった。

 今の時点では、茅はまだ、潜在的な能力を全て開花させていない。
 今の茅に特筆すべき能力があるとすれば、荒野が知っている限りでは、完璧な記憶力と知力、くらいなもので……源吉の例を観ればわかるように、佐久間の名を継いだ人間なら、その程度の能力は当然のように持っている。しかも茅は、普通の佐久間なら当然習得している筈の技や術を憶えていないから、実力としては佐久間以下、の筈で……その程度の存在を、わざわざ力づくで潰しにかかってくる、とも、思えなかった。
 ということは、今の時点で干渉されるとすれば、本格的に茅を潰すため、試すため、というよりは、探りをいれたり、良い刺激を与えるのが目的の筈で……。
 だから、荒野は、あまり心配はしていない。

 荒野はそんなことを考えながら、その場で茅に話す。話しているうちにそろそろ風呂に入る頃合いになったので、二人で湯船につかり、話しの続きをしながらゆっくりと湯に浸る。
 茅は、荒野の推測を一通り聞いた後、特に異論を挟むことなく、首肯する。
 大筋では、茅も同じような予測をしていたようで、それを確認するために荒野の考えを尋ねたようだった。

 当初、ここに来たばかりの頃、荒野は、全てを自分で考えなくてはならなかった。
 茅が来て、楓も来たが……それでも最初の頃は、荒野だけが考えて、決断していた。
 だが、今では、こうして茅と二人で、予測や意見を交換できる……。

 茅と一緒に肩までお湯につかりながら、荒野は、
『それだけでも……随分と気が楽になったよなぁ……』
 と、思った。
 今では、茅は、名実共に荒野のパートナーだった。

 その夜、二人で長湯しながら、いろいろなことを話し合った。

[つづき]
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