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彼女はくノ一! 第六話 (116)

第六話 春、到来! 出会いと別れは、嵐の如く!!(116)

「……お前ら……なぁ……」
 楓と梢の会話を耳にしていた舎人が、深々とため息をつく。
「……あれが、正常な状態だとでも、思っていたのか……。
 もしかして?」
 そういって舎人はさりげなく顎を動かし、相変わらずリーディングの教授を行っている、イザベラと香也、現象の三人に注意を向ける。
 グローバルに展開していて、日本にはあまりいない筈である姉崎のイザベラ、一般人以外の何者でもないの香也、六主家の中でも断然少数派である佐久間の中で、さらにイレギュラーな存在である現象……の三人が、仲良く教科書の内容を朗読している光景というのも……。
「……やっぱり……」
「……滅多にないこと……ですよね……」
 楓と梢は、どちらともなくそんなことを言い合い、頷き合う。
 それでも、楓の方は、荒野が示した「一般人と一族の共存・融和」という方針を受け入れてから、それなりの月日を経ているので、まだしも感じている違和感は少ない。
 しかし、梢の方は、一族の中でもことさらに正体を秘匿することで知られている佐久間の一員であり……。

『……ひょっとしたら……』
 現象と同年配……ということ以外に、「若さからくる順応性の高さ」も、今回の仕事に梢が抜擢された理由なのかも知れない……と、ここに来て、はじめて梢は思い当たった。
 何しろ、いつ終わるとも知れない長期に渡り、なおかつ、一般人や田の一族の者の目に、公然と姿を現し続けなければならない仕事である。
 自分が選ばれた理由として、梢は、自分が「たいした実績もないから、切り捨てても惜しくない」存在であるから……と、勝手に納得していたのだが……それ以外に、「佐久間」としては、前例のない環境に置かれる仕事なので、精神的な柔軟さをまだ残している年代の自分が選ばれたのではないか……と、はじめて気づく。
 今までは……この土地での情報収集と「現象の監視」という本来の仕事、それに、新しい環境に適応するのに目一杯で、そこまで落ち着いて考えたことはなかったが……。
 荒野も、他の一族たちも……それに、現象も……それぞれに自分の立ち位置を弁えた上で、「これからの在り方」を、必死に模索しようとしている。
 少なくとも、ここ数日、梢が見聞した範囲内では、そう見えた。
 中でも、梢の監視対象である現象が、一番熱心に自分を変えようとしている……ように、見える。
 この土地に来てからの現象は多忙だった。
 見ること、聞くこと、体験すること……その全てを吸収しようという、貪欲さを、ずっと保っている。
 佐久間や一族の在り方に批判的な思想を持ち、かつ、反抗的な態度も隠そうとはしない現象個人のことは、梢はどうしても好きにはなれなかったが……それでも、現象が、並々ならぬ熱意を持って自分自身の強化を図っていることは、認めざるを得ない。
 現象が「努力家」である、とういうことは、ここ数日行動を共にしていた梢にしても、否定できなくなっている。現象は、自分の可能性を広げることにはひどく熱心な努力家であり、ことに、「新種」の一員であるからか、身体能力や体術方面での成長ぶりは、めざましいものがあった。
 この調子で現象が様々な技を学び、体力を向上させていけば……遠からず、佐久間だけでは、つまり、他の六主家の協力を仰がなければ、現象一人を押さえつけることも、ままならなくなるだろう。
 もともと、佐久間は、身体能力方面に関しては、他の一族に大きく遅れを取っている。
 佐久間本家へは、定時報告の他に、詳しい報告書を一日に一度か二度、メールで送信しているので、不穏当な言動をして憚らない現象の不遜な態度も、急激な成長ぶりも……佐久間本家は把握している筈であった。本家が「梢一人で荷が勝ちすぎる」と判断されれば、じきに増援が来るだろう。
 梢は、現象の監視と報告しか命じられておらず、それにプラスして、自発的に、何かあるごとに、さりげなく現象へ有形無形のプレッシャーをかける……ということをしている。もっとも、その「自発的行為」は、梢がまだしも控えめだったからか、それとも現象が図太くてまったく意に介していないからか、思ったような効果はないようだったが……。

「……まぁ、異常でもなんでも、ああやって平和にしている分には、とやかくいうつもりもないけどな……」
 舎人の呟きで、梢は短い物思いから、我に返る。
「……現象のあれは……ここの雰囲気か、それとも、荒野への対抗意識か知らないが……今の時点では、どちらかというと歓迎すべきだと思うしな……。
 あれはあれなりに、自分と周囲の状況を考え合わせて、周囲の状況の方に、自分を合わせ、自分の行き先を、手探りで捜しているわけだし……」
 舎人は、自分に言い聞かせているのだな……と、梢は感じる。
 表面上、舎人は現象のことをいっているのだが……梢には、「お前は何を考え、何を求めている?」という問いを、突きつけられているような気がした。
 これまでのところ、梢は……自身が「佐久間の一員」であること、それに、与えられた任務をまっとうすること……くらいしか、念頭にない。そのことに、疑問すら、抱かなかった。
「佐久間」という閉鎖的な社会の中だけで過ごしていれば、自然、そうなってしまう。
 しかし……この土地に来てからは、現象が見聞してきたことはだいたい、梢も見聞してきた。
 ここで……新しい一族の在り方を模索している、荒野や、他の一族の様子を。
「……わたし、最近……」
 ぽつり、と、楓が小さな声を漏らす。
「……加納様に、自分で考えて行動しろ、って、いわれることが多くて……。
 でも……わたし、今まで誰か上の人にすることを教えて貰って、その命令に従うことしか知らなかったから……いまだに、どうすればいいのかよくわからないことがあって……」
 戸惑いがそのまま滲み出ているような、いかにも自信がなさそうな、か細い呟きだった。
 その言葉に、梢ははっとする。
 楓の言葉は、梢の思考と重複するところがあった。
 物思いに沈んだ調子だったので、楓にしてみれば、あくまで「ひとりごと」であり、返答を期待して……の、ものではなかったのだろう。
 梢は、いつかの夜、現象や舎人と目撃した、「最強」と楓の「練習風景」を思い出す。
 あの時の楓の動きに……梢は、戦慄しか感じることが出来なかった。


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Comments

一昨日、「悪場所の裏道」へ登録させていただきました。
これからも楽しみにしています。

  • 2008/06/03(Tue) 06:48 
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  • えす #-
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