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第六章 「血と技」(368)
結局、茅は荒野が射精をする前に全身を大きく振るわせて静かになった。性急で単調な交わりだったが、茅が快楽を受け取ることには支障がなかったらしい。そもそも、荒野はあまりテクニシャンというわけではないし、こうした交わりの際の快楽も、どちらかというとメンタルな要因が大きく作用している……ように、荒野には、思える。
要は、気の持ちようということで、何日かお預けを食らった茅の期待値が大きすぎた……ということなのではないか、と、荒野は推測した。
その点、荒野の方は、茅が禁欲を強いられている間にも入れ替わり立ち替わり、何人もの女性と関係を持っているわけで……荒野とて、決して好んでそうしているわけではないのだが、その辺の不公平さについては、茅に対してかなり申し訳なく思うところも、多々ある。
荒野はそんなことを考えつつ、ベッドの上にぐったりと身を投げ出している茅の肢体を見下ろした。
上半身は着衣のまま、顔や首筋に乱れた髪が張り付いている。そして、スカートが捲れあがって露出した下半身の肌はひどく青白くて、こんもりと茂った陰毛の黒さといい対照になっていて、そこに、硬度を失っていない荒野の分身が刺さったままになっている。
服も脱がないうちから交わる、というパターンも、この二人の間では珍しい……と思い、荒野は、なんのことはない、「自分も飢えていたのだな」、と改めて自覚する。
女性に……というよりも、茅に……ということだが。
この点、茅への執着と欲求については荒野自身も重々自覚をするところであり、だからこそ少し適度な距離を置こうと思ったわけだが。
頃合いを見計らって、荒野はそろそろと茅との結合を解こうと身を離そうとした。
が、茅が荒野の手首に手をかけて、引き戻そうとする。「離れるな」という合図らしい。未だ、喘いで呼吸を整えている茅が、そんな形で意思表示をしたようだ。
とはいえ……。
『……このまま、汗まみれだと風邪引いちゃうし……。
いつまでも、二人して半裸、というわけにもいかないし……』
荒野は少し躊躇った後、そのままの体勢を維持したまま、自分の上半分の衣服を脱ぎだした。
仮に、端からみている者がいたとしたら、かなり滑稽な眺めだったと思うが……茅が下の下着しか脱いでいないのと同様、荒野自身も、下半身の衣服だけを乱雑に脱ぎ捨てただけの格好だったのだ。
改めて、全裸になった荒野は、今でもだらんと弛緩して全身の力が抜けている茅の背中に両腕を回し、結合したまま、ちょうどだっこをする形で抱え上げた。荒野が背中に腕を回すと、茅も荒野の身体に両腕、両脚を絡ませて軽く締め上げて協力してくれる。そろそろ、息も整ってきたらしい。
「ほら。茅。
このまま、シャワー浴びに行くからな……」
茅の身体を抱き上げた荒野が、茅の耳元で囁くと、茅は小さく頷く。
茅を抱えたまま荒野が歩き出すと、それだけで結合部から刺激を得るのか、茅は、「んっ、んっ」と小さく息を弾ませはじめる。向かい合って抱き合っているので、荒野の首筋に直接息がかかるので、すぐにそうと察知できた。
風呂場に入ってからようやく結合を解いて茅の服を脱がせる。
荒野と同じく、全裸になると茅はすぐに荒野に抱きついてきて、口唇を合わせてきた。
正面から向き合った状態で密着して抱き合い、しばらく、お互いの舌でお互いの口腔内を探り合い、唾液を啜り合う。
「……ほら、早く汗を流さないと、風邪引くだろ……」
しばらく堪能し合ってから、荒野は自制心を総動員して、ようやく茅の身体を自分から剥がした。
「……荒野……。
まだ、元気。
それに、今日はまだ出してない……」
頬を染めた茅が、上目遣いに荒野の顔を見上げながら、そそり立った荒野の分身に指をかける。
「今日と明日で、いっぱいやるんだろ?」
荒野は茅の髪の毛をまとめてバスタオルで包み込んでから少しおどけた口調を形作り、茅の肩に手をかけて、浴室に入っていく。
茅も、もうかなり回復しているらしかった。
そうして二人していちゃつきながらシャワーで汗を流し、身体についた水滴を拭ってから再び寝室に戻ってから、再戦。
その夜は、それまでに試していなかった体位なども含め、何度も交わることになる。
茅の体力が、以前に比べて格段に向上していることを、荒野は改めて実感した。
翌朝、二人して熟睡しているところを、乱暴にチャイムを連打されて起こされた。
ほぼ同時に起き上がった荒野と茅は、お互いの顔を見合わせて、どちらともなく照れ笑いを浮かべる。起こされるまで無防備に熟睡していた、ということが、照れくさかった。
常に警戒を怠らない荒野の眠りは、普段からごく浅いものだったし、茅に至っては、寝ている間も、何やら頭の中で作業をしている……ということらしかった。意味合いは多少異なるものの、二人にとって、玄関先にいる来客に、ぎりぎりまで気づかないでいる……というのはかなり異例の事態であり、その異例の事態を引き起こしたのは、昨夜、二人で行った共同作業の疲労と、二人でともにいる……ということから来る充足感ならびに多幸感、もろもろ……。
簡単な言葉でいうと、二人とも安心しきって、精神的に弛緩しすぎていたので、普段なら察知できる筈の、外の様子に対する注意力が散漫になっていたのだった。
そして、荒野と茅は、寝起きと同時にお互い表情を伺い、瞬時に同じ兆候を察知したので……誤魔化すような照れ笑いを浮かべた。
「……やべっ!」
しかし、次の瞬間、荒野は小さく叫ぶと、昨夜、脱ぎ捨てたままにしていた自分の衣服や茅の下着を拾い集めはじめた。
茅も手早く着替えを出して、身につけはじめ、荒野の衣服も用意する。
普段ならこれほどだらけたことはしないのだが……昨夜は、少し特別だった。
二分もかけずにざっくりと簡単に身支度を調え、玄関に向かう。
ドアを開けると、テン、ガク、ノリのいつもの三人と、それに、ホン・ファとユイ・リィが立っていた。
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つづき]
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