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彼女はくノ一! 第六話 (127)

第六話 春、到来! 出会いと別れは、嵐の如く!!(127)

「最強とか最強の弟子は、舐めない方がいいぞ」
 佐久間現象が、なんとも複雑な表情でジュリエッタに忠告した。
「それより、なんであんたがここにおるとね?」
 イザベラが、早速、現象につっこみをいれている。
「わたしたち、今のところ暇なもんで……」
 現象が何か不穏なことをいう前に、と、梢が割って入った。
「……こうして、あちこち見て回っているんですよ。
 こちらの工場も、この前から巡回コースに入ってまして……」
 イザベラの方は「……ほー……」と気のない生返事をした後、さらに問いを重ねた。
「そげににつよかね?
 最強とか、最強の弟子とか?」
「……自分の目で、確かめて見ろ……」
 吐き捨てるような口調で、現象が答える。
「一族の出でもないのが、なんであんなに……」
 後半は、ぶつくさと聞き取りづらい独り言になっている。現象は現象で、「楓」という存在に対して複雑な心理を抱いているようだった。
「……楓おねーちゃんのこと?
 ボクたちが束になっても敵わない程度かな?」
 現象の代わりにテンがイザベルの問いに答えた。
「……ほー……」
 イザベラは、一応感心したような声を上げておいてから、シルヴィのそばにいるホン・ファとユイ・リィを指さし、
「じゃが、おんしら。
 あっちのチンク二人にボロ負けしておったろう」
 などと遠慮のないことをいう。
「……え? なに?」
「お前らが、勝てなかったって?」
 イザベラの撮影の手伝いに来ていた甲府太介と高橋君の年少組が、目を丸くする。
 イザベラが指さしたホン・ファとユイ・リィは、自分らと同年輩に見える。
 少なくとも同年輩の一族の者で、テン、ガク、ノリの三人に対抗できるものはいない……ということが、この時点では周知の事実となっていた。
「うるさいなぁ。
 格闘戦では、太刀打ちできないだけだよ……」
 そうした反応に、明らかにむっとした様子でガクが反駁した。
「チンクって……中国人のことだっけ?」
「中国四千年、すっげげぇー……」
 高橋君と太輔は、大げさに騒ぎはじめる。
「……そんでもってな……」
 イザベラはそうしたリアクションに構わず、先を続けた。
「その二人が束になっても、あっちのねーちゃんにか太刀打ちできなかったでよ」
 高橋君と太介が、「おおー!」と感嘆の声をあげる。
「ちょっとそこの赤毛!」
 少し離れたところにいたホン・ファが、肩をいからせてつかつかと歩み寄ってくる。
「さっきからチンクだだの太刀打ちできないだの好き勝手に……」
「そないなこというてもな」
 イザベラは、肩をすくめる。
「事実は、事実じゃろ?」
 あっけらかんとした態度と口調であり、特にイザベラが悪意を持っていっているようにも見えなかった。だからこそ、性質が悪い、という言い方も可能なのだが……。
 背後で高橋君と太輔とが、
「チンクって悪い言葉なのか?」
「日本人に向かってジャップっていうようなもんだろ?」
 などと囁きあっている。
「イザベラさん、世界で一番威張っている先進国の人だから……」
 ノリが冷静な口調で補足説明をする。
「……ああー。
 そりゃ、仲悪くなるわ……」
「あそこの白人、自然体で差別意識もってるからな……。
 そっかぁ……姉崎って、国際的だから……」
 ノリがもたらした情報によって、ますます無駄なおしゃべりが加熱する高橋君と太輔。
「……ほいほーい!
 もうはじめていいかねー……」
 両手に細長い剣を持ったジュリエッタが、剣を持ったままの両手をぶんぶんと無造作に振り回す。
「足なげー……」
「剣もなげー……」
 この時のジュリエッタは、羽生に借りたスパッツとトレーナーを着用していた。ジュリエッタの体格と比較するとどちらもサイズ的には小さめであり、手足部分ともに丈が短い。なにより、むっちりとした肉感的な肌が、内側から衣服を過剰なまでに盛り上げ、ボディラインをくっきりと刻んでいる。ぱっつんぱっつんであった。
「スタイルが、もろガイジンさんだなー……」
「日本人とは全然違ぇー……」
 当然のように、高橋君と太輔の視線は、イザベラに釘付けになっている。
 それでもテンが半眼になって、
「……男って、お馬鹿……」
 と、ボソリ、と、呟くとすぐに口を閉じる。
「脇田さんはどうみます?」
「曲芸だな、ありゃ」
 黒ずくめの悪役コスチュームのままの仁木田に、ガクが水を向けた。
「なんだ、あの無駄に長い包丁は。あんなもん、重いだけで小回りがきかないし、実用性がねぇ。
 しかも二刀流だと?
 得物に振り回されるのがオチだぞ……」
 脇田の見解は、常識的なところに落ち着いていた。
「……昨日のを見ていなかったら、ボクもそう思うんだけど……」
 ガクはさりげなく脇田から視線を逸らした。
「ひとついっておくと、この対戦手配したの、最強じゃからの」
 一通りの意見が出そろったのを見計らって、イザベラが爆弾発言を行う。
「それなりの見物には、なるんと違うか?」
 それまでどこかはしゃぎ気味だった一族の間に、見えない緊張が走る。
「……来たばっかりで見込まれた、ってことか? おい?」
「だってあれ、姉崎だろ?」
「いや、荒事が得意な姉崎がいてもおかしくはない……」
「少なくとも、弟子の練習台くらいにはなる、って……あの最強が判断したってことで……」
 撮影の手伝いに来ていた大人の一族たちが、とたんに騒がしくなった。
「おれ、最強の弟子の方に八千円!」
「同じく、一万!」
「こっちも弟子に一万五千!」
「穴狙いだ!
 新入りの姉崎に一万!」
 すぐに誰から、ということもなく撮影用小道具のヘルメットが回され、その中に次々と現金が放り込まれる。
「……はいはい。
 誰がどれだけかけたかは、ちゃんと憶えておくからねー……」
 お世辞にも熱がこもっているともいえない口調でいって、テンがひらひらと軽く片手を振る。
 この場にいる人間には周知になっているテンの記憶力は、このような時に浪費される傾向があった。
「……うーん。
 三対一、ってところかかな?」
 一通りの掛け金が出そろったところで、ざっと暗算をしたテンが呟く。
「やっぱり、楓おねーちゃんが優勢だなぁ……」
「ほんじゃ、わしがジュリエッタに上乗せするでよ」
 イザベラが素早くテンのそばに近寄り、上着のポケットから取り出したむき出しのままの紙幣の束を、数えもせずにばさっとヘルメットの中に放り込む。
 分厚い日本円の紙幣で、明らかに、今までに集まった現金よりも多かった。
 周囲からため息とも感嘆の声ともつかない「おおーっ!」というどよめきが、起きる。
「……相変わらず、お祭り騒ぎ好きねー。
 ここの連中……」
 少し離れたところで見守っていたシルヴィは、苦笑いをしながらそういった。


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