2ntブログ

2008-06

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

「髪長姫は最後に笑う。」 第六章(378)

第六章 「血と技」(378)

 そういくらもしないうちに、香也、楓、孫子の狩野家の三人もマンション前に集合する。香也の顔に若干、疲れの色が見えているようだったが、楓と孫子はいつもと変わらない様子だった。
 話しを聞けば、楓も孫子も、特に試験のための勉強はしておらず、かえってそのために、香也の方にプレッシャーがかかったような形だった。とはいえ、楓や孫子が、香也に「試験前日の徹夜」などという不健康な真似をさせる筈もなく、茅や荒野とは違い、狩野家の三人は、昨夜もいつも通りの時間に就寝したという。その分、香也が起きている時間は、一日みっちりと楓と孫子に勉強を見て貰っていたようだが……。
『……なるほど……』
 そこまで事情を聞いて、荒野は、今日、香也の顔色がすぐれない理由を納得した。
 香也のことだから、いろいろと世話を焼いてくれる二人に申し訳なくて、断りきれなかったのだろう……と。
 そもそも、ごく最近まで自宅で勉強する習慣がなかった香也に、マン・ツー・マンという逃げも隠れもしない環境で、長時間にわたり、つけに向かうようしむけたら……香也自身もあまり自覚がないのかもしれないが……そんなことをしたら、確実、かつ、効果的にストレスを蓄積することができるだろう。
 楓で孫子に悪気はないのだろうが……自分たちの尺度で、ものを判断しすぎるのだ。楓や孫子なら、一日中、だろうが、何日もぶっ通しで、だろうが、書類を広げてその内容を暗記しようとすることも可能かも知れない。少なくとも、その程度のことが出来るくらいの体力と集中力を、この二人は持ち合わせている。
 しかし、一般人の集中力、というのは、半日とか丸一日、あるいはそれ以上、持続したりするものではなく、成人した者でも、二時間から三時間がせいぜいで……まだ身体が未完成で、体力的も決して頑強とはいえない香也の場合、一時間前後、気を入れていられれば上出来、というところだろう。
 それをいきないり、「昨日一日、起きている間中、つきっきりで勉強漬け」などにしたら……その精神的疲労度は、察するにあまりある。
 そこまで想像して「さりげなく、注意しておくかな」と思った荒野が、三人に近寄ろうとすると、その前に身体を割り込ませるようにして、香也よりも一層青白い顔をした茅が、立ちふさがった。
「駄目」
 茅は、荒野にだけ聞き取れるような小声で告げる。
 荒野は、軽く首を傾げて、無言のまま「何故」と茅に問い返す。
「この三人の問題には、極力、介入しないで」
 さりげなく荒野に近づいてきた茅が、早口気味に、やはり小声で囁く。
「できるだけ、そっとしておいてあげて」
 茅にそういわれ、荒野は少し考え直す。
 おそらく、茅にしてみれば、いろろいろ微妙なバランスの上になんとか成立している香也周辺の人間関係に、荒野から介入することを阻止したかったのだろう。
 あくまで荒野の観察による所感、ではあるが……茅は、楓にも孫子にも、だいたい等分に友情を感じているらしい。
 だから、荒野にも、むやみにこの三人の関係には、介入するな……ということなのだろう、と、荒野は推察した。
 荒野としては、楓や孫子のどちらかに肩入れするつもりなど、微塵もありはせず、香也の健康状態を心配して声をかけようとしただけなのだが……まあ、慣れない試験勉強のせいで疲れている程度のことなら、さほど気にすることもないか……と、思い直す。
 試験はまだ初日だし、楓にしろ孫子にしろ、すぐに香也の体力や集中力の限界値に気づき、適切な時間をはじき出すことだろう。二人とも、香也の不調に長く気づかないでいるほど迂闊でもないし馬鹿でもない……筈、だった。
 それに、一年生の三学期の段階で、多少、試験の成績が悪くとも、まだまだ挽回できる時期でもあるし……と、ここまで考えて、荒野は、自分の思考が割と普通の受験生的なものになっていることを自覚した。進路アンケートとか佐久間佐織に進学先を推挙されたこと、同じ学年であるクラスメイトたちの雰囲気……などに作用されて、の変化なのだろう。
 そういう自分の心理の変質を、荒野自身は、むしろ歓迎している。自分の感性が、それだけ、同年代の一般人的なものへと変化している証拠だからだった。もっとも、感性が一般人的なものに近づけば近づくほど、現在、自分が置かれている複雑な状況とのギャップが大きくなり、荒野の精神的な負担もそれだけ大きくなるわけで、一概に喜ばしいばかりの変化でもないのだが……そうしたデメリットを自覚した上で、荒野は、内的な自分の変化を歓迎した。
 例によって、全員でぞろぞろ登校をしながら、荒野がそんなことを考えると、商店街の入り口あたりで、いつもの通りに玉木珠美が合流してきた。いつもと違ったのは玉木の様子で、目の下にもくっきりと色濃い隈が浮かび上がり、目蓋や口の端、頬が、断続的に痙攣するようなひきつれを起こしている。髪や肌の色つやも、一目見てそうと判別できるほどに悪くなっているし、おまけに、足元も、完全にふらついている。
 はっきりいって、香也や茅の比ではなく、疲弊した様子だった。
「……大丈夫か、お前……」
 朝の挨拶もそこそこに、荒野が代表して声をかけた。
「……だいじょーぶだいじょーぶ。
 試験前は、だいたい、いつも、こんな感じれすからぁ……」
 そういって玉木は「わははははっ」と笑い声をあげた。
 しかし、その呂律もうまく回っておらず、本来なら「こんな感じですから」というところを、「こんな感じれすから」としか、発音できていない。
 ……こいつ、この状態で試験を受けるつもりか……とか思いつつ、荒野は、とりあえず問いただしてみる。
「大方……徹夜で試験勉強でもした口か?」
 お前も……とは、あえて付け加えなかった。
「……わははははっ。
 その通りだよ、明智くんっ!
 完徹三日目の耐久レースのまっただ中なわけだっ!」
 道理で、いつもにも増して、テンションが高いわけだ……と、荒野は納得した。今の玉木の頭の中には、眠気を誤魔化すための脳内麻薬がしきりに分泌されていることだろう。
「三日目……ってことは、土曜日の夜からか……」
 荒野は、内心かなり呆れかえりながらも、聞きかえす。
「……そんな調子で試験、受けるのか、お前……」
「わははははっ。
 なに、いつものことさっ!
 心配ない、心配ないっ!」
 ハイテンションな玉木の返答を聞きながら、「そういや、いつだったかも、試験直前にヤマカケ派とかいっていたよな、こいつ……」とか、荒野は以前のやりとりの内容を、思い出している。


1000タイトル、君は制覇できるか!?月額1480円!SODの見放題!

[つづき]
目次

DMMアダルト 今すぐ遊べる美少女ゲームが満載!
Dキャラッ! アニメDVD・ゲーム・コミック販売

彼女はくノ一! 第六話 (119)

第六話 春、到来! 出会いと別れは、嵐の如く!!(119)

 今、香也の背中には、適度な弾力を持つ楓の双丘が押しつけられている。それだけではなく、楓は香也の肩に顎を乗せるようにしてもたれかかっているので、楓の前面がべったりと香也の背中に密着している状態だった。その状態で、楓は、香也の前にまで廻した両腕をさわさわと上下に動かし、香也の胸や腹を撫でさすっている。
「……香也様ぁ……」
 楓は、明らかに媚態を含んだ声で、香也の耳たぶの裏側に息を吹きかけるようにして、囁いた。
「……こんなに、ガチガチになっていたら、お勉強も、効率よくわりませんよ。
 朝から随分、頑張っているし……この辺で、少し息抜き、しませんかぁ……」
 語尾が、香也に甘えるような響きを持ちはじめている。
「……ん。ん。ん……」
 香也は、意味を成さないうめき声をしばらく、小さく漏らした後、ようやく、
「……んー。
 でも……ここには、あの人が……」
 と、低い声で囁き、相変わらず布団にくるまって寝息を立てているジュリエッタの方に視線を送る。
 香也の目線を追った楓は、軽く頷いた後、やはり小声で、
「……じゃあ、別の部屋で……」
 と囁いて、香也の身体に腕を廻したまま、香也を急かすように、立ち上がらせる。
「こういう、だらだらした関係は、あまりよくない」と、頭では思ってはいるのだが……こうも身体を密着され、刺激されていると、何度も体験している楓の中の感触を思い出し、身体が反応していしまうのだった。香也とて若い男性であり、楓にこうまでされれば、そろそろ自制が効かなくなっている。
 ましてや、相手である楓の方からこうまで積極的になられては……。

「……二人っきりで、こうするのって……なんか、久々な気がしますね……」
 香也の部屋までの短い距離を歩く間も、楓は香也の腕をしっかりと抱きしめて上機嫌だった。相変わらずの密着度のまま香也の部屋に入った二人は、敷居を締めるのと同時にどちらかということもなく正面から抱き合い、しばらく、お互いの口唇を貪った。二人とも、もはや、少し前までのぎこちなさを感じさせない、慣れた動作になっている。
 楓は、香也の首に両腕を回し、ぶら下がるようにして香也の口唇を求めていた。少し身長差があるので、香也は、心持ち猫背気味の姿勢になる。
 二人は、何分もの間、長々とお互いの舌を絡ませあった後、ようやく顔を離す。
「……こういう、二人っきりで落ち着くの、滅多にないから……嬉しいです……」
 そういって楓は、香也の胸板に自分の顔を押しつけるようにして、若干弾んだ声でそういった。
 香也は、興奮と口を塞がれた際の呼吸困難とで、明らかに楓以上に息が荒くなっている。
 そして、続いて発せられた、
「……こうしていると、普通の恋人同士みたいですねー……」
 という楓の言葉に、香也ははっとさせられる。
 楓にしてみれば、今、この瞬間を喜んでいることを、他意もなく、素直に口にしたにすぎないのだろうが……楓のこの言葉は、香也の深い部分に突き刺さった。
 楓は、しばらく、香也の存在を確かめるように、香也の背中に廻した腕を上下に動かしていたが、そのうち、抱きついたままの姿勢で香也の顔を下から見上げ、
「……そろそろ、香也様の窮屈になっているところ、楽にしましょうねー……」
 と、幼子を諭すような口調でいった。
 そして、密着したままの二人の間に、自分の手を割り込ませ、着衣の上から香也の股間部に手をはわせる。香也のソコは、健全な男子にふさわしい反応を示しており、先ほどから密着している楓の身体を押し返すほどに元気になっていた。
 楓は、布地越しに香也の股間のこわばりに、愛おしそうな動作で、しばらく指を這わせてから、おもむろにジッパーを指で摘んで、ゆっくりと下に下げる。
 すでにどうしようもなく怒張していた香也のソコは、ジッパーが開くと同時にバネ仕掛けか何かのように、勢いよく、開いた前方に飛び出して、「わっ。凄い」と、楓の声を引き出した。
「……男の人のここって、気持ちよくなると、こうなるんですよね?」
 楓は無邪気にそんなことを訊きながら、香也の分身の形を確認するように、手指で弄んでいる。
「……わたしの身体、そんなに気持ちいいんですか?」
 香也にしてみれば、非常に答えにくい質問だった。
 楓も香也の返答は期待していなかったのか、そのまま香也の前に膝をつき、
「……これ……ラクにしましょうね……」
 といって、剥き出しになった香也のモノに顔を近づけた。
 楓は、座学ではあったが、以前より「自分の身体を使って男性を喜ばせる術」を一通り習っては、いるのだ。ましてや、相手は香也であり、香也を喜ばせるためには、楓は進んで自分の知識を総動員する。
 まず、楓は、鈴口のあたりに軽く口唇をつけ、その後、舌先の柔らかい部分で、香也の先端の敏感な部分に触れた。
 思わず、香也が「うっ」とうめくが、楓はすぐに舌を少し離し、刺激を持続させない。舌先がそこに触れるか触れないか……といった、微妙な感触を、しばらく、楓は香也の先端に与え続けた。
 具体的な接触や刺激よりも、刺激が与えられるかも知れない……という認識を香也に与えてじらし続ける、メンタル面に比重を置いた技法だったが、これは、これまで本能に身を任せるような体験しかしてこなかった香也には、覿面に効果があった。
 その証拠に、楓の舌先が触れている部分は、先ほどから楓の唾液以外の液体が分泌され、少しぬめり気を帯びはじめている。
 しばらくじらされていた香也は、もっと刺激を求めるように、楓の頭部の両側を両手で挟み、自分の方に引き寄せようと、軽く力を込める。
「……もっとちゃんと、して欲しいですか?」
 楓は、上目遣いに香也の表情を伺い、すぐに香也の先端を口に含んで、勢いよく吸い上げた。
 さんざんじらされたあげく、いきなり物理的な刺激を与えられた香也は、自分でも意識しないうちに、暖かい楓の口内に勢い良く放射してしまっている。それも、だらだらと長く、いつまでも継続するような射精だった。少なくとも香也は、そう感じた。自分の内部に、こうも長々と吐き出すものが溜まっていたのが、不思議に思えた。
 香也の反応をある程度予想していたのか、楓は、放射した瞬間に、一度、肩を震わせただけで、後はそのまま、長々と吐き出された香也のものを一滴も漏らすまいと、香也から口を離さなかった。
 おそらく、そのまま飲み込んでいるのだろう……と、香也は、思った。


あの頃の若さを取り戻す!!究極のED(勃起不全)革命的商品【ラブアゲイン】

[つづき]
目次

↓作品単位のランキングです。よろしければどうぞ。
HONなび

「髪長姫は最後に笑う。」 第六章(377)

第六章 「血と技」(377)

「……むぅ」
 荒野に抱きついたままの茅が、不満そうに喉を鳴らした。荒野の反応が鈍いのが、気にくわないようだった。
「……いや、だからね……」
 荒野は諭すような口調でそういいながら、抱きついてきた茅の両脇に手を入れ、若干持ち上げ気味にしながら、ずるずると引きずるようにして、玄関先からリビングへと移動する。
 茅が荒野に抱きついた姿勢のまま、離れようとはしないのだから、そうするより仕方がないのであった。
「……おれ、茅みたいに頭良くないから、普通に勉強しないと点数取れないし、ここでは真面目な学生でいたい、っていうのもあるし……。
 沙織先輩とも、かなりレベルの高い学校にいくって約束しちゃったしな……。
 おれも、別に茅とそういうことしたくないってわけではないし、どっちかというとしたいことはしたいんだけど、そういう近視眼的な欲求に忠実になることによって、将来、後悔するようなハメに陥りたくないのだよ……」
 茅一人分の重量など、荒野にとってはたいした負担でもない。
「荒野……茅を、からかっている?」
 茅が、珍しく、不満そうな声を出した。
「そんなことは、ないぞ」
 いいながら、荒野は、自分に抱きついた茅の手を、ゆっくりとした動きで丁寧に引きはがす。
 とりあえず、茅は、不満そうな顔をしながらも、荒野にされるがままになっている。
「さて、茅さん。
 まだ時間も早いわけだし、もう少し、頭の悪いおれにお勉強する時間の猶予をくださいませんかねぇ……」
 荒野は、ソファの隅にまとめて置いておいた教材や文具などを取ってきて、テーブルの椅子を引きながら、ことさらに、のんびりとした声を出す。
「……むぅ」
 茅は、口をへの字型に結びながらも、
「……わかったの」
 と、渋々、といった形で承諾した……と、一度でも思ったのが、荒野の甘さだった。
 続けて茅の口から出てきた言葉に、荒野は、しばし絶句する。
「荒野が成績のことで不安があるというのなら……その不安が解消されるまで、茅も手伝うの」
「……おい……」
 たっぷり一分以上絶句した後、荒野は、ようやく喉の奥から意味のない返事を絞り出した。
 茅に、荒野の勉強を見ることが、可能か不可能か……といったら、充分に、可能なのだということを、荒野はよく知っている。なにしろ茅は、すでに全学年分の教材データを整備した実績を持つ。茅一人でやったわけではないにせよ、沙織と並んで「監修役」の一方を務めていたわけで……そもそも、必要な知識を持ちつつ、俯瞰的に全体像を見極める視野も持たなければ、そんな役割は、到底、勤まらない。
 問題は……なんか、茅の眼が、異様な光を発している……ような、気がする……ことだった。
「……荒野の不安が解消されるまで、眠らせないの……」
 そういいきった茅から、殺気にも似たプレッシャーが発生しているような……錯覚を、荒野は、覚えた。

 その夜、荒野と茅は、一睡もしないで過ごした。
 もちろん、甘いあれこれをしていたわけではなく、むしろ非常に無味乾燥な仕事を、机に向かってしていたわけだが。
 茅のチェックは、思いのほか、厳しく……おそらく、本番の期末試験よりも、多大な圧迫感を荒野に与えていた。
 夜が明け、登校する時間になった時、荒野は「これで解放される」と、心底、安堵したものだった。
 外では、荒野の心理状態を代弁するかのように、相変わらず雨が降り続けていており、毎朝恒例のトレーニングに関しても、自然と中止になっていた。
 荒野は、一晩二晩程度の徹夜でどうにかなるほどヤワには出来ていなかったが、肉体的疲労よりも精神的な疲労がたっぷりと体中に蓄積されているような気分だったので、今朝のこの鬱陶しい天気は、それなりにありがたかった。

「……それで、完徹しちゃったのか……」
 マンション前に集合した飯島舞花が、茅から昨夜の経緯を聞いている。
 茅は、流石に荒野ほどにはタフには出来ておらず、加えて、今までかなり規則的な生活を続けてきている。
 完徹のダメージが大きいのは、明らかに荒野よりも茅の方であり、茅の顔色がすぐれないのを目ざとく認めた舞花が心配して「体調が悪いなのか?」などと話しかけ……現在に、至る。
「……おいおい、おにーさん……。
 茅ちゃんに、無理させてはいけないなぁ……」
 一通りの事情を茅から聞いた舞花は、そういって肩を竦めた。
 荒野はあやうく「いや、それ、おれがやってくれって頼んだわけではないし……」という言葉が喉から出かかったが、あやういところでそれを自制することに成功する。
 例え、事実であり、本音であったとしても、実際に口に出したら非難されることが確定している言葉、というものは、現実問題として実在するのであった。
「……だけど、まあ、考えようによっちゃぁ……」
 むっつりと黙り込んだ荒野の態度をどう解釈したのか、舞花は構わず言葉を続けた。
「……定期試験前の一夜漬けなんて、実に、ふつーの学生らしいじゃないか……。
 うちのクラスにも、今日、寝不足のやつ、かなりの人数、いると思うし……。
 な。おにーさん……」
「……そういう情けない部分まで、ふつーにならなくてもいいよ……」
 荒野は、かなりげんなりとした声を絞り出した。
 こればっかりは、正真正銘、荒野の本音だった。
 より正確を期するなら、「荒野の本音」のうち、公にしても問題にならない部分、だった。
 そういう舞花は、相棒の栗田ともども、普段よりも顔色がいいくらいだった。
「わたしらは、ほれ、普段から計画的にやっているから、試験直前になっても慌てる必要ないし……」
 と、舞花は胸を張る。
 特に勉強だけに限ったことではなく、舞花は、「無理をせずに、その場その場でやれることを確実にやる」という堅実な性分であり、栗田もそれにつき合わされている。
 ……こいつら、昨夜も一通り勉強をし終えた後、盛大に盛っていたのだろう……と、荒野は推測した。


1000タイトル、君は制覇できるか!?月額1480円!SODの見放題!

[つづき]
目次


彼女はくノ一! 第六話 (118)

第六話 春、到来! 出会いと別れは、嵐の如く!!(118)

 真理が「買い物にいってくる」と言い残して家を出て行ってからも、香也と楓は、しばらく、真面目に集中して目の前の勉強に取り組んでいた。具体的にいうと、その時やっていた科目は数学で、香也のすぐ隣に楓が座り、応用問題の解法を丁寧に解説していた。
 その問題は、かなり高い確率で今度のテストに出題される……と、授業中に、教師はかなり力説していた。その時の教師の態度からいっても、かなり配点が高いのだろう、と、楓は予測し、その分教え方も丁寧になる。配点が高い問題を確実に答えられるようにすれば、効率的に香也の成績を上げられるから、である。
 香也のすぐ横に座ったのは、同じノートを開いて問題を解説するのに、その体勢が都合良かったから、であり、楓にしてみれば、他意はなかったのだが……その体勢になってから、すぐ、香也は、むずむずと身体を揺するようになり、どうも、態度に落ち着きがなくなった。
「……どうかしましたか?」
 と、不審に思った楓が疑問を口にしても、「……んー……」と恒例の口の濁し方をするばかりで、いっこうにはっきりしない。
 香也にしてみれば、ほぼ密着状態にある楓の身体の感触とか、楓の方から漂ってくる、ほのかな体臭とかが気になって集中できない……とか、正直に答えることが出来ないのであった。
 何しろ、そう聞いてく楓の顔からして、数十センチほどしか離れていない至近距離にあり……それは、香也の方に向かってしゃべれば、吐息がかかる距離、でもあった。
 香也の年頃の男子にしてみればただでさえ理性を要求される状況だというのに、少し天然気味の楓は、そのことに無自覚であり……さらに加えて、香也は楓の素肌の感触も、何度か経験していて、その分、こうした刺激があれば、
 だから、香也の態度を不審に思いつつも、楓は勉強を続けようし、しかし、香也はどこかうわの空で、集中力にかける……といったことが、何度か、繰り返された。
「……疲れました? 休憩、いれますか?」
 結局、楓は軽くため息をつきながら、そんなことを言いだす。
 試験前、ということもあって、朝からかなり根を詰めて取り組んでいる……ということは、楓にしてみても、自覚はしている。
 香也の方も、そろそろ体力と集中力の限界なのだろうか……といった理解のしかたを、楓はしていた。
 香也は、とりあえず、楓が少し身体を離してくれたことにほっとしながら、ぶんぶんと頭を縦に振って賛同の意を表明する。
 そんな香也の態度を誤解したまま、楓は「ちょっと、お茶をいれて来ますね」といい残して、台所の方に去っていく。
 楓の身体が本格的に離れると、気が抜けた香也は、がっくりと肩を落とした。
 おそらく、理性が保てなくなった香也がこの場で楓を押し倒したりすれば、楓の方はむしろ喜ぶのではないか……などとも思わないでもなかったが、楓にしろ、他の、香也を慕ってくれる少女たちの誰かにせよ、そうした即物的な欲求不満の解消のために利用することには、香也はかなり強い抵抗を感じていた。また、真面目に香也に勉強を教えてくれようとしてくれる楓の意志を無視したり、踏みにじったりしたくはなかったし、それ以上に、今までが今までだから、その場の雰囲気で流されるような関係の持ち方をすることは、香也自身にしてもかなり不本意だった。
「……もう。
 そんなに、盛大にため息をついて……」
 急須と二人分の湯呑みを抱え、楓はすぐに戻ってくるなり、香也に向かってそういった。
 ……どうも、がっくり安心した時の様子を、しっかりと目撃されたらしい。
「……勉強、そんなにいやですか?」
 楓は香也の前に置いた湯呑みと自分の分とに、当分にお茶を注ぎながら、不安そうな口調で、香也にそんなことを尋ねている。
 楓は楓で、さっきからの香也の態度を、変な方向に誤解していて、こうして長時間、身柄を拘束して勉強漬けにしていることを、本当は、香也はいやがっているのではないか……とか、思いはじめていた。
 とりあえず、そんな風に思って欲しくなかった香也は、ぶんぶんと顔を横に振る。香也は香也なりに、香也のためを思って楓たちがしてくれることを、それなりにありがたいとは、思っては、いる。
「……でも、何か、集中していませんよね?」
 二つの湯呑みにお茶を注ぎ終えた楓は、そのまま身を乗り出して、香也に顔を近づけてきた。
 ただでさえ、楓を「そういう風に」意識しているところに、いきなり至近距離で見つめられ、どぎまぎした香也は、反射的に顔を逸らす。
 何しろ、体温を感じるくらいの至近距離に、真っ正面からの楓のどアップ。いったんは落ち着きかけていた香也の衝動は、一気にレッドゾーンに突入し……。
「……あっ……」
 その挙動をみて、今度こそ、楓は、さっきからの香也の「挙動不審」の原因に、思い当たった。
 唐突に「理解」の表情を浮かべた楓は、次の瞬間には悪戯っ子のような表情になり、ゆっくりと、香也の肩に、自分の身体を押しつけるように、もたれかかっていく。
「……そういう、ことですか……。
 もっと早く、いってくだされば、よかったのに……」
 楓にしても恥ずかしいのか、小声で、香也の耳元に息を吹きかけるようにして、囁く。
 なんか、香也の気のせいか、楓の声に湿っぽさと「甘え」の成分が入っているような、気がする……。
 楓は自分の乳房を香也の肩胛骨のあたりに、むにゅ、と押しつけるように密着させながら、両腕を香也の背中から腰のあたりに廻し、香也の身体をぎゅっと抱きしめた。
 そうされながら、香也は、緊張して背筋をピンと伸ばし、全身をかちんこちんに硬直させている。
「……そんなに、堅くならないでください。
 わたしだって、こういうの、すごく、恥ずかしいんですから……」
 香也の耳元に吹きかける、楓の吐息が、熱い。
「こうしているのだって……すっごく、勇気がいるんですからね……」
 背中に密着している楓の体が、なんか、急に熱を帯びはじめているような気がした。
 羞恥のせいなのか、興奮のせいなのかは、香也にもよくわからない。それ以前に、今の香也にそんなことを気にする余裕がない……ともいう。
 香也の背中からお腹のあたりに廻されていた楓の両腕が、もぞもぞとぎこちなく、不器用に、動く。
「……香也様……こんなに、緊張して……」
 こんな状態では、勉強に集中なんかできませんよね……といいながら、楓は、香也の身体に廻した腕を、さらに下の方に下げていった。


あの頃の若さを取り戻す!!究極のED(勃起不全)革命的商品【ラブアゲイン】

[つづき]
目次

↓作品単位のランキングです。よろしければどうぞ。
HONなび

DMMアダルト ダウンロード美少女ゲーム 「人妻女医 理子」
DMMアダルト 電子書籍の販売
DMMアダルト 電子書籍の販売
DMMアダルトビデオ動画 素人ガールズコレクション

「髪長姫は最後に笑う。」 第六章(376)

第六章 「血と技」(376)

「……うちのおやじとかーちゃん、わたしが小学校の頃、別れてな。
 っていうか、実質、かーちゃんが勝手に男作って出て行ったんだけど、それでとーちゃん、それまで長距離トラックの運ちゃんやっていたわけど、何日も家を空ける仕事をしながらまだ小さかったわたし育てるのは無理だって、転職までしてな……」
 四人で夕食を囲みながら、舞花は淡々とした口調でしゃべり続ける。
 栗田にとっては既知の情報なのだろうが、荒野や茅にしてみれば、初耳だった。
「うちのとーちゃん、基本的にはわたしに甘々な人だから、危ないっつーてなかなか包丁とか持たせて貰えなかったけど、わたしが料理出来るようになってからは、だいたい、わたしが作っているな……」
 つまり、舞花がどうやって料理を覚えていったか、という説明の過程、なのであった。
 その舞花の説明によると、舞花が充分に育って手がかからなくなった今、舞花の父親は、もとの職業に戻っている、という。そういえば、以前にも、「仕事で家を空けていることが多い」ということは、何度か耳にしている。
 栗田が気軽に舞花のマンションに寝泊まりしているのも、「公認」ということ以外に、舞花一人でマンションにいるよりは「危なくない」というセキュリティ的な判断も、あるのかも知れないが。
「……そういや、おにーさん。
 明日から試験なわけだけど、準備の方は……」
「……まぁ、ぼちぼち」
 荒野はそう答えて、口を軽くへの字型に結んだ。
「やれる範囲内で、やれることはやった。つもりだ」
 そういういい方が、荒野自身の耳にもいいわけじみて聞こえたが、実際の話し、十全な自信を持てる教科ばかりではないのだから、しかたがない。
 特に記憶力に比重が置かれた教科は、毎日のように反復学習をするのが効果的だとはわかっていても、何かと突発的なトラブルに見まわれ、学習の定型的な習慣化が難しい、荒野の現在の境遇では、何かと限界も多い。
 今では特殊な「教科書用語」も大方覚えたおかげで、他の生徒たちに比べて英語関係にリソースをつぎ込む必要はない分は、たしかに荒野にとっては有利といえたが、それ以外の教科については、他の生徒たちと対して変わらない。
「そういうそっちは、どうなんだよ」
「……まあ、一応。
 やれる範囲内で、やれることはやった」
 舞花は、荒野の口調を真似て答える。
「……こっちは、毎日一時間とか二時間とか、淡々とやっているからね……。
 実をいうと、試験勉強って、あんまり必要でもなかったり……」
 ……そういや、こいつ、「学校の勉強=筋トレ」論者だったな……と、荒野は思い出す。
 同じことを何度も反復すれば、いやでも覚える。だから、「毎日淡々と」という舞花の方法は、実際にも効果的なのだ。
 問題は、その効果的な方法を、実際に実行できる人とそうでない人がいる……ということで、本人のやる気がなくて実行できない場合はさておき、荒野の場合は「本人にはどうにも出来ない」部分で実行が不可能なのだから、理不尽な思いは、かなり噛みしめている。
「……そういや、あれ。
 飯島、進路とかはもう、決まっているのか?」
 荒野は、もう一つの「気になること」を尋ねてみた。
「……ああ。進学。
 もっと先のことだと、看護婦か介護士とか、そっちの方面に進もうと思っている。
 体力には、自信があるし……」
 打てば響くように、舞花が答えた。
 おそらく、いろいろ考えた末に出してあった結論……なのだろう。
「……あー……」
 荒野は短く感歎の声を出した後、
「……飯島に、似合うと思う。
 その、適性的に……」
 と呟く。
「いずれは、専門学校なり資格試験なり目指すにせよ、まだ何年かは、普通の学生するつもり。学歴はあんま気にしないけど、普通に学校に通ってなければ体験できないことって、まだまだあると思うし……」
 一見、マイペースなようでいて、押さえるべきとことはしっかりと押さえているあたり、なんか、この娘らしいな……と、舞花の話しを聞きながら、荒野はそんなことを思った。

 そんな四方山話しをしながら食事を終え、食後に茅の紅茶を楽しんで一休みした後、
「……二人で、もうちょっと勉強する」
 とかいって、舞花と栗田の二人は荒野たちの部屋を出て行った。
 出て行った、とはいっても、同じ棟内にある舞花の部屋に移動しただけだったが。栗田は、今夜も舞花のマンションに泊まり込みになるらしい。なんだかんだいって、あれだけ始終くっついていて飽きないのだから、仲はそうとういいのだろう。流石は、校内公認バカップル。
「……さて、と……」
 玄関先で、出て行く二人を見送ってから、荒野はそんな声を出して奥に戻ろうとする。
 まださほど遅い時間でもないし、もう少し勉強しておくかな……とか思っていると、茅が、荒野の肘を軽くつかんだ。
「荒野」
「……何?」
 荒野は、ちょっとだけ「嫌な予感」に襲われつつ、それでも茅に聞き返す。
「今日、週末。日曜なの」
「いや……知っているけど……」
 茅は、後から荒野の背中に抱きつく。
「荒野……いじわるなの……」
 茅は、荒野の肋骨に顔を押し当てながら、小さな声で囁いた。
「……いや……でも、明日から期末試験だし。
 おれ、茅ほど自信があるわけではないし……」
 じわり、と、荒野の額に冷や汗が浮かびはじめる。
「……荒野、休みの日はそういうことしてくれる、って、いったの……」
 茅は、両腕を荒野の胴体に廻し、身体を密着させたまま、上目遣いに荒野の顔を見上げる。
 そうしていると、茅の身体の感触と体臭をもろに感じてしまい、荒野の理性が溶けてなくなりそうになる。
 荒野にとって、茅という存在は、相変わらず魅惑的なのだった。
 しかし、だからこそ……あえて、理性を保たねばならない場合も、ある。


1000タイトル、君は制覇できるか!?月額1480円!SODの見放題!

[つづき]
目次

エロアニメ
無修正動画スキヤキAV

彼女はくノ一! 第六話 (117)

第六話 春、到来! 出会いと別れは、嵐の如く!!(117)

 梢の中で、あの時、「最強」の荒神とかなりギリギリのせめぎ合いを演じていた楓と、今、隣で炬燵に入って、両掌で包み込むようにして湯呑みを抱えている楓とが、なかなか結びつかない。
 時間してみれば、五分にも満たない短さであっただろう。
 それでも、人は、一族は、あれほど鋭い動きを出来るものなのか……と、瞠目した時間だった。これは別に梢だけの感想というわけではなく、その証拠に、直後、現象も舎人も顔色を無くしていた。彼我の差を思い知らされた形の現象などは、あの後、「ふざけるな!」などと八つ当たり気味に悪態をつきさえ、していた。
 息一つ見出さずあれほどの働きを演じて見せた荒神も凄いが……その荒神には今ひとつ、及ばないものの、荒神の動きに負けまいと奮戦した楓の動きも……梢の知る限りにおいて、完全に、他の一族の水準を凌駕している。
 「最強の弟子」とは、この土地に来る前より、聞いていた。しかし、その「最強」と「最強の弟子」との本領を目撃したのは、ここに移ってきたからであり……実際に目撃してみれば、梢の想像を遙かに超越していた。
 その時の「最強の弟子」と、今、のほほんとした表情で炬燵にあたっている楓とが……梢の中で、なかなか結びつかないのだった。
「……何か?」
 気づかないうちに楓に視線を固定していたのか、楓が、梢に向かって首を傾げて見せる。
 害意や悪意がかけらも覗かない、邪気のない微笑みを、やんわりと浮かべていた。
「いえ、別に……」
 梢は、何故か、慌てて視線を逸らす。
 こうしている、普段の楓は……いっそ、あどけない、と形容しても差し支えないような、愛らしい少女にしか見えない。
 楓の外見と実力のギャップに、梢は、頭がクラクラする想いがした。
 楓の普段の態度が擬態だとすればたいしたものだが……梢が今までに観察してきた限りでは、普段の楓は、決して「芝居」ではない。「地」、だ。その程度のことは、佐久間としての能力を使用して「読む」までもなく、梢にも判断出来た。
『……なんという……』
 人たち、なのだろう……と、梢は思う。
 荒神と楓に加え、ここには、もう一人の「最強の弟子」、荒野までもがいる。梢は、荒野の「実力」を見聞する機会には、まだ恵まれていないのだが……荒野の実力のほどは、すでに一族内で定評に近いものを得ている。
 その三人が、一カ所に固まって住んでいる……という事実に、梢は目眩にも似た感慨を覚えた。
 現象や荒野などは、どうも「新種」たちを過剰に意識しすぎているようだが……梢にいわせれば、そうした「新種」よりも、旧来の「一族」たちの方に、よっぽど脅威を感じてしまう。
 それとも、一番身近な「新種」が現象だから、悪い意味での身贔屓で、そう見えているだけなのだろうか?
 いずれにせよ、荒神や楓レベルの体術を目撃した後だと、自分で身につけたものは、せいぜいがとこ、可愛らしい護身術程度だな……と、梢は、そう評価を下す。
 身体能力的にみれば、「佐久間」は、六主家の中でも底辺に近い……という世評は、そんなに間違っていなかった……と、今にしてみれば、そう思える。
 そして、それを実感できただけでも、梢にしてみれば、この土地に来た甲斐があるのであった。

 小一時間ほども「イザベラの朗読→香也、現象の復唱」という学習をした後、少し休憩をとって、香也は、別の教科の勉強に移行する。明日からの期末試験は、別に英語だけが行われるわけでなく、香也の勉強をみている楓としても、複数の科目について対策を行っておきたい。
 それなりの時間、声を出し続けていた香也には、相応に疲労の色が見えていたが、楓に手心を加えるつもりはない。試験期間もこの一週間だけだし、香也の試験結果は、楓や孫子が今までにやってきた努力がどこまで実ったのか、という指標にもなる。香也の方は、相変わらず、楓や孫子の熱意に煽られ、引きずられている形だったが、今のところは、そんなに積極的にいやがってはいないかった。
 楓と香也がマンツーマンの学習に入ると、梢や現象、イザベラは、楓から使っていない教科書を借りて、その内容を子細に検討しはじめた。この三人の中でイザベラだけが学年が違うわけだが、春の新学期から、同じ学校に通うわけである。その中でどのような授業が行われているのか、興味を持つのは当然といえた。イザベラはどういうつもりでいるのかは不明だったが、梢と現象は、それなりに現地に溶け込みたいと思っている。
 さらに正確にいうと、梢は現象の内面を確認しているわけではないが、現象はそのように自己申告している。
 各種教科書の内容は、梢や現象にとっては大半は既知の事柄であったが、イザベラは、日常会話こそ問題なく行うことができるものの、教科書の中でしかお目にかからないような堅苦しい言い回しや単語の意味が取れないことがあり、梢や現象に何度か訳語を求めたりした。
 昼には、「世話になったし、手が空いているから」という理由で、舎人が中華風のおかゆを手早く作ってみせた。台所にあったあり合わせの乾物と冷凍保存されていたご飯が原料だったが、あつあつのものを食べると素朴なうまみを感じる。一見、ボリュームが足りないように見えて、食後しばらくするとそれなりの満腹感を感じた。
 その昼食が終わると、イザベラは「部屋の片付けがある」とかいって帰っていき、香也と楓は、勉強を再開する。
 食後の片付けを終えた舎人から、
「……お前らは、どうする?」
 と問われ、梢と現象は顔を見合わせ、少し話した結果、「帰る」ということになった。
 今更という気もするが、これ以上ここにいても、香也や楓の邪魔にしかならないような気がする。
「ま、居残りの双子も、飢えていないのか心配ではあるしな……」
 そういって舎人も、「帰る」案に賛同する。
 まだ雨が降っているので……と、車で送ることを申し出てくれた真理の提案を丁重に断って、この三人も帰って行った。
 これで、昨夜、来訪した人たちのうち、残っているのはジュリエッタのみになったわけだが、そのジュリエッタは相変わらず、居間の隅で布団にくるまって気持ちよさそうな寝息を立てていて、いっこうに目を醒ます気配を見せなかった。
 そうしている限り、とりたてて邪魔になるわけでもないから、誰も起こそうとはしない。
 昼食からしばらくして、真理が車で買い物に出かけ、この家には、寝っ転がったままのジュリエッタを除けば、実質、香也と楓しかいないことになった。


あの頃の若さを取り戻す!!究極のED(勃起不全)革命的商品【ラブアゲイン】

[つづき]
目次

↓作品単位のランキングです。よろしければどうぞ。
HONなび



「髪長姫は最後に笑う。」 第六章(375)

第六章 「血と技」(375)

 茅と舞花の合作による夕食の準備が整い、四人で食卓を囲みはじめると、自然、話題は荒野の話しの続きになる。
「……一体、何を、って……そりゃ……」
「荒野は、悩んでいるのではないの」
 曖昧に言葉を濁そうとする荒野とは違い、茅のいい方はきっぱりとしたものだった。
「荒野は、戸惑っているの。
 自分の立ち位置を、なかなか受けいれることができなくて……」
「……そういうこと、なのか……」
 舞花は箸を止めて、首を少し傾げる。
「……おにーさんの、その、生い立ちが特殊なのは、わかるけど……。
 そんなの、いまさら、あーだこーだといっても、何にも変わらないわけだし……」
 舞花は、考え考え、一言一言区切って、言葉を押し出す。
「……だって、おにーさんは、おにーさんだろ?
 いや、わたしだって、おにーさんのこと、そんなに深く知っているわけではないけど……。
 でも、知っている限りでは、おにーさん、そんな悪いことをしそうな感じでもないし……いや、逆に、誰かが悪いことをしようとしたら、身体張ってでも止めるタイプだし……おにーさんに任せておけば、そうそう悪いことにはならないと思う。
 その……仮に、今後、何かまずいことになったとしても、それは、他の誰かがやってもまずくなるような事態な筈で……」
 訥々と語られる舞花の言葉に、栗田がうんうんと頷いている。
 この二人は、直接的に、あるいは、間接的に、荒野の「活躍」に接している。
 実際にしてきた「行動」は、何よりも雄弁にその人の内面と価値観を物語る……ということを、舞花と栗田は知っていた。
 この二人は、「ここに来るまでの荒野」が何をしてきたのかは知らなかったし、また、知りたいとも思っていなかったが……。
「この二人が知る荒野」とは、知り合いが窮地に陥っていると知れば脇目も振らず突入し、普段から面倒見が良くて、何かと扱いの難しい知り合いとも、ぶちぶち愚痴をいいつつも結構付き合いが良かったり、難しい局面にぶちあたっても、なんだかんだと解決してしまう……ひとことでいうと、「超高性能お人好し」な少年、なのであった。
 この二人にとって、荒野の立場の難しさ、とか、一族関連の事柄は、話しには聞いていても、あまり実感の伴わない「遠い」出来事であり……だとすれば、「二人が普段接する荒野の姿」から、判断するより他ない。
「……っていうか……今、おにーさん以上にうまくやれそうな人って……他に誰か、いるの?」
 最後に、舞花は、そう締めると、荒野は返答に詰まった。
 結局は……そこにいきつくのだ。
「荒野の代わりは、いるのか?」
 いないから、多少、自信がなくとも、手元不如意でも……自分自身でやるよりほか、ない……。
「……おれ、はっきりいって、そっち方面のことは、あんまりよくわかっていないと思うけど……。
 こういういい方が正しいかどうかもよくわからないのだけど、おれ、来年度から水泳部の部長、やることになって、一応、まーねー、来年は三年生だから、代替わりっていうか、他の部員にせっつかれてしかたなくやるわけだけど、おれなんかに勤まるのかな? とか、おれでいいのかな? とか思いつつ、それでもやるしかないわけで。
 あ。いや、何がいいたいかというと、この前、まーねーにいわれたんだけど、部活の部長とか、ああいうのは飾りで、誰かしらが『やっている』ことに意味があって、そこにいさえすれば、それで半分は成功なんだ、って……。
 えっと。
 つまり、何がいいたいかというと、そういうまとめ役っていうのは、積極的に何かをするってわけではなくて、いや、してもいいんだけど……いざという時にさっと動くのはいいけど、普段の、本当の役割は、黙ってみんなを見守ることだって、まーねーがいっていて……」
 一族の行く末と学校の部活とではスケールに差がありすぎるし、論旨は蛇行し、お世辞にも理路整然とはいえないしゃべり方、では、あったが……それでも、荒野には、なんとなく栗田が言いたいことが、了解できた。
「荒野は、高望みしすぎるの」
 今度は茅が、ぽつんと呟く。
「今までも、うまくいきすぎているくらいなのに、それ以上を、望んでいる」
「……そういう風に、いわれちゃうと、あれなんだけど……」
 荒野としては、苦笑いを浮かべるより他、ない。
 茅が指摘する通り、「今まで、うまくいきすぎている」側面は、否定できないのだ。
 荒野は天井の方に視線を向けて、
「……ここまでうまくいっているから、かえって、さらに上を望んじゃうのかもな……」
 などと、呟く。
 いろいろな意見を聞いて、若干ではあるにせよ、心理的にも余裕が出てきた。
「これだけ難しい状況。どこかで失敗しても当然」
 茅は、平坦な口調で続ける。
「それを、パーフェクトにやろうとする荒野は、欲深い」
「そうか」
 荒野は、茅の言い方に、思わず吹き出しそうになる。
「おれは、欲が深いのか……」
 自分の言動を客観的に観ること……観ようとすることは、意外に重要だな……と、荒野は思った。
「……さて、欲深いついでに、冷める前にご飯、食べちゃおう」
 舞花が、故意にはしゃいだ口調をつくって、みんなを即す。
「せっかくの、茅ちゃんと二人での、共同製作なんだから……」
 そういえば、話すのに夢中で、みんな、箸が止まっていた。
 四人はなんとなく顔を見合わせて頷きつ合い、中断していた食事を再開する。それ以降の会話は、学校のこととか今日の料理のこととか、つまり、いちもと同じような他愛のない内容に移っていた。
 メニューは、カレイの煮付け、だし巻き玉子、ひじきとかいわれ菜の和え物、肉じゃが、きんぴら牛蒡、大根とわかめの味噌汁。このうち、だし巻き玉子と肉じゃがが舞花の作で、残りは茅の手による。
 三島に料理を習った都合で、茅のレパートリーは和食が中心となっており、普段の夕食も、ほとんど和食だった。荒野も、もともとあまり食べ物には拘りがある方でもなかったが、今ではすっかり和食に馴染んでいる。
「……うちのおやじが好きなものばかり作ってたら、どっかの居酒屋のメニューみたいなのしか作れなくなっていた」
 などという舞花は、父親と二人暮らしが長いので、必要に迫られて自炊を憶えたクチだった。


1000タイトル、君は制覇できるか!?月額1480円!SODの見放題!

[つづき]
目次



彼女はくノ一! 第六話 (116)

第六話 春、到来! 出会いと別れは、嵐の如く!!(116)

「……お前ら……なぁ……」
 楓と梢の会話を耳にしていた舎人が、深々とため息をつく。
「……あれが、正常な状態だとでも、思っていたのか……。
 もしかして?」
 そういって舎人はさりげなく顎を動かし、相変わらずリーディングの教授を行っている、イザベラと香也、現象の三人に注意を向ける。
 グローバルに展開していて、日本にはあまりいない筈である姉崎のイザベラ、一般人以外の何者でもないの香也、六主家の中でも断然少数派である佐久間の中で、さらにイレギュラーな存在である現象……の三人が、仲良く教科書の内容を朗読している光景というのも……。
「……やっぱり……」
「……滅多にないこと……ですよね……」
 楓と梢は、どちらともなくそんなことを言い合い、頷き合う。
 それでも、楓の方は、荒野が示した「一般人と一族の共存・融和」という方針を受け入れてから、それなりの月日を経ているので、まだしも感じている違和感は少ない。
 しかし、梢の方は、一族の中でもことさらに正体を秘匿することで知られている佐久間の一員であり……。

『……ひょっとしたら……』
 現象と同年配……ということ以外に、「若さからくる順応性の高さ」も、今回の仕事に梢が抜擢された理由なのかも知れない……と、ここに来て、はじめて梢は思い当たった。
 何しろ、いつ終わるとも知れない長期に渡り、なおかつ、一般人や田の一族の者の目に、公然と姿を現し続けなければならない仕事である。
 自分が選ばれた理由として、梢は、自分が「たいした実績もないから、切り捨てても惜しくない」存在であるから……と、勝手に納得していたのだが……それ以外に、「佐久間」としては、前例のない環境に置かれる仕事なので、精神的な柔軟さをまだ残している年代の自分が選ばれたのではないか……と、はじめて気づく。
 今までは……この土地での情報収集と「現象の監視」という本来の仕事、それに、新しい環境に適応するのに目一杯で、そこまで落ち着いて考えたことはなかったが……。
 荒野も、他の一族たちも……それに、現象も……それぞれに自分の立ち位置を弁えた上で、「これからの在り方」を、必死に模索しようとしている。
 少なくとも、ここ数日、梢が見聞した範囲内では、そう見えた。
 中でも、梢の監視対象である現象が、一番熱心に自分を変えようとしている……ように、見える。
 この土地に来てからの現象は多忙だった。
 見ること、聞くこと、体験すること……その全てを吸収しようという、貪欲さを、ずっと保っている。
 佐久間や一族の在り方に批判的な思想を持ち、かつ、反抗的な態度も隠そうとはしない現象個人のことは、梢はどうしても好きにはなれなかったが……それでも、現象が、並々ならぬ熱意を持って自分自身の強化を図っていることは、認めざるを得ない。
 現象が「努力家」である、とういうことは、ここ数日行動を共にしていた梢にしても、否定できなくなっている。現象は、自分の可能性を広げることにはひどく熱心な努力家であり、ことに、「新種」の一員であるからか、身体能力や体術方面での成長ぶりは、めざましいものがあった。
 この調子で現象が様々な技を学び、体力を向上させていけば……遠からず、佐久間だけでは、つまり、他の六主家の協力を仰がなければ、現象一人を押さえつけることも、ままならなくなるだろう。
 もともと、佐久間は、身体能力方面に関しては、他の一族に大きく遅れを取っている。
 佐久間本家へは、定時報告の他に、詳しい報告書を一日に一度か二度、メールで送信しているので、不穏当な言動をして憚らない現象の不遜な態度も、急激な成長ぶりも……佐久間本家は把握している筈であった。本家が「梢一人で荷が勝ちすぎる」と判断されれば、じきに増援が来るだろう。
 梢は、現象の監視と報告しか命じられておらず、それにプラスして、自発的に、何かあるごとに、さりげなく現象へ有形無形のプレッシャーをかける……ということをしている。もっとも、その「自発的行為」は、梢がまだしも控えめだったからか、それとも現象が図太くてまったく意に介していないからか、思ったような効果はないようだったが……。

「……まぁ、異常でもなんでも、ああやって平和にしている分には、とやかくいうつもりもないけどな……」
 舎人の呟きで、梢は短い物思いから、我に返る。
「……現象のあれは……ここの雰囲気か、それとも、荒野への対抗意識か知らないが……今の時点では、どちらかというと歓迎すべきだと思うしな……。
 あれはあれなりに、自分と周囲の状況を考え合わせて、周囲の状況の方に、自分を合わせ、自分の行き先を、手探りで捜しているわけだし……」
 舎人は、自分に言い聞かせているのだな……と、梢は感じる。
 表面上、舎人は現象のことをいっているのだが……梢には、「お前は何を考え、何を求めている?」という問いを、突きつけられているような気がした。
 これまでのところ、梢は……自身が「佐久間の一員」であること、それに、与えられた任務をまっとうすること……くらいしか、念頭にない。そのことに、疑問すら、抱かなかった。
「佐久間」という閉鎖的な社会の中だけで過ごしていれば、自然、そうなってしまう。
 しかし……この土地に来てからは、現象が見聞してきたことはだいたい、梢も見聞してきた。
 ここで……新しい一族の在り方を模索している、荒野や、他の一族の様子を。
「……わたし、最近……」
 ぽつり、と、楓が小さな声を漏らす。
「……加納様に、自分で考えて行動しろ、って、いわれることが多くて……。
 でも……わたし、今まで誰か上の人にすることを教えて貰って、その命令に従うことしか知らなかったから……いまだに、どうすればいいのかよくわからないことがあって……」
 戸惑いがそのまま滲み出ているような、いかにも自信がなさそうな、か細い呟きだった。
 その言葉に、梢ははっとする。
 楓の言葉は、梢の思考と重複するところがあった。
 物思いに沈んだ調子だったので、楓にしてみれば、あくまで「ひとりごと」であり、返答を期待して……の、ものではなかったのだろう。
 梢は、いつかの夜、現象や舎人と目撃した、「最強」と楓の「練習風景」を思い出す。
 あの時の楓の動きに……梢は、戦慄しか感じることが出来なかった。


あの頃の若さを取り戻す!!究極のED(勃起不全)革命的商品【ラブアゲイン】

[つづき]
目次

↓作品単位のランキングです。よろしければどうぞ。
HONなび

DMMアダルト ダウンロード美少女ゲーム 「人妻女医 理子」
DMMライブチャット (アダルト&ノンアダルト)
DMMアダルト 同人通販
DMMアダルト 電子書籍の販売

「髪長姫は最後に笑う。」 第六章(374)

第六章 「血と技」(374)

 雨も降っていることもあり、それ以上、会話が弾まないまま少し足早にマンションへと向かう。
「……おっ。
 おにーさんたち……」
 そして、マンションのほど近い路上で、飯島舞花と栗田精一の二人と遭遇した。二人のうち、舞花の方は荒野たちと同じマンションに住んでいるわけで、「偶然」ではあったものの、決してあり得ない邂逅ではない。
「なに? 買い物の帰り?」
「ああ。そう」
 荒野はそっけなく返答する。
「これから、夕飯の仕度。
 そっちは……勉強、か……」
「まあ、一応」
 舞花が、屈託のない笑みを見せる。
「気分転換も兼ねて、外でご飯でも食べようかと思ったところ。
 昨日からずっと、部屋に籠もってお勉強していたからね……」
 この二人が週末や休日、舞花の家に入り浸っていることは周知の事実だし、規範的な学生たらんとして、二人して真面目に勉強をすることもあるらしい。明日からは期末試験がはじまるので、舞花の話しも別に嘘というわけではないだろう。
「……それでは……」
 唐突に、茅が口を開いた。
「……ちょうどいいから、うちに来るの。
 どうせ、これからご飯を作るし、二人分も四人分も、手間はそんなに変わらないの」
「……おや、まぁ……」
 舞花は、小さく呟いて、栗田と顔を見合わせる。
「……そっちさえ、よかったら……こっちは、別に異存はないけど……」
「……まーねー。
 せっかくだから、ご馳走になろう……」
 珍しく戸惑った様子を見せる舞花に、栗田が話しかける。栗田はこれで、鈍いわけではない。もっと大勢の時ならともかく、この四人だけの時、食事に誘われる。それも荒野にではなく、茅から……という事実の裏に、何事かあるのではないか……と、想像しはじめていた。
「何か、話しがあるのかも知れないし……」
 それでなくとも、荒野たちの境遇は微妙、かつ、特殊である……ということを、舞花や栗田は、知っている。自分たちのような平凡な、年端もいかない学生に出来ることは少ないのであろうが……荒野たちに協力できることがあるのなら、力になりたい……という心理も、この二人には共通していた。
「そう……だな」
 舞花は、ほんの数秒ほど何かを考える表情になり、その後、きっぱりとした口調でいった。
「そうと決まれば、わたしたちも、荷物持つよ。
 料理も、手伝うし……」
 舞花と栗田は、荒野たち二人からいくらかの荷物を分けて貰い、荒野たちと一緒に、出てきたばかりのマンションに戻りはじめる。

 四人で荒野たちのマンションに入ると、茅はリモコンで暖房を入れ、真っ先にお湯を沸かして、お茶をいれる準備をはじめる。今頃、一年で一番冷え込む時期でもあり、四人の身体は冷え切っていた。
 荒野は運び込んだ荷物をとりあえずキッチン・テーブルの上に置き、茅の指示に従って、すぐに使うものだけを残し、手慣れた挙動で冷蔵庫の中に格納していく。
 舞花は、茅とこれから作る料理について相談しながら、買ってきたばかりの食材に包丁をいれはじめた。仕事で不在がちな父親との二人暮らしが長い舞花は、自炊歴も相応に長く、手つきも手慣れていた。
「はいはい。
 キッチンもそんなに広くないし、男子は向こうで休んでいて……」
 荒野と栗田、男子二名は、早々にキッチンからリビングへと追い出された。追い打ちをかけるように、茅が、入れ立ての紅茶を二人の前に持参して、すぐにキッチンに戻る。
「……それで、なんかあったんですか?」
 茅から手渡されたティーカップをソーサーごと両手で抱えながら、栗田は、心持ち声をひそめて荒野に尋ねた。そろそろ、暖房が効きはじめている。
「なにかあった、といえば……こっちの回りでは、いつもいつも何かしらはあるんだけど……」
 荒野は、キッチンに並んで立って本格t的に料理をはじめた茅と舞花の背中に漠然と視線をやりながら、珍しく歯切れの悪い言葉を並べた。
 実際、昨日などもホン・ファ、ユイ・リィ、ジュリエッタらの海外姉崎組の乱入があったばかりであり、「常に何事かが起こっている」のが、荒野の日常である……と断言しても、過言ではない。
「……だけど……」
 栗田は、荒野のためらいを、容易に見抜く。
「……そういう細かいこととは別に、何か大きな悩み……っていうか、考え事がある、と……」
 荒野は、栗田の顔をまじまじと見つめた。
「……おれ、徳川さんみたいに頭よくないし、有働さんみたいな問題意識も持ってないっすけど……頼りないっつうか、実際、あんまり力にはなれないでしょうけど、それでも、話すだけで気が楽になることも、あるんじゃないっすか?」
「そう……だな」
 荒野は、軽くため息をついた。
 今の自分は、栗田のような一般人の性根からみても、途方に暮れて悩んでいるように見えるのだろうか……。
「……まあ、そんなこんなで、そっちも知っての通り、こっちではいろいろあるわけで……」
 軽くため息をついた後、荒野はゆっくりと順序立てて、今までの出来事と現在の荒野の境遇、それに、思惑や戸惑いなどについて、栗田に説明していった。同様の説明は、昨夜、お隣りの狩野真理にしたばかりだったし、その真理よりは、栗田の方が、荒野たちの周辺事情について、知っていることが多いので、端折れる部分も多く、途中から、少し手の空いてきた舞花が口を挟んできたり、栗田がより詳しい説明を求めて来たりしたが、夕食の準備が整う頃には、一通りのことを説明し終えることが出来た。

「……よく、わかんないだけどさ……」
 四人でキッチン・テーブルを囲み、できたての料理に箸をつけるようになると、舞花は、開口一番、荒野にそう尋ねる。
「それでおにーさんは、一体何を悩んでいるわけ?」


1000タイトル、君は制覇できるか!?月額1480円!SODの見放題!

[つづき]
目次

アダルトアフィリエイト

彼女はくノ一! 第六話 (115)

第六話 春、到来! 出会いと別れは、嵐の如く!!(115)

「……なんじゃ、これは……」
 しばらく、香也と楓が肩を並べて勉強に専念していると、突如、ぬっと赤毛を割り込ませるようにして、イザベラが二人の間に強引に隙間を作ってきた。
「……おー……」
 イザベラは、血走った酔眼を炬燵の上に広げられた教科書やノートの上に走らせ、
「これは……学校の、テキスト……かぁ……」
 などと、呟く。
 そして、いまだ酒臭い息を吐き出しながら、「うひゃひゃひゃひゃ」と笑い声を上げはじめた。
 香也たちの教科書に書いてある内容は、文法的にはともかく、ネイティブのイザベラにいわせれば、「おおよそありえない内容」の連続であり、そのナンセンスさが、酔いの残っているイザベラの脳を刺激している。
「ちょっと、もうっ!」
 楓が珍しくむっとした表情で、強引に割り込んできたイザベラの肩に手をかけて、後に引き戻す。
 楓の性格では、真面目に取り組んでいる勉強の妨害行為には、厳しい態度で臨むことになる。
「……いや。すまん、すまん。
 別段、悪気はないんじゃが……」
 イザベラは、弛緩した笑顔を見せながら頭を掻き、素直に謝ってみせた。
「いいですからっ!
 眼が醒めたのなら、顔でも洗ってきてくださいっ!」
「……うぃーっす……」
 イザベラが気の抜けた返事を返すと同時に、声を聞きつけた真理が居間に顔を出し、
「……あら、起きたの?
 ご飯、食べられます?」
 などといいつつ、イザベラを洗面所に案内しだした。
 もう一人の泥酔者であるジュリエッタは、いまだ部屋の隅で一升瓶を抱えて布団にくるまれながら、無邪気な寝顔を見せていた。

 顔を洗って居間にかえってきたイザベラは、真理の用意したトーストとインスタント・コーヒー、ポトフの朝食を盛大にかきこみながら、「すぐ返すから」と楓から教科書を借りて、パラパラとめくり、
「……おぉーっ……」
 と、何故か感歎の声をあげてから、先の言葉通り、教科書をすぐに楓に返す。
「……なるほどのぉ。
 日本じゃ、こういう教材になるんじゃのぉ……」
 妙に感心した声をあげながらそんなことをいい、
「……なんだったら、お手伝いしようかの?
 わし、いちおー、ネイティブじゃけん……」
 などと提案してくる。
「それは……。
 その、そうしていただければ……」
 楓の対応は、らしくもなく、歯切れが悪い。
「……こういうのあれじゃろ? こっちじゃ、一宿一飯の義理とかいうのじゃろ?
 ばっちゃんは、そげにいうとったが……」
 そんあことをいいつつ、イザベラは旺盛な食ををみせて朝食を平らげている。

「……はぁー。
 食った食った……」
 食後のコーヒーを飲みながら、イザベラは満足そうな声をあげ、
「……どれ」
 と、再度、楓から英語の教科書を受け取る。
「……姉崎のモンは、各地で現地に溶け込むんを身上としとる。
 語学は、アイデンティティの根幹に関わるスキルなんよ……」
 と前置きしてから、
「……こげなもん、理屈の前に、身体で覚えこませる!」
 と言い切り、教科書の内容を流石に流麗な発音で、一気に読み出した。
 区切りのいいところまで読み終えると、そこで一旦、止め、
「……今度は、ワン・センテンスづつ細切れに、ゆっくり読むから、続けて復唱する」
 といい、いった通りのことを実行した。
 香也と楓、それに、現象と梢までもが、何故か素直にイザベラの言葉に従い、イザベラの朗読に続けて復唱する。
「……うむ。
 こっちのおなご組は、問題なか」
 復唱を聴いたイザベラは、偉そうな口調でそう断言し、香也と現象に向かい、今度は一人づつ、教科書を読ませ、単語一つ一つの発音を直していった。
 日本語にはなくて英語にはある発音は多く、香也と現象も、そこを徹底的に繰り返し指摘され、「そうではなくて、こう」と、実演混じりで修正される。
 いつのまにかイザベラが場の主導権を握っていた形だが、教授法は意外と正当派であり、また、イザベラの態度も、意外に熱心でもあった。
 確かに、これだけしつこく繰り返せば、いやでも憶える。
 ……強引なところはあるけど、悪い人ではないのかも知れない……と、楓は、イザベラについて認識しはじめる。

「……お茶でも、いれましょうか?」
「……そう、ですね。
 なんか、邪魔しちゃ、悪いですし……」
 香也と現象の指導をイザベラが買って出たことで、なんとなく暇になった楓と梢は、どちらともなくそんなことをいいだす。
 楓も梢も、語学に関しては、すでにしっかりとした教育を終了しており、少なくとも学校で習うレベルのことは、楽々とクリアしている。
 イザベラが香也たちの指導をしている間は、二人とも手持ち不沙汰になるのだった。
 二人は急須と湯呑みを用意し、自分たちの分と、それにもっと前から成り行きを見守っていた舎人の分まで含め、三人分のお茶を用意して、本格的に休憩の体勢に入った。
 梢と舎人は「現象の監視」が本来の任務であり、この場から離れられない。楓は、香也がここにいる限り、ここを離れるつもりはない。
「……なんか、おかしなことになってますね」
「……本当に……」
 楓と梢は、勉強の邪魔にならないように、小声になってそんなことを囁きあいはじめる。
 二人は当然、お互いの顔と立場を知り合ってはいたが、この組み合わせだけでじっくり話し合う機会は、これがはじめてのことだった。


あの頃の若さを取り戻す!!究極のED(勃起不全)革命的商品【ラブアゲイン】

[つづき]
目次

↓作品単位のランキングです。よろしければどうぞ。
HONなび


「髪長姫は最後に笑う。」 第六章(373)

第六章 「血と技」(373)

「荒野は、自分の価値を過小評価する傾向があるの」
 つまり荒野は、一族とこの土地の一般人、のみならず、一族と茅たち新種を繋ぐ架け橋的な人材であり……荒野自身が自認している以上に、重要なポジションにいる……と、茅は指摘する。
「茅や、あの三人は、一人一人を比べたら、他の一族以上のことが出来るのかも知れない。
 だけど、それは、必ずしも茅たちが一族よりも優位に立っていることを意味しない。
 その関係は……ちょうど、一族と一般人との関係に、類似している」
「数と、社会性……だな」
 茅の言葉に荒野が頷いた時、商店街のアーケードに到着した。二人は傘をたたみ、しばらくは買い物に専念する。人目がある場所で一族関係の話しをする必要はないし、この商店街の人たちともすでに顔なじみになっているので、買い物がてらに足を止め、軽く世間話をしながらの買い物になる。その分、時間はかかるわけだが、日常の場でのこうしたコミュニケーションが自分たちの心証を良くし、今後何にかしら事が起こった際、荒野たちの助けになる……ということも、荒野は当然計算した上で、愛想よく振る舞っている。もっとも、このような状況になくても、他人の警戒心を呼び覚まさないよう、穏やかに振る舞うことは、荒野にとっては、幼少時より身に染みつけた、ごく自然な態度ではあるのだが。
 そうして時間をかけて二人で両手に持てるだけの食材を買いあさり、さらに最後にマンドゴドラによって店長と軽く立ち話しをし、食後のデザートを調達して帰路についた。マンドゴドラの店長はネット通販の売り上げが好調だとかで多忙そうでもあり、また、相変わらず荒野たちから代金を貰おうとしないのだった。
 傘をさしながら、それなりの重量になる荷物を抱え、その上にマンドゴドラで頂いたケーキの箱を置く……という体勢も、荒野にとってはたいした負担になはならなかった。茅も、荒野ほどではないが、両手に大きなポリ袋をぶら下げた上で傘をさしている。並んでいる荒野の荷物の量と比較するとそれほどえもない感じだが、それでも、生野菜や肉、魚などをぎっしりと詰め込んだ袋を両手に抱えているのだから、重量的には決して軽い荷物ではない。が、最近の茅は体力的にも筋力的にも、以前よりもかなり増強してきているので、あまり苦にしている様子でもなかった。テン、ガク、ノリの三人や一族の関係者と比較すればまったく意味がないほどの成長、ではあったが、荒野の目から見ても、今の茅の身体能力は、同年代の一般人少女たちよりも、よっぽど優れているように見える。
 こうした茅の成長は、ごく短期間のうちに行われた……ということを考慮すれば、瞠目して然るべき現象だった。なにしろ、茅は、この年末までひきこもって生活していた娘、なのだ。
『……まわりに引きずられた、というのはあるだろうけど……』
 それを割り引いても、三ヶ月経つか経たないかのうちに、ここまで……というのは、一族の基準に照らしても異常といえた。そもそも、一族の場合は、「成長の早さ」をあまり重視していない。特にまだ身体が出来上がっていない成長期には、無理をせずに、慎重に「鍛える」伝統がある。
『加納の因子が、強く働いているのかなぁ……』
 加納の者は、一般人でいう第二次性徴期を、ごく短期間のうちに終え、身体を急激に成人させる。茅の場合、ホルモンバランスとかの関係で、それらの性質がたまたまうまく作用していた……ということなのかも、知れない。
 三島や涼治が手配して定期的に身体検査をしている医師たちが何もいってこない、ということは、いまのところ、マイナスの影響がない……ということなのだろうが、一度、三島の意見も聞いておこう、と、荒野は思った。
「……ねえ、茅。
 さっきの話しの続きなんだけど……」
 商店街からしばらく離れたところで、荒野はそうした思考を打ち切り、先ほど中断した会話を再開する。
「……今現在、おれがここで平和に暮らしている……というのをアピールするのが重要だというのも、おれのスポークスマンとしての役割が重要だ、というのも、わかった」
 そもそも、「加納本家の跡取り」として教育されてきた荒野は、交渉やネゴシェイターは、荒事と並んで得意とするとこであり、今後そうした「仕事」が増えるというのであれば、歓迎したい気分もある。
 茅は、黙って頷いて荒野に話しの先をうながす。
「だけど……。
 おれ、正直にいって……今の状況を……一族とか、茅たちを……それに、一般人社会の中でのおれたちを……どうすればいいのか……よく、わからないんだ……。
 その……将来的に、どうしたいっていうビジョンが、ないっていうか……」
 荒野は率直に告白する。
 そもそも……ごく最近になるまで、荒野は、「一族の将来」などということを自発的に考えたりしなかった。それどころか、この土地に来るまでは、目上の大人たちの指示に従っていさえいれば良かった。その指示の中には、荒野の感覚ではかなり理不尽な内容もあったが……疑問に思い、嫌悪感を抱きつつも、結局は、荒野はその指示に従ってきた。
 それまでの荒野は、歯車の一つであり、一兵卒であり……要するに、「自分の判断」を必要とされない立場であったわけだが……今は、違う。
「……おれ一人で抱え込むには……ちょっと重すぎる、問題だよな……」
 少し間を置いて、荒野はそう続ける。
 半ば以上、独白……ではあったが、
「荒野ひとりが抱え込む必要はないの」
 茅の返答は素早く、小気味がいいほどだった。
「ここには、大勢の仲間がいる。茅もいる。
 荒野は、一人ではないの」
「……そうか……」
 荒野は、不意をつかれた気分になった。
「おれは……もう、一人では、ないのか……」
 茅としては、当然すぎる事実を指摘しただけ……なのかも知れない。
 が、荒野にしてみれば、その一言で突然、視界が開けたように感じた。
「みんなで、考えればいいのか……」
「……そう」
 荒野が何気なく漏らした呟きを、茅は、聞き逃さない。
「ここには、大人もいれば子どももいる。
 一族もいれば、一般人もいる。
 その中には、一族の存在を知っていて、荒野の立場を理解してくれる人も、大勢いる……」
 ……荒野は一人ではないし……それどころか、かなり自由に「未来」を変革することが可能な立場にいる……と、茅は、淡々とした口調で指摘した。


1000タイトル、君は制覇できるか!?月額1480円!SODの見放題!

[つづき]
目次


このページのトップへ