2ntブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

彼女はくノ一! 第六話 (95)

第六話 春、到来! 出会いと別れは、嵐の如く!!(95)

 帰り道では、イザベラ、ホン・ファ、ユイ・リィが香也の周囲に集まり……という形になった。
 三人とも、一般人である香也が何でこの場にいるのか、ということが、なかなか理解できなかった。もちろん、香也自身や荒野、それに楓や孫子が、「楓や孫子が下宿している家の息子で……」うんぬんと、表面的な説明を一通りするわけだが、それにしても腑に落ちない表情は、なかなか拭えないのであった。
「……だって……世話になっている大家の息子、というだけで、わざわざ一族同士の決闘の場に引っ張ってくる、というのは……筋道的に、おかしいでしょう?」
 首を捻りながら、端的に疑問を口にするホン・ファだった。
「この人が、一族のことを、すでに知っている……というのは、いいです」
 ユイ・リィも、じっと香也の顔を見つめながらいった。
「でも……だからといって……無理に引っ立てるようにして、あの場に連れてくるのは……やはり、不自然です……」
「あの場」に、というのは、「ジュリエッタとフー・メイが乱闘している場」に、ということで……荒野たちは、「茅たち新種の検査に、乱入してきた者がいた」という知らせを受けて駆けつけたわけだが……確かに、その中に、戦力になるどころか、足手まといにしかならない香也が含まれているのは……指摘されるまでもなく、おかしい。
「……そういや……彼は、なんで連れてきたんだっけ?」
 荒野までもが、そんなことをいいはじめる。
「……なんで、って……」
 楓は、口ごもった。
「その……」
 孫子までもが、珍しく途中で不自然に言葉を区切り、次の言葉を探る表情になる。
「……いわゆる、あれ……」
「あれって……どれ?」
 荒野が、孫子の顔をまじまじと眺めながら聞きかえした。
「いわゆる……その場のノリ、というものです」
 孫子は、一つ頷くと、真剣な顔をして、意を決したように、答える。
 荒野は、しばらくまじまじと孫子の顔を眺めたあげく、深々とため息をついただけで、その件に関してコメントすることを避けた。
 当事者である香也は、あらぬ方向に視線を逸らし、
「……んー……」
 とか、唸っている。
 楓は、若干、引きつり気味の笑顔で、
「……あはっ。あははははは……」
 と、乾いた低い笑い声を漏らしはじめた。
「……この人たち……」
 ホン・ファの背中に隠れていたユイ・リィが、ほとんどホン・ファにしか聞こえないような小声で、呟いた。
「……見ていると、面白い……」

 そんなことを話し合いながら歩いて行くにうちに、一同は狩野家の前に到着。
「「……あっ……」」
 そこで一行は、旧知の人物と合流することになる。
「「……加納様……」」
 酒見姉妹が、玄関先に、ちょうどスクーターを止めているところだった。
「なんだ。
 お前らも来たのか……」
 立場上、荒野が双子に声をかける。
「「……舎人さんから、ここに来ないと今夜の晩ご飯が食べられないといわれまして……」」
 酒見姉妹が、悪びれることなく、声を揃えて答える。
「……そっちかよっ!」
 荒野が、軽くつっこみを入れた。
「お前ら……その様子だと、引っ越してからずっと、舎人さんに世話になりっぱなしなんだろう?」
「「……だって……」」
 姉妹は上目遣いになり、声を揃えて荒野に抗弁する。
「「舎人さん……わたしたちがお料理とかお掃除をしようとすると……途中で止めて、自分でやっちゃうんですよ……」」
「……それは……お前らの手際が、あまりにも危なっかしすぎるからだ……」
 荒野は、額のあたりに手を当てて、目をすがめた。
「い、いや……まぁ……。
 おれがあんまりそういうこというのもアレだし……とりあえず、スクーター、置いてきたら?
 ちょうど……というか、何人か、紹介しておきたい人もいるし……」
 荒野はそういって、手でイザベラやホン・ファ、ユイ・リィたちがいる方を示した。

 酒見姉妹が手押しで庭の方にスクーターを移動させている間に、楓たちはぞろぞろと家の中に入る。
 玄関を通り、居間に入ると……そこで、現象と梢が、炬燵に差し向かいで隠元豆の筋を取っていた。
「……お前ら……何を……」
 数秒間絶句した後、ようやく荒野が口を開く。
「……見てわからないか?」
 現象が、憮然とした表情で答えた。
「お前らも、食うばかりではなく、何か手伝えって……あのチビ女に、無理矢理、渡された……」
 現象のいう「チビ女」とは、三島のことだろう。また、現象と一緒に梢も隠元豆の筋とりをしている、ということは、梢も、家事の心得はないらしい。
 荒野の背後にいたイザベラが、「……ぷはっ!」と吹き出し、続いて大声を上げて笑いはじめる。
 その反応が面白くないのか、現象が、ますますむっつりとした顔になる。
「……やっぱり……ここの人たち、面白い……」
 相変わらず、ホン・ファの背中に隠れているユイ・リィが、ぽつりと呟いた。
 楓と孫子は、それらのやりとりを横目に、まっすぐ台所に向かう。
 香也は、上着を脱いで壁のハンガーに掛けて炬燵に入り、部屋の隅に常備してあるスケッチブックを開いた。一連の動作があまりにもさりげなさすぎて、誰も香也の動きに注意していない。
 そんな中、
「「……お邪魔します……」」
 と声を揃えて、酒見姉妹も居間に入ってくる。




[つづき]
目次

↓作品単位のランキングです。よろしければどうぞ。
HONなび


Comments

あれ?

最初に香也に来いって言いだしたのイザベラじゃありませんでしたっけ?

  • 2007/07/13(Fri) 20:15 
  • URL 
  • #-
  • [edit]

そうでした。

ブランクが空くと、細かいこと忘れるから始末に悪い。新キャラは、書いている方もまだ性格を掴みかねている、というのもありますが……。
ということで、前後を微修正。
ご指摘ありがとうございました。

  • 2007/07/14(Sat) 08:53 
  • URL 
  • 浦寧子 #-
  • [edit]

Post your comment

管理者にだけ表示を許可する

Trackbacks

このページのトップへ