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「髪長姫は最後に笑う。」 第六章(83)

第六章 「血と技」(83)

「……宅配?」
 荒野は眉を顰める。
 あんまり夕食が遅くなるのも……ということで、孫子が作った書類やデータ類は後で見ることにして、食事をしながら概略だけを口頭で語って貰うことになった。
 炬燵の周りには、狩野家の住人に荒野と茅、三島百合香、飯島舞花、栗田精一、樋口明日香、徳川篤朗と浅黄、加えて、田中太郎、佐藤大介、鈴木友哉、高橋一も当たり前の顔をして加わっている。食事の材料である蟹を大量に買い付けてきたので、羽生譲やテン、ガクなどは、四人組の存在を歓迎している節があった。
 ……ま、いいけどな……と、荒野は思う。
「正確には、地域密着型の、宅配です」
 孫子は頷く。
「古い言い方をすれば、ご用聞きですね。商店街と契約した個人宅を結び、一軒一軒の要望を聞いて、注文のあった商品を配送する……。
 似たようなサービスは、一部コンビニでも初めているそうですが……商店街全体とコンビニとでは、品揃えが違います。また、日中のうちに商品を発注しておけば、深夜など、時間指定で配送が可能……というシステムにすれば、商店街全体の売り上げも増えます。
 不動産の確保は必要ですが、事務用品や車両などの備品は、才賀の系列会社で使い古した余剰品を安く譲って貰えるように交渉します。
 個人宅まで出張して、商品の配送と、細かい要望に応える、というサービスをして、加盟店と個人顧客から、対価を頂く……というシステムを、構築します」
「……幸い、なんやかんやで、カッコいいこーや君たち、商店街でもかなり好印象だしさ……」
 一足先に孫子の構想を聞いていた玉木が、つけ加える。
「……一時的なイベントもいいけど、今度のは、恒常的にじわじわと売り上げ、のばせるわけでしょ? 世帯の人数や構成にもよるけど、毎日のお買い物、食事の材料とか総菜とか、真面目にやってたら結構な荷物になるし……そういうの、頼めば家まで運んでくれる……ということになったら、全体的な売り上げが、確かに底上げしていくと思う……」
 ……荒野にとっても、実感を持って頷きたくなる意見だった。
「兵站……ロジスティックは、才賀グループが得意とする分野ですから……わたくしも、それなりに蓄積したノウハウを教えられていますし……必要な備品類も、調達しやすいです。
 それと、社員は出来るだけ、減らして、実働要員は、登録制にしようかと思っています。人件費の削減、ということもありますが、人の出入りが多少激しくなっても、怪しまれないように……」
 孫子の言葉を受けて、荒野は、しばらく考え、頷いた。
「特に、反対する理由はみつからないな……。
 確かに、田中君と佐藤君みたいに、無職の一族がこっちに居つこうとしたら、かっこうの隠れ蓑になる……」
「それに……人材派遣会社、として登記を行っておけば、現在やっているようなイベントなど、突発的に人手が増える時にも、対応できます」
「近郊の農家なんかも……農繁期だけ人手が欲しい、っていう所、捜せばあると思うし……。農業、慣れないとキツイから、なかなか人が居つかないんだけど……その点、一族の人なんかは全然楽勝でしょう?」
 玉木がそういうのは、学校の友人の中で、専業や兼業の農家が意外に多いからだった。この辺は、駅の近辺や国道沿いは、それなりに背の高い建物が建っているが、そうした地区から少しでも外れれば、まだまだ農地が多い土地柄だ。
「確かに……その程度の肉体労働で根をあげる一族は……いたとしても、ごく少数だけど……」
 時間給いくらで、農業に従事する一族……そんな発想をまるで持たなかった荒野は、目を開閉させながら、またも頷く。
 荒野は、戸惑ってはいるが……孫子の構想を否定する材料を思いつかなかった。
「……ただ、たった一つだけ、問題が……」
「……大丈夫だよ、才賀さん。
 聞けば、カッコいいこーや君なら、十分にクリア可能だって話しじゃないか……」
 わざとらしく俯く孫子。そして、芝居がかった動作で、孫子の肩に手を当てる玉木……。
『……こいつら……』
 荒野は思った。
『結託して……あらかじめ、打ち合わせしておいたな……』
「いいよ……。
 とりあえず、いってみろよ、その問題とやら……」
 荒野は、半ば観念して、そういった。
「事業を興す時に不可欠な物、といったら、相場が決まっています」
「お金。資本金。おぜぜ。おあし……」
「……で、おれの蓄えを、宛てにしたいと……」
 ほぼ予想通りの答えだったので、荒野はため息をついた。
「……どうしても、いやだ、というわけではないけど……。
 才賀。鋼蔵さんに資産凍結されたといっても……お前も、それでもいくらかは用意できるようなこと、いってなかったか……」
 羽生の見積もりでは、孫子の持ち物は、ン十万とかン百万単位の高級品が平然と転がっている、とかいうことだった。それらを全て処分すれば、それなりの金額にはなる筈だった。
「わたくしも、もちろん、手持ちの物を現金化いたしますわ……。
 ですが、そちらの投資先は、もう決まっています。
 それに……あまりいいたくはありませんが、もともと、一族の問題、でしょう。一族が、果たして、この町で一般人と共存できるのか、という……。
 あまりわたくしたちに頼りすぎるのも……」
「……ちょっと、待て!」
 非常にイヤな予感がして、荒野は、孫子の言葉を遮った。
 後者……「一族の問題」うんぬんの話題は、別にいい。荒野にしてみても、正論であるように、思える。
 問題は、前者、「孫子の新しい投資先」について、だ。
 荒野には、初耳だったし……玉木が孫子の構想を後押しするような態度をとっていることと合わせ……非常に、イヤな予感がした……。
「その……才賀の、新しい投資先って……」
 それでも、荒野は聞き返さない訳にはいかなかった。
 すると、こちらの話題には参加せず、賑やかにカニ尽くしな食卓で争奪戦を続行中だったテン、ガク、三島百合香、羽生譲、加えて、田中太郎、佐藤大介、鈴木友哉、高橋一の四人組までもが、一斉に手を止めて、荒野の方に振り返り、
「「「「「「「……しるばぁ~、がぁ~るず!!」」」」」」」
 と、声を揃えた。

 荒野は、くらくらっと目眩がするのを自覚した。




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彼女はくノ一! 第五話 (166)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(166)

「実際のところ……どうするよ、おい……。
 ここまでのもんとは、正直……」
「どうするって……やるだけだろ、ここまで来たら……」
「……抜けるなら抜けろよ……おれは、一人でもやるぜ……」
「……能力的に劣勢でも、それをカバーする方法はいくらでもあるだろう……」
 四人組の会話が漏れ聞こえて来る中、孫子はどこかシラケた気分になってきた。
 荒野のいうとおり……所詮、たいしたことのない連中なのか……。

 少し離れた所では、ヘルメットを外したテンがパイプ椅子に座らされ、メイクカ係の女生徒に顔を直されていた。
「……いやー、まだ、パイロットフィルムを作成中、って段階だったんだけどさ……」
 いつの間にか、玉木が孫子のすぐ横に来ている。
「……ブルーバック合成用の素材とかは、この中で撮ることも考えていたので、機材や消耗品の調達とかは、前倒しでしてたんだよねー……」
「前にも少し話しを聞いていましたけど……これ、本当に作るつもりでしたの?」
「……うーん……。
 テンちゃんたちもノッてたし、近場の人たちに声をかけたら、割に感触がよくてな、これはいけるかなぁ、と……。
 あのテンの装備もな、大元の部分はテンちゃん自身が作ったもんだけど、塗装とか細かいアクセサリー類は、知り合いの知り合い、みたいな人に頼み込んでやってもらってるんだ……」
「……そんなお金……どこから……」
「そこは、それ、気は心というやつで……例えば、原型職人さんなんかは、版権とか設定資料を優先的に回す、という約束とバーターでお手伝いしてもらう、とか……後回しにできる人件費は、とことん後回しにして……」
「人件費はともかく……ツールとか機材の費用は……」
 玉木は、孫子から目を逸らした。
「その辺は……トクツー君とか……茅ちゃんとか楓ちゃんに、頼んで……英語圏のフリーソフトで、使えそうなものダウンしてインストールして貰って、簡単なマニュアルも整備して貰って……」
 孫子は、目を閉じて、軽いため息をついた。
「……それ、将来的には、採算がとれそうですの?」
「……とります!
 コンテンツそのもののクオリティについては、手前味噌を差し引いても自信があるし、関連グッズも売って見せます!」
 どうやら、玉木はそれなりにシビアなビジネスとしても、考えているようだった。
「……自信が、あると……」
「なければ、ここまで大勢の人を動かせません……」
「……わかりました。
 後で資料とか、今の時点で出来上がった映像を見せてください」
「……ええと……」
「場合によっては、わたくしがスポンサーになることも、考えます……」
「ええ!」
「……ちょうど、学生の身分でも可能な、投資先を探していたところです。今のわたくしには、せいぜい数百万単位のお金しか用意できませんが……こうしたインディーズ系の製作費として、それでも……」
「……ええ! かなり、助かります!」
「……まだ、投資すると決めた訳ではありませんので……」

「……そっちの用意は、いいか?」
 四人の中で、一番小さな少年がいう。
「こっちは、全員腹を括ったぜ……」
「……ボクは、いつでもいいけど……」
 テンは椅子から立ち上がって、周囲を見渡す。
「でも……関係ない人たちは、どこかに退避していたほうがいいと思う……」
『……放送部も才賀も、一度事務所に引っ込むといいのだ』
 スピーカーを通した徳川の声が響いた。
『どのみち、手持ちでは奴らの動きは追えないのだ。
 それに、工場内に設置したカメラを操作してくれると、助かるのだ……』
「……一時、撤退!」
 数秒考えて、玉木が決断する。
「アップは、後で撮って編集すればいい!
 機材や人を壊されたら、後が続かない!」
 玉木や孫子、放送部の面々が、ぞろぞろと事務所として使われているプレハブ内に退避する。

「……なんだか、妙な具合になりましたが……」
 四人の中で一番体格がいい少年が、テンの前に進み出る。
「……行きます……」
「いいよ。いつでも……」
 テンは、六節棍を構えた。
「……四人同時に、でも……武器を使っても……」
「……もちろん……」
 少年は、手首だけを動かし、テンに向かって、ある物体を投げつけた。
「道具をつかわなければ、太刀打ちできませんから!」
 テンは、投げ付けられた物体を、反射的に棍で払う。
 と……。
 その物体が、弾けた。

 徳川の事務所に入り、先程まで編集作業を行っていたパソコンの前に座る。徳川がセッティングしていたらしくパソコンの画面には、工場内の光景が映し出されている。
「……けむり……玉?」
 その画面をみた玉木が、ぼうぜんと呟いた。
 画面の中では、テンの周囲にだけが、白い気体に包まれている。商店街でのことがまだ記憶に新しいこの時点で、玉木にとっては、あまり愉快な光景ではない。
「……視界を、潰す……。
 相手の感覚器を無効にするのは、それなりに理に適った方法なのだ……」
 徳川が、したり顔で解説する。
 それより……。
「……カメラ、もっとアップにして!
 こんな遠くからでは、よく分からない!」
「……今……ええと、こうか……」
 初めて触れる操作系に戸惑いながら、放送部員の一人がカメラを操作して、立ちのぼった煙の周辺を、アップにする。
「……ああ!」
 玉木が、うめいた。
 煙の周辺では、四人が、高速で移動しながら、立て続けに「何か」を投げ込んでいた。
「このままでは……やられちゃう!」
 不用意に、テンに近づき過ぎるのは、危険……と判断し、遠巻きに攻撃することを選択したのだろう。
「普通なら、な……しかし……」
 徳川が、にやりと笑った。
 そしてマイクのスイッチをオンにして、叫ぶ。
「……テン、いつまで遊んでおるのか!
 装備の評価試験は後にしろ!」

『……テン、いつまで遊んでおるのか!
 装備の評価試験は後にしろ!』
 あたりはすっかり、煙で覆われ、視界はゼロ距離。
 とっさにバイザーを降ろして、密閉態勢に移ったが、ボンベを背負ってきていないので、かなり息苦しい。完全に呼吸ができないよりは遥かにマシだが、フィルターで濾してから外気を取り込むので、効率が悪いし、第一、自分の呼吸音がうるさく響く。
 煙で目を潰して、ほぼ同時に、鎖が体中に巻き付いていた。その上で、プロテクターに手裏剣や六角が当たる音と感触。しかし、楓の攻撃を見慣れているテンにとっては、それらは、とても軽やかに感じた。
『……簡単に、いってくれるよな……』
 テンは、思う。
 一族も……荒野が常々いっているように……弱いなら弱いなりに、工夫をする……。
『……でも……』
 今までは、相手の出方を確認したかったので、あえて攻撃を受け止めてきたが……。
『いくよ……』
 テンが、手首の内側にあるボタンを手探りで操作すると……プロテクターが爆発した。

 ぼんっ!、ぼん!、という音がして唐突に、煙の中から、「なにか」が複数、飛び出してきた。
「……おわっ!」
「なんじゃ、こりゃ!」
 煙……テンの周囲をぐるぐると回りながら、ありったけの武器を投げ込んでいた少年たちは、足を止め、すんでのところでそれを躱す。

「……才賀経由で、炸薬が入手できたのでな……」
 徳川が、滔々と解説した。
「前回のガクの件もあったので、いつでも装甲をパージできるようにしておいたのだ。
 ……こういう使い方をするとは、思わなかったが……」

 ……最後に、大きな固まりが、煙の中から飛び出した。
「……今度は……」
 身軽になり、棍を構えた、テンだった。
「……こっちの番!」




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「髪長姫は最後に笑う。」 第六章(82)

第六章 「血と技」(82)

「……さっき、才賀にこなかけて殴られていたのが、田中君」
「……ういっす……」
 書類上、田中太郎、という姓名になっている少年は、今だに赤さが消えない鼻をさすりながら、もう片方の手をあげる。
 荒野は、茅から手渡されたプリントアウトをめくって先を続けた。
「それで、そっちのややごついのが、佐藤大介君……」
「……うっす!」
 荒野に名を呼ばれた少年が、直立不動になる。
 身長は荒野とさして変わらないが、肩ががっちりとして胸板が厚い。
 彼の印象を一言で表現すると、「みていると、あつぐるしい」ということになる。返答の仕方まで、外見に似て体育会系だった。
『……軟派な田中に、硬派な佐藤……か……』
 と、荒野は二人の印象を脳裏に刻み込んだ。
「……で、こっちの平安貴族みたいな顔をしているのが、鈴木友哉君……」
「……よろしくお願いします……」
 鈴木君は、おっとりとした動作で、頭を下げる。
「で、残ったちっこいのが、高橋一……と……」
「……なんでおれだけ呼び捨てなんだよ……」
 む、っとした表情で、「高橋君」が、荒野を睨む。
 しかし、高橋君は背が小さい上に童顔であったため、まるで迫力がなかった。それどころか……。
「……ショタ系、キタッー!」
 いつの間にか「高橋君」の背後に忍びよっていた三島百合香が、背後から「高橋君」の首に抱きつく。
「な、な、な、荒野! この可愛いの、こっちにまわせってーのー!」
「……わっ! なんだ、これ! 耳に舌入れるな! 変なところ触るな! 息吹きかけるなぁ!」
「……よいではないか、よいではないか……」
「……あー。
 先生も、こんなところ勝手に発情して、おっぱじめないように。
 未成年の人目もあるし、それに、食事前だ。
 それからな、高橋一。君だけ呼び捨てなのは、この中で、おれより年下は君しかいないからだ。
 ええと……ねんこーじょれつ、っていったっけ? 日本ではそういうのに重きを置いて、敬称も呼び分けるんだろ?」
「……はつじょーって、なーに?」
「それは、大人になればいやでも分かることだから、今は教えないのだ。後の楽しみにとっておくのだ……」
 姪である浅黄の無邪気な問いかけに、徳川篤朗がしたり顔で答えていた。
「ってか……こいつらも、来てるし……」
「……あとな……新しく来た四人に言っておくけど……この紙の束、なんだか分かるか?
 君達と同じように、興味本位でこっちに向かっている一族関係者のデータ・リスト……竜斎さんと中臣さんが、送ってくれたもんだ。
 みろよ、この厚さ……」
 荒野は、ばらばらーっとプリントアウトした紙の束を指でめくる。
「……たまたま君達が、第一号なったったけど……まだ、こんだけの人が、ここにくるわけ……。
 だから、な。
 おれがいいたいことは、たったひとつだ。
 面倒を、起こすな。おれの手を、煩わすな……。
 おれからは、以上……さあ、メシにしよう……」

「……せんせー、ちょっと味みてくださいー……」
 ちょうど、その時、楓が台所から三島を呼ぶ。
「おーし。今いくー」
 三島はそれまで取り付いていた高橋君からあっさりと身を離し、台所に向かった。
「……な、なんなんだ……あの女……」
 ようやく起き上がった高橋君が、着衣の乱れを直しながら、そういった。
「うちの学校の養護教諭だ。同時に、うちのじじいが雇った報告者でもある」
 荒野がそう告げると、三島君だけではなく、新参者の四人全員が目を丸くする。
「……先生だぁ……あれが……教育者……」
「おれ……せいぜい、タメだと思った……」
「奥が深いっす……」
 呆然とし、そんなことを呟きあう四人。
「……他の先生方はマトモだから、安心するといいのだ……」
 炬燵にあたっていた徳川篤朗がそう口を挟んだが、その徳川にしてからが、白衣姿で頭に太った黒猫を乗せているので、まるで説得力がない。
「……タメ、といえばだな……。
 この書類によると、高橋君は、テンたちと同学年じゃないのか?
 学校の方はどうするつもりだ?」
 荒野は、より事務的な方向に話を代える。
「……あ。はい」
 いきなり荒野に話しかけられた高橋君は、直立不動になった。
「その辺は、うまく……そこにいる佐藤さんの身内、ということで、近くに同居する予定です。
 実際、遠縁に当たるそうですし……」
 荒野は、
『……似なくて、よかったな……』と思ったが、口にはださなかった。
「……その、佐藤君と高橋君が、二宮で……田中君と鈴木君が野呂かぁ……」
「……そうっす! 一族の幼年キャンプで知り合いました!」
 ごつい佐藤君が直立不動のまま、大声を張り上げる。
「で……高橋君は四月から学校に通う、として……。
 他の人達の、表向きの身分は? 他の三人も、学生? それとも、どっかに職を持っているの?」
 佐藤、田中、鈴木の三名は、高橋君よりも年長で、学生であっても働いていてもおかしくない年齢だった。また、一族の者も、大半は、表向きの職業を持っているの。
「……ぼくは、一応、学生です……」
 下ぶくれ顔で目が細い鈴木君は、片手をあげる。
「一応、地元の国立で、そろそろ就職活動をしなければならない時期なんですが……」
 そういって鈴木君は、聞き覚えのある学校名を告げた。
「……なんだ、地元じゃないか……」
 たしか……柏あんなの姉が、籍を置いている大学だ。荒野が拍子抜けしたようにいうと、
「一族は……全世界に散らばっていますから……」
 鈴木君は、そういって、頷いた。
「……長老が長年地固めしてきた土地、ですからね……。
 荒野さんの動きも、何げない顔をしてサポートしてくれている草も、多いと思います……」
 草、とは、古来、忍び全般を指す呼称の一種だが……ここでは、正体を徹底的に秘匿し、一般人として生活しながら情報収集に専念する、埋伏要員のことを指す。
 鈴木のいううとおり、表立って出てこない、微妙な世論操作、などでひそかにサポートされている気配は、荒野も感じていたが、「草」に対しては、その存在を徹底的に無視するのが一族としての礼節なので、荒野は素知らぬ顔をしている。
「……正体を明かさないだけで、この土地に根を張っている一族は、想像以上に多いのかもしれないね……」
 荒野は、そういって頷いただけだった。
 つい先程も、孫子から「一族には、非常識な者が多い」と指摘されたばかりだが……まともな社会常識を有しているのなら、すでに現場に回されて、ひっそりと自分の仕事をこなしているのである。
「残りの二人……田中君と佐藤君は?」
 荒野は、残った二人に尋ねる。
「……目下、無職であります!」
「フリーターっす……」
 しゃちほこばって答える佐藤君と、だるそうに呟く田中君。
『……本当に、好対照だな……』
 荒野は、二人の様子をみて、そう思う。
「……田中君はともかく……佐藤君は、高橋君の分もお金が必要になるからな……。
 ……玉木か徳川、なんか、手頃な仕事のあて、ない?
 就職が駄目なら、バイトでもいいけど……」
 特に面倒を見なければならない義理もないのだが……一応、手近にいた知り合いに聞いて見る。
「……それについては、わたくしに腹案があります……」
 何故か、声をかけられていない孫子が片手を上げた。
「……才賀……お前、ベンチャーは諦めたのでは……」
「……諦めては、いませんわ。以前、想定していたよりも、規模を縮小しなくてはならなくなっただけで……」
 孫子は、不敵な笑いを見せた。
「……地元にも、これから来る一族の人にも……メリットがあって、お金もまわる、アイデアです……」




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彼女はくノ一! 第五話 (165)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(165)

「……と、いう訳で、この場所を使わせてほしいのですが……」
 工場内に設置してある事務所で、孫子は、徳川篤朗に相談していた。
「わたしからも頼むよ、トクツー君……」
 孫子の隣で、玉木珠美も掌を合わせる。
「素材、どんどん撮影しておきたいんだ……」
「……それは構わないのだが……」
 徳川は、しげしげと孫子の手元をみた。
「なんで、才賀は……そんなものを持ち出しているのだ?」
 孫子は、工場に保管してあるライフルを持ち出して、弾倉を装着しているとことだった。
「念のための、保険です」
 孫子は、きっぱりと答えた。
「あの方たち、まだ完全に信用している訳ではありませんので……」
「……その分の料金はすでに頂いているから、好きに使えばいいのだ……」
 徳川は微妙な表情を作って無理に頷き、今度は玉川に向き直る。
「撮影するのは構わないが、ひとつ条件がある……」

「……撮影許可、でたー!」
 そう叫びながら玉川が出てくると、工場のあちこちで撮影機材の準備をしていた放送部の面々は、どっと沸いた。
「……メイク、上がりましたー!」
 別室で、テンを着替えさせていた放送部の女生徒が、盛装したテンの手を引いて現れる。
 ……おおっ! と、放送部員が、ざわめいた。
「……な、なんか、おかしいかな……これ?」
 あまり注目されることに慣れていないテンが、周囲の反応に、珍しく頬を染めて動揺している。もっとも、ヘルメットのバイザーで顔の上半分が隠れていたが……。

「……いい……」
 ぽつり、と、誰かが呟いた。
「なんつぅーか、あれ?
 可愛カッコいい?」
「やっぱ、ヒーローのコスチュームは、これくらい現実離れしてないとなー……」
「……こう、一見華奢な、細長い手足と、プロテクターとかメットとかの、丸みを帯びたフォルムとの対比が……」
「……あのねー、いいこと教えてあげよーかー……」
 玉木が、テンの耳元に口を寄せて、囁く。
「……この塗装案と、胸のエンブレムのデザイン、君の所のお兄ちゃんにやってもらったんだ……」
 塗装パターンについては、学校の休み時間に香也の教室に出向き、写真や三面図をみせて、簡単なラフをその場で描いて貰った。胸とヘルメットについているエンブレムについても、モチーフだけを指定して、香也に描いて貰ったデザインを元にして、立体化は、知り合いのフィギア原型師に作らせた。
 依頼したその場でケッチブックにちゃっちゃと描いてくれたくらいだから、香也の方は、あまり、熱心だったとは思えないのだが……少なくとも玉木は、嘘はいっていない。

「……おにいちゃんが……」
 玉木の言葉を聞いたテンは、自分の胸元、銀色のユニコーンをモチーフにしたエンブレムの上に、掌をあてる。
 その表情をみて、玉木が後ろ手に合図をして、カメラを回させる。玉木の意図をくみ取った部員が、慌ててカメラを構える。
「……この間のは、突発的だったから……。
 今回は、名乗りを上げるシーンからいってみようか?」
 玉木は、テンに言い聞かせるように、指示した。
「名乗り?」
 テンは、首を傾げる。
「メイドールでも、揃い踏みして、こう、しゅたっしゅた、とポーズつけて、名乗るじゃない?
 慈悲深きご奉仕のヒトガタ、メイドブラック!
 とか……」
 玉木は、弟や妹とたまに観ることがある特撮番組の決めポーズを、うろ覚えで真似して見せる。
 背後で、放送部員たちが笑いをかみ殺している気配がしたが、玉木は構わなかった。
「……ああ……ああいうの……。
 ちなみに、メイドブラックのポーズは、こうだけど……」
 テンはそういって、びゅん! びゅん! シュタッ! っと、手足を振り回し、
「……慈悲深きご奉仕のヒトガタ、メイドブラック!」
 っと、見栄を切った。
 玉木のがうろ覚えで、かつ、足元がふらついていたのに比べ、テンの決めポーズは振りが正確で、なおかつ、迫力がある。
 玉木の時は笑いをかみ殺していた放送部員たちも、一泊の間を置いて、「……おおっ……」と感嘆の声を上げながら、拍手しはじめた。
「……決めるなぁ、テンはちゃん……GJ!」
 玉木は、テンに向かって親指を突き出した。
「……その調子で、シルバーガールズの方もいってみよう!」
「……え? う、うん……。
 でも、台詞とか振りとかは……」
「その辺は……ほれ、適当に……」
 玉木は、テンから少し距離を置いて、はたはたと手を振る。
 ……どうやら、テン自身がアドリブで考えなくてはならない……。
『……ええと、さっき、技の一号、とか、いったし……プロテクターとメットに、黒と金の塗装が入っていたから……』
 テンは頭の中では忙しくさまざまなことを考えながら、六節棍を振り回す。
 体が、自然と、今朝、楓が棍を扱っていた時の動きをトレースしている。楓は、初めて棍を扱っていたので、無駄が多く実戦的な動きではなかったが、その分、見栄えがした。
「……知恵と技の戦士、シルバーガールズ、一号!」
 テンは、棍を肩の上に置き、名乗りを上げる。

 ……しばらく、誰も動かなかったし、何もいわなかった……。

「……すげぇ……」
「今、震えがきたよ……やばいよ、これ……」
「今の動き……やたら、迫力ねぇ……」
 数十秒後、ようやく固唾を呑んで見守っていた放送部員たちが、硬直から解けて口々にテンを賛美しはじめる。
「……玉木ぃ……これ、いけるよ、絶対!
 プロがやってるのより、迫力あるもん!」
「……でしょでしょ……」
 にやにや笑いが止らない玉木は、ひっきりなしに放送部員たちにVサインを送っている。

「……テン!」
 いつの間にか、五十メートルほど離れた場所に移動していた孫子が、テンに向けてライフルを構える。
 一旦、テンの周囲に集まりかけた放送部員たちが、わっと、テンから離れた。
「ウォーミングアップをお手伝いしますわ……。
 それから、玉木たちもよく観てなさい! いいデモンストレーションになりますわ!」
「……ライトアップ! テンちゃんに光源集中! カメラ、全部テンちゃんに向けて!」
 孫子の意図を察した玉木が、号令をかける。
 テンが、棍を構える。
 孫子が、引き金を引く。
 少し間を置いて、天井につるされたライトが、テンに集中した。
「……嘘だろう、おい……」
 カメラを構えていた放送部員が、呟く。
『嘘ではないのだ……』
 スピーカーを通した徳川の声が、工場内に響く。
『こっちのカメラ……急いで調達してきた、高画質、高精度、高性能のカメラにも……テンが、その棒切れで、ライフル弾を弾き飛ばしている映像を確認したのだ……』
 徳川は徳川で、事務所の中から様子を伺っていたらしい。
『……テン、その棒は、もうボロボロだ。スペアはいくらでもあるから、替えるといいのだ。新品の方が、撮影映えもするのだ……』

 銃口を降ろした孫子は、つかつかとテンたちの方に歩いてくる。
「……みてのとおり、こちらの準備はもう終わりますけど……」
 途中、ここに来る途中で拾ってきた四人組が、目を見開いてテンの方をみて固まっているのに気づき、声をかけた。
「……あなたがたの方の準備は、もうよろしいのかしら?
 ああいう子ですから、慢心せずに、最初から全力を……いいえ、死力を尽くすこと、お勧めしますわ……。
 わたくしなら、興味本位であのような子に挑戦するような無謀な真似は致しませんけど……あなたがたが、そのためにわざわざここまで足を運んだのですものね……。
 一戦も交えずに、このまま帰る……とは、今更、いいだしませんわよね?」
 孫子は、四人に向かってにっこりとほほ笑んだ。

 四人は、汗だくになり、蒼白な顔色をしながら……それでも、けなげにも、こくこくと頷いてみせた。




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「髪長姫は最後に笑う。」 第六章(81)

第六章 「血と技」(81)

「……話しは、わかった……」
 孫子からの電話を一通り聞いた荒野は、そう答えた。
 ため息混じりだった。
「……で、その間抜けどもは、今、徳川の工場で……」
『もう、すっかり……放送部の……いえ、玉川のペースに巻き込まれていますわ……』
 電話の向こうで、孫子も、ため息混じりだった。
『……放っておいても害はなさそうですけど……。
 前々からいおうと思っていたのですけど……あなたの一族の関係者って……常識人の比率が異常に少ないのではなくて……』
「……たまたま、変人がこっちに集まってきているだけだよ……多分。
 ま、やつらがなんか変なこと仕掛けてきたら、遠慮なく撃っちゃっていいから……」
『……もちろん、そのつもりですわ……。
 ここには、スペアのライフルも、弾丸も、豊富にありますから……』
 ……それが狙いで徳川の工場に誘い込んだな……と、荒野は思ったが、口に出さなかった。
 その時、チャイムが鳴り響いて、「……もうすぐ最終下校時刻になります……」という校内放送が流れる。
 孫子との電話が、思ったよりも長くなったようだ。
「……もうこんな時間か。
 こっち、まだ学校なんで、一旦、マンションに戻るつもりだけど……そっちに向かった方が良さそうか?」
『いえ……。
 その、彼らも結構、放送部の方々と、和気藹々とやっていますし……別に出向いてくる必要もないと思いますわ。
 それに、もう少ししたら、わたくしたちも帰るつもりですし……』
「そうだな。もう、いい時間だもんな……。
 放送部のやつらにも、ほどほどにしておけって伝えておいてくれ。
 それから、その四人には、おれに会いたかったら、回りくどいことせず、直接マンションに来いっていっておいて……。
 伝言ばかりですまないけど……」
『……いえ……彼らは、今、撮影とかヒーロー談義にうつつを抜かしているから……後で、話しの区切りがついたときにでも、伝えておきます……』
 それから、二三、簡単なやり取りをしてから、電話を切る。
 結局、茅たちとは合流できなかったな……とか思いながら、荒野は一階の玄関に向かった。
 部活帰りの生徒に加えて、自主勉強会とかの生徒たちも一斉に帰りはじめたので、下駄箱がおいてあるあたりはそれなりに混雑していた。人混みをかき分けて、上履きをスニーカーに履きかいている時に、肩を叩かれる。
 飯島舞花、栗田精一、柏あんなの水泳部組と、それに堺雅史を加えた四人が、立っていた。この四人は、校内公認のバカップル二組、でもある。
「ああ……。勉強会の方の帰りか……。お疲れ」
 このうち水泳部所属の三人は、先ほど、教室の方で見かけていた。
「うん。今日は部活がないし、一年の勉強見るのは、セイッチので慣れているし……柏の分は、堺に頼まれたし……」
「……あんなちゃん……なかなか、成績が上がらないから……」
 堺雅史がそういって顔を伏せた。
「……お、お馬鹿なわけじゃないから……勉強が、嫌いなだけで……」
「……はいはい……」
 柏あんながそう言いつのるのを、堺雅史が軽くいなす。
「……堺君たちも大変だよな……。
 本当、ご苦労さん……」
 荒野は真面目な顔をして、頭を下げる。
 荒野たちがこの学校に来なければ……現在、発生しているパソコン部や放送部の仕事の大半も、必要がなかった筈、なのである。
「苦労は、苦労ですけど……やっていて、楽しいですから」
 堺は、頭を下げた荒野に、そういう。
 荒野と堺は、直接話す機会こそ少ないものの、茅や楓経由で、「堺をはじめとするパソコン部は、かなり、よくやってくれている」と聞いている。二人は、パソコン部のことを、部活……というよりは、最近ではプロのSE顔負けの仕事ぶりになってきている、と評していた。
 帰り道の途中でそんなことを話しをすると、
「……あの二人に、引っ張られているだけですよ……」
 と、堺は首を振る。
「知識と経験がものをいう世界だし……あの二人が側にいて、すぐに疑問点に答えてくれるから、何とかなっている感じです……」
 それから堺は、この間荒野が持っていった技術書は、正式に「学校の図書室への寄贈本」という形になり、分類ラベルも貼られた上で、パソコン実習室に戻ってきたそうである。
「……実習室に本棚持ち込んで、そこが図書室の分室、みたいな形になりました……」
 一応、文芸部に所属している茅が、手を回して手配した……と、いっていた。
 文芸部員は、図書委員と兼任している生徒が多く、茅が相談した上で、そう手配したらしい。
「それに……うち……パソコン部とか、放送部とか、だけではなくて……なんか……学校中は、妙にテンションが上がってきている気もしますし……。
 生徒がこんなに大勢……この時間まで残っていることなんて……ない、ですよ……何十人もの生徒が、勉強をするために、自主的に居残りするなんて……」
 堺がそこまで話した時、家が別の方角にある、という堺と柏の二人との、分かれ道にさしかかった。
「さっきの話しだけど……学校だけ、ではないよな……」
 堺と柏と別れると、今度は舞花が荒野に話しはじめる。
「……商店街の方だって、なんだかんだで活気が出てきているし……」
「……あれは、玉木たちが勝手にやっているだけで……そういや、今日も……」
 荒野がそう答えようとした時、荒野の携帯が鳴った。取り出してみると、茅から、メールが着信している。
「……なあ……」
 歩きながら、ざっとメールの文面を確認した荒野は、舞花と栗田に話しかける。
「君たち二人、メシ、一緒に食う?
 なんか、また狩野家で、大勢で食べることになっているけど……」

 飯島たちとは、マンションの前で一旦別れ、着替えてから狩野家に合流することになった。栗田精一も、舞花の部屋に頻繁に泊まりに来ている関係で、予備の着替えくらいは置いてあるらしい。
 鞄を置いて、私服に着替えて狩野家を訪ねると、制服姿にエプロンをつけた樋口明日樹が出迎えてくれた。
「樋口も来てたのか……」
「うん。例によって、帰りに誘われて……。
 ただで御馳走になるのも悪いから、手伝っているわけだけど……」
「いい心がけだけど……中、いつもにも増して、賑やかじゃないか?」
「……う、うん……それが、ね……」
 口ごもる明日樹の体を押しのけるようにして、玄関から居間に向かうと、「かにー、かにー、かにー! かにーずくしー!」と喚きながら、テン、ガク、羽生の三人が、炬燵の周囲を踊りながら練り歩いていた。
「……おー。おー。来たか、カッコいいこーや君!
 いやな、そこの四人が、お近づきの印に、って、タマちゃんところに残ってた蟹、食べきれないくらい、どっさり買ってきてくれてな……」
「……四人……って、才賀電話でいってた……」
「そう。その四人ですわ……」
 台所から、鍋を抱えた孫子が居間に入ってくる。
「……何故だか、玉木とかテンとか徳川とかの意気投合してしまって……」
「いや、おれなんかもう、姐さんに……ごほっ!」
 そんなことをいいつ、荒野にとっては初対面になる少年が、ドサグサに紛れて後ろから孫子に抱きつこうとする。孫子は、炬燵の天板の上に鍋を降ろし、後ろも見ずに裏拳を少年の鼻柱に叩きつけた。少年が、畳の上に沈む。
「この通り、すっかりとけ込んでいますけど……加納!
 あなたの関係者は、こんなのばかりですの?」

 荒野は……なにも、言い返せなかった。




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彼女はくノ一! 第五話 (164)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(164)

 孫子は、いつものように冷静だった。後日、このことが「刑事事件」として扱われる可能性もある。
 二十人以上の男が、たった二人の少女を取り囲んで恐喝まがいの言辞を弄したのだから、どちらの立場が有利か火を見るよりも明らかだったが、それでも打ち所が悪くて重傷者が出た時などに備えておいた方がいい……と、思っていた。
 だから、孫子は、男たちのあしらいはテンの判断に任せ、専ら「観察」することに徹していた。そもそも、素手での近接戦闘では、孫子は、テンにはまるで及ばない。
 テンは、身体能力的なパラメータでは、三人の中で最低だ、という話しだったが、それは比較の対象である他の二人が凄すぎるだけであり、こうして実際に動いている所を目の当たりにすると、テン単身でも、十分に孫子を圧倒させた。
 事実上、二十人の男たちを相手にしても、テンには、男たちに手加減をする余裕さえあった。孫子でも、ようやく目で追えるほどの速度で移動し、あっという間に男たちを空中に放り投げる。
 最初に投げた男たちが地面に着く前に、全ての男たちが、空中に放り出された。
「……テン、油断しないで!」
 あることに気づき、孫子が声を上げる。
「この中に、四人、あなたの動きを目で追っている方がおりましてよ!」
 孫子でさえ、ようやく追尾しているテンの動きを、テンに投げられながら、目で追っている男たち……が、一般人のチンピラ風情であるわけは、なかった。
「……二宮か、野呂か……。
 あなた方に挨拶に来た方々が、この中に混じっている可能性が、あります……」
 孫子は、昨夜の荒野の話しを思い出し、そうつけ加える。
「……ラジャー!」
 足を止めたテンは、戯けたしぐさで孫子に敬礼をした。
「自分以上に冷静な人がいてくれると、助かります!」
「……手伝いは、入り用かしら?」
 孫子は、テンに確認した。
 一族関係の問題なら、孫子は、部外者だ。求められていないのに手を貸すのも、無粋に思える。
「ノー・サンキュー!」
 テンは、答えながら、ジャケットの中から折りたたんだ六節棍を取り出す。
 一般人ではなく、一族相手、ということになれば、油断はできない。
「……わざわざ、カモフラージュしてきたんだ……。一戦交えなければ、納得しない手合いなんでしょ?」
 六節棍を棒状に組んだテンは、それを振り回して、ひとしきり演舞をしてみせる。
 どこかで見覚えがある……と、孫子がしばらく記憶を探ると、今朝、楓が六節棍を振り回した時の動きだった。
 ただし、テンのそれは、楓の動きよりも早かった。
 まるで、ビデオの早回しのような動きでアスファルトに叩きつけられた男たちの間を縫うよう駆け抜けるテンをみて……男たちの間に、目に見えておびえの表情が走り、逃げ腰になった。
 ここに来て、ようやく……テンが、通常の、外見通りの存在ではない、ということに、気づいた表情だった。
「さあ! 弱い者いじめは、趣味じゃないんだ!
 逃げる人は、今のうちだよ……」
 最後に、仁王立ちになったテンが、六節棍をアスファルトに打ち付けると、男たちの大半は、地面に打ったところをさすりつつ、自分たちのバイクに向かう。
「わたくしたちは口が硬いから、今日の醜態は黙っていて差し上げます……」
 その男たちの背に、孫子が、凛とした声をかけた。
「……その代わり、再度の挑戦があった時は、手加減をいたしません」
 多言無用、再挑戦、上等……という孫子の宣言になんの答えも返さず、大半の男たちはバイクに分譲して、去っていく。全員、憮然とした表情をしていた。文句の一つも言い返したいが、それをしたら負け犬の遠吠えになる……と、分かっているようだった。
 なにしろ……たった二人をとり囲み、そのうちの一人だけに、返り討ちになったのだ。それなりに、口惜しい所もあるのだろう……。
 孫子は、まるで同情心が湧かなかったが。
「……あ。本当に、四人だけ残った……孫子おねーちゃん、ナイス……」
「スナイパーは、目が命です……」
 孫子とテンは、その四人など無視して、軽口をたたき合っている。
「……まいったなぁ……おねーさん……」
 四人の内、一人が、前に進み出た。
 特攻服、とかいうのを着ているが、よく見るとあどけない顔立ちの少年だ。年齢も、孫子とたいして変わらないだろう。
「……せっかく、こっちが地元の血気盛んな一般人に混ざって、普通の喧嘩に見えるように工作したのに……おねーさんが冷静なんで、それも台無しだよ……」
 拗ねたような表情で、いう。
「十点。百点満点で」
 孫子は、冷静に採点をした。
「偽装工作として……限りなく、意味がないのでは、なくて?
 チンピラまがいの連中とはいえ……一般人を巻き込んで目撃者を増やしたら、元も子もないでしょ……」
 進み出てきた少年が、不服そうな表情をしたので、孫子は慌てて解説をつけ加えた。
 荒野は……昨日、「やってくるのは、何らかの理由で実戦から遠ざけられている半端者だ」と予測したが……それは、大きくは外れていないらしい……と、孫子は心中で小さくため息をついた。
 彼らは……なんというか……どこか、ずれている。
「……ねーねー……」
 テンが、無邪気に、声をかける。
「おにいさんたち、強い?
 一戦、試してみようよ。なんなら、四人一遍に相手にしてもいいよ……」
「……テン!」
 孫子は、声を大きくした。
「止めはしませんが……人目は、避けるべきです。
 予定通り、徳川の工場に向かいましょう。
 それから、あなた方も、ついていらっしゃい……」
 孫子は、四人の少年たちに声をかける。
「……この先に、知り合いの工場があります。
 その中なら、そこそこ広いし、人目も憚らずに暴れることが可能です……」

「……で、連れて来ちゃったんだ……」
「なんであなたが……ここに居ますの?」
 自転車とバイクで徳川の工場前に乗り付けると、出迎えたのは玉川珠美だった。
「……わたしだけではなく、放送部の連中も、何人か来てるけど……。
 二、三日前から、ここのコンピュータ借りて、動画の編集作業やってたのよ。知り合いの中で、一番ハイスペックなマシン揃っているのここだし、トクツー君に頼んだら、あっさり使用許可だしてくれたし……」
「……動画編集?」
 孫子が怪訝な顔をすると、玉木は目をゼリービーンズ型にして、「にししっ」と笑って、孫子に親指を立てた。
「……シルバーガールズ!
 ここのマシン、凄くってさぁ……おかげさまで、合成とか3Dとかもやり放題だよ!」
 そういって、テンに声をかけた。
「おお! 技の一号ちゃん、元気か? 力の二号ちゃんは、今日は一緒じゃないの?」
「……力の二号ちゃん? それって、ガクのこと……。
 ガクなら、家で寝てるけど……」
「……そーかそーか……。
 で、そっちの思いっきりヤンキーって感じの方々は? 孫子ちゃんの知り合いにしては、ガラが悪いけど……」
「加納の、関係者……だと、思う。
 たぶん……」
 珍しく、孫子が言葉を濁す。
「……へっ!」
 玉木の目が、点になった。
「じゃあ、あの……学校とか商店街襲った人たちの、仲間?」
「……ち、違いますよう!」
 四人の少年たちはぶんぶんと手や首を横に振った。
「……おれたちは、加納の荒野さんに興味持って……でも、荒野さんに直接会うのも、その、緊張するから、周辺部の人から接触していこうって……」
「……ようするに、ボクたち三人の強さを、確かめに来た人だよ」
 少年たちのしどろもどろの弁明を、テンが引き取る。
「で、トクツーさんに話し通して、これから工場の中で決闘してみようと……」
「……おー!」
 ここで何故か、玉木が奇声を発した。
「好都合! 今、ちょうど、撮影機材も揃っているから……。
 また新しい素材、撮れるなぁ……」




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「髪長姫は最後に笑う。」 第六章(80)

第六章 「血と技」(80)

 昼休み、荒野はパソコン実習室を覗いてみた。
 昨日の昼休みのや放課後の延長……と、言い切るのには、語弊があるほど、人数が増えていた。もとからいた放送部やパソコン部の面々はもとより、三年生や先生方、それに新顔の一年生や二年生までもが入り交じって、なんかすごい混雑になっている。
 もちろん、楓や茅の姿も、見えた。
 二人とも周囲の生徒たちと話し合いをしながら、忙しくキーボードを叩いている。

「……すごいでしょ?」
 いつの間にか、近寄ってきた有働勇作が、荒野に声をかけてきた。
「ぼくも……ここまで人が集まってくるとは思いませんでしたが……」
「なんか……おれにやれること、ある?」
「昨日準備した一室だけでは足りなくなってきたので、もう一室教室を片付けます。できれば、昼休みに片付けたいので、手を貸してもらえれば……」
 もちろん、荒野は有働と一緒にその足で片付けを手伝いに行った。その途中で、玉木の声で、有働が言ったのと同じ内容のアナウンスが、全校に放送される。
 昨日の放課後の集まった生徒に加え、手近にいた生徒たちも集まってきたので、二倍以上の人数になったことと、一度参加した生徒に関しては、手順が分かっていたので、より効率的に作業を終えることができ、あっという間に昼休みのうちにもう一室の教室が確保できた。
 百名近くの生徒たちが校内放送を合図にしてわっと集まり、近場にいる生徒たちの指示に従いながら、するべき仕事をしてすぐに帰って行く。荒野がみたと感じでは、各学年、だいたい同じ人数が来ているようだった。
「……なんだか、凄いことになっているんだな……」
 漠然と予想していたよりも、率先して自発的に動いてくれた生徒たちをみて、荒野は感心していた。
「……ええ、例のボランティアの登録者数、なんですが……」
 有働は、荒野にそう告げたところで、昼休みの終わりを告げる予鈴がなった。
「全校生徒数を越て、さらに増え続けています。
 生徒の兄弟とか、町中に張ったポスターと口コミとの相乗効果で……この先、どれほど人数が増えるか読めない状態です。
 自主勉強会の企画と準備をしていることも、父兄に受けがいいみたいで……」

 放課後になると、荒野は教室を出て、まっすぐに調理実習室に向かう。いつもは自分で食材も用意するのだが、この日に限って事前に「手ぶらで来てもいい」という連絡があった。
 何故かは分からないが、この日に限って荒野以外の部員が材料を用意してくる、という話しなっていた。
「……さて、いよいよバレンタインデーが、来週に迫って来ました……」
 荒野をはじめとする料理研の面々が揃うと、すでに部活を引退していた筈の三年生が教壇にあがり、そう挨拶をする。
「……そこで、来週は、例年のように、料理研による、手作りチョコ教室を行います。本日の部活は、その予行練習を行います……」
 前部長の三年生がそう宣言すると、荒野以外の部員たちが、「わっー!」と喝采を上げながら拍手しだした。
 荒野を含めて、全員、部活中はエプロン姿である。
「……そ、そういうことに、なっているの?」
 落ち着かない様子で、荒野は左右を見渡し、手近にいた部員に小声で確認する。
「……そうそう……」
「抜け道っていうか、ガス抜きっていうか……」
「うちの学校、その前後は持ち物検査厳しくなるから、そういう名目で、うちの部が他の女生徒にも門戸を開くの……」
「先生方も、部活の一環、ということにしておけば、見て見ぬふりをしてくれるし……」
 日本におけるバレンタインデーの奇習については、何度か聞く機会があった。
 それと、この時期、校則の締め付けが厳しくなることも、ついこの間の抜き打ち持ち物検査で実感していた。
 それでも……。
『……なるほど……』
 と、荒野は思った。
 来週の部活の時に、料理研が、チョコの作り方を、希望する生徒に伝授する。
 部活動に使うものだから、チョコの持ち込みもお咎めなし。
 そして、そこで出来上がったチョコは、校内で自由に流通するのだろう……。
『学校の規則というのは……』
 かように、部外者新参者には予想できない、抜け道を用意しているものなのだな……と、感心した。

 他の部員たちが用意したブロック状のチョコを砕いて湯せんし、一度溶かしてから、型にいれて冷やす。場合によっては、ホワイトチョコなどで表面に文字を入れる……などの実習を終え、後か片付けをしても、最下校時刻まで、まだいくばかの時間があった。
 いつもなら欠食児童のように群がってくる運動部員たちも、この時間なら、まだ、部活の最中だ。出来上がったチョコをどうするか、ということになり、結局、部員の人数で頭割りにして、持ち帰ることになった。
 今回ばかりは、部員たちが自分で食べたくなったらしい。あるいは、来週に誰かに贈るのかもしれないが……。
「……と、いうことで、加納君。
 今日のでだいたいのやり方はわかったでしょ?
 この中で唯一の男子だし、当日は講師役、よろしく!」
 全部長の先輩がそういうと、荒野を除く全員がパチパチと拍手をしはじめる。
 料理研は、荒野以外は全員、女子だった。

 いつもより小一時間ほど早い時刻に、他の部員たちと別れた荒野は、その足でパソコン実習室に向かう。
 自主勉強会もやっているそうだから、確実にそこにいる……という保証もなかったが、なんだかんだで、パソコン実習室が、茅や楓の最近のたまり場になっている。
『……それとも、もう帰っちまったかな……』
 茅は「買い出しも含めて、家事一切を引き受ける」と宣言していたし、事実、昨日も早めに帰宅した、と聞いている。間に合えば一緒に帰るつもりだったが、時間的にも微妙な所だった。
 パソコン実習室は昼休み以上に生徒や教師が詰め掛けていて、かなりの活況を呈していた。半数以上にあたる、三年生と教員とが、自主勉強会向けの資料作りに勤しんでいる。キーボードになれていない教師に指示を受けながら、生徒が打ち込み作業を行っている姿も見えた。パソコン部員と放送部員も、相変わらず賑やかに意見を交換しながら、作業を進めている。
 顔見知りの堺雅史に近寄って声をかけると、茅と楓は、今日は早くから、勉強会の方に向かっている、という話だった。その後、堺に様子を尋ねると、基幹部分は茅と楓、徳川が作ってくれたが、細かい部分や新たに付加した機能、総体的なチェックなど、やるべきことはまだまだ多い、という。
「……バグ取りなんかは、部外の協力者にも参加してもらってますが……」
 そういって、堺は、少し離れた所で末端に取り付いている一群の生徒を指さす。
 実際に使って見なければ発見できないバグもあるので、ああして、協力者を募って、いろいろな使い方をしてもらっている……という。
「……一部分は、もう稼働していますから……後は、使いながら、意見を貰って直して行くしかないですね……」
 そういって、堺は肩をすくめた。

 堺に別れを告げ、荒野はパソコン実習室を離れ、荒野自身も片付けを手伝った、空き教室へ向かう。
 携帯で連絡してもよかったが、同じ校舎内にいながら、勉強をしている最中に呼び出すのも気が引けた。
 てっきり静まり返っているもの、とばかり思っていたが、実際に足を運んで見ると、五人から十人程度のグループに別れて机を寄せ合って、上級生が下級生の勉強をみている、という形であり、教室内は予想していたよりも騒然とした雰囲気だった。
 どうやら、学科や生徒の理解度に応じて、数人づつのグループを作って、小人数で学習しているらしい。
 考えてみれば、授業は授業で、普段からしっかりとしているわけで、それをサポートするための学習方法としては、こうした形式の方が効率がいいのかも、知れない……と、荒野は思った。
 そうして荒野は、自主勉強会が行われている二つの教室を一通り回ってみたが、茅と楓の姿は見つけられなかった。代わりに、飯島舞花、有働勇作、栗田精一、柏あんななどの顔を、生徒の中に見つけたが、せっかくの自習を邪魔するのもなんなので、目があっても目礼だけにとどめ、声をかけずに廊下に出た。

 どこにも姿が見えない所をみると、茅たちは、先に帰ったようだ。
 さて、おれも帰るか……と、荒野が思った時、荒野の携帯から、呼び出し音がなった。
 ポケットから取り出して液晶画面を確認すると、孫子からの電話だった。




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彼女はくノ一! 第五話 (163)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(163)

 炬燵の上にノートパソコンを置いて作業をしていると、孫子からメールが入った。
 孫子が、今日の夕方、徳川の工場にいく予定だから、一緒に行かないか、というお誘いのメールだった。
 本来ならその日、テンは一日自宅にいる予定だったが、孫子に誘われれば話しは別である。あまり邪魔をしてはいけない、と遠慮しつつも徳川から学ぶべきことは多かったし、様々な工法を実地に見学するのもいい経験であり、できれば、もっと頻繁に足を運びたい……と、テンは思っていた。そこに、孫子がいい口実を与えてくれた形である。
 昨夜の話しの流れでは、孫子は、徳川の事業を、より効率のいいものにするために、テコ入れを加えるつもりのようだった。
 経済活動……というのもテンにとっては未知の分野であり、孫子の手口への興味も、少なからずある。
 テンが「一緒にいく」という旨の返信をすると、折り返し孫子から、「放課後、一度帰ってから、一緒に行こう」という意味のメールが返って来る。
 実は、自分が着る服に関してそれなりのこだわりを持つ孫子は、制服のまま出歩くことを好まない。一度帰宅して、というのは、私服に着替えてから出掛けたい、という意図もあったのだろう。
『……あんな、なにもない、埃っぽい所に行くのに……』
 どんな格好をして行っても、同じようなもんじゃなかな……というのが、テン自身の感覚であり、これは、孫子とは異なるのであるが、テンたちは本土に来るまで、ファッションに関してはあまり選択の余地がない環境にいたので、ことによったら孫子の感覚の方が、より一般的なのかもしれない……と、テンは思う。
 孫子は、部活などの用事がないと時は、いつでも寄り道をせずまっすぐに帰宅したので、孫子が帰宅する時刻は容易に予測出来た。その時刻に合わせて、テンは、作業中だったデータをバックアップし、パソコンの電源を切り、使っていた湯飲みや急須を洗って片付ける。
 自分たちの部屋を覗いてガクが寝ていることを確認し、居間に戻り、新聞の織り込みチラシの裏に「孫子と徳川の工場にいってくる」という旨のメモを書き終わった所で、孫子が帰宅した。
 孫子は、居間にいたテンに、「着替えてきます」とだけ言い残して自室に引っ込み、そしてすぐに戻ってきた。何事につけ、動作がキビキビとしている孫子は、着替えるのも早い。
 居間に入って「今、タクシーを呼びますから」と携帯を取り出した孫子を、テンは制止する。
「……足なら、自転車が二台、ちょうど使えるようになったところだし……。
 孫子おねーちゃん、昨日、お金増やしたいっていってたでしょ?」
 距離的に見て、タクシーを使ったとしても、たいした出費にはならないのだが、孫子は頷いた。
「……そうですね。あるものは、使わないと……」
 テンにせよ、孫子にせよ、自分の体を使用することを忌避する性分ではなかった。

 ハンドル前の籠に自分のパソコンが入ったケースを入れた孫子を先頭になり、その後にテンの自転車が続く。
 徳川の工場へは、二人とも何度か往還しているので、道順は頭に入っている。
 孫子もテンも、特におしゃべり好き、というわけではないので、黙々とペダルを漕いだ。どの道、自転車なら十分強しかかからない距離である。
 すぐに住宅街を抜け、倉庫や工場が並ぶ地区に入る。その地区に関して、テンは、これといった産業がないこの地方で、十何年前に農地を潰し、某メーカーの工場を誘致した……その跡地だと、説明されていた。何年かは、そのメーカーの大規模な工場が実際に稼働していたものの、すぐにそのメーカーは生産ラインを国外に移し、この辺り一帯は、一度、空き家になった。徳川の話では、ついこのあいだまで実質上、ゴーストタウンなっていた関係で、不動産も、比較的割安だ……ということだった。
 その代わり、住宅がほとんど無くて夜間は目が行き届かない、などの理由により、交通量の少ない場所などが、ところどころ、放置ゴミの溜まり場になっていたりする。
 それから徐々に、跡地を分割して工場やら倉庫やらとして利用されるようになって、今にいたる……ということで、大型トレーラーなども行き来する関係で、そのあたりの道路は、道幅も広めだった。
 朝晩はトラックが多くなるそうだが、まだ日が高いこの時間帯は、車道もガラガラに空いている……筈、だった。

「……孫子おねーちゃん……。
 この、喧しい人たち、なんなの?」
「……この方々は、暴走族とかいう方々ですわ。
 わたくしも、実際に見るのは、初めてですけど……」
 テンと孫子は、周囲を取り囲んだバイクの爆音に負けないように、大声を張り上げている。
「……マフラーを外してわざとエンジン音を響かせているのは、この人たちの仕様なの?
 それとも、無意味に騒音を撒き散らして、不特定多数の通行人に不快な思いをさせなければならない、とかいう戒律の宗教に入信しているとか?」
「……わたくしもよくは知りませんが、おそらく、自己主張の一種ではありませんこと? こんな迷惑行為でしか主張できない自己に、どれほどの価値があるのかは、はなはだ疑問ではありますが……」
「……とりあえず、こんだけ大勢に取り囲まれているとトクツーさんの工場まで行けないんだけど……。
 この人たち、蹴散らしちゃっても、いいかな?」
「一般的に、か弱い婦女子は、このような時、成すすべもなく震えているのが常套というものです。
 それに、刑法的にも、先手をだすよりは、追い詰められてから、自衛手段として行使する時の方が、同じ暴力でも有利になります」
「よくわかんないけど……もう少し様子見て、手出ししてきたら、返り討ちにしちゃっていいっていうこと?」
「実質上、そういうことになりますわね!」
 傍で聞いていると、どこまで真面目にいっているのか判断に苦しむやり取りを、周囲の騒音に負けないような大声でうありとりするテンと孫子だった。
「……ちょっと待てや!
 ねーちゃんたち!」
 孫子たちを取り囲んだ集団の先頭を走っていた特効服が、片手をあげて合図をすると、二十台ほどの改造バイクがいっせいに停った。
 取り囲まれていた孫子とテンも、先行車両と激突したくはなかったので、タイミングを合わせて停る。
「なめてんのか、お前ら!
 ここにいる全員でまわしたろかぁ! ああん!」
 先頭を走っていた男が、孫子の方に近寄ってくる。
 ……典型的なチンピラの顔だな……と、孫子は思った。
「最初にひとつ、確認しておきたいことがあります。
 誰かに頼まれて、このような行為をおこなったのですか?」
 孫子は平然と、近寄ってきた男にいいかえした。顔にはうっすらと笑みさえ浮かべている。
「……おおよ。
 うちらの仲間がな、ケーキ屋の猫耳男に転倒させられての。そのお礼参りじゃ。
 お前ら、あの白髪野郎の仲間じゃろ? ああん?」
「……かのうこうやのことかな?」
 小声で、テンが孫子に囁く。
「多分。この件のことは、聞いていませんが……」
 荒野にとっては、特に記憶する必要もない、子細なイベントだったのだろう。
「……なにこそこそやっとのじゃ、わりゃ!」
 二十名以上で取り囲んでもまるで動じる様子もない孫子たちに、不審を覚えつつも、リーダー格の男がさらに声を大きくする。
「わたくし、健全な聴覚を持っていますの。そんなに大声を出さなくとも、聞こえますわ……」
 孫子は、やはりにっこりと笑って、リーダー格に対応する。
「……あなた方がご所望でしたら、今、その白髪本人を呼び出しますから……」
 そういって、孫子が携帯電話を取り出……そうとした手元を、リーダー格の男が、払おうとした。
 しかし、宙を飛んだのは、孫子の携帯ではなく、そのリーダー格の男だった。
「……テン!
 正当防衛、成立!
 こいつらの戦意を喪失させなさい!」
 リーダー格の男を投げ飛ばした孫子は、その男がアスファルトに叩きつけられるのを確認する前に、次の獲物に歩みよっている。
「……アイアイサー!」
 テンが、一陣の疾風となった。
 その疾風が通った後に、どかどかと人の雨が降る。
 それでもテンは遠慮していたので、取り囲んだ連中を放り投げる時にも、高度は五メートル以下に抑えていた。




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「髪長姫は最後に笑う。」 第六章(79)

第六章 「血と技」(79)

「……じゃあ、今朝は、才賀さんと楓ちゃんも一緒に走ったのか……」
 飯島舞花が、そういって、頷く。
「……わたしも、一緒に走ろうかな……」
「勘弁してくれよ、まーねー……」
 珍しく、舞花の隣にいた栗田精一がぼやく。
「こっちは、わざわざ遠回りしているんだから……朝、走るのなら、まーねーだけでやってくれよ……」
 栗田の自宅は、実は全然別の方角にある。
 舞花の鶴の一声で、遠回りになるのを承知でわざわざ早起きして、毎朝、自転車でマンション前まで来ているのだった。
「……それに、まーねー……。
 ぼちぼち、受験生だろ? 志望校、ワンランク上の学校に変えたっていってたし……」
 栗田は、「そんな余裕あるのか?」という意味を含ませて、舞花にそういった。
「そう……なんだけどな。
 でも、みんなで一緒に勉強すれば、なんとかなるんじゃないかな?」
 当事者の舞花の方が、あくまで呑気に構えていた。
「……ねぇ……飯島……。
 志望校、変えたって……ひょっとして、昨日、佐久間先輩に言われたから?」
 樋口明日樹が、心配そうな顔をして、尋ねる。
「うん。そう。せっかく誘ってくれたんだし、幸い、もうちょい手を延ばせばなんとかなる範囲だったし……」
 舞花は、平静な態度で答える。
「……余裕、だね……」
 明日樹は、そっとため息をついた。
「おっはよー!
 ……何、あすきーちゃん、暗い顔しちゃって? また受験の話し?」
 いつものように途中から、玉木が合流してくる。
「……飯島、佐久間先輩と同じ学校、受けるんだって……」
「ああ。その話しか……。
 わたしは、最初っから、あそこ志望だけどな……」
 明日樹が沈んだ声で説明し、玉木玉美が頷く。
「……いいよね、しっかり進路とか将来の目標、決まっている人は……」
「なん? あすきーちゃん、画家志望じゃないの?」
「……学校の部活程度で、そこまで決められないよ……」
「そんなもんかな……。
 わたしは、志望校も部活も、将来やりたいことを前提に選んでたけど……」
「……玉木みたいに、しっかりと将来の目標が見えている人ばかりではないから……」
 樋口明日樹と玉木玉美は、そんな会話を続けて行く。
「……そんなに難しい所なのか?」
 そうした事柄にあまり興味のない荒野が、二人に尋ねる。
 難関だ……ということは、以前に聞いていたが、日本の受験に関する知識など、荒野が豊富に持っている訳もなく、正直、実感が沸かないのだった。
「うちの学校からは、毎年、一人か二人しか合格者がでないね……」
 玉木が、荒野にそう教える。
 ……そんな学校に、佐久間先輩は、「みんなでいらっしゃい」とか、気軽に誘ったのか……と、荒野は思った。
「……進路指導とか、これからいやでもうるさくなるから……おにーさんも、腹をくくった方がいいな……」
 飯島舞花も、したり顔でそう頷く。
「まあ……頑張っては、みるけど……」
 科目により出来不出来はあるものの、荒野も、決して物覚えが悪い方ではない。
「……そっかぁ……そんな所に、誘われたのかぁ……」
 自分のことなのに、今更のように、そう頷いた。
「加納は……昨日、善処します、って言い切りましたもの……」
 孫子も、珍しく口をはさんで来た。
 そういう孫子は、普段から予習復習をやる習慣があるので、学校の成績はかなりいい。
「……まあ、なんとかなるだろ……」
 荒野は、他人事のように、呟く。
 実際、荒野にしてみれば、他に考えなければならない問題が山積みしているので、受験とか進路の事まで頭が回らない……という面がある。
「……大丈夫なの……」
 いつの間にか、荒野の隣に来ていた茅が、荒野の服を掴みながら、そういった。
「茅が、荒野の勉強を、見るから……。
 絶対、成績は、あげるの……」
 なんだか知らないが、茅はひどく真剣な顔をして、そういった。
「……勉強、っていえば、昨日片付けた教室、今日の放課後から使えるんだろ?」
 舞花が、さりげなく話題を逸らす。
「そうそう。
 許可はとっているし、教材もそろえてくれてるし……後は、実際にやってみるだけ、だね……」
 玉木も、舞花の誘導に乗ってきた。
「……茅ちゃんや佐久間先輩が、いろいろ頑張ってくれたから、割りといいスタートが切れそうだよ……」
 玉木の話しによると、佐久間沙織が先生方や受験が一段落した三年生を引っ張って来てくれたので、教材に関してはかなり充実して来ている……ということだった。
「本番を終えたばかりの先輩方が、知恵を貸してくれるんだもん……これは、強いよ……」
 玉木も、何だかんだいいながらも、受験対策にはそれなりに気にかかっているらしい。
「……そういや、玉木たちはいつまで部活やるつもりなの?」
 たいていは、三年になると区切りのいいところで引退するものだが、大会やシーズンなど、種目により引き際が比較的明確な運動部に比べ、文化部の引退時期は、なんとなく生徒個人の裁量に委ねられる傾向がある。
 樋口明日樹自身は、さほど成績に自身があるわけでもなかったので、三年になるのと当時に、実質的に部活動を停止し、受験勉強に専念するつもりである。
「……うちは……まだ、やりかけの仕事は山積みだし、部長とかの役職だけ後輩に譲って、下手すると、卒業間際まで現役だなぁ……」
 玉木がそう答えると、明日樹は、「余裕ねぇ」とため息をついた。
「……そういや、放送部の部長って……玉木?」
 荒野が、ふと頭に浮かんだ疑問を口にする。
「いんや。有働君。
 そういう堅い仕事は、有働君に任せることにしている……」
「……彼も、苦労だなあ……」
 明日樹に続いて、荒野も嘆息した。

 そんなことをしゃべっている間に、学校に到着する。
「……今日、早速、一回目の自主勉強会やるんだけど、みんなも来る?」
 校門をくぐったあたりで、玉木がみんなに聞いた。
「おれ、部活」
 荒野が、片手をあげて答える。
「わたしらは、今日はクラブないから、行く」
 これは、飯島舞花。
「……えっとぉ……まーねーがこういっている時は、拒否権ないです」
 と、栗田精一。
「……わたしは、パソコン部の方次第ですね……様子見て、いけそうなら、行きます」
 これは、楓。
「今日の放課後は、用事がありますので……」
 孫子はそう答えた。
「……才賀さんも、今日は部活だっけ?」
「いいえ。部活ではなく、ビジネスです。
 徳川と話し合わなければならないことが山ほどありますので……しばらくは、そちらで手一杯になるかと……」
 孫子は孫子で、なにげに闘志を燃やしているのであった。
「あー……なるほど。
 そっちかぁ……」
 玉木は、納得した。
 なんとなく……徳川と孫子、の二人がタッグを組むと、予想外のことをおっぱじめそうな気もしてくる……ので、玉木は、なんとなくわくわくしてくる。
「そっちのほうも、面白い動きが出て来たら、こっちに情報流してね。
 即効取材にいいって、場合によってはタダでPRするから……」
「ええ。その時は、是非お願いします……。
 徳川はあれで、抜けている所がありますから、こちらがしっかりとフォローしてあげないと……」
「分かります、分かります。
 何とかと紙一重、な人だから……しっかりと手綱を取って、儲させて上げてください……」
 性格も育ちもまるで違う二人だが、「金儲け」という要素が絡むと、意外な程意見の一致をみる、孫子と玉川だった。

 そうやって北叟笑む二人をみて、荒野は、
『……こいつら……。
 まるで学生らしくねぇ……』
 と、思った。




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彼女はくノ一! 第五話 (162)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(162)

 朝食を済ませ、楓たちが登校すると、ガクは途端に横になった。
「……ご飯を食べた後、すぐに横になると牛になるよー……」
 テンが、妙に年寄り臭いいい方をする。
「いいよ。牛になっても……。
 眠いし、傷も早く直したいし……」
 ガクは、そういう途中で、ふぁ……と欠伸をする。
「……行儀悪いなぁ……」
 テンは、苦笑いしながら、ガクを見つめる。ガクを、そのまま炬燵で寝かせておくつもりだった。本来なら、ずっと安静にしていた方がいいくらいなのだ。
 ただ、ガクの方が、じっとしていない。
「……寝るんなら、ちゃんと部屋に戻って布団で寝なよ……」
「んー……。そうする……。
 傷、早く直して、思いっきり楓おねーちゃんに……。
 後、庭の自転車直しておいたから、よかったら、使って……」
 ガクは、のろのろと起き上がり、重たい足取りで自分の部屋に向かった。
 徹夜明け、ということもあり、今日はそのまま怪我人らしく、おとなしくしているつもりらしかった。

 テンは、食器を洗い終わった後、自分用にお茶を焙じて入れる。焙じ茶は、この家にきてから、真理や羽生にいれ方を習った。手間はかかるが、こっちの方が、普通の日本茶よりもテンの嗜好に合うので、時間がある時はこっちをいれている。
 焙じ茶の湯飲みを片手に炬燵に向かい、昨夜、一晩かけてガクが作っていたシステムをチェックする。相変わらず、複雑怪奇なコード進行で、目でアルゴリズムを追うのに骨が折れたが、なんとか「うまく作動しそうだ」ということだけは、理解できた。
 ガクが書いたプログラムを圧縮してメールに添付し、徳川の業務用のアドレスに送付する。後の評価は、徳川に任せよう……と、テンは思った。
 その後、テンは茶器とパソコンを片付けて、炬燵の電源も切り、炬燵布団を剥がして庭の物干しにかけた。幸い、今日は天気がよく、ガクは寝ているし他の住人たちも出払っている。他の布団も干せばよかったな、と思いつつ、テンは母屋に戻り、居間をはじめとしたいくつかの部屋に掃除機をかけ、廊下のぞうきんがけをする。家自体が多きので、一度にすべての部屋を掃除するのは時間的に無理だったが、かといってサボり過ぎても後の手入れが滞る。時間がるときに、できる範囲で行う、というのが、真理から教えられた狩野家なりの掃除法だった。この日の日中は、家事を遂行できるのがテンだけだったので、掃除できる範囲は、自然といつもよりも小さ
くなる。
 ざっと掃除を終えると、もう商店街のお店が店開きする時刻になっていた。別に買い物を急ぐ理由もないのだが、ここ数日はお昼前後から普段の買い物客とは別の人手、フリフリドレスのおねーさんとその取り巻き連中が増えるので、できるだけ朝のうちに買い物を済ますようにしている。
 掃除道具を片付けて、手早く外出の身支度を整えると、テンは、冷蔵庫に張り付けてあった羽生の買い物用メモを引っ剥がし、さっさと家を出る。
 でがけに今朝、ガクから聞いた自転車のことがふと頭をかすめたが、最初からやすやすと乗りこなせるとは思えなかったので、やはり徒歩で商店街に向かう。
 自転車の練習は、そう、お昼過ぎにでも行うことにしよう。自転車に乗れれば、荷台の分、一人でも多くの荷物を運ぶことができるようになる……。

 帰ってきたテンがお昼ごはんを作っているところに、眠そうな顔をしたガクがやってきた。
「……十分に寝た?」
「いや。お腹、空いた……」
 とぼけた問答の後、テンはもう一人分のおかずを用意した。人数も来客も多い狩野家では、ご飯は多めに炊く習慣ができているので、一人分くらい増えても支障はなかった。
「午後はどうする?」
「……また、寝る。怪我、早く直したいし……」
 昼ごはんを食べながら、テンはガクとそんな会話を行う。
「怪我人としては安静にするのが順当だけど、なんだかガクらしくないしね……」
「……そう?
 でも、今朝のみたら、ボクも、早く直して楓おねーちゃんとやり合いたくなったし……」
 ガクは、いつもにも増して、食欲旺盛だった。
「……こんな傷、さっさと塞いでやる……」
「根性で、回復力は増えないよ……」
「それでも……ほら、傷口、もうこんなに盛り上がってるし……もう少しだよ……」
 ガクはそういって、腕の傷痕を、テンの目の前に示した。
 実際、傷口の周囲は、ガクのいうとおり、盛り上がっている。
「自由に動けるようになるまで……あと、二、三日、っていうところかな……もう少し、早くなるかもしれないけど……。
 それまで、おとなしく食っちゃ寝しておくよ……」
「……少しは、家事手伝えよ……」
 珍しく、テンがガクにぼやいてみせた。
 ぼやきながらも、テンは、ガクがこれほど「安静」に気をつけるは珍しい……と、思っている。
 ガクが怪我や病気をしたのはこれが初めてではないが、どちらかというと落ち着きのないガクが、自分から進んで体を休めようとしているのは、これが初めてだった。
 よっぽど……楓に体術を習いたいらしい。

 昼食後、二人は庭に出る。
 自転車と、それに手裏剣の投げ方の練習をするつもりだった。
 自転車については、所詮バランスの取り方だ、ということが分かれば、後は特に問題はなかった。二人とも、せいぜい二、三度転んだだけで、すぐにコツをつかみ、特に不自由する事なく、乗り回せるようになった。
 なるほど……ペダルをこいでいない時の方が、走行時より、バランスの取り方が難しいのか……と、テンは思った。

 自転車はどうやら乗りこなせそうだ、ということになると、今度は、ガクが楓に借りた手裏剣を持ち出してきた。
「……力を抜いて、力を抜いて……」
 とぶつぶつ呟きながら、ガクは庭にある桜の樹に向けて、手裏剣を打つ。
 最初のうちこそ、昨日までと同じくきりもみ状態で、あさっての方向に飛んでいったが、何度か投げ続けるうちに、かっ、かっ、と音をたてて、幹に刺さるようになる。
「……コツ、掴んできたね……」
 テンは、ガクにそういった。
 ガクの飲み込みの遅さを承知していたテンは、もともと、さほど心配していない。
「……そう、だね……」
 ガクは、眠そうな顔でそういって、「……ふぁ……」と大欠伸をした。
「だんだん、体が覚えてきたようだから……今日はこの辺にしておく……。
 また、寝る……」
 そういってガクは、手裏剣を片付けて母屋に戻った。
 テンは、干していた炬燵布団の埃を払い、取り込んでから母屋に戻った。

 炬燵に布団を被せてから、テンはパソコンを立ち上げ、メールのチェックをする。徳川から、ガクが一晩かけて打ち込んだプログラムについての問い合わせが着信していた。それには、「ガクが起きたら、直接返信をさせる」とのみレスして、徳川に送り返す。
 徳川は、最近は真面目に学校に通っているので、平日の日中は、昼休みくらいしか仕事の用事が処理できない。放課後は、まっすぐ工場に向かうらしく、ほぼ毎日、徳川の下校時刻に合わせて、決まった時間にタクシーが迎えにくる、という話だった。
 二足のわらじも、やはり相応に多忙であるらしい。
『……学校、かぁ……』
 と、テンは思う。
 実際に通っている香也たちの話しでは、実に不自由で窮屈な場所であるらしいが……同時に、傍から見ていると、案外、楽しそうな場所なのではないか……という印象を、テンは抱いている。

 この時点では、テンは、今度の春から自分たちが学校に通いはじめる……ということに対して、差し迫ったリアリティを感じることができなかった。




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「髪長姫は最後に笑う。」 第六章(78)

第六章 「血と技」(78)

 翌朝、荒野と茅はいつもの時間に起き、いつものようにランニングに出かけた。マンションの前で茅がストレッチしていると、隣の狩野家からぞろぞろと人が出てきた。いつもと違っていたのは、長らく真理とともに留守にしているノリだけではなく、ガクの姿も見えなかったこと、それに、楓と孫子が新たに加わっていたこと、だ。テンの話しによれば、ガクはあれから徹夜をしたらしく、これから着替えて出てくるから、先にいっていてもいい、ということだった。
 ガクは、一つの事に夢中になると、周りの事が目に入らなくなるタイプらしい……と、荒野は記憶に止めた。
 人数が増えた状態で、ゆるゆるとした速度で河川敷に向かう。目立ちたくないし、体を温める必要もあったので、朝っぱらから全力疾走、などはしない。
『何だかんだで……』
 荒野は、ぞろぞろと小走りになっている少女たちを、さり気なく見渡す。
 こいつら、それなりに良好な関係に落ち着いているよな……と、思う。
 摩擦や小競り合いがまるでないわけでもないが、そうした大小のトラブルを乗り越えてきたことが、現状では相互理解に役立っている……と、荒野は分析している。
 特に、楓と孫子は、仲がいいとか悪いとかいう以前に、香也を巡って対立している。香也が態度をはっきりさせない限り、この二人の関係は、緊張をはらみ続けるだろうのが……それ以外の部分で、何度かの物理的精神的衝突を経験してきたため、楓と孫子は、互いの長所と短所をよく理解しあって、一部では認め合っている節もある。
 そして、そうした「ぶつかり合いながらも、相互理解を深めていく」という関係性は、後から来たテン、ガク、ノリの三人に対しても、結果として拡張して引き継がれているのだった。
『でも……もうちょっと……』
 親密になって貰おうか……と、荒野は考える。
 今、一緒に走っている少女たちは、何だかんだいって、現在、荒野が信頼できる、身近な即戦力なのだった。その即戦力の信頼性を高めるための工夫は、しないでいるよりはしておいた方が、いい……。
 この場合、「信頼性を高める」とは、すなわち、「ぶつかり合ってもらう」ということである。すなわち、実際に戦ってみて、お互いの事をよりよく知り合って貰う、というこを意味した。
 幸い、昨日のうちに、楓に、テン、ガク、茅へ、体術を教えるよう、命じていた。

 まず手はじめに、楓とテンを立ち会わせてみた。
 楓が勝つのは荒野も予測していたが、テンが数秒も保たなかったことは予想外だった。
『……意外と……』
 テンは、不測の事態に直面した際、機転が利かない性質であるらしい……と、荒野は脳裏に刻み込む。
 確かに、手にした六節棍を、初っぱなにいきなり投げつける……という、楓がとった手段は、意表を突く方法ではあったが、それにも増して、テンの対応は芸がなかった。
 楓が投げた棍に気をとられたテンは、楓自身の接近をむざむざ許し、あげくの果てに、腰に手を回した楓に、直上に放り投げられる。
「……テン……間抜けだ……」
 とは、荒野とともに二人の立ち会いを見物していたガクの台詞である。
「間抜け」とは、どちらかというと、ガクがそういわれることの方が多い、語彙であった。
『……実戦経験が、圧倒的に不足しているんだな……』
 と、荒野は判断する。
 テンやガクは、今まで、限られた人数しかいない、閉鎖的な環境下にいた。だから、多様な反応に、うまく即応できず、潜在的な能力を引き出す前に勝負がついてしまう。不測の事態に、思うように対応できない……。
 こうした機会に、ここにいる人間だけでも、なるべくいろいろな組み合わせで、軽い立ち会いを行っていこう……もしも可能であるのなら、今後、この町に大挙して押し寄せてくる、という一族の者たちとも、どんどん立ち会わせていこう……と、荒野は考える。
 目下の所、荒野が想定してる「勝利条件」は、ここにいる者、全てが、一人もかけることなく、この土地で健やかに成人すること。あるいは、自分の意志でこの土地を去るまで、平穏に暮らしていくこと、である。
 そのための障害になりうる要素は、この土地の人々の、お世辞にも「普通」ではない、自分たちに対する偏見と差別意識。それに、存在が明らかになっている、襲撃者、だった。
 荒野自身の感覚でいえば、後者よりも前者の方が、対処するのに苦労を強いられる……と、予測しており、後者の襲撃者については、どちらかというと「敵」というよりは「障害物」であると感じていたが……いずれにせよ、将来の対決は避けられない相手、であるのには、違いなく、対策として、今いる戦力の増強は必須である、と感じていた。
 だから、荒野は、テンやガクたちについても、早急に「使える」レベルにまで引き上げる必要があった。
 もっとも、テン、ガク、ノリの三人については、今の時点でもそれなりの基礎が出来ているので、荒野はあまり心配はしていない。心配なのは、三人ではなくて、……。
『……茅……なんだよ、な……』
 茅が妙にやる気を出していることが、目下の所、荒野のひそかな悩みの種、であった。従来通り、「非戦闘員」として、戦力外の存在で在り続けてくれた方が、荒野としてはよっぽどありがたいし、気も休まるのだが……。
 そこで荒野は、孫子と掛け合って、「茅をやりこめて、やる気をなくしてくれ」と頼み込んでみた。多少、痛い目に合えば、茅も諦めるかも知れない……。
 荒野がその場で交渉すると、孫子は眉を顰めながらも、不承不承、茅と立ち会うことを承知してくれた。
 荒野は、テンとガクから六節棍を借り、茅と孫子にそれぞれ持たせる。
 孫子は、剣道の構えで棍を構え、対峙した茅も、それに習った。
 そして……次の瞬間、茅の姿が消え失せる。
『……あっ……』
 慌てて荒野は、五感を研ぎ澄ませ、茅の気配を捜した。
 気配を絶った茅は、とことこと無造作に孫子に近づいていき、「……えい」という気の抜けるかけ声とともに、孫子の手元に棍を打ち付けた。
 痛み、よりも、茅の姿を完全に見失ったこと、それに不意をつかれたことで、孫子は、手にしていた棍を、取り落とす。
『そうだ……茅、あれ、出来たんだ……』
 荒野は、そのことを失念していた自分を呪った。
 年末に、見よう見まねで憶えて以来……茅の「気配絶ち」は、さらに完璧に近づいていた……。
「才賀。
 恥じることないぞ。今の茅は、気配を消すことに関しては、一流の術者並だ……。
 あれを、察知できるのは……一族の中でも、数えるほどしかいない筈だ……」
 荒野としては、孫子に、そう慰めの声をかけることしか、出来なかった。

 ともあれ、この一件で、茅が楓に体術を習う、ということは、いよいよ動かせない決定事項になってしまった。




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彼女はくノ一! 第五話 (161)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(161)

 楓とテンとの立ち会いは、数秒もせずに終わった。
 五メートルほどの距離を置いて向き合った……と、思ったら、次の瞬間に、楓は棍を、関節を伸ばしたまま、横向きに投擲する。
 テンは、それを自分の棍で払おうとしたが、当然のことながら、楓が投じた棍は、テンの棍に絡まる。
 そして、テンが楓の投じた棍に気をとられた隙に、楓は距離を詰めていた。
 テンが対処する間もなく、楓はテンの体を軽々と真上に投げる……。

「……ガク。
 今の、どう思う? お前なら、もっとうまく捌けたか?
 今の楓の攻撃……」
 荒野が、やってきたばかりのガクに尋ねる。
 荒野は、テンが楓に勝てるとも思っていなかったが、流石にここまであっけなく勝負がつくとも思っていなかった。
「……テン……間抜けだ……」
 ガクの方も、かなり呆気にとられた様子でそう感想を漏らす。
 それから、
「……ボクなら、楓おねーちゃんが棍を捨てたら、ボクも、その棍めがけて、自分の棍を投げる。武器を捨てる不利よりも、楓おねーちゃんから注意をそらす脅威の方が上だと思うから……。
 だから、何秒かは長引いたけど、その後は……」
 ガクは、意外に大人びた仕草で肩をすくめ、続きをいわなかった。
 以前、ガクは、素手同士で楓とやりあって、のされている。
 またやっても勝てる……と、無条件に信じ込めるほど、ガクは楽天的ではない。
「まぁ……。
 ガクの方が、テンよりは、いくらか頭が柔らかいってこったな……」
 荒野はそういって、楓の方をみる。
 楓は、自分が真上に投げたテンの体を受け止めて、地上に降ろしているところだった。
「楓……お前、なんで棍をまともに使わなかった?」
 荒野は、楓にそう尋ねた。
「だって……わたし、この武器に、不慣れですから……。
 何年も扱っているテンちゃんと、正面からやり合っても、不利になるだけですし……。
 だったら、何も持たない方が身軽かなぁ、って……」
 楓は、照れくさそうな様子を見せながらも、そのように語る。
「テン……。
 感想は?」
 荒野は、今度は地上に立ったテンに向かって、聞く。
「道具は所詮、道具に過ぎない。
 目的を遂行するための手段に固持し、目的を軽視した……」
 テンは、つい今し方の自分の醜態を、そのように分析した。
「……かのうこうやのいうとおりだ。
 確かにボクは、頭が硬い……」
 武器を持っている方が、持たない方よりは有利だ……というのは、一般論としては、正しい。
 しかし、武器を持つことに拘って、自ら窮地を作り出したのは、本末転倒だった……と、テンは認めた。
「……テンだけでなく、ガクもノリもそうだけど……お前らに一番欠けているのは、経験だ。長い間、手の内を知っている相手としかやり合っていなかったから、相手が予想外の手段に訴えた時、咄嗟の判断が鈍くなる。
 それで、本来の実力を発揮する前にやられちまう……。
 勝負勘とか駆け引きが稚拙、っていうことだな……。
 これを克服するのには、多種多様な相手と実際に組み合ってみるのが、一番いい……」
 荒野が解説すると、テンは、「そうだね」と素直に頷いた。
「なんでかのうこうやが、ボクにも、体術を楓おねーちゃんに習わせようとしたのか……。
 よく、理解できたよ……」
「……というわけだから、楓、後は任せたな……。
 こいつら二人と、あと、茅と……」
 荒野はそういって、楓の肩をぽん、と叩いた。
 楓は、「えっ?」といって、目を見開いている。
「……なんでボクは、怪我なんかしているんだ……」
 ガクはガクで、そんな風に呻いて、悔しそうに地団駄を踏んでいた。
「せっかくの、いい機会なのに……一人だけ、怪我をしているんだ。
 これじゃあ、楓おねーちゃんに稽古つけて貰えないじゃないか……」

「……加納……」
 荒野がガク、テン、楓の三人から離れると、孫子が寄ってくる。
「本当に、あの子に……体術、習わせますの?」
 孫子はそういって、ダッシュを続けている茅の方を顎で示した。
「おれも、反対は反対なんだが……茅本人が納得しない限り、止めることは難しい。
 あれで、頑固な所もあるし……」
 荒野はそういって、頷いた。
 それから、ふと何かに気づいた表情になって、孫子に向かってこういった。
「ようは……茅自身が、無理だと納得すればいいんだから……。
 才賀。
 お前、茅を、適当に打ち据えること、できるか?」
 荒野にそういわれた孫子は、数秒、眉間に皺を寄せて何事か考えこんだ顔をした後、
「可能、ではありますけど……本当にそれで、よろしくて?」
「全治何週間、とかいうのは困るけど……痣を作るくらいで諦めてくれるのなら、安いものだろう……」
 荒野は、頷く。
「確かに……危険に身をさらすよりは……はるかにマシですけど……」
 孫子も、しぶしぶ、といった感じで、荒野の言葉に頷いた。
「じゃあ、早いほうがいいな……。
 おい。
 テンとガク、お前らの棍を貸せ。茅、こっちに来い……。
 今度は、才賀が茅に稽古つけてくれるってよ……」

 しかし、実際にやってみると、荒野や孫子が想定した通りには、事は進まなかった。
 むしろ、逆の結果に終わった。

 棍を構えて対峙する、孫子と茅。
 次の瞬間、茅の体が、消える……ように、見えた。
「……えい」
 緊迫感に欠ける茅の声が聞こえて、孫子が構えていた棍が、地面に落ちた。
 孫子は、「何が起きたのか分からない」という顔をして、自分の手元を見る。
 赤く、腫れていた。
「……気配、消しましたね……」
 楓が、ため息混じりにそういった。
「……それだけは、完全にマスターしているな……茅……」
 荒野も、どこか諦観の混じった声で、呟く。
「……前の時も、驚いたけど……」
「……完全に、分からなかった……」
 テンとガクは、そんなことを囁きあっている。
「才賀。
 恥じることないぞ。今の茅は、気配を消すことに関しては、一流の術者並だ……。
 あれを、察知できるのは……一族の中でも、数えるほどしかいない筈だ……」



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「髪長姫は最後に笑う。」 第六章(77)

第六章 「血と技」(77)

『……やべぇ……』
 自分は上半身裸、茅は、布団で隠れていて見えないのだが、感触からするとすでに一糸も纏わぬ全裸、であるらしい。そういう状態で抱きつかれた荒野は、どこまで理性を保ているのか、とことん試されている気分になった。
 自分から、「今日はやらない」といいだした手前、そう簡単に屈するわけにはいかないのだが……。
 茅は、そんな荒野の心中を気にかける様子もなく、荒野の上に体を伏せて、すりすりとなすりつけている。すっかり反応している荒野自身に、茅の陰部が擦りつけられ、パジャマ越しに陰毛がじょりじょりと擦れる感触。もちろん、乳房も、荒野の胸板に直に接触している。何度となく抱いている茅の感触と体臭は、荒野にとってなじみ深いものとなっていたが、だからこそ、とても、強い誘惑を感じる。
 茅の方も、荒野が硬直して身動きしなくとも、それなりに高まってきているようで、そろそろ、息が弾みはじめている。それに、体温も上昇しはじめているし、肌の表面にも、うっすらと汗が浮かびはじめていた。乳首も、充血している感触だった。
 ……しばらくじっとして耐えていたが、このままでは、そのうち理性が消し飛ぶ……と予感した荒野は、
「……茅!」
 と叫んで、自分の上で蠢く茅の肩を抱きしめ、茅の身動きを封じた。
「いい加減、もう、寝る!」
「……むぅ……」
 荒野の腕の中で、茅が、むくれた。
「荒野……いけず……」
「……だから、な……」
 手を緩めると、また勝手にこちらを刺激しそうだったので、茅の肩をがっしりと自分の方に抱き寄せながら、荒野は、茅にいう。
 いつの間にか、荒野もこめかみのあたりに汗をかいていた。
 しかし、荒野の汗は、「汗」は「汗」でも「冷や汗」なのだが。
「えっちが悪いとはいわない。茅も嫌いになってないし、飽きてもいない。学校や他の事情が全て片づいたら、一日中やりまくってもいいと思う。でも、おれたちの年齢で、そんな毎晩やりまくっている人、ほとんどいないから。おれたちは、今、一生懸命普通の人々らしい生活に馴染もうとしているところで、ここで欲望に負けてそういうことばかりやっていたら、将来、お互いのためにならないから」
 一息に、そうまくし立てた。
 半分、自分自身にいい聞かせている。
「ましてや、おれたちは、表向き、兄弟ということになっている。仲が良すぎるのも、対外的な面で、かなりやばい。いまだっていろいろな人からくっつきすぎとか言われているし、普段からえっちばっかりしていたら、そういうの、普段の態度にもでると思うし。おれたちがこんな関係だと広く知られたら、良くて一緒に暮らせなくなり、最悪、ここにいられなくなる。近親相姦は大抵の社会でタブー視されているし、例えば、血の繋がりがないことを開示したとしたら、今度は、おれたちのような低年齢の男女が二人きりで生活していることが問題になる。兄弟、というふれこみがあるから二人きりで暮らせるわけで、そのふれこみを周囲に信じさせるには、二人きりの時も、これ以上、ベタベタするわけにはいかない。そういうのは、自然に態度に現れるものだそうだし、特に一部の女性は、そうした雰囲気に敏感だ」
 しゃべっている内容は正論だと思うのだが、口にするうちになんだかどんどん詭弁を弄している気分になってくる荒野だった。
「茅は、こんなことでこの土地に居られなくなったり、あるいは、今までの通り、二人一緒に暮らせなくなるの、嫌だろう?
 おれは、嫌だ。だから、やりたくても、ある程度は、我慢する。平日は、えっち禁止。そう決めた……」
 なんか、いいわけ臭いな……とおもいつつ、茅の体を抱きしめながら、最後まで、言い切る。
 荒野の気持ちの上では……今までに何度か体験した、命のやり取りよりも、よっぽど緊張していた。
 茅は、荒野の腕の中で「むぅ」とうめいたが、不承不承でも納得したらしく、最終的には「……わかったの……」といってくれた。
 荒野がほっとして腕の力を緩めると、茅は、逆に荒野の首に抱きつき、
「……そのかわり……」
 と、荒野の耳元に囁いた。
「荒野は……絶対に、他の女に靡いたら、駄目なの」
 ……なんでそんな心配をするのか……と、荒野は愕然とした。
 その時、荒野はよっぽど間の抜けた顔をしていたのか、茅は、すぐに、
「……今日の学校で……」
 と、言い添える。
『……あんなのを気にしていたのか……』
 と荒野は思った。
 今日、登校時に荒野に寄ってきた女生徒たちのことを、茅なりに気にしていたらしい。荒野自身は、彼女たちのことは、さほど気にしていなかった……というより、今、茅にいわれるまで、まるで意識していなかったのだが……。
「彼女たちはあれ、非日常的な存在にあこがれているだけ……すぐに、飽きると思うよ……」
 口に出しては、そういった。
「それに……こういうこと以外に……だな。
 茅は、もっといろいろな人と、触れあわなければいけない……」
 口にこそ出したことはないが、実は荒野は、茅が自分にばかり目を向けていることを、危惧している。
 いや、正確にいうと、茅は意外に観察眼がするどく、周囲の人々について、荒野が気づかなかったことをふと口にすることも、多々、あるのだが……それでも、茅が、荒野にだけ、過剰に感情移入をする傾向は、否定できない。
 そうした傾向を、荒野は危ぶんでいる。愛情とは別に意味で……茅には、もう少し広い視野を身に付けて貰いたいと思っているから、だが……そのあたりについては、茅を説得できるほど、自分の中でも整理がついていないので、未だ、茅には話せていない……。
「おれは……前にもいったけど、茅には、もっといろいろな人と知り合い、混じり合って、いろいろな経験をして貰いたいんだ……」
 茅は、荒野の首に抱きついたまま、じっと息を潜めて、荒野の言葉を聞いている。
「……おれだって、まだまだガキだけど……茅は、今までが今までだから、おれ以上に、世間が狭い。
 今は……二人きりの世界に閉じこもるよりも、もっと広い場所をいろいろ見たり、聞いたり……経験することが、大事なんじゃないかな……。
 そのための条件も、かなり整ってきているし……その流れを、ここに来て、無駄にしたくはないんだ……」
 荒野は、ゆっくりと、自分自身に言い聞かせるように、続ける。
「……わかったの……」
 茅がそういって、荒野から離れることには、荒野自身も力を失っていた。

 その夜、荒野は、久々に茅を抱かずに眠った。



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彼女はくノ一! 第五話 (160)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(160)

 もともと、楓は、眠りが浅い。
 だから、早朝に起きることは、特に苦にならなかった。驚いたのは、着替えて廊下に出ると、楓と同じように学校指定のジャージを着た孫子と遭遇したことだった。
「……才賀さんも、来るんですか?」
「……いけなくて?」
 何となく、緊張を孕んだ朝の挨拶だった。
 玄関に向かう途中で、スポーツウェア姿で首にタオルをかけたテンと合流する。
「ガクは、着替えてから合流してくるって……」
 テンの話しによると、ガクは、あれからずっと今でキーをタイプし続けていたらしい。
「……で、今朝、ボクが声をかけて、今、部屋に戻したところ……」
「徹夜明けで運動をしても、大丈夫ですなんですか?」
 楓が、首を傾げると、テンは、
「ガクにとっては、あのくらい、散歩程度の感覚だから、大丈夫だとは思うけど……。
 なんか……ガク、ここ数日、怪我のせいでいつもと違って激しい運動ができないから、かえってストレスが溜まっているみたいなんだよね……」
 という。
 まったく体を動かさない方が、ガクにとってはよくない……と、いうことらしい。

 そうして、楓、孫子、テンの三人で玄関を出て、マンション前に向かう。外に出ると、早朝の空気は、肌を刺すような冷たさだった。
 マンション前では、黙々とストレッチを続ける茅と、それを見守る荒野の二人が待っている。
 軽く挨拶を述べあった後、テンが荒野に「ガクは、後から来る」と告げ、すぐに出発する。荒野と茅を先頭にして、川の方に向かっていった。当然のことながら、この面子が町中を全力疾走するわけにもいかず、一般人がジョギングする程度の速度で走っていた。
「……少し前までは、この土手をずうっと走っていったんだけどな……」
 橋を昇っていくと、向こう岸には渡らずに、荒野はそういって土手の遊歩道を降りて、河川敷に向かう。
「……前では、ここで茅の自主トレとか三人組の組み手につき合っている」
 河川敷に降りると、茅は、すぐに短距離のダッシュを、何往復かしては、立ったまま少しの間休憩し、再度ダッシュの往復をする、という行為を繰り返しはじめた。
 荒野によると、メニューも、茅自身が考えているらしい。
『確かに……体力は、それなりに、つくとは思いますけど……』
 楓は、茅に体術を教える、と約束した手前、現時点での茅の能力を見極めようと、真剣に茅を観察している。
 まあ……学校の授業風景を参考にすれば……茅は、確かに、同年配の女子の中では、そこそこ、「動ける」ほうだとは……思う。
 しかし、一族の関係者と互角以上に渡り合えるレベルかというと……これは、比較する気にも、なれない。
「……ええっと……」
 そこで楓は、茅のことは後で考えることにし、テンに向かって話しかけた。
「テンちゃんは、どういう事を習いたいと思ってますか?」
 少なくともテンは、ある程度の基礎ができているし、筋力とか反射神経など、数値化できる性能でいうのなら、楓よりも上だ。
 その性能を、活かしてきれていないだけで……と、楓は、考えている。
 だから、話し合いながら、テンの資質にあった調製を行えば、それでいい……と、楓は、そう判断する。
「習えるものなら、なんでも吸収したいくらいだけど……」
 と、テンは、少し考えこみ、それから、
「じゃあ……これ、楓おねーちゃんなら、どう使う?」
 と、ポケットから折りたたんだままの六節棍を手渡した。
「……棍、ですか……。
 こういうのは、扱ったことはないんで、自己流になりますが、いいですか?」
 手渡された方の楓は、困惑しながらもそう確認し、テンから少し距離を置いて、関節を外したままの六節棍を適当に振り回してみる。
 端の棒を掴んで大きく振るうと、大きな半径を持つ、広い迎撃圏を形作る。
 途中の棒を持って両端を振り回すと、小さな半径の迎撃圏を、両手に持つ形になる。
『……なるほど……』
 扱いは、難しそうだが……。
 一通り振り回して感触を掴んできた楓は、今度は、右手で端の棒を掴み、自分の左肩に向けて、棍を振るう。
 棍は、左肩から楓の背中に当たり、右側の脇の下のあたりから、楓の前方に向かって飛び出す。背中に当たった箇所は、さほど痛くはない。しかし、楓の脇から前に飛び出した棍は、ぶんっ、と風切り音を発していた。
 背中を経由して、脇から出てきた棍の先端を、楓は左手で掴む。右手で掴んでいる棍は、すでに手放しているので、勢いを殺さずに、左手で、逆袈裟に、振り抜く。
 ぶおんっ!、と、空気を切り裂いて、棍は、楓の身長ほど半径を持つ半円と化した。
『……遠心力……と、それに……』
 派手だけど、これだどモーションが大きすぎて、見切られやすいな……と思った楓は、今度は、中間にある棒を握る。
 短く振るえば、遠心力は弱くなるが……。
『せっかくの多関節、なんだから……』
 モーションの読みにくさ、を最大限に生かすべきではないか……と、楓は考える。
 縦横に棍を振るいながらいろいろと持ち替えて、単長様々なリーチを試してみる。先ほど、自分の背中を経由させたように、手足に絡ませて、あるいは、すでに勢いのついている棍を、後押しするように蹴り、速度を変えたり軌道を修正したり、自分の体で棍を隠して、どこから出てくるのか分からないようにしたり……と、いろいろ試しているうちに、楓の動きは、どんどんアクロバティックなものになっていった。
「……な」
 いつの間にか、テンの側に来ていた荒野が、テンに話しかける。
「楓は、武器に頼らず、棍も、手足の延長としか、認識していないだろ……」
「……うん……。
 初めてで、これだけやれるのは……凄いと思う……」
 テンも、素直に頷く。
 楓は、一所に留まっておらず、絶えず体勢を変えて、棍を振り回し続けていた。おそらく、楓の脳裏では、複数の仮想敵の姿をイメージし、それを自分の四肢と棍を使用して、延々となぎ払い続けているのだろう。
 うっすらと額に汗を浮かべた楓は、少し離れてみている荒野やテン、それにテンと一緒に楓の様子を見守っていた孫子のことも、今は、意識していないように思えた。
「……あ。
 今朝は、おねーちゃんたちもいる……」
 その頃になって、ガクが、ようやく合流してきた。
 そして、楓の演舞に気づき、目を丸くし、テンに語りかけた。
「……楓おねーちゃん……棍も、使えたんだ……」
「……今日、初めて使ったんだって……」
 テンが、少し憮然とした様子でガクに答えた。
「ガクか。ちょうど良かった。お前の棍、テンに貸せ。
 テン、棍を持って、ちょっと楓とやってみろ……」
 荒野がガクに、そういった。



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「髪長姫は最後に笑う。」 第六章(76)

第六章 「血と技」(76)

「やっぱり……ボクたちと手合わせしたがるかな?」
 テンも、やはり、荒野と同じことを考えていたようだ。
「……うーん……。
 全部が全部、とはいわないが……何割かは、申し出てくるんじゃないか? お前らの実力を自分で確かめたい、と思っているやつはそれなりにいるだろうし……。
 まあ、本気の潰し合いは、仕掛けてこないと思うけし……何人か相手にすれば、向こうも、お前らの実力を見定めると思う……」
「……じゃあ……。
 面倒だから、なるべく強い人、廻してもらうようにお願いしよう……。
 その人の中のトップを潰せば、後は静かになるだろうし……」
 いとも簡単にそういってのけるテンに、荒野は、激しい違和感を感じた。
「……あのなぁ……。
 お前は、簡単にいうけどな……筋力とか反射速度だけとか、直線的な要素だけが、強さじゃないから。
 スペック的には劣る術者は、その不利をカバーするための技を磨いているものだし……実際に相手にするとなると……」
 不遜なテンの態度に呆気に取られ、その自負に対する違和感の正体を説明しようとして……荒野は、不意に黙り込んだ。
「……まあ……。
 実際に相手にしてみれば、いやでも理解するか……」
 荒野は投げやりな口調で、そう付け加える。
「……なんだよ、思わせぶりに……」
 テンが、物足りなさそうな顔をして、荒野の方をみている。
「いや……お前らの三人の場合は……自分より弱い筈の相手に、一度、徹底的に負けた方がいいと思ってな……」
 案外……こいつらは、一度、こっぴどくやられた方が、いいのではないか……と、荒野は思いはじめている。
「そんなの……。
 ボクたち……本土に来てから、負け続けだけど……」
 テンは不満そうに口をとがらせる。
「でも……負けても、お前ら……負けて当然、と、納得しているだろ?」
 が、荒野は相手にしない。
「お前らは……まだ、折れたこと、ないからな……。
 蹉跌や挫折を知らないから……脆いよ」
 それに……身体能力的に、自分よりも劣る筈の相手に負け続ければ……そこから、学ぶものもある筈だ。
 そして、そうした経験は……三人よりも、強靭な肉体を持つと予測される、襲撃者たちを相手にする時、役に立つ筈だった。
『……問題は……』
 テン、ガク、ノリの三人が成長するまで……襲撃者の方が、待っていてくれるかどうか……だ。
 向こうには向こうの都合があって、今は攻撃を控えているのだろうが……攻撃が再開されるまでに、できるだけ迎撃態勢を取って置き、できれば、敵の目をこちらに引き付けておきたい……、と、荒野は思っている。
「……かのうこうやは、知っているのかよ……」
 不満顔のテンに聞き返され、荒野はげんなりとした気分になった。
「おれ……お前らより小さいころから、荒神のやつに仕込まれていたんだぜ……」
 幼少時にあんなのに「教育」を受ければ、現在、テンたちが持っているような、楽天的な全能感は消し飛ぶ。
 当時、荒野は荒神に、「逆立ちしたって勝てない相手がいる」ということを、細胞の一粒一粒に刷り込まれたようなものだった。
 その時の荒野の表情が、あまりにも真に迫っていたのか、しばらく、テンだけではなく、その場にいた全員が絶句する。
 しばらく、ガクがキーボードを打つ音だけが、響いた。
「……と、とりあえず……」
 しばしの間をおいて、孫子が「新たにやってくる一族の対応は、荒野たちにまかせる」といった意味のことをいい、荒野も素直にそれを容れた。
 実際、そっちの件は、孫子には関係がないといえば、ない。
 続いて、荒野が、テンとガク、それに茅に体術を教えることを、改めて楓に頼んだところに、プレハブで絵を描いていた香也が、母屋に帰ってきた。
 何だかんだでもういい時間になっていたので、その夜は解散、となる。

 荒野と茅が居間を後にする時も、ガクは相変わらずキーボードを叩き続けており、顔も上げようとしなかった。

 マンションに帰ると着替えてすぐにベッドに入った。食事と入浴は終えていたので、他にすることもない。茅もおとなしくパジャマに着替えて、荒野と同じベッドに潜り込んでくる。
 すっかり布団に体をいれると、茅は、荒野の体に抱きついてくる。
『……なんだか……』
 こうしているのが、当たり前になってしまったな……と、荒野は思った。
 ブラをつけていない茅の乳房が、荒野の体とに挟まれて、押し潰されている。その感触と茅の体温に、荒野の下半身が、その気もないのに反応してしまう。
「……荒野……。
 元気になった」
 茅が、荒野腋の下あたりに顔を密着させながら、呟く。
 もぞもぞとした感触が、くすぐったい。
「これは、自然現象。
 茅も、明日からは疲れることを、一杯やる筈だ。今日は、このままおとなしく寝ようよ」
「……むぅ」
 茅は、明らかに不満を含んで鼻を鳴らす。
「……このところ、毎晩やってたじゃないか……。
 たまには、静かに添い寝もいいだろ?」
 荒野はそうでもないが、茅は、行為のあと、かなり体力を消耗した様子で、ぐったりしている。そのくせ、時間が許す限り、何度でも求めてくるのだった。
 荒野の方が、自制する時を判断しなければならない……と、そう思う。
「……本気で、楓から体術習いたいのなら、生半可な覚悟ではついていけないぞ……。
 よって、これから平日は、えっちな運動禁止……」
 荒野がそういうと、荒野に抱きついていた茅が、全身を硬直させる。
「……荒野……」
 茅は、震える声で、荒野にいう。
「もう、茅に……飽きた?」
「そういう問題ではない」
 荒野は、こん、と、拳を軽く茅の頭に打ちつける。
「……何事にも、節度というものがあるだろ……。
 あと、茅の体力の問題。
 健康のため、やり過ぎに注意しましょう……って、聞いてないし!」
 茅は、布団の中に潜り込んで、荒野のパジャマを脱がしにかかっている。
「……って、こら。茅。明日は早いんだから、そういうの駄目だって……」
 茅は、聞く耳を持たず、荒野の上着の前をはだけ、荒野の胸板に頬ずりをはじめる。
「……荒野の、匂い……」
「……こらこら……」
 なにをフェテッシュなことをしているのか、と、荒野は思う。
「茅、長い間、荒野の匂いを嗅がないと、寂しくて死んじゃうの……」
「嘘をいうな、嘘を」
「でも……この温もりが欲しかったのは、本当……」
 茅は、布団の中で荒野に馬乗りになりながら、器用にごそごそと服を脱ぎ出す。
「……だから、えっちは駄目だって……」
 制止しようとする荒野の声には、懇願の色が混ざりはじめている。
「荒野は、えっちしてくれなくても、いいの」
 そういいながら、布団の中で上半身裸になった茅は、荒野に抱きついた。
「茅が、勝手にやるの」
 柔らかくて、暖かくて、好い匂いのする茅の体が、ひしと、押しつけられる。



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彼女はくノ一! 第五話 (159)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(159)

「……加納……」
 六主家の係累が、大挙してやってくる……という荒野の告知に、最初に反応したのは、孫子だった。
「それ……いつ、知りましたの?
 それに、名簿……って、……あなた方のような非常識な方々が、あと何人くらい増える予定なのかしら……」
 声が、震えている。
 現状でさえ、かなりややこしいことになっているのに……さらに加えて、これ以上、この町の状況が複雑さを増していくのを、警戒している様子だった。
「……ええと……合わせて、百人ぐらい、かな?
 それと、知らせが入ったのは、昨日の夕方……」
 荒野は、動揺を隠そうとしない孫子とは対照的に、くつろいだ様子をみせていた。
「……あなたという人は……どうして、そういう大事なことを、後回しに……」
「見解の相違だな。
 おれにとっては、毒にも薬にもならない単なる野次馬連中よりも……今、この場にいる人たちの安全を確保する方策の一つでも考える方が、よっぽど、大事なんだ……」
 詰め寄る孫子と、淡々と応じる荒野。
『……六主家の血筋が……百人も、一カ所に……』
 荒野は、「すぐにこの場に駆けつけてこれるくらいに暇なやつらだから、たいした人材ではない」と孫子に説明し、自身でもそう信じ切っているようだが……楓は、別の意味で、不安だった。
 たとえ末端の者だろうが……仮にも六主家血族、である。
 先天的な資質、という伝でいけば……楓のような雑種の、及ぶところではないのではないか……と、楓は、危惧しはじめる。
 楓とて、六主家の血筋の者に実際にまみえたのは、この土地に移って来てからだが……はやり、根底的なレベルで、自分たち雑種とは、違う……。
「ねぇねぇ……」
 楓が物想いに沈んでいると、今度はテンが、荒野には質問をする。
「どういう人達が、くるの?」
 もともとテンは、三人組の中で、一番「一族」に対して、強い興味を見せている。
「野呂系と、二宮系が半々。
 年齢は、十代から二十代……ほとんど、若いやつらばかりだったな。お前達や、それに、この土地で今、起こっていることに、興味を持って、わざわざ出向いてくる酔狂者の集団だよ……」
「……のらさんや、最強の人、みたいな人たちかぁ……」
 野呂良太と二宮荒神のことだ。
 確かに、今目前にいる荒野を除けば、この二人が、テンたちにとってもっとも身近な「一族の者」だろう。
 ただし、この二人は、当代でもトップクラスの実力者である。
「あそこまで、精鋭だとは思わないがな……」
 荒野も、楓と同じことを考えたのか、そういった。
 そのあと、
「そのうち、ひょっこりと姿を現し、挨拶にくるだろう……」
 と、言い添える。
「やっぱり……ボクたちと手合わせしたがるかな?」
 テンが、荒野に尋ねる。
「……うーん……。
 全部が全部、とはいわないが……何割かは、申し出てくるんじゃないか? お前らの実力を自分で確かめたい、と思っているやつはそれなりにいるだろうし……。
 まあ、本気の潰し合いは、仕掛けてこないと思うけし……何人か相手にすれば、向こうも、お前らの実力を見定めると思う……」
「……じゃあ……。
 面倒だから、なるべく強い人、廻してもらうようにお願いしよう……。
 その人の中のトップを潰せば、後は静かになるだろうし……」
 炬燵にあたりながら、テンは、平静な声で不遜なことをいう。
「……あのなぁ……。
 お前は、簡単にいうけどな……筋力とか反射速度とか、直線的な要素だけが、強さじゃないから。
 スペック的に劣る術者は、その不利をカバーするための技を磨いているものだし……実際に相手にするとなると……」
 そこまでいいかけて、荒野は首を振って黙り込んだ。
「……まあ……。
 実際に相手にしてみれば、いやでも理解するか……」
「……なんだよ、思わせぶりに……」
「いや……お前らの三人の場合は……自分より弱い筈の相手に、一度、徹底的に負けた方がいいと思ってな……」
「そんなの……。
 ボクたち……本土に来てから、負け続けだけど……」
 野呂良太には三人がかかりでも、いいようにあしらわれた。
 荒神は、そもそも、戦おうという気にも、なれない。実力差が、ありすぎる……ということが、対面しただけで、ビリビリと伝わってくるような相手だ。
 秦野には、実際問題として「勝てなかった」。
 そして、荒野。
 楓と、孫子……。
 井の中の蛙的な視野の狭さは、今や、否応なく、改善をせまられている……と、テンは、思っている。
「でも……負けても、お前ら……負けて当然、と、納得しているだろ?」
 荒野は、涼しい顔をして、テンに応じる。
「お前らは……まだ、折れたこと、ないからな……。
 蹉跌や挫折を知らないから……脆いよ」
「……かのうこうやは、知っているのかよ……」
「おれ……お前らより小さいころから、荒神のやつに仕込まれていたんだぜ……」
 荒野は、やけに哀愁を滲ませた、しみじみとした口調でいった。
「……あいつ……野郎相手だと、本当、手加減しないからな……。
 今のお前らのように、のほほんとしていたら……おれ、とっくの昔に死んでいるよ……」
 これで荒野も、昔はかなりシビアな生活を送っていたようだ……と、納得しない訳にはいかない、口調と表情だった。
 しばらく、誰も何もいわない。
 しばらく、ガクがキーボードを打つ音だけが、響いた。
「……と、とりあえず……」
 沈黙に耐え切れなくなったのか、孫子が、少し慌て気味に話し出す。
「その、新たにやってくる一族の対応は、あなたたちに一任いたしますわね……」
 できるだけ係わりあいになりたくない、と考えているのが、モロ分かりなリアクションだった。
「……当然、そうなるな……。
 ま、おれも、できるだけ三人に任せるつもりだけど……」
 荒野は、孫子に、そう答えた。
「……おれや楓は、それなりに忙しいし……」
「……え?」
 思わず、楓は、荒野に聞き返す。
「なんだ、楓……。
 今までどおりの生活をしながら、テンやガク、それに、茅にまで、体術を仕込むんだぞ、お前が……。
 しばらくは、十分、忙しいと思うけどね、おれは……」
「そう……でした」
 楓は、首をすくめる。
「でも……誰かに教えるって、初めてなんですけど……」
「じゃあ……荒神方式でやれば?
 実戦に近い形で向き合えば、嫌でもおぼえるだろ……」
「……ああ……はい。
 そう、ですね……」
 荒野にそう返され……楓は、ますます小さくなる。
 自分の経験からいっても……確かに、短時間のうちに、何度も死ぬような目に合えば……嫌でも、必死に、対策を講じるようになる。
「……でも、あの……」
 楓は、上目使いに、荒野をみやる。
「テンちゃんたちは、問題ないと思いますけど……茅様の、方は……」
「手加減無用」
 荒野は、ぴしゃりと即答した。
『加納様は……本当に、茅様を止めたいんだな……』
 と、楓は思った。
「……楓……」
 それまで黙っていた茅が、不意に、楓に声をかける。
「大丈夫なの。
 茅……楓には、勝てないけど……負けることも、ない……。
 荒野のいうとおり、手加減は必要ないの……」

 それからしばらくして、香也がプレハブから母屋に戻って来た。話し込んでいるうちに、いつの間にか、いつもなら就寝する時刻になっていた。
 明日も学校があるので、その夜は解散、となった。

「……あの……」
 楓は玄関まで見送りにいき、帰りかけた荒野に、確認をする。
「明日の朝から……わたしも、一緒に走っても、いいですか?」
「……別に……おれに断る必要はないんだけど……。
 その方が都合がいいことは、確かだな……」
 荒野は頷いてそういいながら、
「茅やテンたちに仕込む件は、お前の裁量に任せるから……いちいち、方法を確認しにくる事はないぞ……」
 と、楓にいい渡した。
『好きにやっていい……っていうのが、実は、一番困るんだけどな……』
 楓は、内心ではそう思ったが、口に出してはなにもいえなかった。



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「髪長姫は最後に笑う。」 第六章(75)

第六章 「血と技」(75)

 ガクは、いいたいことをすっかり吐き出すと、後は手元に意識を集中させ、口を閉ざした。
 そうしたガクの様子を見て、
「……はいっちゃった……」
 と、テンはいった。
「こうなると、ガクは……回りのいうこと、聞いていないし、見えていないから。
 一度没入しはじめると……ガクは、長いよ……。
 集中力も体力もあるから……作業が区切りのいいところまでいくまで、ずっとこのまま……下手すると、一晩でも何日でも、飲まず食わずで続けているから……」
 ……そんなもんか……と、荒野は思った。
 いわば、精神的なバーサク・モードといった状態にあるらしい。
 自分が興味を持つことには、体力の続く限り、とことん、食らいつく……その代わり、興味の持てないことには、まるで関心を示さない……というのは、社会性を欠いた幼児的な気質の現れ、でもある。
『その……幼児性も……』
 必ずしも、悪いことばかりではない……と、荒野は思う。
 現に……ガクは、予想しなかった分野で役にたちそうだった。
『……所詮、おれたち、一族は、異能の者……』
 どかしら、歪んでいることは、別段、珍しいことでもない……と、荒野は思う。
「じゃあ……別の話しな……。
 いいそびれていた事が、いくつかあるから……」
 テンの言葉を受けて、荒野は、話題を変える。
 いくつか、伝えてそびれていたことがあった。
「……楓……。
 お前、これから一週間、茅に体術を教えてやってくれ。
 テンやガクと一緒に、しごいてやって構わない。茅がついていけなくなるくらいで、ちょうどいいから、遠慮せずにしごいてくれ。
 一週間、茅がリタイアせずにいたら……その時は、テン。悪いが、茅と模擬試合、やってくれないか?」
 楓は、荒野の言葉を半ば予期していたのか、素直に「はい」と頷いた。
 できれば、茅自身の判断であきらめる所まで、追い込んでくれ……という、荒野の思惑も、十分に含んでいる様子だった。
 おそらく、茅単独で頼まれた時、かなり判断に迷ったのだろう。
「……ええー!」
 逆に、大声を上げて驚いたのが、テンである。
「なんで、そんなことに……」
 茅と体術……というのは、テンにとって、よほど意外な取り合わせであったらしい。
 ましてや、素人同然の茅と、模擬戦とはいえ、実地に戦ってみろ……というのだから、戸惑うのも無理はないか……と、荒野は思った。
 そこで荒野は、考えていることをより詳細に説明する。
「茅は……体術を、習いたがっているが……おれは、本心では、反対なんだ……。
 半端に動ける方が、いざという時、かえって危ないからな……だから、楓にしろテンにしろ、特に手心を加える必要はない。茅がお前達について行けないようだったら、まだ時期尚早だ、ということだろうからな……。
 ……で、一週間、茅が楓の課す習練に根を上げなかったら……テン、お前と勝負させて、茅に、自分の限界をわきまえさせるつもりだ。
 茅は、身体能力的には、ようやく一月やそこいら、多少運動してきた……という程度の、ただの女の子だ。
 そんな相手に、遅れを取るお前ではないだろう?」
 そういわれたテンは、荒野の言葉を挑発、と理解しながらも、明らかに気分をそこねた表情にになる。
「……当たり前だよ……」
 押し出すように、テンはそう答えた。
「だから、お前が、茅に引導を渡してやってくれ……」
 荒野の意図が「茅に体術の修得あきらめさせる」ことにある、と理解した上で……テンは、ようやく頷いた。
 自分のことが話題になっているというのに、茅は、特に興味のなさそうな顔をして、ガクの後ろから、もといた荒野の隣へと移動する。
「……あと……は……。
 そうだ。いい忘れるところだった。
 これから、一族の、若くて暇を持て余した奴らが、この町のきて、おれたちの動向を見学するそうだ……」
 荒野がそう述べると、茅と、相変わら夢中でタイピングをしているガク、それに荒野自身の三人を除く全員が、一斉に驚きの声をあげる。
「……わざわざ、これから引っ越してくるやつらの名簿を作成して送ってくるほどだから、敵意や害意は、ないと思う。
 たぶん、本当に興味本位。ただそれだけ、だ。敵でもないし、味方でもない……いわば、やじ馬、だ。
 おれは、できればこいつらも、味方に引き込みたいと考えている……」
「……加納……」
 まっさきに動揺から立ち直り、問い返したのはは、孫子である。
「それ……いつ、知りましたの?
 それに、名簿……って、……あなた方のような非常識な方々が、あと何人くらい増える予定なのかしら……」
 やけに表情が、険しかった。
『……お前自身だって、その非常識の仲間だろうに……』
 内心ではそう思いながらも、荒野は、緊張感のない声で、
「……ええと……合わせて、百人ぐらい、かな?
 それと、知らせが入ったのは、昨日の夕方……」
 と、答える。
「……あなたという人は……どうして、そういう大事なことを、後回しに……」
 孫子は、顔を伏せて、ぷるぷると全身を細かく振るわせている。
「見解の相違だな」
 荒野は、ことなげに応じた。
「おれにとっては、毒にも薬にもならない単なる野次馬連中よりも……今、この場にいる人たちの安全を確保する方策の一つでも考える方が、よっぽど、大事なんだ……」
 荒野の返答を聞くと、孫子は、これ見よがしに大仰な動作で、数度、深呼吸をする。
「……了解しました……。
 で、その百人前後の方々というのは……信用、できますの?」
 ようやく顔をあげた孫子は、若干こわばった顔で、荒野をさらに追求する。
「今の時点では、なんとも、いえない」
 荒野は、ゆっくりとかぶりを振る。
「流石に、見境のない凶状持ちを野に放つほど浅薄だとは思わないが……。
 一口に一族、といっても、ピンキリだからな……。
 ここに移住できる、ということだから、何らかの理由で現場にでていない連中がほとんどだと思う」
「……何らかの理由?」
 孫子が、眉をひそめる。
「無能。有能ではあっても、適性に問題がある者……」
 ここで、孫子は、楓の方をちらりとみた。
 荒野は、ここにくると予想される人材の種別をさらに挙げ続ける。
「……病気や負傷などの理由により、一時的に現場から遠ざかっている者。若年者で、実務未経験のひよっこ……」
「……ようするに、戦力外の者と、始末に負えない変わり者の寄せ集め……という理解でよろしくて?」
 孫子が、冷徹な声で、確認してくる。
「おれは、そう予測している。
 それでも……仮にも、一族の者だ。
 数が数だし、味方につけることができれば、損はない……」
 孫子は、これみよがしに、盛大なため息を吐いた。
「まあ……こちらの足を引っ張るようなことがなければ……わたくしは、別にかまいませんけど……」
 当てつけと、それに、「孫子自身は、そちらの面倒はみない」という態度表明をしてみせる。
 荒野にしても、孫子にそこまで期待はしていないので、特に反論はしなかった。
「ねぇねぇ……」
 今度はテンが、興味津々、といった表情で荒野に尋ねてくる。
「どういう人達が、くるの?」
「野呂系と、二宮系が半々。
 年齢は、十代から二十代……ほとんど、若いやつらばかりだったな。お前達や、それに、この土地で今、起こっていることに、興味を持って、わざわざ出向いてくる酔狂者の集団だよ……」
 国内を根城にしているのは、六主家のうち、よっつ。そのうち、佐久間は滅多に人前に姿を現さないし、加納は、数自体がひどく少ない。
「……のらさんや、最強の人みたいな人たちかぁ……」
「あそこまで、精鋭だとは思わないがな……。
 そのうち、ひょっこりと姿を表し、挨拶にくるだろう……」
 少し前に……秦野の三人組が、テンたちの実力を自分の目で確かめに来たように……そうした者たちが、立ち会いを求めてくるのは、荒野には、必須に思えた。



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彼女はくノ一! 第五話 (158)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(158)

「かのうこうや。
 ボクのことを山出しのお馬鹿だと思ってだでしょ?」
 ガクは手をとめず、呆気に取られて様子を見守っている荒野にいった。
「……単純な奴だとは、思っていたよ……」
 荒野は、毒気を抜かれた表情で、そう返した。
 狸か狐に化かされた事に気づいた時、人は、ちょうどこの時の荒野のような表情をするのかもしれない。
「……ガクの処理系は……ボクやノリと比較すると……かなり、複雑になっている……らしい。
 じっちゃんに新しいことを習った時、最初に覚えるのは、ボクかノリ。
 ガクは、学習の過程では、一番多く失敗して、試行錯誤を繰り返すんだけど……一度、覚えた事に関しては、誰よりもうまくやてみせる。
 なんていうのかな……飲み込みは悪いけど……応用に、強い、というか……。
 一見解決不能な問題にぶち当たった時に、ボクらが思いがけない解決方法を見つけるのも、たいてい、ガクだし……」
 テンが、なんとも形容のしようがない複雑な表情を浮かべてそういうと、ガクはガクで、
「その代わり……テンは、ボクなんかよりも、よっぽど頭がいいじゃなか……」
 と、口を尖らせる。
『……ああ……』
 楓は、なんとなく二人の資質の違いを、理解し初めていた。
 テンは……それに、あそらくノリも……合目的に、設定した目標に向かって突き進む。だから、なにか問題に行き当たった時、それを解決する方法も、おのずと「よりシンプルで、ロスの少ない」方法を選択しようとする。
 対して、ガクは……合目的性や合理性よりも、その場その場の興味や関心の対象に、容易に惑わされる。気まぐれで、冗長性が高く、非効率的だが……より多くの試行錯誤を経験するから、長期的に見ると、様々な状況に対処できる発想の柔軟さを、結果的に獲得している……とも、いえる。
『質が……違う……』
「……かのうこうや……」
 楓の想像を裏付けるように、ガクが、孫子と話し込んでいた荒野に話しかけた。
「……なんか、不安そうな顔をしているけど……かのうこうやは、それに、孫子おねーちゃんは……何でも自分たちだけで、解決しようとしすぎているよ。今日の話しを聞いていると……トクツーさんとか、放送部の人たち、とか……その他にまだまだ、協力してくれそうな、学校の人達が、いるんでしょ?」
 なんで、素直に、その人たちに協力を求めないかな……」
「も……求めていない訳では、ないけど……」
 荒野は、どもりながら答えた。
「今日だって……メール一つで、大勢集まってくれたし……」
「……そう、それ!
 ……その人たち、この間茅さんたちが作ってたシステム、使って集めたんでしょ?
 なんでそのシステムに手を加えて、双方向性にすることを考えないかな……。
 双方向性にすれば……そのまま、広範な作動域を持つ、警戒システムになるじゃん……」
 ガクの発想は……指摘されてみれば、それなりに合理的な方法だった。
 現在、楓と茅が基幹部を作り、パソコン部の部員たちが細部を作り込んでいるシステムは……本来の用途はさておき、ほんの少し手を加えさえすれば、確かにそのような使い方も、可能だ。
「アマチュアだってさ、一般人だってさ……怪しいヤツをみつけたら、その場でメールを打って注意を喚起する……ということは、できるんじゃないかな?」
 そう、ガクは、続ける。
 まだ、立ち上げたばかりの試用段階だというのに……ボランティア用連絡システムにメールを登録している人数は、三桁を越えようとしている……。
 今の時点では、楓たちの学校の生徒がほとんどだが……これから先、どれほどの広がりをみせるのか、予測できない。少なくとも、玉木や有働は、学校の外の、この町の人々にも、積極的に巻き込もうとしている。
『……うまく、いけば……』
 数百とか数千、という単位の、自発的な監視網を、築くことができる……。
 早期警戒、という観点でいうなら……そこに住む住人が、日常の生活の中で、自然に異変を見張る……というのは……かなり、理想的なのではないだろうか?
 荒野がしきりに気にしている、「人手の不足」も……異常察知、という点だけをみれば、それなりに……。
『……カバー、できる……』
 と、楓は思う。
「……ボクらが全員でかかれば……打撃力は、そこそこあるんだから……後は、敵の動きを察知してから、どれだけ速やかに、迎撃する態勢に移ることができるか、という、問題だよね……」
 ガクは、手を休めずにそう続けていたが……じきになにもいわなくなり、手だけを動かすようになった。
「……はいっちゃった……」
 テンが、肩をすくめる。
「こうなると、ガクは……回りのいうこと、聞いていないし、見えていないから。
 一度没入しはじめると……ガクは、長いよ……。
 集中力も体力もあるから……作業が区切りのいいところまでいくまで、ずっとこのまま……下手すると、一晩でも何日でも、飲まず食わずで続けているから……」
 テンは、「ガクには構わず、他のことをした方がいい」と言い添えた。
「じゃあ……別の話しな……。
 いいそびれていた事が、いくつかあるから……」
 気を取り直して、荒野が、いった。
「……楓……。
 お前、これから一週間、茅に体術を教えてやってくれ。
 テンやガクと一緒に、しごいてやって構わない。茅がついていけなくなるくらいで、ちょうどいいから、遠慮せずにしごいてくれ。
 一週間、茅がリタイアせずにいたら……その時は、テン。悪いが、茅と模擬試合、やってくれないか?」
 楓は……茅自身から、体術を教えてくれ、とは、頼まれていたので、とくに意外にも思わず、素直に「はい」と首肯する。荒野の許可があるのなら、楓としては特に断るべき理由はない。
「……ええー!」
 大声を上げたのは、テンである。
「なんで、そんなことに……」
「茅は……体術を、習いたがっているが……おれは、本心では、反対なんだ……。
 半端に動ける方が、いざという時、かえって危ないからな……」
 荒野は、真面目な表情で、テンに懇願する。
「……だから、楓にしろテンにしろ、特に手心を加える必要はない。茅がお前達について行けないようだったら、まだ時期尚早だ、ということだろうからな……」
 楓がみるところ、荒野は、茅が自分であきらめることを願っている……のを、隠そうともしていなかった。
「……で、一週間、茅が楓の課す習練に根を上げなかったら……テン、お前と勝負させて、茅に、自分の限界をわきまえさせるつもりだ。
 茅は、身体能力的には、ようやく一月やそこいら、多少運動してきた……という程度の、ただの女の子だ。
 そんな相手に、遅れを取るお前ではないだろう?」
 そういわれたテンは、むっ、として、明らかにと不機嫌な顔になる。
「……当たり前だよ……」
 押し出すように、テンはそう答えた。
「だから、お前が、茅に引導を渡してやってくれ……」
 荒野がそういうと、テンは、不満な表情を隠そうとはしなかったが……しぶしぶ、といった感じで頷いた。
 自分のことが話題になっているというのに、茅は、特に興味のなさそうな顔をして、成り行きを見守っていた。
「……あと……は……。
 そうだ。いい忘れるところだった。
 これから、一族の、若くて暇を持て余した奴らが、この町のきて、おれたちの動向を見学するそうだ……」
 次に荒野がもたらしたニュースは、茅とガク、荒野の三人を除く全員に、少なからぬ波紋を呼んだ。
「……わざわざ、これから引っ越してくるやつらの名簿を作成して送ってくるほどだから、敵意や害意は、ないと思う。
 たぶん、本当に興味本位。ただそれだけ、だ。敵でもないし、味方でもない……いわば、やじ馬、だ。
 おれは、できればこいつらも、味方に引き込みたいと考えている……」


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「髪長姫は最後に笑う。」 第六章(74)

第六章 「血と技」(74)

 その後、楓が「ガクのコードを見てみたい」と、言い出したのを機に、テンが徳川から借りているパソコンを持ってきて、その場でガクにプログラムを書かせることになる。ガクが、「以前に書いたものは保存していないが、この場で書くことはできる」といった意味のことを、豪語したからだ。
 ガクは自分の言葉を実証するため、テンが持ってきたパソコンを立ち上げ、猛然と指を動かしはじめる。
 荒野はその動きをみて、不審に思った。
『……二本指しか使ってないんじゃぁ……』
 荒野の座る位置からは、画面は見えなかったが……最初にいくらかの動作を行うと、ガクは、その後はテンキーしか叩いていないようにみえた。
 ガクの後ろに移動して画面を覗き込んでいる楓と茅が、「マシン語」とか「カオス理論」とかいう単語を織り混ぜながら、荒野には理解不能な会話をしている。
『……つまり……ガクは……』
 ああ見えて、単なるお馬鹿ではなかったらしい……と、荒野は思った。
「かのうこうや。
 ボクのことを山出しのお馬鹿だと思ってだでしょ?」
 タイミングよくガクにそう突っ込まれ、荒野は思わず「うん」と頷きそうになる。その寸前に、ようやく、自制することに成功したが。
「……単純な奴だとは、思っていたよ……」
 荒野は、より当たり障りのない感想をいって、答えた。
 ガクは、見透かしたような顔をして、「ふん」と、これ見よがしに鼻を鳴らした。
「……ガクの処理系は……」
 テンが、かなり微妙な表情を浮かべて、解説する。
「ボクやノリと比較すると……かなり、複雑になっている……らしい。
 じっちゃんに新しいことを習った時、最初に覚えるのは、ボクかノリ。
 ガクは、学習の過程では、一番多く失敗して、試行錯誤を繰り返すんだけど……一度、覚えた事に関しては、誰よりもうまくやてみせる。
 なんていうのかな……飲み込みは悪いけど……応用に、強い、というか……。
 一見解決不能な問題にぶち当たった時に、ボクらが思いがけない解決方法を見つけるのも、たいてい、ガクだし……」
「その代わり……テンは、ボクなんかよりも、よっぽど頭がいいじゃなか……」
『……なるほど……』
 二人の表情を見比べて、荒野は腑に落ちる所があった。
『こいつらの関係も……見た目ほどには……』
 シンプルでは、ないらしい……と、荒野は思う。
 何しろ、物心ついた時からずっと一緒にいたわけだから……そのくらいの「複雑さ」は、あって当然に思えた。
 荒野は、その事実を強く記憶にとどめた。
「……この分では、ガクについては、心配なさそうですけど……」
 そんなことを考えている荒野に、孫子が話しかけてくる。
「そう……だな。
 どうせ、できあがったプログラムを、徳川あたりに検証してもらわなければ……おれたちでは、まともな評価はできそうにないし……」
 それでも……ガクの後ろにたってノートパソコンを見つめている楓と茅の様子をみていれば……おおよその、見当はつくのだが。
『記憶力だけでは……佐久間の資質を全く受け継いでいない……とは、判断できない……と、いうことだな……』
 当たり前のことだが、記憶力だけが、頭の良さを示す指針にはならない。理論構築やインスピレーション……他人に理解できる説明をするのは困難だが、その実、先端的なアイデアを平然と出すことができる……という知性のあり方も、当然、あるわけで……。
『……まいった、なぁ……』
 荒野は、この件に関わるようになってから、何度目になるのか分からない感嘆を、心の中だけでこっそりと行った。
 ヒトゲノムの操作、などという、未知の技術によって産まれた子供たちである。製造者がまるで予想をしなかった能力を獲得することも、あるだろう……。
 この場にはいない、ノリも含めて……。
『……うまくやっっていかないと……』
 一族どころか……こういう子供たちが育ち、増えてきたら……世界でも、征服できてしまうのではないだろうか?
 茅、テン、ガク、ノリ……それに、未だに全貌が掴めていない、襲撃者……などは、ようするに、人工的に造られた、ミュータントだ。おまけに、そのうち、全員で何人いるかも知れない襲撃者に与する子供たちは……一族、あるいは、人間全体への憎悪を刷り込まれているらしい……。
 こちらにできることは……大体、あちら側の子供たちにも、できると筈、であり……。
『……まいったなぁ……』
 再度、荒野は、心中でぼやいた。
 荒野の立場にしてみれば……テンやガク、ノリや茅たちが、卓越した能力を見せるたびに……向こうにも、同等かそれ以上の能力の持ち主がいる、ということを、思い起こしてしまうわけで……。
「……かのうこうや……」
 そんな荒野の顔色を読んだのか、ガクが、話しかけてきた。
「……なんか、不安そうな顔をしているけど……かのうこうやは、それに、孫子おねーちゃんは……何でも自分たちだけで、解決しようとしすぎているよ。今日の話しを聞いていると……」
 そう話す間も、ガクは、指を動かし続ける。
「……トクツーさんとか、放送部の人たち、とか……その他にまだまだ、協力してくれそうな、学校の人達が、いるんでしょ?」
『……戦力としてはあてにならない、一般人だが……』
 と、思いながら……しかし、荒野は、口に出しては、こう返事をした。
「……お、おうぅ……」
「なんで、素直に、その人たちに協力を求めないかな……」
「も……求めていない訳では、ないけど……」
 追求されて、荒野はしどろもどろになる。
「今日だって……メール一つで、大勢集まって暮れたし……」
「……そう、それ!」
 ガクが、ここぞとばかりに、語気を強めた。
「……その人たち、この間茅さんたちが作ってたシステム、使って集めたんでしょ?
 なんでそのシステムに手を加えて、双方向性にすることを考えないかな……。
 双方向性にすれば……そのまま、広範な作動域を持つ、警戒システムになるじゃん……」
『……あっ!』
 ガクに指摘されて……荒野は、ようやく自分の迂闊さに気づいた。
「アマチュアだってさ、一般人だってさ……怪しいヤツをみつけたら、その場でメールを打って注意を喚起する……ということは、できるんじゃないかな?」
 ガクは、滔々と先を続ける。
「……ボクらが全員でかかれば……打撃力は、そこそこあるんだから……後は、敵の動きを察知してから、どれだけ速やかに、迎撃する態勢に移ることができるか、という、問題だよね……」



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彼女はくノ一! 第五話 (157)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(157)

 その後は、「どうやってお金を稼ぐのか?」という具体的な方法論と、「そんなに必死になって稼ぐ必要があるのか?」という目的自体を問い直す議論とが、交互に行われた。
 おおざっぱにいうと、孫子が「経済的な基盤をしっかりして、使える人材も拡充すべき」という論で、荒野が「ないものはない。とやかくいってもしかたがないから、手持ちのリソースを有効に使う方法を模索するべき」という意見。
 いわば、孫子が長期的にみて、優位な位置を築こうとする戦略重視派で、荒野は、資金にしろ人的リソースにしろ、現状で利用出来る範囲内で、最大限の効果を出そうとする戦術重視派である。
『……どちらの言い分にも……』
 一理は、あるのだが……と、楓は思う。
「……次に、茅や楓、それにテンたちが開発するソフトの、企画営業も任せて貰いたいですわ……。
 その代わり、手数料は頂きますけど……」
 そこで、おずおずと発言したのだが、話題はすぐに「現状で可能な事業計画の具体案」に移っており、楓は自分の意見をいう時期を逸した形になった。
 孫子の発言を受けて、荒野が、
「それに関しては……各自個別に口説いてくれ……」
 と「その件に関しては、感知せず」の態度を表明すると、
「……茅は、条件次第なの……」
「ボクは、トクツーさんのお手伝いの方が優先。
 余裕がある時は、やってもいいけど……」
 茅、テンが順番に、各自の方針を表明する。
 楓もあわてて、
「ええと……お仕事の内容次第、ですね……」
 と、言い添えた。
 楓にしてみても、経済的な見地から、一族の援助を受けなくてもやって行けるだけの基盤を整備しておきたい、という気持ちは、ある。
「ねねね。ボクはボクは!」
「……あなたも、何かできますの?」
 自分の鼻先を指さして騒ぎはじめたガクに、孫子が怪訝な表情をして応じた。
「……これでも、テンやノリと同じことを習っているんだから……」
 ガクは、孫子の態度に不満そうな顔をして、返答をする。
「……基本的な知識は、二人と同等だよ。
 コンピュータやプログラムについても、同じこと習っているし……」
「それは、本当。
 ノリもガクも……プログラムのコード、書けるけど……」
 テンが、首肯して、ガクの発言を裏付けた。
「書けるけど?」
 孫子は、疑わしげな表情を隠そうともしなかった。
「ノリは、かなりきっちりとマニュアルどうりにきれいなコード書くんだけど……ガクのコードは、妙に入り組んでいて……後から読むと、ひどく読みずらいんだ……」
「それは……つまり、コードとして、洗練されていない、ということですの?」
「いや、洗練されているかどうかさえ、よく判断できないっていうか……。
 同じ機能を持つプログラムを、ボクとガク、ノリの三人で書いたとする。すると、ガクのコードの方が、ボクらのコードより断然長くてごちゃごちゃしているんだけど……できあがったものを実際に走らせてみると、ガクが作ったプログラムが、一番処理速度が速かったりするんだ……」
 ……なんだ、それは……と、楓は思った。
「……ええと、それって……。
 ……どうして? おれ、専門的なことは分からないけど……コードが長くなると、それだけ処理する命令が増えて、普通は、処理時間が長くなるんでは……」
 荒野も楓と同じことを考えたのか、戸惑った表情で、そう聞き返す。
「……だから、スキップしたりズルしたりする命令を入れると、コードは長くなっても処理時間は節約出来るの!
 何度説明しても、ノリもテンも理解出来ないんだもん!」
 ガクが、少し大きな声を出すと、
「……あんなこんがらがったコード、普通、追えないって……」
 テンが、呻くように嘆いた。
「……つまり、ガクのプログラムは、信頼出来ない……ということですの?」
 荒野と同様、技術的な知識はあまり持たない孫子も、どういうことなのかよく理解出来ない、という表情を浮かべている。
「いや、逆に、信頼性抜群!
 ボクやノリはエラー出すけど……ガクのコードがエラー出したこと、一回もないし……。
 ガクのプログラムは、使用試験も必要ないんじゃないか、って、思うくらいで……」
 そう答えたテンは、何故かムキになっているように思えた。
『……悔しがっている?』
 楓には、いつもは冷静なテンが、「らしく、もなく」感情的になっているように見えた。
 がぜん、ガクがどのようなコードの書き方をするのか、興味が涌いてくる。
「……あの……」
 楓は、おずおずと片手をあげた。
「ガクちゃんのコード、どこかに保存してませんか?
 できれば、一度みてみたいんですけど……」
「そうだな……。
 楓や茅、徳川あたりに見てもらって、判断した方がいいかも知れない……」
 楓の発言に、荒野も頷く。
「……今、ここにはないけど……。
 ちょっと時間くれたら、書いちゃうけど……」
 ガクは、ことなげにそう答えた。
「……ちょっと待って、パソコン持ってくる……」
 テンが、立ち上がって、居間から出て行った。
「……わたくしのパソコンでは、駄目ですの?」
 孫子が、ぽつりと呟く。
「まるっきり、駄目ではないけど……」
 ガクは、炬燵の中に両腕を突っ込み、背を丸めた姿勢でうっそりと答えた。
「ボクのコードは、マシンには優しくないから……半端なスペックだと、正直厳しい……」
「……つまり……マシンの処理能力を、とことん使い尽くす、ということですか?」
 楓は、ガクに尋ねた。
「……それもあるけど……。簡単な処理なら別にいいんだけどさ、ある程度以上、複雑な処理を行い、なおかつ、マシンに十分なスペックがある時には、その都度、仮想OS作ってその中で処理させちゃうし……」
 ……楓は、ますますガクのコードが知りたくなった。
 テンが、徳川から預けられたごついノートパソコンを持って帰ってきた。
「……テン、今、どんなプログラムが欲しい?」
 目の前にノートパソコンを置かれたガクは、それを開いて立ち上げながら、テンに尋ねる。
「監視カメラの認識システム、かな。
 駐車違反の車とそうでない車を識別して、前者の場合、警告を発するとともに、メモリーに映像を残す。後者の場合、映像の記憶は除去する」
 この間、玉木と徳川が、そんなシステムのことを話していたような気がする。そうか、実際に開発していたのか、と、楓は思った。
「……条件付けが曖昧だね。
 同じ認識システムってことで、この間、茅さんが描いたっていう似顔絵があるって話ででしょ?
 それと似たような顔つきの人がカメラに移ったら、指定されたメールアドレスに通知出す、ってプログラムは、どう?」
「……できるのか?」
 荒野が、真剣な顔になっていた。
「指紋の認証システムも実用化されているんだから、顔を識別することくらいは、できるよ」
 ガクは、特に力んだ様子もなく、さらりと答える。
 そんな会話をしている間にも、ガクは、DOSモードでパソコンを立ち上げ、猛然とタイプしはじめる。
 ……GUIさえ切り離し、テキストベースで直にマシンの性能を引き出すつもりらしい……。
 なるほど、ガクの方法は、「マシンにはやさしくない」と、楓は納得した。
「かなり曖昧な判断が必要になるんだけど、そういうのこそ、ボクが得意な分野でさ……」
「……そうなんだよな……。
 ガク、通常のアルゴリズムでは処理するのが難しい工程をプログラミングするのが、得意なんだ。
 野生の勘をマシンにコピーしているとしか、思えない……」
 ガクのコードに興味を持った楓は、ふらふらと立ち上がって、ガクの後ろから画面を覗き込んだ。
 ……画面一面に、「0」と「1」とが、びっしりと並んでいた……。
『……マ、マシン語直打ち!』
 楓がおののいていると、いつの間にか、茅が楓の隣に立っている。
「……茅様、これ、わかります?」
「部分的に」
 茅は、頷いた。
「カオス理論を、応用しているみたいなの」
「あ。わかる?」
 ガクが、手を休めずに応えた。
「……テンもノリも、いくら説明しても、分かってくれなくてさぁ……」



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「髪長姫は最後に笑う。」 第六章(73)

第六章 「血と技」(73)

 ネットオークション以外に、金銭を得る手段としてでた案は、ソフトウェアの開発と販売など、どちらかというと地味なものが多かった。
 やはり「学生という身分からはみ出さない」、それに「襲撃者に備えて、いざという時にいつでも動ける体勢を作っておく」という二つの制約が、大きな枷として機能している。
『……それさえなければ……』
 荒野は、炬燵を囲んでいる面々の顔を見渡す。
『結構……なんでも出来そうなんだけどな……』

「……先生なんかはな、徳川君ところの開発力と才賀さんの資本が結び付いたら、ここいらにコングロマリットができてもおかしくないとかいってたけどな……」
「……似たようなことを、構想していたのですが……」
 羽生が、がっくりと気落ちした様子の孫子に、慰めるような声をかけていた。
「……才賀は、そういうの好きみたいだけどさ……」
 荒野も、孫子に言葉をかける。
「別に、盛大にやる必要も、ないわけで……。
 おれも、この人数でここいらへん一帯を警戒することは不可能なのわかるから、術者を傭うことを考えたんだけど……手持ちの金では全然足りないって気づいてね……」
 個々の戦闘能力を比較するならば……荒野も、この場にいる中で、一般人の羽生を除いた者たちは、かなり上等な部類にはいる……とは、思っている。
 しかし、「いつ、どこに現れるか予測のつかない敵に備える」ということになると……やはり、「質」よりも「量」の問題になってくるわけで……。
 荒野がそんなことを話しはじめると、その場にいたみんなは、それなりに真剣な顔をして聞いてくれる。
「……このまま、常時警戒体制をとるにせよ、逆に、敵の情報を入手して殴り込みかけるにせよ……。
 この人数では、実際の所、どうしようもない。身動きが取れないんだ。
 だから、それなりの術者を雇える資金があれば……確かに、安心出来るんだけど……現状、そんなもの、ないから……」
 そうしたの条件で、最善を尽くすしかかない……というのが、現時点での荒野の結論だった。
「第一、今からお金を稼いだとして……それを有効に活用出来る準備が整うまで……敵さんが待ってくれる、って保証は、あるのか?」
 荒野は、不測の事態に備え、その場その場で事態を収拾する……という発想に慣れている。ましてや、今回は、お金を稼がねば命に関わる、という緊急時でも、ない。
「今までそうしてきたように、普通に生活するだけなら……お金、稼ぐ必要ないでしょ?
 ……楓とか、テンたちとかは……将来の事もあるから、いつでも一族と絶縁出来るように、今のうちから生活基盤を整える準備をしておく……というのは、別に構わないと思うけど……。
 才賀、鋼蔵さんのいうとおり、そんな大掛かりな事業って、本当に必要なのか?
 そりゃ、お金はないよりはあった方が、いい。あったほうが、より安心出来る環境が構築できる。それは、確かなんだだけど……」
 荒野は、「手持ちの金では満足な人材は確保出来ない」と気づいた時、自分自身にそう言い聞かせていたわけだが……。
「……資本を投入出来なければ、その分を、工夫でカバーすればいい……と、先程、いいましたわね……」
 孫子は、荒野の話しをまるで聞いていなかった。
「……これでも、わたくし、企業経営については、それなりの教育を受けています。もちろん、無資格ではありますが……。
 人を傭う余裕がない現状で、わたくし自身が動くのは、理に適っておりますわ……」
 つい先程までの落ち込んだ雰囲気は、見事に払拭していた。
「……まず、徳川の経営状態をわたくしの目で細かくチェックし、合理化と利益率の向上を実現させる」
「……徳川には、世話になっているし、それくらいはやってもいいんじゃないか……」
『おれも……徳川の企業に、余分な金を投資するかな……』
 と、荒野はチラリと考えた。
 孫子と違い、株式相場の知識や経験を持たない荒野にしてみれば、徳川のような知り合いの企業に投資する方が、まだしも抵抗がない。少なくとも、まだまだ業績の向上の余地がある企業、では、ある。
「……次に、茅や楓、それにテンたちが開発するソフトの、企画営業も任せて貰いたいですわ……。
 その代わり、手数料は頂きますけど……」
「それに関しては……各自個別に口説いてくれ……」
「……茅は、条件次第なの……」
「ボクは、トクツーさんのお手伝いの方が優先。
 余裕がある時は、やってもいいけど……」
 これは、テン。
「ええと……お仕事の内容次第、ですね……」
 楓は、かなり考えてから、ようやくそういった。
『……おれが、反対するとでも思ったのかな?』
 荒野はそうは思ったが、結局、なにも言わなかった。
 荒野は……楓には、出来るだけ、多くの選択肢を持って貰いたい……と思っていた。
『この件が片付いたら……』
 一族から足抜けして、一般人として生活する……という選択肢も、当然、ありうるだろう。楓は、荒野ほどには一族の中に身を浸しているわけではないし……。
「ねねね。ボクはボクは!」
 ガクが、自分の鼻先を指さして、騒ぎはじめる。
「……あなたも、何かできますの?」
 孫子の表情から察するに……孫子は、ガクを「戦力外」としてみているらしかった。
「……これでも、テンやノリと同じことを習っているんだから……」
 ガクは、頬を膨らましながら、孫子に返答をする。
「……基本的な知識は、二人と同等だよ。
 コンピュータやプログラムについても、同じこと習っているし……」
「それは、本当」
 テンが、ガクの言葉が嘘ではないことを裏付ける。
「ノリもガクも……プログラムのコード、書けるけど……」
「書けるけど?」
 孫子が、片方の眉をピクンと上げて、テンの言葉の先を即す。
「ノリは、かなりきっちりとマニュアルどうりにきれいなコード書くんだけど……ガクのコードは、妙に入り組んでいて……後から読むと、ひどく読みずらいんだ……」
「それは……つまり、コードとして、洗練されていない、ということですの?」
 孫子が、重ねて尋ねかえす。孫子は、プログラムに関する知識はなかったから、テンの言葉の内容が、イマイチ理解出来ない。
「いや、洗練されているかどうかさえ、よく判断できないっていうか……。
 同じ機能を持つプログラムを、ボクとガク、ノリの三人で書いたとする。すると、ガクのコードの方が、ボクらのコードより断然長くてごちゃごちゃしているんだけど……できあがったものを実際に走らせてみると、ガクが作ったプログラムが、一番処理速度が速かったりするんだ……」
「……ええと、それって……」
 荒野は、横合いから口を挟む。
「……どうして? おれ、専門的なことは分からないけど……コードが長くなると、それだけ処理する命令が増えて、普通は、処理時間が長くなるんでは……」
「……だから、スキップしたりズルしたりする命令を入れると、コードは長くなっても処理時間は節約出来るの!
 何度説明しても、ノリもテンも理解出来ないんだもん!」
 ガクが、怒ったような声で、いう。
「……あんなこんがらがったコード、普通、追えないって……」
 テンが、呻くようにいった。
『……テンが、それいうか……』
 荒野は、絶句した。
 完璧な記憶力を持つテンが混乱するコード……とは、いったい、どういう面妖な代物なんだろうか?
「……つまり、ガクのプログラムは、信頼出来ない……ということですの?」
 孫子も、どういうことなのか理解出来なくて、混乱している。
「いや、逆に、信頼性抜群!
 ボクやノリはエラー出すけど……ガクのコードがエラー出したこと、一回もないし……。
 ガクのプログラムは、使用試験も必要ないんじゃないか、って、思うくらいで……」



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彼女はくノ一! 第五話 (156)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(156)

『……なんか……』
 庭の方が騒がしくなってきたな、とプレハブの中で香也を見守っていた楓は思った。
 別に聞き耳をたてていた訳ではないが、もともと楓は、人の気配には敏感である。
『……テンちゃん、ガクちゃん……才賀さん、荒野様……それに、茅様、まで……』
 特に気をつけていなくても、プレハブの薄い壁越しになら、誰がいるのかくらいは察しがつく。特に、毎日のように顔を合わせている人の、ということなら、なおさらだった。
 結構長く話し込んでいるようだったが、雰囲気にあまり切迫した調子が感じられなかったので、楓は、会話の内容にまでは気を払わなかった。楓が必要な話し合いなら、そのうち、誰かが呼びに来るだろう……。

 案の定、数分後、メイド服姿の茅が、楓を呼びに来た。

「……はぁ……」
 羽生譲は、孫子の話しを一通り聞いた後、太いため息をついた。楓も、羽生と一緒にため息をつきたい気分だった。
 続けて羽生は、「それ、常識で考えたら、ソンシちゃんの伯父さんのいう通りだわ……」とか、「普通、未成年は……そんな巨額のお金、ぽんぽんと動かしたりしないし……」とかいいはじめる。
 楓も、まったく同じ気分だった。
『……何十億……だった……』
 楓にとっては天文学的……とまではいかなくとも、感覚的には国家予算にも等しい金額だった。
 つまり、「この世のどこかにあるのかもしれないけど、一生、自分には手が届かないし、縁もない」オーダーの金額である、という意味に置いて。
 それだけの金額が……孫子にとってはまるで小遣い銭のと対して変わらない……という感じであるらしい……。
 鋼蔵に資産を凍結された、といって孫子はむくれていたが、まるで親に小遣いの減額を言い渡された子供のような、可愛らしいむくれ方だった。
 孫子にとっては……その程度の財産を数年、凍結されていたとしても……。
『……その実……』
 たいしたダメージはないのだろう……と、楓は思う。
 ただ、自分の我がままが、多少、通用させにくくなるだけだ……。
 やはり……孫子と自分とでは、根本的な部分で違うな……と、楓は思った。
 孫子は自分の資産が使用出来なくなった代わりに、お金を集める方法を羽生や荒野と相談しはじめる。
 荒野は「一億くらいなら、すぐに調達出来るけど」というと、羽生は大仰に驚いていた。楓にしてみれば、荒野のレベルの術者が数年かかって貯めたにしては、少額だと思う。
 荒野にしても、おそらく、最初の数年間分は、見習い学習期間として、半端な仕事しか任されなかったのではないか……と、楓は予想した。
 荒野の貯蓄を切り崩しても、「徳川の事業にテコ入れする」のがせいぜい、という話しになった。
『……能力のある人ほど、人件費がかさむ、というのは……』
 どこの世界も同じか……と、楓は思った。
 すると、孫子は、自分の持ち物をできるだけ高く売りたい、と羽生に相談しはじめる。羽生は、「ネットオークションでも……」とか、答えていた。確かに、商品のクオリティさえ確かならば、オークションなら、値段が勝手に吊り上がってくれる……と、楓も思う。
 でも……。
『……焼け石に水、だと、思うけど……』
 服や小物、アクセサリー類なら……数万円からせいぜい数百万、の単位だろう。
 いまく処分ができたとして、全部で数千万円くらい……。
 個人にとっては十分に大金だが、まともな事業資金としては、やや心もとない。
 特に「金に糸目をつけずに、万全の態勢を引いて、殿様商売をする」という発想に慣れ切っている孫子が満足するだけの資金は、その程度では集まらないのではないか?
 ……と、これくらいのことは、楓ではなくとも、容易に予測がつくように思えた。
「万全の態勢で挑みたいのは分かるけど、ないものは、ないんだから……。
 足りない分は、工夫するしかないね……」
 荒野も楓と同じようなことを考えているのか、そういって肩をすくめた。
「……あのう……」
 いおうかいうまいか、かなり悩んだが……楓は、おずおずと自分の意見をいってみた。
「お金がなかったら……無理をせず、今ある資金や設備で、やれることからはじめるべきなんじゃないでしょうか……」
 少なくとも……人材、に関しては、それなりに優秀な人達が、集まっている……と、楓は思う。
「……徳川さんのところみたいに、具体的なモノを開発するのなら、それなりの設備が必要でしょうけど……ソフトウェアなら、最低パソコン一台あれば開発できると思いますけど……」
「……なる……」
 羽生も頷く。
「こっちには、楓ちゃんや茅ちゃんが、いるしな……。
 それに、シェアウェアやカンパウェアなら、別に学生さんが作成しても、お咎めがあるわけでもない……」
「……それって、そんなに儲かりますの?」
 孫子が、首を傾げる。
「……やりようによるけど……そんなに売れて売れてしょうががない!
 っていうふうには、ならないよ……。
 ニーズがあっても、今まで誰も手をつけていない分野をうまく見つける、とか……しないと。
 そういう、どういうソフトを作るか、というコンセプトにもよるし……そういうマーケトリサーチは、どっちらかというと孫子ちゃんの方が得意なんじゃないか?」
「極端に儲かることはないにせよ……茅や楓がいればできる。設備投資や初期投資も必要ない……っていうあたりは、重要なんじゃないか?」
 羽生と荒野が、続けて指摘する。
 荒野は続けて、
「……特に、楓にとっては……将来、一族に依然せずにやっていけるだけの、経済的な基盤を用意することにもなるし……」
 と付け加えてくれた。
 ……少しは、考えてくれるんだな……と、楓は思った。
「……例えば、だな……ソンシちゃん……」
 羽生は、孫子に語りかける。
「君たちのそのルックスも、一種の資産ではあるわけだよな。
 事実、商店街の客寄せとしての実績があるし、みんなでモデルさんのプロダクションでも作って、本格的に商売をはじめる……という選択肢も、あると思う。
 この間の貸衣裳屋さんから初めて、実績作りながら営業して行けば、それなりにいける……と、思う。
 でも、そうなれば……そっちの方が軌道に乗れば乗るほど、君達は拘束される時間が長くなるわけでな……。
 そういうの、今の状況だと、ヤバイんじゃないか?」
 現状、楓たちには……学生、という立場と守って静かに暮らす、ということと、それに、未知の敵の攻撃を未然に防ぐ、という二つの大きな目標がある。
 羽生が指摘する通り……お金になるから、といって、あんまり時間を取られる仕事をする余裕も、楓たちにはないのであった……。
「……例えば、ソフトウェアの開発でもな……一番確実なのは、どっかの開発会社から仕様書貰って、その通りにコード書いて、納期までに渡すって、外注作業だ……。
 でも、君達は……」
「……この国の法律では、雇用関係を結べる年齢に達していない……」
 羽生と荒野が、交互に語っている。
「……そ。
 いくら能力があろうが、まともな会社は、君達のような未成年と契約を結ばない。
 仮に、なんらかの伝手を使って仕事を取って来たとしても……学校にばれたら、ヤバイ訳でな……」
「……だから……おれたちが、お金を稼ごうとしたら……オークションとかソフトのダウンロード販売とか、せこい手段に頼るしかない……」
「……後は……トクツー君みたいに、自分が事業主になっちまうことだな……。名義は、彼の姉君みたいだけど……」
「徳川の所で作る製品に組み込むソフトウェアを開発して、ギャランティを貰う、という方法も、あるの。
 ……徳川も、そろそろ素材開発ばかりではなく、自社のオリジナル製品を手掛けるつもりだ、とか言っていたし……」
 それまで黙っていた茅が不意に口を開くと、テンが片手をあげた。
「……それ、ボクもやるつもりだけど……」




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「髪長姫は最後に笑う。」 第六章(72)

第六章 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(72)

 食事を終えると、荒野は隣の庭に行くことにした。
 茅の件をはやめに楓に伝えておきたかった、というのもあるし、ここ数日、週末のごたごたとその後始末でなにかと忙しく、そろそろ「何もしない時間」が欲しくなった。
 荒野が外出の支度をしていると、茅もコートを着だした。
「……珍しいな。おれ、隣のプレハブに行くつもりだけど……茅も、来るのか?」
 茅は、あまり香也の絵には興味を示さない。
「いくの」
 茅は、頷く。
「荒野に許可を貰ったから、茅が直接楓に頼みにいくの」
 いい心掛け、だ……とは、思う。
 確かに、今の時間なら、楓はプレハブで、香也と一緒にいるだろう。

 エレベータを降りて隣の家に向かい、玄関は通らず、直接に庭に出ようとしたところで、玄関からでてきた孫子と鉢合わせになった。
「……加納!」
 孫子は、何故かノートパソコンを抱えていて、荒野の顔を見ると、顔を綻ばせた。
「わたしくたちは、お金を稼がなくてはいけません!
 加納も、協力しなさい!」
 几帳面な孫子にしては珍しく、髪がほつれ気味になってた。
「……いや、何でそうなるのか分からないけど……」
 荒野は……孫子から詳しい事情を聞かなくてはな……と、思った。
「とりあえず、詳しい話し、聞かせてよ。
 長くなるんなら、どこか暖かいところに移動して……」 テンとガク、だった。

 そういいながら荒野は、茅と孫子を従えて、庭の方に向かって歩いている。
 荒野としては、出来れば、香也の絵を眺めながら話しを聞きたがった。
「……あれ?」
「かのうこうやだ……」
 荒野たちが向かう先、庭の方から聞き覚えのある声が聞こえる。
 テンとガク、だった。
「……お前ら、何やってんだ? 夜中に……」
 荒野は、二人に話しかける。
「ガクの、手裏剣の練習」
「この時間にか? 暗くて手元は見えないだろ?」
 庭の方までは、街灯のあかりも届かない。
「ボクらが? 全然、大丈夫。
 それより、他の人に見られないから、却って都合がいいし……」
 二人とも、夜目が効くのか……と、荒野は思った。
『ついでだ……ちょっと、見てやるか……』
 ちょうど、楓にばかり仕事を押し付けて、心苦しいと思っていた矢先でもある。
 荒野は、茅と孫子に向かって、先にプレハブに入るようにいったが、二人は荒野から離れなかった。
「……茅はともかく、才賀も、か?」
「シルヴィからは、この手の体術は習っていませんの……」
 孫子は、荒野が発しそうな問を先取りして答える。
 ……まあ、いいか……と、荒野は思った。
 そして、ガクの手から、棒手裏剣を一本、受け取る。
「……ガクはな、おそらく、力を込めすぎているんだ。
 もっと、こう……腕の力を抜いて、だな……」
 荒野は、手裏剣を握った腕をぶらぶらと動かし、す、と翻す。
 こん、と乾いた音を立て、二人が標的にしていた桜の木に、手裏剣が突き刺さっている。
「……な。
 筋力で投げるのではなくて、腕を鞭のようにしならせて、遠心力を乗せるつもりで打つんだ。
 手裏剣は、投げる、というより、打つもんだ。
 楓も、そういってなかったか?」
「……そういや、そんなことをいっていた様な気も……」
 ガクは、なにか考え込む顔になる。
「ガクは、あれ、多分、力で投げようとして、変な力が手裏剣に伝わってるんだよ。もう少し、力を抜く、ということを覚えること。
 こんなもん、ある程度以上の術者に使ったって、牽制にしかならないんだから、あまり神経質に考えない方がいい……」
「それ、本当ですの?」
 孫子が、荒野の言葉に反応する。
「何十人で取り囲んで、何十発もいっせいに放ったらまた、話は別だけど……。
 実際的な話をすると、実力のある術者を、そこまで追い込むのもまた一苦労だしな……。
 こいつらみたいにライフル弾、視認して叩き落とせるのは少数派だけど、それでも、一定以上の術者は、手裏剣くらい、受け止めるなり弾くなり、どうにでもできる……」
「……非常識な、方々ですわね……」
 孫子が、肩を竦めて呆れた口調で嘆いた。
 ……楓やこいつらと互角にやりあえる、お前がいうな……と、荒野は心中で突っ込んだ。
「……とにかく……。
 ガクは、いい機会だから、自分の力に頼らずにやる……っていうこと、覚えてみろ……」
 荒野は、ガクに向かって、そういう。
 荒野が見るところ、ガクは、自分の優位……筋力の強さ、に頼り過ぎる傾向がある
「怪我が直りきるまでに、ガクは、手裏剣がうまく投げられるようにする。ただし、傷口が開くまで、熱心にはやらない……。
 そういうのも、たまにはいいだろう……」
 ガクにそういうと、荒野は、孫子に顔を向ける。
「……それで、才賀の方は……なに、慌ててたんだ?」
「……そう! そう、ですわ!」
 荒野に改めてそう尋ねられて、孫子はようやく自分の用件を思い出した。
「……わたくしたちは、早急にお金を稼ぐシステムを構築する必要があるのです!」
「……あー……」
 孫子の返答が唐突なものだったので、荒野の目が、点になった。
「……状況が、よく呑み込めないんだが……。
 話しが長くなるようなら、どこか暖かいところに移動しよう……」
 数秒の間を置いて、荒野はようやく、そういった。
 今夜は、香也の絵は見れないかな……と、ふと思った。
「……母屋、プレハブ、それとも、おれたちのマンション……。
 そのどれが、会談の場所として適切だと思う?」
 孫子の話しの内容が見当つかない身としては、荒野としては、孫子にそう聞き返すしかない……。
「……羽生さんにも聞きたいことがありますし……居間が、都合いいですわね……」
「……茅、プレハブに楓がいたら、居間にくるようにいって連れてきてくれ……」
「……ね。ね……。
 そのお話し、ボクたちも聞いていい?」
 テンが、ガクと頷きあって、荒野の腕をとる。
「……手裏剣の練習は、いつでもできるし……」
「……才賀に、聞け……」
「構いません。
 誰でもいいから、なにかいいアイデアを出して欲しいくらいですわ……」
 孫子が即答したのを見て、荒野は「……心情的に、かなり切羽詰まっているのかな……」と、思った。

「……はぁ……」
 孫子の話しを一通り聞いた後、太いため息をついたのは、羽生譲だった。
「いや……でも……。
 それ、常識で考えたら、ソンシちゃんの伯父さんのいう通りだわ……。
 普通、未成年は……そんな巨額のお金、ぽんぽんと動かしたりしないし……」
 孫子の個人的な資産が十億単位、と聞いて、羽生はどこか馬鹿馬鹿しくなってきている。
「……つまり、その、当てにしていた自分のお金が使えなくなったから、変わりに軍資金の調達方法を考えなくてはならない、と……」
「……ええ……」
 孫子は、頷く。
「なにをするにしても、お金は大事ですから……」
「……そりゃ……そうだけどさ……」
 なんというか……。
 やはり、一緒に住んでいても、この子たちと自分とでは、別世界の住人なんじゃないか……と、羽生は思った。
「そういうことなら……円で、一億ちょいなら、すぐに調達出来るけど……」
 荒野が、何げない口調で、さらりとそんなことをいう。ちょうど、ついこの間、計算したばかりである。
『……か、カッコいいこーや君までかぁ……』
 羽生は、内心焦りながら、
「……ど、ど、ど……どーしたん?
 そんな大金!」
 口では、そういった。
「どーした……って、普通に稼いだギャラ、だけど……。
 ここに来るまでずっと仕事してたし、貯める一方だったもんで……いつの間にか、そんな金額になってた……。
 でも、それを足しても、才賀が考えていた事業の資本金には、全然足らないんだろ?」
「……ええ。
 それだけですと、設備投資もろくに行えません……」
「なら……今ある設備を最大限に利用して、利益を上げるしかないな……。
 才賀の伝手とおれの金があれば……徳川の会社の利益率を上げるための人を雇えるんだろ?」
「法務。経理。営業。
 ……それでも、ギリギリ、ですわね……」
「万全の態勢で挑みたいのは分かるけど、ないものは、ないんだから……。
 足りない分は、工夫するしかないね……」
 荒野は、肩を竦めた。
「……羽生さん……」
 孫子が、羽生に顔を向ける。
「手持ちの服や小物、アクセサリー類を処分したいのですけど……一番高価に処分出来る方法って……」
「……んー……。
 質屋やリサイクルショップにもってっても、足元を見られそうだからなぁ……。
 ソンシちゃんのだから、物は極上、なんだろ?
 だったら、ネット・オークションで欲しい人に直売りしたほうがいいな……」



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彼女はくノ一! 第五話 (155)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(155)

「……あのぉ……」
 楓は、おどおどした声をだして、プレハブに入った。
「……ちょっと、いいですか? 例の、ゲームの件なんですけど……」
 中で筆を動かしていた香也は、顔をそちらに向けることもなく、「……んー……」と生返事をした。別に機嫌が悪いわけでもなく、たまたま手が離せないだけだ、と、今では楓にも察しがつくようになっている。
「……こっちが、修正の分なんですけど……」
 手も休めずに、香也はチラリチラリと横目で楓が広げたプリントアウトを覗き込みながら、微かに頷く。楓は、香也が頷くのを確認して、一枚一枚紙をめくりながら、先ほどネット上で確認した注意事項を口頭で香也の耳に入れる。
「ちょっと……そこの、スケッチブック、とって……」
 ようやく、一旦手を休めて、香也がいった。
 楓は、素早く持っていた紙の束を置き、棚に積んでいる新しいスケッチブックをとって、香也に手渡す。
 真剣に絵に取り組んでいる時の香也は、いつもより少し鋭利な印象になる……と、楓は思った。
 楓に手渡されたスケッチブックを開くと、香也は、筆を鉛筆に持ち替え、
「……これ、持っていて……」
 と、楓が持っていたプリントアウトの紙を、楓に掲げさせる。
 そして、それを見ながら、猛然と手を動かしはじめた。
 香也の手が踊り、あっという間に線が、絵の形になっていく。
 あっという間に、プリントアウトの紙で指定された通りに、修正された絵が出来上がった。
 一枚あたり五分もかけずに線画を仕上げ、香也は、スケッチブックの新しいページに、次々と書き直し指定された絵を描き上げていく。
『いつ、見ても……』
 魔法みたいだな、と、思う。
 香也の集中力もさることながら……この気迫、この速度は……なにか、人間離れした雰囲気になってる……。
 手の動きは無茶苦茶速いのだが、かといって描き上げる絵の方は、まるで荒れていない。書き直すを指定された箇所意外は、寸分違わず同じ、なのだと、楓には経験上、解っている。楓は以前、書き直す前の絵と、書き直した絵を重ね合わせて透かしてみた事があるが……修正した箇所意外、寸分違わずピタリと重なった。
 その時は……楓も、驚きを通り越して、呆れたものだ。
 以前、羽生が香也のことを「人間コピー機」と表現したことがあったが……少なくとも、一度自分で描いた物に関しては、香也は、時間を置いても、かなり正確に、まったく同じ絵が描けるらしい。
 一体、どういう「目」と「手」をしているのか……と、本気で思う。
 結局、香也は、書き直し指定をされた絵を全て描ききるのに、二十分とかけなかった。そして、
「……はい、これ……」
 と、平静な声で描き上げたばかりのスケッチブックを楓に手渡し、何事もなかったかのように自分の絵の方に戻っていく。
 香也にとって、羽生の同人誌とかゲームとか、「頼まれて描く絵」と、「自分が描きたいから描く絵」とは、取り組むときの「真剣さ」が、断然、違うな……と、楓は感じている。
 前者は、手は抜かないまでも、あくまで義務的に取り組む、後者は、それこそ、全身全霊を傾ける。
 楓は、真剣に絵を描いている時の香也の背中が好きだった。見ていると、吸い込まれそうになって、そのまま抱きつきたくなってしまう。
 ……もちろん、香也の邪魔はしたくないので、必死になって自制するわけだが……。
 その時も、楓は自制して、隅に立てかけてある折りたたみのパイプ椅子を組み立て、そこに座る。
 そして、いつものように、香也の背中を見る。

 保護者でもあり、伯父でもある鋼蔵から一方的に電話を切られた孫子は、怒りに打ち震えながらもしかるべき行動を取り始めた。
 まず、徳川篤朗に宛てて、「しかじかの理由で、提出した事業計画書は根本の部分から見直さなくてはならなくなった」という内容のメールをしたため、送信する。徳川への連絡は、本当に緊急の要件でなければ、メールで済ませるように、と、言い渡されている。徳川は、それだけ多忙な身でもあった。
 次に、自分で作成した計画書を検討し直す。
 初期段階から十分な準備をして望む……というパターンは事実上不可能になった。ので、最小限の資金ではじめ、利益がでたら即刻それをあらたな軍資金に回し、順次規模を拡大していく……というモデルに変換しなければならない。
 お金をかけずに、徳川の事業の利益率を上げる……という方向性と、それに、資本金を必要としない事業を新たに立ち上げる……。
 二つの方法を、孫子はすぐに思いついた。
 前者については、人を雇う前に、まず孫子自身で徳川の工場の経理状況を詳しく調べてみるつもりだった。そして、改善すべき所は、改善する。徳川の性格から考えて、あまり利益率を上げることには関心を持っていないように思えたから、少しテコ入れをすればそれなりに成果があがるのではないか……と、孫子には思えた。
 後者については……。
『なんにせよ……お金は、必要ですわね……』
 孫子は、鋼蔵から「現金化すること」こそ禁じられたものの、以前からやっていたネットトレーディングをここに来てからも継続して行い、利殖に励んでいた。鋼蔵の意志でその資産を使用することは禁じられたが、数字の上では、孫子はいまだに数十億単位の資産を持っていることになる。
 だから、このようなことがあると、ついつい、そっちの資産を切り崩して使えばいい、と思ってしまうのだが……。
 それらの資産を鋼蔵に凍結された今となっては……孫子は、年齢相応の、小遣い銭程度しか、自由に使用できる現金を持っていない……。
『……なければ……作るまで、ですわ……』
 孫子は、部屋中を掻き回して、「売れる物」を物色しはじめる。
 以前なら、孫子は、それらの値段にあまり意識を払う習慣はなかったが……実家から持ち込んだ服とかバッグなどの小物を売ると、かなりまとまった金額になる……ということを、学んでいる。孫子には、具体的な金額は想像つかなかったが……当座、必要のない物を全て売ってしまうつもりだった。
 鋼蔵のいうとおり、この家で、年頃の一学生として暮らすのに、高価な服や小物は必要ないし、また、孫子自身、気軽に入手したそれらに、格別の愛着もなく、手放すことに特に痛痒も感じなかった。
『あとは……出来るだけ、高く売りたいのですけど……』
 この点については、明日あたり……羽生や玉木に相談してみよう……持ち物の整理を行いながら、孫子はそんなことを思った。



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「髪長姫は最後に笑う。」 第六章(71)

第六章 「血と技」(71)

 荒野がマンションのドアを開けると、玄関で楓と鉢合わせになった。コートを着て鞄を持っているところを見ると、ちょうど出るところだったらしい。
「あっ。どうも……加納様……」
 荒野の顔を見ると、楓はぴょこんと頭を下げた。
「わたし、荷物運ぶの手伝っただけですし、もう帰りますから……」
 楓は、何故か急いだ様子で、へこへこと頭を下げながら、マンションから出て行った。
『なんか……焦ってなかったか、あいつ……』
 そう首を捻りながら、キッチンを抜けて物置にしている部屋に向かう。着替えや荷物はそっちの部屋に置いているし、玄関からその部屋に行くのには、どのみちキッチンを経由する。キッチンでは茅がメイド服姿で夕飯の準備をしていた。
 服装については、もはや突っ込む気にもなれない。
「……ただいま、茅。
 今日は、何?」
 挨拶がてら、そう尋ねる。
「ブイヤベースなの」
「また、新メニューか……」
 最近の茅は、ネットなどで調べてレパートリーを拡張して来ている。
「材料、玉木の家から買うことが多いから、どうしても魚料理が多くなるの。
 和食は、一通りやったし……」
「……そうだな……」
 荒野はなにげなく頷いて、キッチンから物置にしている部屋に入った。
「でも……魚はなんかヘルシーってイメージあるから、いいんじゃないのか?」
 その部屋で制服を私服に着替え、キッチンに戻ると、茅が紅茶を入れてくれるところだった。
「そういや……なんで、今日に限って買い物までしたんだ?」
 商店街では、ヴァレンタイン・イベントしてゴスロリ祭りが絶賛開催中である。
 従来よりも人が多く、特に、外来者の服装が尋常ではないから、荒野でさえ、荷物を抱えてうろついていると、疲れる。
 ……特に、精神的に。
「今日だけではなく、今度から、買い物は茅がするの」
 茅は、平然と答えた。
『……楓に荷物持ちをさせて、か……』
 と、荒野は思った。
 たった二人の所帯とはいえ、荒野は人の三倍から四倍は食べるから、日々の食材の量も、これで馬鹿にならない。だから、買い物は荒野の分担だったわけだが……。
「……おれは、別にそれでもいいけど……そうすると、茅が、大変だろう……」
 荒野は紅茶を啜りながら、なるべく何気ない表情を作って、それとなく茅に異議を唱える。
 本当なら、「楓が、大変だろう」といいたいところだ。
「大丈夫なの……」
 しかし、茅は、荒野の前で両腕を上げ、ガッツポーズ作って見せた。
「今日は楓に手伝って貰ったけど……あの量なら、茅、一人でも持てるの。
 茅、最近、筋力が増してきているの」
「……まあ、毎朝走っているから、多少タフになっているのは、本当だけどさ……」
 荒野は、ゆっくりと首を横に振りながら、いった。
 茅は、これで、自分からいいだしたことは、確実に実行する。
「でも、ま……楓も、茅の護衛が仕事なんだから、ついでに少しは手伝わせてやってくれ……」
「……わかったの……」
 茅は、意外に素直に頷く。
「それで、荒野……。
 楓から、体術を習う件は……」
 ……まだ、忘れていなかったのか……と、荒野は思った。
 昨日の見学だけは許可して、最終的な許可は棚上げしていた形だったが……。
「じゃあ……この際だから、正直にいうけど……」
 返事をぼかすことを観念した荒野は、ゆっくりと言葉を押し出す。
「茅には……無理だと思う。
 確かに……茅の基礎体力は向上しているし、同学年の女子と比べたら、今でもかなりいい線いっていると思うけど……。
 それでも、一族に対抗できる、というレベルには、全然及んでいない……。
 あれ。生兵法は怪我の元、ってヤツだ。生半可に技を身に付けると、いざっていうときに、かえって危ない……」
 一族の体術は……スポーツとは、違う。
 相手を……敵を倒し、無力化するための武術で……そんなものを身に付けるのは、常時武器を帯びているのと変わらない。
 特に一族相手では、無力な小娘なら見逃してくれる局面でも、技を身に付けていれば、容赦なく攻撃される。未熟であったとしても、反撃の手段を保持している者をむざむざ見逃してくれるほど甘い者は、一族にはいない筈だ……。
「荒野が危ぶんでいることは、理解しているつもりなの」
 茅も、荒野の言葉に頷く。
「でも、茅は……無力な、いつまでも守られているばかりの存在では、イヤなの……」
「それは、感情論だ」
 荒野は、真面目な顔で、茅を諭した。
「半端に技を学んだ状態の方が……今よりも、かえって危ないよ……」
 茅と荒野は、しばらく睨み合った。
「……わかったの」
 ふい、と茅が、視線を外す。
「では……一週間だけ、楓に習うの……」
「……一週間だけ?」
「茅には……それだけあれば、十分なの」
 そういって茅は、ゆっくりと何歩か歩いて、荒野から距離をとる。
 一体何を……と、荒野がいぶかしんでいると、不意に、茅の方から、手裏剣が放たれた。
 それも、立て続けに、数発。
「……危ないじゃないか……茅」
 荒野は、受け止めた棒手裏剣を全てテーブルの上に置く。棒手裏剣は、全部で五本を数えた。
「昨日、見ただけで……ここまで、出来たの。
 手裏剣は、今、楓から貰ったものだけど……」
 ……それで……楓が、やけに慌てて出て行ったのか……と、ようやく思い当たる。
 茅にねだられて、荒野に無断で手裏剣を渡したことを……楓は、後ろめたく思っていたのだろう。楓は、そういう部分を隠すことが、不得手な性分だった。
「茅は……普通とは、違うから、一度見れば、頭の中で、何度も練習できるの……」
 荒野が黙っていると、茅は訥々と説明を続ける。
「そう……だな……」
 荒野は、考え込む。
 茅が、ここまで思い詰めているとなると……滅多なことでは、諦めないだろう……。
「一週間、楓に習ってみて……その後、テンと模擬試合をしてみる。
 それで、テンに勝てたら、その後も楓に習い続けていい、っていうのは……どう?」
 そのあたりが、荒野にもなんとか納得できる、ギリギリの妥協点だった。
「……わかったの」
 茅も、素直に頷いてくれた。
『また……楓の負担が、大きくなっちまったな……』
 と、荒野は思った。



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彼女はくノ一! 第五話 (154)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(154)

 楓や孫子に語りかけながら、羽生は羽生で、
『……処女にこんなこといわせるなよぉ……』
 などと、思っている。
 立場上、しかたなく諭してはいるが……まったく、こういうのは、自分の柄ではないのだ……と、羽生は思った。
 無性に、照れくさかった。
 そこで、いいたいことだけいうと、そそくさと席を立ち、自分の部屋に待避する。
 残された三人は、もはや勉強、とかいう雰囲気でもなく、誰からともなく、「今夜は中断」という事になり、香也はノートや教科書などを片付けてから、プレハブに向かった。
 孫子は自分の部屋に、楓はかなり気まずい想いを抱えながらも、羽生の部屋に向かった。

「……あのぉ……」
 楓は、羽生の部屋の前で声をかける。廊下とは、襖で仕切ってあるだけなので、ノックをするのには不適切な環境だった。
「羽生さん……。
 ちょっと、パソコン使わせて貰って、いいですか?」
 ついさっき、あんなことをいわれたばかりだから、こうして羽生の部屋を訪ねるのは、楓にしてみても気詰まりなものだが……一日一度はネットに接続し泣ければならない事情を、楓は抱えていた。
「……楓ちゃんか……」
 羽生は襖越しに、想像していたよりも穏やかな声で返事をする。
「いいよ。入りなよ。
 例の、ゲームのだろう……」
 羽生の返答を確認してから、楓は、「失礼します」と声をかけて襖を開け、部屋に入った。
「……はい。例のゲームの、です……」
 おずおずと答えながら、楓は慣れた手つきで羽生のデスクトップを立ち上げる。羽生は、楓から目を反らして、猛然と煙草を吹かしていた。
 パソコンが起動するまでの時間が、楓にとっては非常に長く感じた。
「……で、あれ……ゲームの方の進行は、どうなっているの?」
 羽生にとっても沈黙が重かったのか、楓にそう話しかけてくる。
「は、はい……。
 香也様のデザインがだいたい通って、今は、そのデザインを元にして、指定された構図で絵を描いている段階ですね……。
 もうかなりやりとりがあるので、意志の疎通はスムーズにいっていますし、着色は別の人がやってくれるというし、枚数も膨大になるので、こっちのペースで進めてくれていい、っていわれてます……」
 年末、堺雅史経由で香也が依頼されたゲームは、着々と形になっていっている。
 テキストの方と同時進行だから、まだまだ作業全体の終わりは見えてこないのだが……楓は、パソコン操作に苦手意識を持つ香也の代わりにネットに接続し、他のゲーム制作者と香也との仲介を行っていた。
「香也様も、描くのが早いですし……」
「自分の絵でなければ、こーちゃん、割り切って、小手先の技だけで、ちゃっちゃと進めちゃうからな……。
 わたしの同人誌の時も、そうだ。
 頼まれた絵の時は、こーちゃん、悩んだりとか、迷ったりとか、そういう躊躇いがない……」
 ようやく、マシンが起動し終える。羽生のパソコンは、マシンパワーはそれなりにあるはずなのだが、重い常駐ソフトを複数起動時に読み込むので、どうしても起動時間が長くなる。
 楓はブラウザを立ち上げ、直接アドレスを打ち込んで、フリーメールのページにアクセスする。メールチェックをしながら別のウィンドウを開き、今度はゲーム制作者のSNSページにログインし、ざっと内容を確認する。
 新規の絵の発注がいくつか、構図を指定しされており、それと、以前、アップした絵の修正も、何枚かあった。
 プリンタを立ち上げ、それらの絵をプリントアウトしながら、詳しい説明に目を通す。
 細かい指定は相変わらず多いが、特に入り組んだ注文もない。
 これなら、すぐにでも香也に口頭で伝えることが出来るな、と楓は思った。
 プリンタとパソコンの電源を切り、羽生に「ありがとうございました」と一礼して、プリントアウトした紙を持って、羽生の部屋を出ようとする。
「……楓ちゃん……」
 と、羽生が、楓のことを呼び止めた。
「わたしは……別に、どっちの味方ってわけでもないけどさ……。
 自分から迫っていくばかりじゃなくて、向こうにも惚れさせなけりゃ、駄目だぞ……」
 羽生は、照れくさそうな表情を浮かべながら、楓にはそういった。
「そう……ですね……」
 楓は、戸惑いつつもそう言い残し、襖を閉める。
 楓の足音が遠ざかっていくのを確認しながら、羽生は自分の頭を抱えて畳の上を、音をたてないように気をつけながら、転げ回った。
 ……なにをしているんだ、わたしは……とか、羽生は思っていた。

「……どういうことですの? 伯父様……」
 楓と羽生がそんなやりとりを行っている頃、孫子は、自分の部屋で実家へ電話している所だった。
『……前にもいっていたろ。そこでは、お前は平凡な一学生として、生活して貰う。故に、そんな学生らしからぬ金額を動かすことなど、ゆるさん』
 電話相手は、孫子の保護者でもある鋼蔵だった。
『……普通の学生が、ベンチャー企業にメール一つで十億単位の投資をするかぁ!』
「……ですから、そのへんの事情については、メールで詳しくお伝えした筈です。
 それに、添付した事業計画書にあるように、私情抜きにしても十分に投資に見合う将来性がある、と、判断したのですが……」
『だから……そんな判断をするのが、まるっきり学生らしくねーってーの!』
 冷静に反駁する孫子に、いきり立つ鋼蔵。
『そういうことは、大人になってからいくらでもやれ!
 というわけで、駄目っつーたら駄目なの!
 成人するでは、株もM&Aも禁止!
 少しは謙虚になってだな、フツーの女の子の幸せでも探してみろってーの……』
「……ですから、このままですと、そのフツーの女の子の幸せが、遠ざかっていくのです!」
 あくまで平行線の議論に、孫子の語気も荒くなる。
「これは……自衛のための、わたくしがここに居続けるための戦いなのです!」
『とにかく、だな。
 ……お前の個人名義の資産は、お前が成人するまで凍結する』
 鋼蔵は、冷徹な声で孫子に告げた。
『起業ごっこをやりたかったら……お前が、自分自身で、資金調達から行ってみるんだな……。
 親の遺産や才賀のバックアップは、一切期待するな……。
 もっとも……お前がかき集めた金で、うちの系列会社の者を雇用するのは、一向に構わんがな……』
 そういうと、鋼蔵は、通話を切った。それが、最後通牒、ということらしかった。
 才賀グループの中には、専門職に特化した人材派遣会社がいくつも存在する。ただし、多くの系列会社は、第一級の人材しか登録を認めていないので、実際に利用するとなるとかなりの資金が必要となる。
『……自分自身で、資金調達から……』
 鋼蔵に、一方的に通話を切られた孫子は、携帯電話を睨みながら、一人で闘志を燃やしていた。
『やって……やって、みせますわ……』
 孫子は、負けず嫌いだった。



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「髪長姫は最後に笑う。」 第六章(70)

第六章 「血と技」(70)

 しばらくそうした他愛のない雑談を続け、それから、誰はともなく「もうそろそろ、帰る支度をしないと」といいはじめる。時計を見ると、最終下校時刻三十分前、だった。この場にいる全員がジャージ姿である、という関係もあり、着替える時間も計算に入れると、確かにぼちぼち解散した方がいい頃合いである。
 有働と荒野は頷きあって、
「皆さんのおかげで、予想以上に早く片付きました」
 とかなんとか、型どおりのお礼をいって回った後、「速やかに着替えて、下校の準備をしてください」と、残っていた生徒たちを誘導する。
 ぞろぞろと生徒たちが片付き終わった空き教室から出て行き、荒野も着替えとりに自分の教室に向かう。そこで制服をとってから、男子更衣室に行くつもりだった。放課後の遅い時間とはいえ、まだ部活の生徒も多数残っている。そうした、部室を与えられている運動部員はいいが、荒野のような運動部に所属していない生徒は、更衣室を利用するのがマナーだと思っていた。
 同じクラスの孫子と昨日の徳川の工場での様子を聞いたりをしながら、荒野は、自分の教室の引き戸を無造作に、がらりと開き、そこで、固まった。
 中で、三人ほどの女生徒たちが着替えていた。
「……ごめん!」
 いって、荒野は、着替えていたクラスメイトが反応する前に、素早く引き戸を閉める。
「……どうかしましたの?」
 孫子が、不思議そうな顔をして、荒野をみた。
「いや。誰か、中で着替えてた……」
 予想外のことで結構ドギマギしている荒野は、単語ブツ切れに答える。
 異性の裸体には免疫はあるが、学校で、それもクラスメイト相手にこのようなハプニングを起こす、ということに関しては、荒野は免疫を持たない。
「……そう……」
 孫子は納得した顔をして、荒野の脇をすり抜けて、教室の引き戸に手をかける。
「では、わたくしが、あなたの荷物をとってきますわ」
 荒野の態度から、中で女子の誰かが着替えていたのだろう、と、孫子はあたりをつける。孫子にしてみても、教室で着替えるの無防備だとは思うが……もうかなり遅い時間だし、更衣室まで移動するのを億劫に思う気持ちも、わかる。
「だから、あなたはここでしばらく、わたしが着替え終わるまで、他の男子が入らないように見張っていなさい……」
 荒野が返答をする前に、孫子は、教室の中に消えた。
 孫子が教室に入っていくと、教室の中から、「えー! 加納君だったの?今の……」とか「他の男子ならともかく、加納君なら別に入ってきても良かったのに……」とかいう声が聞こえた。
「はい、これ。わたくしがいいというまで、ちゃんと見張っていること」
 すぐに孫子が荒野の荷物と着替えを持ってでてきて、教室に背を向けて固まっていた荒野に、手渡し、すぐに教室に戻る。
 孫子と入れ違いに、顔見知りの三人のクラスメイトが出てきた。今日の、空き教室の片付けを手伝ってくれた生徒でもある。一通り仕事が終わった後、雑談には参加せず、さっさと教室に戻って着替えていたらしい。
 その女子三人組は、「じゃあねー、加納君」とか、「今度見る時は、声をかけてね。勝負下着してくるから」とか、「駄目だよ、カナ、そんなこというと、妹さんに呪い殺される」とか笑いざわめきながら、荒野の側を素通りして去っていく。
 ……おれ、男として見られていないんじゃねーのか……と、荒野は思った。
 へんに騒がれるの面倒だったが、ここまで気にされないのも、別の意味で面白くないのであった。

「どうかしました? あなた、随分面白い顔をしていましてよ……」
 三分もせずに着替えて出てきた孫子は、荒野の顔を見るなり、そういった。
「いや……痴漢扱いされなかったのは良かったにしても、全然騒がれないのも寂しいもんだな、と……」
 荒野は、素直に心情を語ると、孫子は深々とため息をついた。
「女にとって異性はは……気になる男と、どうでもいい男と、側にいるだけで虫酸が走るのと、三種類しかいません。
 第三項目に分類されていないだけ、マシではありませんこと?」
 と、荒野が答えにくい問いかけを行う。その後、
「あなたもこのまま教室で着替えますか? なんなら、他の女子が入り込まないように見張っていてもよろしくてよ……」
 と、いった。
 荒野は、「素直に、更衣室で着替えます」と、孫子に背を向けた。
 そんな荒野の背中に、孫子は、「わたしくは、一度パソコン実習室の方に寄ってみます!」と声をかけて来た。待ち合わせ、というわけではないが……この時間まで残っていれば、荒野は、茅たちと一緒に帰る、と踏んだのだろう。

 荒野が着替えてパソコン実習室にいくと、茅と楓は一足先に帰った後だった。
「……いやぁ。ついさっきまでいたんですけどね……。
 なんでも、今日は買い物をしてから帰るって……」
 堺雅史は、そういって頭を掻き、
「荒野さんには、晩ご飯の買い物しないでいい、茅さんからって伝言頼まれています……」
 とつけ加えた。
 その時間まで実習室に残っていた他の生徒たちも、そろそろ帰り支度をしているし、堺雅史の後ろには、着替えて帰り支度をした柏あんなが控えている。佐久間沙織はすでに帰宅したのか、実習室内には姿が見えなかった。
 そろそろ、最終下校時刻の予鈴が鳴る時間だった。
 いつもは、荷物が多くなるので、食材の買い出しは荒野の分担に鳴っているのだが……なんで、今日に限って……とも、思わないでもなかったが、
「……じゃあ、素直に帰るか……」
 ぼそり、と独り言を呟いて、廊下に出た。すぐ後に孫子もついてくる。
 パソコン部に残っていた生徒たちと一団になって玄関口で靴を履き替えていると、「やあ」と、飯島舞花に肩を叩かれた。当然、その側には栗田精一もいる。
 さっきまで一緒に教室の片付けをしていたのだから、ここで合流するのは不思議ではない。
「そっちは、部室で着替えたの?」
 そう訪ねたのは、男子更衣室で栗田の姿を見かけなかったからだ。
「部室っていうか、水泳部の場合は、冬でもプールの更衣室で着替えるんだけどね……」
 舞花が、そう答える。
 そんな立ち話をしているところに、香也と樋口明日樹の美術部組も合流してきた。
「……なんだか、登校時のの面子とほぼ同じになってきたな……」
「そういや、樋口さん。
 今日、大樹、放課後も残ってこっちの仕事、手伝ってくれたよ。一足早く帰ったようだけど……」
「ああ……携帯の方にメール来てたアレ?
 あれ、結構集まったの?」
「うん。メールで呼びかけただけで、結構きてくれた。五十人いってたかな……」
「……そんなに……」
「そう、つまらない仕事なのにね……」
「そのうち二十人くらいは、おにーさん目当てだったけどな……」
 わいのわいの語りながら、みんなで帰路につく。
 栗田精一は舞花のマンションに自転車を置いているし、帰る方向は一緒な訳だが……下校時にまでこの顔あわせで、というのも、珍しいパターンだった。



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彼女はくノ一! 第五話 (153)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(153)

 その夜も、楓と孫子は、夕食後一時間ほど、香也の勉強をみた。香也と同じ学年である楓は、自分自身の勉強も兼ねている。孫子は、茅と一緒に下校する都合で、毎日のように遅くまで学校に残っている楓とは違い、真っ直ぐに帰宅して自分の勉強をする時間を確保しているようだった。楓や孫子の頭がいくら良くても、学習していないことを身に付けるわけにはいかない。
 種をまかなければ身はならない。無から有は産まれない。個人的な資質の善し悪しによらず、知識を技能を身に付けるには、やはりそれなりに時間や労力などのリソースを消費しなければならないのであった。
 楓にしろ孫子にしろ、基本的な性格として、努力家としての資質を有しており、それなりの成績を維持している。だから、香也の勉強をみるくらいの余裕はある……の、だが……。
 今夜は、以前とは少し、様子が違っていた。

 羽生譲が異変に気づいたのは、洗い物を済ませて台所から戻ってきた時で、楓と孫子に挟まれた香也は、何故か額に脂汗を流していた。
 不審に思ってよくよく見ると、楓と孫子は、必要以上に香也にべったりとくっついて、両側からのし掛かっている。
 体がぴったりと密着しているのは勿論、何気に香也の体を必要以上にべたべたと撫で回しているし、何か言うときは香也の耳元に息を吹きかけるような至近距離で、囁く。
 年頃の男の子として……これは、たまらないだろうなぁ……と、羽生は想像する。
 そこで、羽生はわざとらしく、大きな咳払いをした。
「……あー。
 お二人さん、土曜日にいろいろあった、というのは聞いたけど……香也君、困って固まっているから、逆セクハラもほどほどに……」
 あんまり強くいうと、また昨夜のドタバタ騒ぎの再開である。
 ……ので、羽生は、比較的のんびりとした口調で、楓と孫子を諭した。
「……第一、君たち……また、三人でやるのか?
 あれが癖になっちゃったのか?
 そーゆーことは、こーちゃんと二人きりで、しっぽりとやるように……」
 羽生が冗談めかしてそういうと、楓と孫子は顔を真っ赤にして香也から体を離した。
 まだ、羞恥心は捨てていないらしい……と、羽生は判断する。
 テンとガクが、風呂に入りにいっていなければ、二人も、これほどあかるさまに密着したりしなかったかも知れない。
『……三人だけになると……』
 羽生は、楓と孫子の態度を、分析する。
『……香也への欲求と、それに、お互いへの競争心から……どんどん大胆な行動をとってしまうんだな……』
 と。
 楓にしろ、孫子にしろ……それぞれ、単独で香也と二人きりになったら、割合「二人きりでいる」という状況だけで満足してしまって、それ以上にそんな激しい迫り方は、しないのではないだろうか?
 だが、楓、孫子、香也が三人だけ、になってしまうと……楓は孫子に、孫子は楓に、香也をとられたくない、という感情が先にたってしまい、どんどん、過激なアプローチを行うようになる……。
 通常の、香也と同年配の男子なら、ほぼヤルことしか考えていない年頃だから、出来れば身代わりになりたい、と思う者がほとんどだろう。
 しかし、こと、香也の立場になって考えると……。
『……こーちゃんにとっては、ひどく迷惑な話だよな……』
 香也と付き合いが長い羽生は、香也の臆病な部分を、本能的に悟っている。
 香也自身が、ことあるごとに「ぼくには、そういうのはまだ早いと思う」といっているように……香也が異性とその手の関係に陥るには、羽生の目から見ても、いまだ時期尚早に思えた。
『……ま、結局、決断するのは、こーちゃん自身なんだけどさぁ……』
 羽生としては、香也が決断する気になるまで、香也ができるだけ自由に判断できる余地を残しておきたいところで……。
 羽生は、煙草に火をつけ、
「……わたしがどうこういう問題じゃないのかも知れないけどな……」
 と前置きしてから、
「楓ちゃん。と、それから、ソンシちゃん。
 あのな、君たち、こーちゃんとどうなりたいの? こーちゃんとただやりまくれればそれでいいの?
 それだったら、今からでもゆっくり馴らしていけばな、毎晩交代でこーちゃんにご奉仕しますハーレムエンドぉ! みたいな結末もありえるかも知れないけどな……。
 でも、今の状態でそれやっちゃうと、こーちゃん、自分では何も出来ない腑抜け野郎になっちゃうぞ……」
 羽生は、ずばり、と切り出した。
「……こーちゃんだって男の子だからな、年頃の。体の誘惑には、それなりに弱かろう。
 でもな、ドサグサ紛れに、そういうの性欲を解消しあう関係が常態になったとして、だ。
 君たちは、それで満足できるのかいな?
 急いで無理に体だけ繋がっても……こーちゃん、君たちのこと、ちゃんと見てくれるとは限らないよ……。
 ……あー……。
 色と恋とは、結構、別物だから……特に、男性にとっては……」
 羽生とて、自分の経験からそういっているわけではないのだが……友人知人が多い羽生は、異性関係のあれこれを見聞する機会も多かったので、その手のことに関しては、いわゆる耳年増だった。
「……えっちさえすれば、こーちゃんが振り向いてくれる、こーちゃんは自分のモノだわ! ……って幻想持たないで、あえて性欲解消用の肉奴隷になりたいってなら、止めやしないけどさ……」
 これくらいキツイ表現を使って釘を刺しておかないと、真理が帰ってくるまでに落ち着かないだろう……と、羽生は思った。
 案の定、香也から身を離した楓と孫子は、顔を赤くしたり青くしたりしながら、俯いたり目線を何もない空中に泳がせたり、と、すっかり挙動不審になっている。
「性欲はな、あるよ。わたしにも。若いんだから。
 当事者同士の合意があるのなら、割り切ったセフレというのも、ありだとは思う。
 でもな、それと恋愛とは、別腹だから。
 楓ちゃんとソンシちゃんは、こーちゃんにとって、単なる都合のいい女、で終わってしまっていいのか。
 それとも、それ以上に親密になりたくはないのか、って話しだな……」
 羽生は、炬燵の天板をコツコツと指先で叩きながら、続けた。
「……自分の体を餌にしてはじめるような関係から、ちゃんとした恋愛に発展するのは……結構、大変だと思うぞ……」
 羽生がそういうと、楓が傷ついた表情をした。
 羽生には、ここで何故、楓がそんな表情をするのか、わからなかった。



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エロセブン

「髪長姫は最後に笑う。」 第六章(69)

第六章 「血と技」(69)

 荒野は佐久間沙織の指示に従い、一度掃除中の空教室に足を運んで適当に十人ほどの生徒を引き抜いて、もう一度パソコン実習室に戻る。
 実習室では、佐久間沙織を囲んで、数人の教師がモニターを睨んでなんやかんやと話し合っている。会話の内容を聞くと、どうも、今まで整理した内容を確認して意見を出しているらしい。もともと、教師の本業にかかわることで、一度見にくればどうしても口を出してしまうのだろう。
「……あ。加納君。お手伝いの人、連れてきてくれた?
 じゃあ、さっそくだけど、これ、お願い……」
 荒野の姿に気づいた沙織が、荒野の手に数十枚の紙の束を手渡す。
 自主勉強会の趣旨や内容を簡単な文章にまとめ、A4の用紙にプリントアウトしただけの簡素すぎる内容だったが、こういうのは事務的な内容のほうが、本気で受け取ってもらいやすいのだろう……と、荒野は思った。紙の左下の方には、日付の入った承認印がすでに押されていた。

「……というわけで、これ、手分けして、校内の掲示板に貼ってきてほしいわけだけど……」
 熱心に教材の内容を検討している沙織と教師たちに背を向けて、荒野は空教室から連れてきた生徒達に、手渡されたプリントアウトを配る。
「……特に難しい仕事でもないと思うから、早速……」
「……あのう……」
 荒野が連れてきた生徒の一人が、おずおずと片手をあげる。
「掲示板に貼るのはいいですけど……そのための、画鋲は……」
 ……荒野は、自分の迂闊さを呪いたくなった。
「……そうだった。ちょっと待ってね。
 佐久間先輩!」
 沙織に画鋲のありかを尋ねると、「職員室に、細かい備品を保管している棚があるから、そっちで聞いてくれ」といった意味のことをいわれた。
 そこで荒野は、ぞろぞろと十人のお供を引き連れて、画鋲を取りに職員室まで出向いて行った。
『……なんか、完全に使いっ走りだな、おれ……』
 と、荒野は思った。
 自分は……この学校のことを、あまりにも知らない……とも。

 職員室に出向き、入り口の近くにいた先生に声をかけて画鋲が保管している棚の場所を教えて貰う。所詮消耗品だからか、画鋲の用途まで聞き返されることもなかった。
 二人一組でポスターと画鋲を配り、校舎の何階のどちら側、とか、一年の教室前、とか、適当に場所を割り振って、解散する。一人が荷物もち、もう一人が貼る係、という分担で、五組と荒野単独で回る。
 そもそも、この学校自体、さほど広くないし、うまくいけば三十分もかからずに終わってしまう仕事だ。
 手持ちのポスターが貼りおわったら、元の空教室に戻らず、帰ってしまって結構です、とも、付け加えた。
 もともと、人が集まり過ぎていたから、必要以上に拘束するのは、心苦しい。

『……しかし、まあ……』
 一人になり、自分の分担のポスターを貼りながら、荒野は苦笑い混りに考える。
『こういう局面だと、本当に役立たずだな、おれ……』
 茅や楓のようにプログラムが組める訳ではないし、茅や沙織のように学校の勉強ができる訳でもない。沙織のように、学校の内情に通じている訳でもなければ、玉木珠美のように、機転が利く訳でも、湯水のようにアイデアをだせるわけでもない……。
 やはり自分は……荒事以外では、それこそ、使いっ走りが分相応のようだ……と、荒野は心中で自嘲した。

 手持ちのポスターがすべてなくなると、荒野は一通り校舎内を回って見た。
 手分けした他の組の様子を確認して置きたかったし、もし、作業が遅れている組があれば、手伝うつもりだった。
 だが、もともと簡単すぎるくらいの仕事だったので、荒野が見回る頃には、すべての作業が終わった後だった。校内の掲示板一つ一つを確認し終わると、荒野は空教室の様子を見に戻る。
 そちらに残った連中では、相変わらず仕事を遂行中だった。しかし、人数に余裕があるせいか、真面目に黙々と、ではなく、みな、談笑しながら手を動かしている。学年やクラス、クラブが違い、あまり接点がない生徒同士も多かった筈だが、短い間に、それなりに打ち解けているようだった。やはり、想定以上の人数が集まったのが幸いしたのか、備品の片付けと掃除は、ほぼ終わりかけていた。
「……あっ。加納君!」
 やはりジャージ姿の有働勇作が、教室に入った荒野に気づき、声をかけた。
「ポスター貼りが終わったんで、来たんだけど……」
「こっちも、もう終わりですね……」
 有働は、すっかり片付いた教室内を手でぐるりと示して答えた。
「今、新しい蛍光灯を取りにいっていますから、それを取り替えて、終わりです。
 皆さんが協力的だったので、予想外に短時間で終わりました……」
「……そのようだね……」
 荒野が教室内を見渡すと、雑巾やモップなどの掃除道具を片付けているところだった。
「なんか……いろいろと、うまくいきすぎじゃないか? 今日は……。
 今朝も、勉強会の準備をはじめようって、話しをしていたところに、ちょうど佐久間先輩が通りかかって手伝ってくれる、っていってくれたんだぜ……」
 佐久間沙織の協力がなくとも、それなりに進んだのだろうが……教員や在校生に多くの知り合いを持ち、校内の内情に明るい沙織がいなかったら、今日ほどスムーズにはいかなかった筈だ……と、荒野は思う。
「佐久間先輩は……また、特別ですから」
 有働は、荒野がいわんとするところをすぐに理解して、頷いた。
「……やっぱり、元生徒会長、ってだけではないんだよな……」
 学校、というものに通い初めてようやく一月を経過した荒野は、生徒会役員、というもの実態をよく知らない。現会長が誰なのかさえ、知らない。
「佐久間先輩は、全校生徒の顔と名前をすべて覚えている、という噂なのです……」
 そのあたりの事情は、荒野もよく知っているところだったが、有働は丁寧に解説してくれた。
「……型通りの役員の仕事以外に、多くの生徒から個人的な相談を受けて、場合によっては、喧嘩や諍いの仲裁することも多かったです。
 だから、先輩に、恩義を感じている生徒は多いのです。誰にでも好かれ、悪くいわれることがない、珍しい人なのです……」
 成績優秀な上、人格者の完璧超人……さらに、それが嫌味ではない性格、か……。
「……さぞかし、もてたろうなぁ……」
 荒野が、ぼつりと呟くと、
「……それは、もう……」
 有働も、頷く。
「男子にも女子にも人気が有りましたが、男子は却って引き気味でした。アプローチするのは、女子の方が多かったようです……」
 有働は、そういったことに特に興味がありそうにもみえなかったが、訥々とした口調で語った。玉木をはじめとする放送部員の中に混っていれば、特に興味がなくとも耳に入るのかもしれない。
 いつの間にか、片付けを終えた生徒達が一人、また一人、と有働と荒野の回りに集まって来ていた。その中には、孫子も、飯島舞花や柏あんななどの水泳部の生徒もいる。
「……少し前まで、この学校で女生徒に人気のある生徒は、そこの飯島さんと佐久間先輩でした。この二人が人気を二分していました」
「……そうそう。
 去年のバレンタインは、いっぱいチョコもらった。
 でも、去年の秋にこれとくっついたから、今ではもう昔の話し……」
 そういって、舞花は傍らの栗田精一の首を抱き寄せる。
「はい。
 それで、秋から年末までは、佐久間先輩の寡占状態が続きます……」
「年末まで?
 今は、違うの?」
 荒野が、有働に尋ねる。
「……はい。今では、佐久間先輩と、そこの才賀さんが、人気を二分しています。
 佐久間先輩が卒業なさったら、恐らく才賀さんの寡占状態になるものと思われます……」
 有働がそう続けると、孫子は、珍しくポカンと口を開け、あっけに取られた表情をして凍りついた。
「……おそらく、才賀さんの容姿とクールな言動とが、人気の源なのです……」
 凍りついている孫子には構わず、有働が訥々とした解説を付け加える。
 孫子のすぐそばでは、飯島舞花が笑いをかみ殺して、身悶えていた。



[つづき]
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彼女はくノ一! 第五話 (152)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(152)

 夕飯の支度をしている最中に楓が帰宅し、すぐに着替えて台所に合流してくれる。
 夕食の支度を手伝いながら、楓は、茅と一緒にボランティアや自主勉強会関係のプログラムを手伝っていることなどを、話してくれた。
「……でも、パソコン部の人たちもどんどん新しい機能付加してくるんですよ……」
 と、楓は付け加える。
 そんな風にして、三人がかりで夕食の準備が整った頃、制服姿の孫子が帰宅した。普段、部活でもない限り、授業が終わると真っすぐに帰宅する孫子が、これほど遅い時間に帰宅するのは珍しい。
「……今日、部活の日だったけ?」
 台所に顔を出して声を掛けて来た孫子に、羽生はそう尋ねる。
「いえ、学校でちょっと用事がありまして……」
 孫子は、「着替えて来ます」と断りをいれて一度退出してから、その言葉どおり、着替えてすぐに戻って来て、炬燵の上に料理を並べるのを手伝いながら、簡単に放課後にやったことを説明してくれた。
 孫子は、下校時刻ギリギリまで学校にいて、荒野やその他、部活をやっていた生徒たちと一緒に帰って来た、という。香也は、例によって樋口明日樹を送っているようだった。
「……つまり、ゆうべ話していた勉強会の準備をしていたわけですが……」
 孫子の説明によると、学校側は、空教室を一つ、使わせてくれるらしい。
「随分と、気前がいいなぁ……」
 羽生は、そう感想を漏らした。
「……もともと、空いている教室を使っているだけですし……それに、玉木さんたちには、むしろ、目の届くところで動いて貰いたいと思っているのかも知れませんし……」
「……なるほど……」
 いちいち教員に許可を求めたりお伺いをたてにいったりしている現状は、学校側にとってもそれなりに安心できる状況なわけか……。
「基本的には、生徒の自習のために場所を解放して貰う、という形ですが、手が空いた時に様子をみにきてくれる、とおっしゃっている先生も何人か、いますし……」
 まあ……生徒が自分から勉強する、といってきているわけだから、協力的になる先生も多いだろうな……とh、羽生は思う。
「ゆとり教育」とかで実質的に授業時間が減っている中、古手の先生の中には、満足のいく内容の授業ができない、と思っている人も多いだろうし……。
 そんなことを話しているうちに、明日樹を送って来た香也が、続いて、テンが帰宅してくる。
 長く留守にしている真理とノリ、それにたまにしか帰宅しない荒神を除き、全員揃っての食事となった。
「……買い物の帰りに、茅ちゃんと一緒になってな、多少人数が増えても、用意する手間はあんま変わらないから、今日も家で食事したら、って誘ってみたんだがな……」
「……テンの方は、今なにやってんの?」
「トクツーさんの手伝い、っていうより、ボク達が使うもの製作。トクツーさんは、良い実習になるっていっているけど、今日は孫子おねーちゃんの弾頭とか楓おねーちゃんの手裏剣とか六角、複製してた……。
 って、いっても、材料選んで、後は機械のセッティングするだけ、って感じだけど……。
 トクツーさんとのこ機械は、特殊な制御言語使って動かしているから、慣れるまで大変で……。
 そういうガクのほうは?」
「……うんっとぉ……朝一で病院に行って見て貰って、その後、庭にあった自転車整備してた。にゅうたんが手伝ってくれた……」
「そういえば、今朝、茅様が、珍しく感情的になってて……」
「そうかぁ?
 ちょい前までともかく、最近、あの子、わりと感情を顔に出すようになっているような気がするけど……」
「……あっ!
 そういえば……そうかも、知れませんわね……」
「やっぱ、学校に行ったり、みんなと付き合ったりする間に、いろいろ影響しているんじゃないかな? じんわりと。毎日会っていると、そういう微妙な変化、なかなか気づかないけど……」
「茅様は、加納様のことになると、目の色が変わりますから……」
「やっぱ、学校でもそうか?
 ……二人きりで暮らしているし、変な噂がたたないといいなあ……」
「噂じゃないよ、それ! ちゃんと、毎日のように……」
 慌てて、テンがガクの口を塞ぐ。
「……ガクは、もう少し場の空気というものを考える!
 そんなこと、この場にいるみんな、知っているの。
 それでも、表向き兄弟ということになっているから、そういう噂がたったらやばいの!」
 ガクが、テンの拘束を解いて、言い返した。
「……そんな嘘、つく必要ないじゃん!
 だって、本当に兄弟じゃないし……」
「だから、ここでは、本当のことだけで通用しないの!
 まず、普通なら、かのうこうやの年齢で、同年配の異性と二人きりで生活できないから! あの年齢で、大人を伴わない二人暮らし、っていうのが、そもそも非常識なの! それをなんとなく容認させているのが、二人は兄弟って建前と、それに、長老とか先生の後ろ盾なの! 兄弟って建前がなくなったら、二人は、今まで通り、暮らせないの!」
 テンは、ガクに向かって一気にまくし立てる。
「……本当のことばかりでは、うまくいかない事もある。
 世間ってのは、そういうもんなの!」
「……あう……」
 テンに詰め寄られたガクの方は、ぽかんとした顔で、テンを見返す。
「……テン……。
 すごいな、それ……。
 そんな理屈、どこで習ったの?」
「……普通、習わなくても、わかるよ……。
 じょーしき……。
 わからないガクのほうが、特別鈍いんだ……」
 テンは糠に釘的なガクの態度に、がっくりと項垂れる。
「……そうなの?
 そういうの、じょーしき、なの?」
 ガクは、食卓を囲むみんなをぐるりと見渡す。
 成り行きを見守っていた全員が、こくこくと力無く頷いた。
「……そっかぁ……じょーしき、なのかぁ……」
 ガクは、妙に感心した様子で、重々しく頷いた。
「難しいなあ、じょーしき……」
 ……ガク以外の全員が、どこからどう突っ込んだものか、思案した。

「……ほ、ほんでな。
 ソンシちゃん、今日、帰り遅かったようだけど、学校でなんかやってきん?」
 しばらく間を置いて、気を取り直したように、羽生譲が話題を変える。
「ええ。
 さっきもいたように、自主勉強会の準備で、空教室を片付けて使えるようにしてきました。思ったより人数が集まってくださりましたもので、予想以上に早く終わりましたが……」
「凄かったですね。
 同報メール一つで何十人も集まってくださって……中には、飯島さんのように、部活の途中で駆けつけてくれた方もいましたし……」
「……水泳部は、シーズンオフは、どうせ陸上トレーニングだから……とかいって、総出できてくれましたわね……。
 あと、加納のグルーピーというか親衛隊というか……」
「なに、そんなんいるの?
 まあ……カッコいいこーや君は、カッコいいから、そういうのがいても不思議ではないけどな……」
「……もともと、潜在的にいた人達が、週末の騒ぎを機会に顕在化した感じですわね……」
「それで……今朝も、茅様が機嫌悪くなったんですぅ……」
「ああ……それで、感情的、かぁ……。
 分かりやすいっていえば、分かりやすいな……あの子も……」
 羽生がしきりに頷くと、
「……もともと、表情に出すのが不得手なだけで、茅様は素直すぎるくらいに素直なお方ですよぉ……」
 楓は、そういって口唇を尖らせた。

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