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彼女はくノ一! 第六話(107)

第六話 春、到来! 出会いと別れは、嵐の如く!!(107)

 湯上がりのジュリエッタ、ホン・ファ、ユイ・リィが居間にかえってきた。
 ホン・ファは楓の、ユイ・リィは三人組共用のパジャマを着用している。ジュリエッタは羽生のスウェットを着ていたが、日本人とは体格が異なり、やはり手足の丈が短く、手首や臑の肌が通常より多めに露出していた。
「……おフロ、よかったっー……。
 次は、お酒ねー……」
 とはいえ、ジュリエッタ本人は服のサイズなどにあまり頓着した様子もなく、居間に入るそうそう、真理に向かって邪気のない笑顔を向けた。
「……まだ……お飲みに……」
 真理は、目を丸くしてジュリエッタの顔をまじまじと見返した。
「お体の方は、その……」
 真理の目から見ても、湯上がりで上気したジュリエッタの顔は、いたって健康そうに見えた。ジュリエッタはこの居間にはいってからこっち、ホン・ファやユイ・リィの相手をしている間も含めて、ずうっーと飲み続けだった。
 にもかかわらず、飲み過ぎで体調を崩したり、悪酔いしている様子でもない……。
「……ええ。
 今、用意しますから……」
 真理はジュリエッタの顔色を確認した上で、いわゆる、「うわばみ」というやつらしい……と結論し、台所に足を向ける。
「いやいやいや」
 すかさず立ち上がったイザベラが、真理を手で制した。
「……もうすっかり片付けてしまっとるし、後はわしらで勝手にやりますけん、この家の方はごゆるりと休んでおってくだせぇ……」
 そういって真理の返事も待たず、イザベラは、軽やかな足取りで台所へと向かう。
「……ええ。
 そこにあるものは、お好きになさって結構ですから……」
 真理はそういって、羽生と一緒に風呂に向かった。
 ホン・ファとユイ・リィはといえば、そんなやりとりをしている横で、居間に入るなりどさりと布団の上に身を投げ出しピクリとも動かなくなった。
「げ、限界ですか……」
 そのまま寝息をたてはじめた二人の様子に真っ先に気づいたのは静流だった。主に聴覚で周辺の情報を得る静流は、心拍音や呼吸の変化であまり距離が開いていない人間の体調をある程度推察できる。静流の見立てによれば、先ほどのジュリエッタとの一件で二人の体力は払底している筈で……事実、ホン・ファとユイ・リィは、掛け布団の上につっぷしたまま、瞬時に熟睡している様だった。
 楓と梢が、慌てて二人の下から掛け布団を引きづりだし、二人の身体の上にかけた。
 そんなことをしている間にも、酒瓶とコップ二つを抱えたイザベラが台所から帰ってくる。
「……ほれほれ、ねーさん。
 この際、グッといきましょ。グっと……」
 などといいながら、イザベラはジュリエッタに手渡したコップになみなみと一升壜の中身を注ぎ込み、ついで、自分のコップにもめいっぱい注いだ。
「……日本の酒ば、お気に召しましたかいのぉ……」
「……おさけー。
 おいしぃー……」
 ジュリエッタは相好を崩してイザベラに答え、二人はお互いのコップを軽く打ち付けて、すぐにぐびぐびと喉を鳴らして飲みはじめた。
「……おいおい。
 お前ら、まだ飲むつもりかよ……」
 舎人がジュリエッタとイザベラの様子をみて、軽く眉を顰める。
「……ほんじゃあ、今夜のところは、おれたちも引き上げるか……。
 姉崎の。
 後のことは、お願いするぜ……」
 舎人は現象の頭に平手を置いて退出を即し、シルヴィの方に軽く合図をして立ち上がる。
 ジュリエッタ、ホン・ファ、ユイ・リィらがフロに入っている間に、香也のスケッチを元にした分析ミーティングも、だいたいのところ話題が出尽くしている。時間も時間だし、すぐ隣で酒盛りをしている横で、これ以上言葉だけを尽くしてもあまり意味がない……と、舎人は判断した。第一、分析の対象である三人は、まだ当分この土地に滞在するのであるから、これ以上の突っ込んだ部分は、当人たちに直接教えを乞えばいい。
 現象も舎人の判断に異存がないのか、数人の手元に散らばった香也のスケッチをかき集め、すぐに立ち上がった。
 そんな舎人と現象を、梢がなにか言いたげな表情で見上げる。
「……ま。
 この家では、こいつもおとなしくしているだろう……」
 舎人は梢が考えているであろうことを察して、現象の頭に乗せた掌で、現象の髪の毛をぐしゃぐしゃかき回した。
 もともと、梢も舎人も、現象のお目付役としてこの場にいる。
「……それとも心配なら、お前もこっちで寝るか?」
 それから、からかいを含んだ口調でそう付け加える。
「……遠慮しておきます」
 梢は、少しむっとした表情になって、答えた。
 今夜、この家に泊める男性は香也、現象、舎人の三名だけ。香也の部屋に押し込められるのは、当然といえば当然だった。

「……そんなわけで、迷惑だろうが、一晩お世話になる……」
 現象を伴って香也の部屋に入った舎人は、真っ先にそういって香也に頭を下げた。
 舎人の隣に座った現象も、慌てて頭をさげる。
「……んー……。
 別に、いいから……」
 舎人のような大男から頭を下げられた経験のない香也は、少し面食らいながらも、のんびりとした口調で返答する。そもそも、大の大人が香也のような少年に頭を下げるシュチュエーションなど滅多にないわけだが、この舎人という人は、必要とあれば誰にでも素直に頭を下げられる人なのだろうな……と、そんなことを考える。
 身体が大きい割に威圧感を感じないのは、そいう性格が雰囲気としてにじみ出ているせいかもしれない。
 たしかに、香也の部屋に三組の布団を敷いてしまうとかなり狭く感じてしまうのだが……そんなことは、実際の話し、香也はあまり気にしていない。
 さらにいうと、周囲に第三者の目がある間は同居人の少女たちから強引に迫られるということもなくなるので、香也としては、むしろ歓迎したい気分もあったりする。
 


[つづき]
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Comments

再開おめでとうございます~!!

長旅から帰ってみたら・・・・再開させていたんですね~^^)うれしい限りです。
今度とも無理せず執筆をがんばってください~
・・・なんて、えらそうすぎますね^^;スイマセン

  • 2008/02/20(Wed) 22:02 
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