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「髪長姫は最後に笑う。」 第六章(388)

第六章 「血と技」(388)

『……随一の、曲者……かぁ……』
 風呂場で茅の髪の手入れをしながら、荒野は源吉がいった言葉を脳裏で反芻している。
「荒野」
 そんな荒野に、茅が、言葉をかけてきた。
「何か、考えている?」
 茅は、荒野のことは普段からよく観察しているし、些細な変化も見落とさない。
「ん……。
 ああ」
 荒野は少し考え、「隠すほどのことでもないか」と思い、素直に話すことにした。
「源吉さんがいっていた、おやじのこと。
 曲者って……どういう意味なんだろうな、って……」
 目下のところ絶賛行方不明中である仁明が、そのうちひょっこりと姿を現すこともある……とかいって、源吉はそれ以上、詳しいことを教えてくれなかった。
「なに。
 加納の者がしばらく姿をくらますのは、珍しいことではありませぬ……」
 荒野に変な先入観を植え付けたくない……ということなのだろう、と、荒野は源吉の意図を、そのように解釈した。
 荒野も仁明も加納である以上、存命でありさえすれば、いつか、実際に顔を合わせるここともありえる……ということを、源吉はよくわきまえているのだろう。源吉は、同胞に会った経験がほとんどない荒野よりも、よっぽど「加納の者とつき合う」ということを、肌で知っていた。
「荒野……仁明のこと、気になる?」
 荒野にリンスさせていて茅が、顔だけ背後にむけて尋ねる。
「なる……ようだね。どうやら……」
 荒野は、言葉を濁す。
 具体的な人物像に、興味や関心がある……というより、明確なイメージが未だに掴めないでいるからこそ、引っかかりを感じている……という状態も、「気になる」ということにはなるのだろう。
 そうした心理を茅に隠しても、意味がない。
「おれ、おやじのこと、どう思えばいいのか……どういう感情を持てばいいのか、よくわからないし。
 そもそもおれ、普通の親とか家族とか、よくわかんないし……」
「気にしても、しかたがないの」
 茅は、背を反らして濡れた頭を荒野の胸板に押しつけた。
「仁明は仁明だし、荒野は荒野なの」
「そう……なんだけど、ね」
 荒野は茅の頭を掌で軽く叩いた。
「いつもは何かとバタバタしているから、気にかける余裕がないけど……何かの拍子に、気になってくる。
 今日も、おれ……なんでかわからないけど、源吉さんならおやじと顔会わせていてもおかしくないなぁ……って、思いついて、気づいたらおやじのこと、聞いてた」
 荒野にしてみても、自覚している以上に、気にしている……ということ、なのだろうな……と、判断せざるを得ない。
「それでいいと思うの」
 茅は、荒野の胸に体重を預けながら、いう。
「茅にも、家族とか親子とかのこととか、よくわからないけど……自然なことだと思うの」
「なあ、茅」
 多少、勇気づけられた荒野は、改めて茅に問いなおしてみる。
「源吉さんは曲者っていってたけど……おやじ、どんなやつだった?」
 以前も同じようなことを聞いたことがあったが……その時はまだ茅と一緒に住みはじめたばかりの頃で、荒野の側にも詳しいことを聞きだす精神的余裕がなかった。
「仁明、は……」
 茅は、言葉を区切った。
 茅にしてみれば、珍しいことだが……何事か、頭の中でいうべき内容をとりまとめている感じだ。
「……一言でいうと、仁明は……とっても、変わっていたと思うの。
 今にして思うと……」
 そういえば……仁明が、茅を、特撮オタクにした張本人であることを、荒野は思い出していた。
 荒野の中で「仁明=変人」という評価が、どんどん確固としたものになりつつある。
「……それよりも、荒野。
 仁明のことなら、荒神がよく知っていると思うの」
「あっ」
 いわれてみれば……知っていない筈がない、のだった。何しろ、荒神からみれば、姉の夫……義理の兄に当たる。
 それなりに親交があった……みたいなことは、ちらほらと荒野の耳にも入ってきていた。
 ただ……。
「……いや。
 そっちの線は、駄目だ。
 どうにも、その……当時の、おやじのことを知っていそうな人に、おれが聞くと……みんな、困った顔をして、詳しいことを教えてくれないんだ……」
 今にして思うと……あれは、誰かに口止めされていたのではないか?
 例えば……。
『最強が、届かなかった……って……』
 昼間、源吉が、そうんなことをいっていたが……。
『あの荒神が……敵わなかった?』
 と思いかけ、そのすぐ後に慌てて「いや、まさかな」と、その想像を打ち消す。
 荒神の実力のほどなら……荒野の骨身の隅々にまで染み着いている。
 あれ以上の人間が実在するとは……荒野には、想定も想像もできなかった。
 昼間、源吉がいっていたのは……おそらく、何かの言葉のあや、みたいなものだろう。そう考えるのが、常識的な判断というものだ。
 荒野は一人でそのように納得することにした。
「……今の荒野……」
 気づけば、茅が荒野の胸に頭を預けた形で、下から荒野の顔をみつめている。
「……とても、面白い顔になっているの。
 ころころと表情が変わっていて……」
「……髪、シャワーで流しまーす……」
 もちろん、荒野はその場を誤魔化して凌いだ。
「ほらほら。
 こんなところでいつまでもぼーっとしていると、風邪ひきますよー……」

 平穏といえば平穏だったが、荒野にしてみれば妙に気疲れのする一日となった。
『……今週一週間、試験を受ければ……』
 登校をする必要があるのは、終業式の一日のみ。試験さえクリアすれば、実質、三学期は終わり、荒野と茅にとっては初めての長期休暇に突入する。
 通学する前は懸念事項ばかりが多く、不安に思うことも多かったが、そして、いろいろな事件が起こりすぎてお世辞にも「無事に」とはいい難いが……この分だと、どうにかこうにか、一学期分の学校生活を終えることができそうだ。
 寒さ的には、今が一年で一番寒い時期だというが、もう少し我慢すると、徐々に春らしくなっていく……のだ、という。少なくとも荒野は、そう聞いている。
『……こうして、茅と一緒に……』
 日本の四季を感じ、年齢を重ねていきたいものだ……と、茅の髪の手入れをしながら、荒野は思う。
 まだまだ……前途多難、ではあるのだが。


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彼女はくノ一! 第六話 (129)

第六話 春、到来! 出会いと別れは、嵐の如く!!(129)

「最初は、足を止めて相手の出方をみて……」
「……師父の時と同じパターンだ……」
 ホン・ファとユイ・リィは日本語でそんな会話をしている。師父からも、普段から出来るだけ現地の言葉を使えといわれているし、この土地での身元引受人であるシルヴィからも念を押されている。
「……わたしと違って、外見的にはあんたちは日本人と区別がつかないんだから、そのままとけ込むように心がけなさい……」
 とのことだった。
 ホン・ファとユイ・リィの日本語は、アクセントに多少難はあるものの、日常会話程度なら問題のないレベルだった。
「……最強の弟子は……まだまだあんなもんじゃねーぞ……」
 フー・メイとジュリエッタの「じゃれあい」、それに、楓と荒神の「練習」の両方をみたことがある現象が、二人の会話に口を挟む。
 その時の現象の額には、冷や汗が浮かんでいた。
「……楓さん、そんなに凄いん?」
 今度は太介が、現象に問いかけた。一応、現象の方がひとつ年上だったが、舎人から練習相手を頼まれている関係もあって、砕けた口調でのやりとりとなっている。
 この場にいる人間で、「楓の本気」、つまり、荒神を相手にした修練を実見した者は、実のところかなり限られている。
 毎朝の河原での運動程度では、楓が本気を出す必要はまったくないのであった。
「……反則だ、あれは……」
 現象はそう答えた後、「……なんで六主家の出でもないあいつが……」とか、ぶつくさ小さい声で独り言を呟きはじめる。
『……この間みたのが、トラウマになっちまったかな……』
 背後でそのやりとりをみていた舎人は、顎を撫でながら少し考え込む。
 もともと現象は、抜き差しならないコンプレックスを多く抱えている。
 佐久間本家の直系である、という自負と、一族の人間としても、一般人としても、不完全な教育しか受けてきていない……という負い目とがない交ぜになって、現象の中に渦巻いている。
 その現象にしてみれば……。
『血統的には一族の出ではないのに、突出した才覚を示す楓は……』
 サラブレット的な出自とそれにふさわしい能力を示す荒野とは違った意味で、複雑な思いを抱いてしまう相手……に、なってしまうのだろう。
「あの人はこの前、接近戦は避けて飛び道具を使用する、といっていましたが……」
「それが通用しない、となったら……どうするのでしょうか?」
 ホン・ファとユイ・リィは、誰にともなく、そう問いかける。
「……楓おねーちゃんなら……」
 二人の問いに、答えたのは、ガクだった。
「どうすればいいのかわからない相手にぶつかった時、楓おねーちゃんなら……たぶん、もっとわけのわからない……誰も想像しないような手で、対抗してくるとな……」
「同感」
 ノリも、ガクの言葉に同意する。
「臨機応変に、どんな事態でもなんとかしちゃう、ってのが、楓おねーちゃんの強みだもん。
 孫子おねーちゃんの出方なら、なんとなく想像つくけど……楓おねーちゃんの場合は、こっちの想像以上のことをしてくると思う……。
 ほら……」

 六角の残数が心細くなる前に……臑の痛みがまだ我慢できるうちに……楓は、ジュリエッタに向かっていく。
 肩が柔らかく、平然と背後にも長剣を振るうジュリエッタには、死角がないのも同然だった。だからこそ、楓はジュリエッタの背後から、六角を打ち込みつつ、突進した。
 間合いを詰める数瞬の間に、ジュリエッタは後ろも見ずに、楓が投擲した六角を両手の長剣で正確に弾いていく。
 そう。それでいい……と、思いながら、楓は、無造作にジュリエッタに近づく。

「……あっ!」
 ユイ・リィが叫び声をあげる。
 上半身鎖帷子だけの半裸になった楓が、忍装束の上衣を、ジュリエッタの剣にぶつけて絡め取ろうとしていた。
 背後に腕を回していたジュリエッタは、急に発生した負荷の原因を探ろうと首を巡らし……そこで楓がやろうとしていることに気づき……一瞬、あっけに取られた後、破顔した。
「……はっ!」
 楓は、ジュリエッタの長剣二本をまとめて自分の衣服を包んで刃としての性能を殺し、しっかりと握りしめている。
「……はっはっはっ……。
 楽しーねー……」
 ジュリエッタは、本当に楽しそうに笑いながら、ぶん、と、楓が握ったままの長剣をものすごい勢いで「上」に振りあげる。
「あっ!」
 ジュリエッタの剣を離すまい……と力を込めていた楓は、不意に思わぬ方向に振り回され、軽々と頭上方向に舞い上がる。

「……本当だ……」
 太介と高橋君の目が、点になっていた。
「予想の、斜め上をいっている……」
 口々にそういった後、どちらともなく、
「でも……」
「有効だよな、対応策としては……」
 力なく呟いて、こくこくと頷きあった。

 上空に放りあげられてすぐ、楓は、鍵爪つきのロープをジュリエッタの長剣に投げつける。長剣を取り上げることはできなかったが、ジュリエッタの二振りの剣は、楓の上着に絡め取られ、ひとまとめになって刃物としては役目を果たさなくなっている。
 狙い違わず、ロープの先についた鍵爪が、布地が巻き付いた剣に、さらに巻き付く。
「ほいほーいっ!」
 それでも、ジュリエッタは焦らない。
 楽しそうな声を上げながら……。
「……うひっ!」
「ほほーいっ!」
 無用の長物になったはずの長剣を振り回して、ロープの端を握っている楓を、軽々と振り回しはじめる。

 ホン・ファとユイ・リィの下顎が、がくんと下がった。
「やっていることは、高度なのに……」
 シルヴィが、誰にともなく呟く。
「全然シリアスに見えないのは…何故?」

「ほいほーいっ!」
「うひぃぃぃー!」
 ジュリエッタに二週から三週……くらい、振り回されたところで、ようやく、楓の足が地についた。
 ここぞとばかりに、楓は、自分の足で猛然とジュリエッタの周囲を回りはじめる。
 うまくいけばロープでジュリエッタを拘束することができるはずで、そううまくはいかない場合でも、ジュリエッタに得物である剣を放棄させることができる筈……だったのだが、ジュリエッタは、剣を投げ捨てなかった。
 結果、ジュリエッタは、剣ごと、体にロープを巻き付けていく。


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「髪長姫は最後に笑う。」 第六章(387)

第六章 「血と技」(387)

 夕食が済むと沙織や源吉、酒見姉妹を見送る。
 流石にそれ以上、沙織を遅くまで引き留めておくわけにもいかなかった。源吉も、沙織を見送っていきたがったので、荒野と茅はエントランスまで帰宅する人々を見送った後、すぐに自室へと引き返す。
 玄関を入るとすぐ、茅は下から腕を伸ばし、荒野の首にぶら下がった。
「……おいおい……」
 荒野は苦笑いを浮かべながら茅の体に腕をまわし、茅の体を抱き上げる。
 茅も、両腕と両足を荒野の肩や腰に巻き付け、荒野にしがみついた。
「……茅さーん。
 みんなが帰ったからって、ちょっと甘えすぎですよー……」
 荒野は茅をぶらさげたまま、リビングの方に移動していく。
「……むぅ」
 茅はそんな声を出しながらも、ますます荒野にしがみつく腕や足に力を込めていく。
「荒野、先輩にばかり親切なの」
 茅は、いかにも不満げな声をあげた。
「……おいおい……」
 荒野は、軽く抗議する。
「おれ、先輩にそんな気になったこと、ないぞ……」
「わかっているの」
 茅の声には、まだ拗ねているような響きがこもっていた。
「でも……最近、荒野、茅のことあまり相手にしてくれないの」
 やはり……以前から感じていたこと、ではあったが……茅はこれで、嫉妬深い……らしい。
 ひょっとしたら、自分でもそうした感情をコントロールしかね、持て余しているのかも、知れない。
「相手にしてくれない、って……」
 そうした情緒は、あまり頭の良さに左右されない部分でだろう……と、荒野も、思う。
「今では、おれよりも茅の方が、忙しいくらいじゃないか……」
 茅をぶらさげたまま、とりあえず、あたりさわりのなさそうな話題を振っておく。
 普段の学校でも、茅は多忙なのだが……今日のように、放課後の課外活動が禁止されている試験期間中も、寸暇を惜しんで各種作業に勤しんでいる。ボランティアにしろ、学校の自習システムにせよ、中枢の主要な部分を茅が担当しているので、他の協力者たちよりも、少しでも先行しておきたい……という気持ちはあるのだろうが……。
「今の茅は、少しオーバーワーク気味なのかもな……」
 掌で軽く茅の背中を叩きながら、荒野はそういった。
 事実、ここ二、三日の茅は……少し前より、精神的に不安定になっているようにも、見えた。
 あるいは……。
「……荒野……」
 茅が、荒野の耳元で、囁く。
「茅……誰とも、違うの」
 あるいは、茅は……多くの人と触れる機会が多くなればなるほど、自分の異質さを、実感していっているのかも、知れなかった。
「……学校のみんなとも、一族とも、テン、ガク、ノリたちとも……。
 それに……荒野とも……」
「人は、みんな少しづつ違うんだよ」
 荒野は、考え考え、言葉を絞り出す。
 なにしろ茅は……ついこの間まで、自分と仁明しかいない環境で育ってきている。
 表面的には、驚くほどの適応力を発揮して、現在の環境を受け入れているわけだが……。
『……おれたちは、いろいろなことを……少し、急ぎすぎなのではないか……』
 荒野たちが学校に通いはじめてから、二ヶ月ほどしか経過していない。
 なのに、今では……茅は、さまざまな団体行動の中心人物となっている。
 いくら茅が、知能と適応性に優れているといっても……この環境の変化は、少し急激にすぎるのではないか……。
 荒野自身もその変化の渦中にあったため、改めて考える余裕が今まで持てなかったが……。
 以前から、瞬間的な判断力を求められることが多かった荒野と、ろくに他人というものと接してこなかった茅とでは……精神的な負担も、全然異なってくるのではないか……。
「ときどき……いろいろなことが、とても怖くなるの」
 茅が、囁く。
「……ああ……」
 荒野は、頷いた。
「おれも……同じだ」
 おれは……おれたちのやっていることは、本当に正しいのだろうか?
 という問いは、「一般人と一族の共存」というテーゼを採用した時から、常に荒野の胸中と脳裏にあった。
 仮に、その大目標が、公的に否定されるものだったとしても……今となっては、荒野も、それ以外の選択肢を選ぶつもりはならなかったが。
「おれも……とても、怖いよ」
「……荒野……」
 茅は、静かな声で荒野が考えているのと同じ事を指摘する。
「荒野は……茅のせいで……一族の、今までの生き方を……否定して、ねじ曲げようとしている……」 
「それは……そう……なんだけど……」
 荒野は、内心の動揺が声に出ないように努めた。
「でも、後悔はしていないよ。
 それに、別に……茅一人のため、ってわけでもないし……」
 本心……の、つもりでは、あった。
 だが……その本心からこぼれる些細な感情も、少なからず、あった。
「……茅……。
 おれたち……みんな違っていって……こんなにくっついていても……どこか、寂しいんだな……」
「ん」
 茅は、短く荒野の言葉を肯定する。
「茅も……ずっと、荒野と一緒にいるけど……。
 どんなに一緒にいても、どこか、寂しいの……」
 そういうと、茅は、腕と足にいっそう力を込めて荒野に密着した。
「やはり……。
 茅、少し、ナーバスになっているみたいだね……」
「……わかっているの……」
 茅は、荒野の肩の上に顎を乗せ、囁く。
「自覚は、あるけど……それでも、不安なの。
 荒野が……いつか、いきなり……どこかに消えちゃうんじゃないか、って……」
 茅は……仁明の消失、も、経験している……。
 仁明と二人きりで暮らしていたその当時の茅にとって、仁明とは……親代わり、というだけではなく、世界の大部分を構成する要素だった筈であり……。
 茅は、未だにその時の喪失感を……心の底から、払拭できないでいる……。
『……何をやっているんだよ、おやじ……』
 荒野は、内心で会ったこともない父親に毒づいた。 
 茅は……単純に嫉妬深い、ということだけではなく、当時の仁明と今の荒野を重ねあわせ、荒野がいきなりいなくなる、という仮定へ、恐怖を抱いている……よう、だった。
 荒野はしばらく茅をぶら下げ、棒立ちになっていたが……そのうち、どちらかともなく口唇を求めあっていた。


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彼女はくノ一! 第六話 (128)

第六話 春、到来! 出会いと別れは、嵐の如く!!(128)

「どちらも本気で、相手を殺すつもりでいきたまえ。
 でないと、自分が死ぬから」
 この対戦をマッチメイクをした「最強」は、にこやかに物騒なことをいい放つ。
「じゃ、はじめちゃって」
 と、ことなげに開始を宣言する。
 同時に、ジュリエッタが一足に距離を詰める。

「……速ぇ……」
 自身、野呂に属する高橋君が、うめいた。
「縮地、か。
 歩法も使うか、あの女」
 仁木田が少しだけ、目を細めた。
「見かけによらず、器用なことだ……」

 速い……と感じたときには、ジュリエッタは目前に迫っている。
 風圧が……前から、ではなく、左右から、楓に迫る。
 双剣。
 考えるよりも前に、楓は、前方に、跳ぶ。
 ぶぅん、と、両側から迫る長剣二振りの間をかいくぐり、楓は、ジュリエッタの懐に飛び込む形となった。
「ほっ」
 ジュリエッタは、自分に向かってきた楓の体を膝で蹴りあげる。
 真上に。
「……ひゃっ!」
 ジュリエッタの懐に入りクナイを振るおうとしていた楓は、不意に下から蹴りあげられた。楓は気の抜けた吐息を漏らしながらも、下から突き上げられたジュリエッタの膝を、自分の臑で受け止めている。
 楓の体が、不自然に上に浮く。
 胸元に突き立てようとしていた楓のクナイは、ぎりぎりジュリエッタの肉には届かず、刃先はジュリエッタの胸元わずかに斬りさき、顎をかすめただけだった。
 楓が体制を立て直した時には、ジュリエッタは楓から距離をとっている。
 ジュリエッタノ衣服の胸元ハ大きく避け、下着と白い肌が丸見えになっていた。
『……流石に……』
 師匠が、本気でいけ……というだけの相手ではある……と、楓は思う。いや、そんなことは、昨日のうちにわかっていたことだ。
 師匠がいっていた通り、油断をすれば……殺される。

「見えたか? 今の?」
「見えた。かろうじて」
 太介と高橋君の会話である。
 ごく一瞬の出来事だった。
 二人の目には、その場にいた大半の人々の目には、二人が迫って、離れた……としか、見えてない。
「なに、まだまだ手調べの、挨拶みたいなもんだ」
 仁木田が、口を挟む。
「いい機会だから、よく見ておけ。
 お前等の教材には、ちょうどいいかも知れん。
 それに……下手すれば長引くぞ……これは」

 楓が、姿を消す。
「気配を……」
 絶った。
 多くの術者が、息を飲む。
 一般人相手ならともかく……大勢の術者たちの視線をかいくぐり続ける……などという芸当は、そうそうできるものでもない。
「……はははははっー……」
 何が楽しいのか、ジュリエッタが、大降りな動きで両手に持った長剣を振り回す。
「カエデ、楽しいねー……」
 金属音とともに、長剣に弾かれた六角が四方八方に弾きとばされ、見物をしていた一族の者たちが軽い悲鳴を上げながら「流れ弾」を回避にかかる。
 そうなったことではじめて、姿を消したままの楓が、ジュリエッタに向け、多方向から六角を投擲している、ということが知れた。

「……楓おねーちゃん、マジだよ!
 マジすぎるよ!」
 ガクが、自分の前に飛来する六角を、シルバーガールズの手甲の部分で受け止めながら、叫ぶ。楓の六角は、複合素材の装甲に、次々とのめり込んでいく。
 みれば、ノリも、六節棍を振り回して届く範囲内の「流れ弾」を、無駄のない動作で弾いていた。
 初っぱなの体幹部、次に、気配を消した状態での飛び道具使用……どちらも、命中すれば相手の命を奪いかねない攻撃だった。つまり楓は、リーサル・ウエポンを解禁した状態で、ジュリエッタを「狩り」にいっている。
 テン、ガク、ノリたちを相手にするときは、ここまで危険な攻撃は行わない。また、孫子を相手にしている時のように、感情的になっているわけでもない。
 今の楓は、冷静な判断力を持って、ジュリエッタを「しとめる」ため、効果的な手段を選択していた。

「わはははははは……」
 その楓の「本気の攻撃」を、ジュリエッタは、楽しそうに笑いながら受け止めている。

「……うーん……」
 テンは、流れ弾の回避はガクやノリに任せ、じっと目を凝らし、ジュリエッタの動きを観察していた。
「無造作なように見えて、動きに無駄がない……」
 その場に留まって両手に持った剣を振り回すジュリエッタの動きは、一見したところ緩慢なようにみえるのだが……その実、背後や死角から飛来するものも含めて、楓が投擲する六角をすべて、弾いている。
「……剣が長いから、守備範囲も広くなっているけど……その分、小回りも利かなくなっている筈で……」
 にもかかわらず、ジュリエッタの動きにブレはないし、空振りもない。
 まるで、楓の攻撃を先読みしているかのような、確実な動きだった。
「イヤな扇風機だな、あれは」 
 仁木田が、ぽつりといった。
「少なくともおれは、あんなのを相手にしたくねぇ」

『……ああっ……』
 心中で、楓はため息をつく。
 先ほど、ジュリエッタの蹴りを受け止めた臑の部分が、ずきずきと熱を発している。初っぱなに、「足」を殺された。今のところ、足は、思うように動いてくれているが……すぐに、今のように動くことは出来なくなるだろう。
 最初に、ジュリエッタの接近を許したのは楓自身の油断であり、ミスであった。
 ジュリエッタのような、近接戦闘で分が悪い相手と相対している時に、機動力をそがれる……というのは、致命傷にもなりかねない。
『……六角も……』
 もう、残り少ない。
 そもそも、楓の投擲攻撃は、重い。通常の相手なら、仮に受け止めることが出来たとしても、手が痺れて握力が利かなくなる。ジュリエッタのような剣客相手には、効果的な攻撃……の、筈だったが……。
『……もう、弾切れになるのに……』
 楓の投擲攻撃を、ことごとく弾いているジュリエッタが、ダメージを受けているようには見受けられなかった。
 それどころか、息ひとつ、切らしていない。
 規格外の握力とスタミナがあるだけではなく……ジュリエッタの筋肉は、全体に、柔軟でもあるのだろう。でなければ、立て続けに楓の六角を受けて、その衝撃を逃がし続ける……などという芸当が、出来る筈もない。
 ジュリエッタの身体能力は、他の一族と比べても、抜きんでているようだった。
 おそらくは、荒野や荒神に匹敵する……とまではいわないまでも、迫るクラス。
 荒神があえて楓との対戦をしくんだ意図も、今では理解できるような気がした。


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「髪長姫は最後に笑う。」 第六章(386)

第六章 「血と技」(386)

「あ。おいし」
 一口、食べただけで、佐織はそう声をあげる。
 お世辞をいっている口調ではない。
「茅、カレーが好きだから」
 荒野はすぐに応じる。
「週に一回以上は作るし」
「むぅ」
 茅は、少しむくれた。
「うまいんだから、いいじゃないか」
 荒野は慌てて取り繕う。
「はい」
「茅様は本当に、お料理がお上手で……」
 なんだかんだで頻繁にこの部屋で食事をしていく酒見姉妹が、荒野の言葉に追随する。
 お世辞か本心か、といったら、どちらかといえば本心だろう。
「レシピに書いてある通りに作ればいいだけだから、料理は簡単なの」
 茅にとってはそうなのだろうな……と、荒野は思う。
「……これも、どこかにレシピが載っていたのか?」
 荒野は、真面目な顔をしてルゥを乗せたスプーンを持ち上げる。
 本日のメニュー。ひじきと白菜のカレー。
「茅のオリジナルなの」
「そうだと思った」
「和風だしのカレーというのも、なかなか乙なものですな」
 源吉も、しごく真面目な顔で頷く。
「カレーうどんの例からもわかるよに、カレーと鰹節は、案外相性がいいの」
 茅も、真面目な顔をして頷く。
「具は、いろいろ工夫した方が飽きないし、栄養的にもいいの」
「……確かに失敗しにくいけどね、カレー」
 この面子でカレー談義……という状況も、現在荒野が置かれている立場の複雑さを物語っている……ような、気がする。
「時に姫様。
 昼間のシステムのことですが、及ばずながらこの源吉もお手伝いさせていただきますぞ。
 昼間の説明でおおよその概要は把握しましたし、この姿を人目に晒すわけにはいきませぬが、ネットを介しての強力ならば、問題もないし造作もない」
 涼治が、そんなことをいいはじめる。
「……昼間のシステムって……学校のアレ?」
 沙織が軽く首を傾げた。
「学校のと、あと、地域ボランティアのも、源吉にみてもらったの」
 茅が沙織の問いに答える。
「コードはともかく、構想はなかなかのものです」
 源吉が、荒野に頷いてみせる。
「一般人との共生を目指す若の理念とも合致しますし……このまま参加人数が増え続ければ、実質、この町をすっぽりと覆う監視網としても機能する可能性があります」
「ボランティアの方、人数、増えているの?」
 荒野は、茅に確認する。
 源吉が指摘したことは、荒野が以前、考えたことでもある。期せずして同じ結論に達した、ということだろう。
「ぼちぼちなの」
 茅は簡単な説明をしはじめる。
「生徒の家族とか商店街の経由で、ペースはさほどではないけど、じわじわと増加しているの」
 現在は倉庫街の一部に点在する放置ゴミの処理を中心にやっているわけだが……宇働たちが中心になって分別方法のマニュアルをしっかりと整備したことと、二十四時間体制で数名の一族の者を配置して治安を維持し、ボランティアの人たちに的確な指示を出せるようにしたこと、電子予約制度で、参加する時間を自由に選択できるようにしたこと、ゴミが撤去された場所については、リアルタイムでネット上でレポートしているので、誰にでも進捗状況が確認できる透明性……などの諸要素が互いに影響しあって、定期的に手を貸してくれる人は増えているらしい。
「……以外に、女性の参加者が多いの……」
 野外での、いわゆる3K仕事であるが、希望者には孫子の会社のロゴが入った作業着を貸し出していることもあって、フィットネスやジムにでも通う感覚で気軽に参加する人が少なくない……らしい。
 もちろん、本当の力仕事は男性や一族の者が担当するわけだが。
「今では、一族と一般人……だけではなく、普段はあまり接触する機会がない、倉庫街の人たちと町の人たちのが接触する場にもなっているの」
 接触点……一種の、ゆるやかなコミュニティらしきものが、できつつあるらしかった。
「……そんなに頻繁に参加しない人でも、SNSには参加できるの。
 ボランティアのSNSに参加しようする人は、地縁や人の縁がある人で……」
「ボランティアに参加しなくても、情報源としては機能する、と……」
 沙織が、頷く。
「何か変わったことがあれば、知らせてくれるの」
 茅は説明を続けた。
「それとなく、防犯のために不審者を見かけたら教えあおう、みたいな呼びかけも行っているし……そういう情報操作を得意とする人もいるの」
「しかしまあ……学校に通いながら、よくそこまで把握できるもんだ」
 だいたいの説明を聞き終えた荒野は、半ばあきれた。
 最近、茅がパソコンを操作する時間が増えていたのは、そうした情報収集をする必要があったため……でも、あるらしいかった。
「実際に動いているのは、有働や才賀、一族の者たち、地元の人たち……。
 今の茅にできるは、全体像を把握することくらいなの……」
「……いや、実質、おれよりはよっぽど働いていると思うけど……」
 荒野が今まで、この土地で何をやってきたのか……というと……。
「……トラブル処理、っていえば聞こえはいいけど、ようするにその場しのぎの対症療法だけだもんなぁ……」
 こうして改めて考えてみると、茅の勤勉さに頭が下がる思いだった。
「荒野は、荒野にしか出来ない仕事をやっているから、今のままでいいの。
 一族関係のトラブルは、荒野しか抑えられないことが多いの」
「いや……確かに、それはそうなんだけど……」
 一族が相手なら、たいていは、荒野自身が出向けば何とか事が収まる。
 言い換えれば……。
『おれは……自分の出自にあぐらをかいているようなもんか……』
 一族の中で荒野が一目置かれるのは、だいたいにおいてその血筋が理由となる。副次的には、「最強の弟子」という肩書きから、実力を認めてくれる。
 しかし、茅が誰かに一目置かれるとすれば……それは……。
『茅が、茅自身だからだろう……』
 と、荒野は、思う。
 荒野は……以前、隣家のプレハブで香也の絵を見つけた時に感じたような、不意に自分の足下の地面が不確かにような、心細さを感じていた。
「荒野くんは、荒野くんでしょう」
 沙織が、荒野の不安を見透かしたかのような言葉をかける。
「誰でも、結局、自分にしか出来ない仕事は自分で見つけるしかないのよ」



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彼女はくノ一! 第六話 (127)

第六話 春、到来! 出会いと別れは、嵐の如く!!(127)

「最強とか最強の弟子は、舐めない方がいいぞ」
 佐久間現象が、なんとも複雑な表情でジュリエッタに忠告した。
「それより、なんであんたがここにおるとね?」
 イザベラが、早速、現象につっこみをいれている。
「わたしたち、今のところ暇なもんで……」
 現象が何か不穏なことをいう前に、と、梢が割って入った。
「……こうして、あちこち見て回っているんですよ。
 こちらの工場も、この前から巡回コースに入ってまして……」
 イザベラの方は「……ほー……」と気のない生返事をした後、さらに問いを重ねた。
「そげににつよかね?
 最強とか、最強の弟子とか?」
「……自分の目で、確かめて見ろ……」
 吐き捨てるような口調で、現象が答える。
「一族の出でもないのが、なんであんなに……」
 後半は、ぶつくさと聞き取りづらい独り言になっている。現象は現象で、「楓」という存在に対して複雑な心理を抱いているようだった。
「……楓おねーちゃんのこと?
 ボクたちが束になっても敵わない程度かな?」
 現象の代わりにテンがイザベルの問いに答えた。
「……ほー……」
 イザベラは、一応感心したような声を上げておいてから、シルヴィのそばにいるホン・ファとユイ・リィを指さし、
「じゃが、おんしら。
 あっちのチンク二人にボロ負けしておったろう」
 などと遠慮のないことをいう。
「……え? なに?」
「お前らが、勝てなかったって?」
 イザベラの撮影の手伝いに来ていた甲府太介と高橋君の年少組が、目を丸くする。
 イザベラが指さしたホン・ファとユイ・リィは、自分らと同年輩に見える。
 少なくとも同年輩の一族の者で、テン、ガク、ノリの三人に対抗できるものはいない……ということが、この時点では周知の事実となっていた。
「うるさいなぁ。
 格闘戦では、太刀打ちできないだけだよ……」
 そうした反応に、明らかにむっとした様子でガクが反駁した。
「チンクって……中国人のことだっけ?」
「中国四千年、すっげげぇー……」
 高橋君と太輔は、大げさに騒ぎはじめる。
「……そんでもってな……」
 イザベラはそうしたリアクションに構わず、先を続けた。
「その二人が束になっても、あっちのねーちゃんにか太刀打ちできなかったでよ」
 高橋君と太介が、「おおー!」と感嘆の声をあげる。
「ちょっとそこの赤毛!」
 少し離れたところにいたホン・ファが、肩をいからせてつかつかと歩み寄ってくる。
「さっきからチンクだだの太刀打ちできないだの好き勝手に……」
「そないなこというてもな」
 イザベラは、肩をすくめる。
「事実は、事実じゃろ?」
 あっけらかんとした態度と口調であり、特にイザベラが悪意を持っていっているようにも見えなかった。だからこそ、性質が悪い、という言い方も可能なのだが……。
 背後で高橋君と太輔とが、
「チンクって悪い言葉なのか?」
「日本人に向かってジャップっていうようなもんだろ?」
 などと囁きあっている。
「イザベラさん、世界で一番威張っている先進国の人だから……」
 ノリが冷静な口調で補足説明をする。
「……ああー。
 そりゃ、仲悪くなるわ……」
「あそこの白人、自然体で差別意識もってるからな……。
 そっかぁ……姉崎って、国際的だから……」
 ノリがもたらした情報によって、ますます無駄なおしゃべりが加熱する高橋君と太輔。
「……ほいほーい!
 もうはじめていいかねー……」
 両手に細長い剣を持ったジュリエッタが、剣を持ったままの両手をぶんぶんと無造作に振り回す。
「足なげー……」
「剣もなげー……」
 この時のジュリエッタは、羽生に借りたスパッツとトレーナーを着用していた。ジュリエッタの体格と比較するとどちらもサイズ的には小さめであり、手足部分ともに丈が短い。なにより、むっちりとした肉感的な肌が、内側から衣服を過剰なまでに盛り上げ、ボディラインをくっきりと刻んでいる。ぱっつんぱっつんであった。
「スタイルが、もろガイジンさんだなー……」
「日本人とは全然違ぇー……」
 当然のように、高橋君と太輔の視線は、イザベラに釘付けになっている。
 それでもテンが半眼になって、
「……男って、お馬鹿……」
 と、ボソリ、と、呟くとすぐに口を閉じる。
「脇田さんはどうみます?」
「曲芸だな、ありゃ」
 黒ずくめの悪役コスチュームのままの仁木田に、ガクが水を向けた。
「なんだ、あの無駄に長い包丁は。あんなもん、重いだけで小回りがきかないし、実用性がねぇ。
 しかも二刀流だと?
 得物に振り回されるのがオチだぞ……」
 脇田の見解は、常識的なところに落ち着いていた。
「……昨日のを見ていなかったら、ボクもそう思うんだけど……」
 ガクはさりげなく脇田から視線を逸らした。
「ひとついっておくと、この対戦手配したの、最強じゃからの」
 一通りの意見が出そろったのを見計らって、イザベラが爆弾発言を行う。
「それなりの見物には、なるんと違うか?」
 それまでどこかはしゃぎ気味だった一族の間に、見えない緊張が走る。
「……来たばっかりで見込まれた、ってことか? おい?」
「だってあれ、姉崎だろ?」
「いや、荒事が得意な姉崎がいてもおかしくはない……」
「少なくとも、弟子の練習台くらいにはなる、って……あの最強が判断したってことで……」
 撮影の手伝いに来ていた大人の一族たちが、とたんに騒がしくなった。
「おれ、最強の弟子の方に八千円!」
「同じく、一万!」
「こっちも弟子に一万五千!」
「穴狙いだ!
 新入りの姉崎に一万!」
 すぐに誰から、ということもなく撮影用小道具のヘルメットが回され、その中に次々と現金が放り込まれる。
「……はいはい。
 誰がどれだけかけたかは、ちゃんと憶えておくからねー……」
 お世辞にも熱がこもっているともいえない口調でいって、テンがひらひらと軽く片手を振る。
 この場にいる人間には周知になっているテンの記憶力は、このような時に浪費される傾向があった。
「……うーん。
 三対一、ってところかかな?」
 一通りの掛け金が出そろったところで、ざっと暗算をしたテンが呟く。
「やっぱり、楓おねーちゃんが優勢だなぁ……」
「ほんじゃ、わしがジュリエッタに上乗せするでよ」
 イザベラが素早くテンのそばに近寄り、上着のポケットから取り出したむき出しのままの紙幣の束を、数えもせずにばさっとヘルメットの中に放り込む。
 分厚い日本円の紙幣で、明らかに、今までに集まった現金よりも多かった。
 周囲からため息とも感嘆の声ともつかない「おおーっ!」というどよめきが、起きる。
「……相変わらず、お祭り騒ぎ好きねー。
 ここの連中……」
 少し離れたところで見守っていたシルヴィは、苦笑いをしながらそういった。


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「髪長姫は最後に笑う。」 第六章(385)

第六章 「血と技」(385)

『……ちょっと、なんでここに長老が飼っていた佐久間がいたりするわけ?』
『しかも、難しい顔してジャガイモの皮、剥いているし……』
 酒見姉妹は、夕食の準備をする茅の手伝いをしながら小声で囁きあっている。
 非常に、居心地が悪そうだった。
「覚えておくとよいぞ、若いの」
 顔もあげずに、源吉が、ぼそりと呟く。
「お主らが佐久間に接する機会は少ないかと思うが……佐久間は、他の術者と比べても、目も耳も聡い」
 酒見姉妹にしてみれば、感情の籠もっていない声が、なおさら不気味だった。
 死んだ筈の者がじつは生きていた……というのは、この世界ではさほど珍しくないが……長老直属、ということになれば、話しは別である。
「源吉は先輩のおじいさんなの」
 たん、と、茅が包丁を使っていた手を止めた。
「それだけ。
 だから、源吉のことは他言無用。必要以上に関わらない方がいいの」
「そ、それは、もう……」
「滅相もない……」
 酒見姉妹は、すっかり及び腰になっている。
「わたしたち、佐久間というと、現象のポンコツとかしか知らなかったもんだから……」
「本物の佐久間って、どうなんかなーって興味があるだけで……」

「……荒野くんのところ、いつもこんな調子なの?」
 すぐ背後で展開される会話を聞きながら、沙織が荒野に話しかける。
 沙織は、「お客さん」ということで、茅の一存で夕食づくりからははずされていた。源吉は、「自分の都合で押しかけてきているから」と自分で手伝いを買って出た形だ。
「それはもう、賑やかなもんですよ。
 それこそ、疲れるくらいに……」
 荒野は自嘲混じりにそう答えるしかなかった。
「うちらの内部でもいろいろあるし、その中で共存とかしつけができてないガキどもとか、問題がいろいろと山積みってやつで……」
「その割には、まだ余裕があるようだけど……」
 沙織は、ふっと笑って荒野に指摘した。
「荒野くんの場合……そういうのより、私生活の方が大変だったりして」
 荒野は、しばらく二の句が継げなかった。
「そ……そういや、彼、もう一人の狩野くんの方の印象はどうです?」
 ということで、荒野としては不器用にでも話題を逸らしにかかる。
 香也は、「もう晩ご飯だし、あんまり長居しても」ということで、すでにこの場を辞していた。
「……んー。
 彼もなかなか、面白い子ねー……。
 彼、絵を描いているんだっけ?
 そのせいかどおうかわからないけど、今の時点での成績はともかく、集中力はすごいと思うし……」
 沙織は、おそらく荒野が露骨に話題を逸らしたのに気づきいるのだろうが、それでもそれに乗ってくれる。
「でも、驚きました」
 酒見姉妹の……おそらく、妹の粋の方だ。
 その、酒見姉妹のうちの一人が、サラダの大皿をテーブルに持ってきつつ、荒野と沙織に話しかける。
 最近になってようやく、荒野にもこの二人の見分けがつくようになってきている。
「加納様の学校に佐久間の血縁者がいて、茅様とこうして親しくしているなんて……」
「おれも、先輩と知り合った時はかなり驚いたけどな……あの時はあの時で、それなりにバタバタしたし……」
 そこまでいって、荒野は、ひとつの可能性に思い当たった。
「……源吉さん。
 源吉さんがここにいるのって、本当にうちのじじいの差し金じゃないんでしょうね?」
 仮にそうだったとしたら、素直に答えるとも思えないのだが……むしろ、酒見姉妹や沙織に聞かせるためのパフォーマンスとして、あえて尋ねてみる。
「命じられた仕事はこなしておりますが、私事についていちいち報告する義務はありません。
 涼治は、わしが今、ここにいることも知りません」
 荒野の問いには直接答えていない、どうとでも解釈が可能な回答だった。
 そのことに沙織も思い当たったのか、「ふっ」と軽く息を抜く。
 酒見姉妹は、源吉が「長老」を敬称抜きの名前で呼んだことに驚いて、その場で身をすくめて一瞬、体を硬直させた。
「……そっかぁ……」
 沙織は、どこか楽しそう顔になった。
「おじいさん、こういう世界で、こういう仕事していたんだぁ……」
 沙織にしてみれば、茅や荒野の……というより、「今まで知らなかった祖父の一面」を知ったことの方が、嬉しいのかも知れない。
『いろいろ、家庭内であるようだし……』
 沙織にとって源吉の存在とは、自分の家族が幸福だった時の記憶に直結しているのかも知れない……と、荒野は勝手に納得をする。
 そんなやりとりをしているうちに、涼治がテーブルに戻ってくる。
「もういいの?」
 荒野が気軽な口調で尋ねると、
「後は煮込んで、アクをとるだけなの」
 源吉ではなく、茅が答えた。
「今日は姫から、いろいろと勉強になるものを見させて貰いました」
 テーブルに着くと同時に、源吉は荒野に話しかける。
「姫がなにをやろうとしているのか……はじめて、理解した気がします。
 これを見越して仁明が姫を育てたのだとしたら、実にたいしたものですが……」
 いきなり仁明……父の名が出てきて、荒野は少し動揺したが……動揺した、という事実を自分でも不可解に思ったが……内心の乱れを外側には出さないように努めながら、荒野は源吉に指摘する。
「あのシステム、確かに茅とか楓がメインでやっているようだけど、それ以外にもうちの学校のパソコン部の部員とか……それに、沙織先輩も関わって、とにかく、みんなで構築したもんだから。
 とにかく、特に茅だけの、って話しでもないんだけどね……」
「そういうおじいさんも、さっき茅ちゃんを手伝をしていたじゃない」
 澄ました顔で、沙織も荒野の言葉を補足する。
「もはや……」
 源吉は、破顔した。
「われらの時代では、ないのですな……」
 源吉のその一言は、荒野にはひどく重く響いた。
 荒野や茅が今、この土地で行ってきていることは……確実に、古い一族の在り方を終わらせようとしている行為なのだ。
 一族全体にとって、それがいいことなのかどうか……これまで成り行きに引きずられて来た荒野には、客観的な判断を下すことのできる立場には、ない。
「……そういや、源吉さんは……」
 荒野は、話題を変えることにした。
「おれのおやじのこと……知っているんだよね?」
 源吉が活躍していた時期と仁明が活躍していた時期とは、時代的にいっても重なっている。源吉はさっき仁明の名を出したばかりだし……。
「……仁明、ですか……」
 源吉が、懐かしそうな顔になる。
「あれは……随一の、曲者でしたな……。
 最強がただ一人、届かなかった相手……」 


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彼女はくノ一! 第六話 (126)

第六話 春、到来! 出会いと別れは、嵐の如く!!(126)

 香也が気づくとふと、イザベラとジュリエッタの二人は、廊下に額をこすらんばかりにして平伏している。
 誰に……といえば、楓に、であるわけでもなく、新たに登場した荒神に……であろうことは、香也にも推測はつくのだが、香也にとって「二宮荒神」とはすなわち下宿人の「二宮先生」であり、この「二宮先生」というのが、なかなかに謎の多い人物なのであった。
「二宮先生」は、一年は担当していないから、香也が学校で接触する機会はほとんどない。名目的にはこの家に下宿していることになっているけど、ほとんど帰ってこない。荒野の親戚、というのは、正月の初対面の時に聞いている気もしたが、荒野は荒神のこととなると極端に口が重くなったし、香也も改めて聞くほど他人に興味を持つ性格でもないので、この線からの情報も遮断されている。楓が「師匠」と呼んでいること、他の一族の者たちの荒神に対する態度から、「かなりの大物」だろうとは、推測できるし、「荒野の親類」という荒神の属性も、それを裏付ける。
 だが……「二宮先生」が香也たち一般人に見せている「顔」は「温厚な好青年教師でしかなく……正直、ギャップが大きすぎ、全然実感がわかないのであった。
『……でも……』
 昨夜、大立ち回りを演じたジュリエッタや傍若無人でたいていのことでは気後れすることがないように見えるイザベラが、問答無用でひたすら平伏しているのを見ると……。
『実は……すっごい、偉い人、なんだろうか……』
 まあ、香也に想像できるのは、せいぜいその程度のことだった。
「ああ。楽にしていいよ。
 クレームならさっき、この土地の姉崎の責任者に入れておいたから。
 君たちは、楽にしていていい」
 当の「二宮先生」は、にやにや笑いを浮かべながら、そんなことをいっている。
「時に、そこそこ見所がある剣術使いがいるとか聞いたが……どっちかね?
 ここはひとつ、腕前のほどを披露する機会を与えよう。
 なに、遠慮はいらないが誇りかしこみ恐縮するがいいぞ。実に光栄なことだ。このぼくがが直々に閲覧してやると申しておるのだ」
 なんだか、語調がだんだんと普段の「二宮先生」のものではなくなってきた。
「このぼくが直々に相手をしてやるのも一興だが、いきなりそれではいささか面白味がない。
 そうだな、うん。
 こういうのは段階を踏んで、弟子から師匠へとステップアップしていくのがお約束というものだ。剣術使いの実力はまだ未知数だし、神の供物としてふさわしいレベルに達しているかどうかの試験も兼ねて、まず神の弟子と対戦することを許す。
 都合のいいことにここには神の弟子その二がいるし、神の弟子その一もすぐ近くに住んでいる。この二人を運良くこの二人を破ることができれば、この神と直々に対戦することを許してつかわそう」
 一気にまくし立てると、「二宮先生」は何故か「わはははははははは」と高笑いをしはじめる。
 いや。
 ここまでくると、もはや「二宮先生」とは別人の誰か、としてみるべきなのか……香也にしても、漠然と、そんなことを考えている。
「そうしよう。うん。そうしよう。
 そこでそこにいる弟子その二。
 さっそくしかるべき手配をしたまえ。すぐしたまえ。今したまえ。
 弟子その二もそろそろ他流試合をしていろいろな経験値をあげる時期だと思っていたところだから、ちょうどいい!」
 なんか、意味もなくテンションがあがっている「二宮先生」の横で、楓は携帯を取り出し、立て続けに何カ所か、メールしたり電話をしたりしている。
 楓の方も、表面上平静を装っているはが、なんか、表情が……。
『……やる気になっているんじゃ……』
 その時の楓の表情は、香也の目には、「好戦的」なもの……として、映った。
 そして、そこまで目撃した時、香也は「はっくしょんっ!」と大きなくしゃみをする。
 香也は、矢継ぎ早に推移する事態についていけないまま、素裸のまま布団にくるまっているだけだった。
 楓があわてて、
「あ。今お風呂の準備を……」
 とかいいながら、風呂場の方に走り出す。

 そのすぐ後、外出していた真理が帰宅。
 続いて何故か疲れた表情をしたシルヴィが、ホン・ファとユイ・リィを伴って狩野家を来訪し、すぐに真理に「ワゴン車を貸してほしい」と交渉をしはじめる。
「いえね。
 わたしもよくはわからないんですけど、すぐ終わる野暮用ですから……」
 楓たちが同行する、と聞き、特に深く考えもせずに真理がワゴン車のキーを渡す。
 シルヴィの運転するワゴン車に、楓、荒神、ジュリエッタ、イザベラ、ホン・ファ、ユイ・リィが次々と乗り込んでいく。
「……なにがあったの?」
 ワゴン車が出ていくのを後、いささかあきれ気味の真理がひとり残った香也に尋ねる。
「……んー……」
 香也としても、詳細な事情を把握しているわけでもなく……。
「……よく、わかんない……」
 そうとしか、答えようがなかった。

「……それで、なんでうちの工場なのだ?」
 ワゴン車を迎えた徳川は、いつもにもまして憮然としていた。
 今回の手配をした楓はというと、ひたすら「すいません、すいません」と頭を下げている。
 楓は、すでに忍装束に着替えている。
「この人が偉そうなのはいつものことだから、気にしなくていいよ、楓おねーちゃん……」
「……どーせ、ポーズだけなんだからー……」
「どのみち、人目につかずに暴れられる、都合のいい場所なんて、そんなにないんだからー……」
 シルバーガールズの装備を身につけた、テン、ガクノ、リの三人が口々にはやし立てる。
 例によって、撮影の最中に楓から連絡を受け、あわててセットを片づけて「試合」の準備を終えたばかりだった。
「……もー……。
 この、タハ迷惑な涜神者が……」
 シルヴィはワゴン車の運転席で自分の眉間を指で揉みながら、「コウの苦労が忍ばれる」とかなんとか、ブツクサいっている。
「……んふっ。ふっふっ、ふぅー……」
 ジュリエッタは、細長いケースから二振りの長剣を取り出していた。
「ニッポン、やっぱりいいところねー。
 強い人、いっぱいいっぱいねー……」
 困ったことに、無邪気かつ上機嫌だった。



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「髪長姫は最後に笑う。」 第六章(384)

第六章 「血と技」(384)

 優雅に紅茶を喫しながらソラで荒野の個人教授をする沙織、その沙織から時折水を向けられる時以外、黙々と自習を続ける香也。香也は、沙織に問いかけられる時に、疑問点をまとめて質問していたので、荒野は「やはり、こういう自習状態に慣れているのだな」という認識を新たにした。そして、茅の方はというと、いつの間にか身を乗り出している源吉へかなり熱を入れた様子で、なにやら難しそうな専門用語を並べ立てている。簡単な英単語が荒野の耳にも聞き取れたから、半分くらいはプログラム関係の用語だと思うのだが、後の大半は荒野にも聞き取れない、耳慣れない用語だった。意外なことに、源吉の方も茅の説明する内容にかなり身を入れて聞き入っているようだった。
「……はいはい。
 荒野くんは、自分の勉強……」
 周囲の状況に注意を奪われていると、意外に聡い沙織に即座に気取られ、注意を即されることになる。
 こうした注意を受けるのも、もう何度目かになる。
 香也への呼びかけと区別するために、沙織の荒野の呼び方はいつの間にか「荒野くん」になってしまっていた。当然、香也のことは「狩野くん」になるわけだが……楓が、荒野のことを「加納様」と姓で呼び、香也のことを「香也様」と名で呼ぶのとちょうど正反対になるわけだが……楓が荒野のことを「家名」で呼ぶことにはそれなりの必然性があるが、沙織にはなんの制約もない。
 沙織は茅と仲がいいから、親しみを込めてくれるのかも知らないな……と、漠然と荒野は思う。荒野の知る限り、日本人はよぼど親しくならないと、名前で呼ぶことはない。
 観察力があるというか、注意力が鋭いというか、これで沙織もなかなか隙がない。荒野の注意力が散漫になると、すかさずこうして声をかけてくる。
 ……こういうところは、茅と似ているよな……と、荒野は思う。
 茅も、特に荒野の内心や挙動の変化に対しては、実に聡いところがある。
 当然のことながら、沙織の鋭さ、というのは、茅の場合とはまた別種のものなのだろうが……。
『……やっぱ、体質っていうのも……』
 大きいんだろうな、と思わざる得ない。沙織も、先天的な「佐久間の体質」を少なからず受け継いでいる、という話しだった。荒野にはっきりとわかっているのは完全記憶能力だけだったが、それ以外の、例えば五感の鋭敏さなどを沙織が受け継いでいても、別段不思議ではない。
「……茅ちゃん忙しそうだし、自分でお茶いれていいかしら?」
 しばらくそんな状態が続いた後、沙織が、小声で荒野に尋ねた。
 茅の方に目をやると……いまやノートパソコンの一つの前に陣取っている源吉とともに、二人でなにやら言い合いながら猛烈な勢いでキーボードをタイプし続けている。
 このような状態になった茅の集中力については、荒野にも思い当たることがあった。
 つまり、感心事意外の雑事に関して、極端に注意が向かなくなるのだ。
「あ。
 いいんじゃないっすか。
 てか、すいません。お客さんなのに……」
 荒野は、あわてて、やはり小声で答える。
「いいのいいの。
 わたしも、ここ、いいお葉を使っているからついつい飲み過ぎちゃって……」
 ……なんだかんだいって、この中で沙織が一番くつろいでいるじゃないか……と、荒野は思った。
「ごめんなさいなの」
 ノートパソコンから顔もあげずに、茅が沙織に声をあげた。
「今、手が放せなくて……。
 気に入ったのなら、お茶葉、帰りにいくらか持っていくといいの。
 先輩なら、おいしくいれられると思うから……」
 茅の言葉に、荒野は内心で「やはりな」と頷く。
 おそらく……沙織は、茅がお茶をいれる手順をみていた……ということ以外に、沙織は、茅と同じように「細かな温度の変化」についても、何の器具も使わずに、正確に読みとれるのせはないか……と、そこまで考えて、荒野は、
『やめておこう』
 と、それ以上推測することを止めた。
 沙織自身が、また、沙織の祖父である源吉が、沙織が一般人として生きる道を望んでいる以上、荒野としてもあまり踏みいった詮索をするべきではない……と、荒野は思う。
 そう。
 ややこしいことに関わらない、という選択肢が残されているのなら……荒野自身、今のような複雑な境遇に好んで身を置いていたかどうか、かなり微妙なところでもあった。

 しばらくして、沙織がいれてくれた紅茶は、荒野が想像していたとおり、茅がいれてくれたものと遜色がない味と香りがした。

 数時間が経過し、夕方といっていい時刻になると、荒野は沙織に向かって、
「送っていきますか?」
 と声をかけた。
 荒野なりに気を利かせたつもりだったが……。
「まだ、全然かまわないけど。
 帰っても、誰もいないし」
 沙織の返答はむしろ素っ気ないくらいのものだった。
「荒野くんにはいってなかったっけ?
 今、うち、母子家庭で、母の帰りはかなり遅いし……」
 ……あー。
 そういえば、なんか、沙織の両親が離婚したばかりとか、そんなようなことをどこかで聞いた記憶が……かなりおぼろげではあるが、あったような気がする……。
「じゃあ、食事とかどうです。
 今日のお礼もしたいし……」
 沙織自身が申し出てくれたこととはいえ、こうしてわざわざ荒野たちの面倒を見に来てくれているのだから、それくらいのことをしても罰はあたらないだろう。
 帰宅しても誰もいない……ということなら、なおさらだ。
「それがいいの」
 茅も椅子から立ち上がって荒野の言葉に同意する。
「今から、準備するから……」
「そう、ですね」
 荒野は、沙織がなにか言い出す前に、茅の言葉に被せるように茅の言葉を引き取った。
「ここから先、先輩は、お客さんでください。
 今日だけでも、先輩に随分お世話になってますから……」
「応援も呼んであるの」
 茅がそういうのと、
「「買い出し部隊、帰投しました!」」
 といって荷物を抱えた酒見姉妹が玄関に入ってくるのは、ほぼ同時だった。
 荒野が無言で茅の方に顔を向けると、茅は、
「メールで、買い出しをお願いしておいたの」
 と説明した。


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エロアニメ

彼女はくノ一! 第六話 (125)

第六話 春、到来! 出会いと別れは、嵐の如く!!(125)

 最初は「ちょいとした息抜き」のつもりだったのが、結局、なんだかんだと長時間にわたるハードな情事となってしまった。というか、実際に睦みあってしまうと楓も香也も自制心が飛んでしまっていた。
 どちらかが達して動かなくなっても、そこで終わりにはならず、密着したまま少し間を置いて休憩してから、また動きはじめる。どちらかが動きはじめると、その動きに快楽を引き出されれ、疲労をおして相手の動きに応じようとする。汗だくになりながらも長時間密着し続け、片時も肌を離すのが惜むように、ぴったりと肌を合わせていた。その間に香也は何度か射精していた。回数は数えていないが、一度や二度ではなかった。楓も、何度も達しているはずだ。
 一応、避妊具は使用しているのだが、つけかえるような心理的余裕はなかったので、最初につけたものをそのままつけっぱなしにしている。そのまま何度も射精しては、避妊具としての機能しないのではないか、という懸念は当然あるわけだが……香也も楓も、お互いを求めるのに必死になりすぎて、そこまで気が回らなかった。二人の結合部は、すでに二人が分泌した体液が混じりあい、ぐっしょりと濡れている。
 他の少女たちとよりも、楓との相性はいいらしい……と、香也にしてみても思わないわけにはいかなかい。他の少女たちとしたときには、やはり相応の快楽は感じるわけだが、今、楓としてる時のような麻薬的な「凄み」を感じることは、なかった。
 この違いが、純粋に身体的なものなのか、それとも心理的な要素も含めた上での「相性の良さ」なのかは、その手のことに詳しいとはいえない香也にはよく判断できない。
 ともあれ……。
『溺れる、って……』
 こういうことを、いうのだろうな……と、香也は、楓の体を貪りながら、思う。
 いろいろあって、複数の少女たちが牽制しあっている現状は、香也にとってもそれなりにいい方向に働いているのかも知れない……、と、香也は、そんなことも思う。
 そのおかげで、四六時中、楓も体に夢中にならずにすんでいる、ということに、思い当たったからだ。
 現在の混乱した状況が、一種の抑止力となっている……という側面は、否定しがたく、あるのだ。
 仮に……この家に来たのが「楓だけ」であって、その後に孫子も三人娘も来なかったととしたら……香也と楓は、連日のように求めあって日常生活も、絵も……当然、学校の勉強も、おろそかにしていたのではないか……。
 そこまでぐずぐずになって、楓との快楽に溺れてしまっている自分……というものが、香也には容易に想像できた。

 なんだかんだで、汗まみれになった二人が(主に、香也の)体力の制約によって完全に動けなくなるまで、二時間以上の時間を必要とした。動かなくなっても二人はぴったりと密着して抱き合っている。香也の分身も、いささか硬度を失っているとはいえ、いまだ楓の内部にある有様だった。
「……二人とも、汗、かいちゃいましたね……」
 香也の耳元で、楓が弾むような口調で囁いた。密着しているので、かろうじて香也の耳元に届く程度の小さな声、だった。
 楓は、香也との今の距離を、楽しんでいるようにも見える。
 ここまで徹底的にやった直後とあっては、楓にしても機嫌がいい。
 香也は、例によって「……んー……」と生返事を返す。体力的に、まともに声を出せないほどに疲れきっている、ということもあったが。
 香也の返事を確認してから、楓は、しぶしぶといった感じで香也の体から身を離す。
 一度香也から身を離すと、思いの外、楓の動きは俊敏だった。
 脱ぎ散らかした衣服の中から自分の下着を見つけて素早く身につけ、その上に適当に拾った香也のシャツだけを身につけて、音も助走もなく部屋の出口である障子の直前にまで一気に跳躍し、そのままがらりとあけた。
 一連の動作は流れるようであり、まったく不自然さはない。おそらく、人目にないところでは、楓は普通にこのような超人的な動作を行っているのだろう。
 そして、楓がガラリと開けた障子の向こうには、かなり不自然な姿勢で……つまり、障子にぴったりと耳をつける姿勢で固まっているジュリエッタとイザベラがいた。
 より詳しい説明を付け加えると、しゃがんだイザベラの上に上背のあるジュリエッタが中腰でかがみ込んでいる状態で……イザベラの赤毛とジュリエッタのブルネットが上下に並んでいる形であり……。
「……な、な、な……」
 しばらく、この事態を「理解」する時間を数秒、必要としてから……。
「……なにを、しているんですか!」
 瞬時に真っ赤になった楓が、叫んだ。
 とはいえ、下着と香也のシャツしか身につけていない状態では、いかにも威厳がない。
 尻餅をつく形で廊下に座り込んだイザベラは、「HAHAHAHAHA」といかにもアングロサクソン的な笑い声をあげながら、ぱらぱらと拍手してみせた。
 ジュリエッタの方はというと、楓が怒っている理由に思い当たらないといった風情で、
「なかきことは、うつくしきかなー」
 などといいなかがら、にこにこと愛想良く笑っている。
「……こ、こ、こ……」
 楓が、言葉にならないうめき声を喉から発していた。
 ……あ。
 楓ちゃん、珍しく感情的になっている……と、依然素っ裸のまま布団にくるまっていた香也は思った。
 意外に、楓が感情的に局面は限られている。
 三人娘に怒るときはあったが、それは感情的になっている、というよりも、そういうアクションを見せつけることで注意を即しているわけであり……つまり、本気で腹を立てているわけではない……ということに、香也は気づいている。
『……楓ちゃんが、本気で怒ったのって……』
 そう。
 楓が感情的になる場面は、香也の知る限り、極めて限られている。
 楓が感情的になるのは……。
 孫子と、やり合った時……くらいのものだった。
「……馬鹿にしてっ!」
 これって……かなり、やばいんじゃないかな……とか、香也がのんびりと思ったとき、楓の怒声が響いた。
 今この場には、これまでのように、調整役の荒野はいない。
 そのことに思い当たり、香也の額に冷や汗が浮かんだその時……。
「……やぁやぁ。
 随分と面白い面子のが集まっているじゃないか、今日は……」
 イザベラとジュリエッタの背後に、不意に人影が現れた……ように、香也の目には映った。
「あれかい?
 最近の姉崎は……このぼくに、引っ越しの挨拶もよくしないのかい?」
 そこに は、にこやかな表情の二宮荒神が立っていた。



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「髪長姫は最後に笑う。」 第六章(383)

第六章 「血と技」(383)

「……狩野くんの方は……」
 と、香也に向き直った沙織はいった。
「……基本の部分は、もうかなりしっかりしているようですから、あとは時間をかけて反復して、憶えるべきことを憶える。細かいことも含めて。
 重要な部分は、もう理解しているようですから……」
 沙織の言葉に、香也は、素直にこくこくと頷く。
「……こっちの加納くんの方は……」
 続いて、沙織は荒野の方に顔を向けた。
「……特に、古文とか日本史関係が、ぜんぜん。
 ほかの科目が悪くないから、平均するとそんなに目立たないでしょうけれども……。
 苦手で後回しにするのはわかるけど、今日はその苦手な部分を重点的にいきましょうか……」
 結局、実質的に香也はその場で自習状態、荒野が沙織に個人教授される……というような形となった。
 香也はいたって素直なもので、沙織のいった通りに黙々と自習をはじめる。自宅でも、同居人の少女たちから同じような扱いを受けていて、「監視付きの自習」状態に慣れているのかもしれないな……と、荒野は思った。
 茅はというと、荒野の分と自分の分、併せて二台のノートパソコンをテーブルに広げ、例によって両手で一台づつ猛烈な勢いでキーボードを叩いている。指の動きが見えなほどに激しく動いているが、体の他の部分は泰然として動かない。手首から先を見なければ、むしろ、くつろいでいるようにさえ、見える。
 荒野にとってはお馴染みとさえいえる風景だったが、源吉にとってはそうではないらしく、紅茶のカップを手のひらで包むようにしながら、興味津々、といった感じで、身を乗り出して茅の様子を伺っている。
「はい。
 こっちの加納くん。
 よそ見をしないで、自分の勉強に集中する」
 さりげなく様子見していたつもりだったが、すぐに沙織にそうたしなめられてしまった。
 茅がノートパソコンの画面から視線をあげ、荒野を、軽く睨む。
 ……まだ、茅の機嫌は直っていないようだった……。
「あ。
 いや、源吉さんが、茅のやっていることに興味を持っているようだったんで……」
 苦し紛れに、荒野はそう言い訳した。
「……よかったら、説明するの……」
 茅が、荒野には直接答えず、源吉に話しかける。
「いえ、画面の内容を見せてもらえれば、おおよそのことは……」
 それを機に、源吉は自分が座っていた椅子を動かし、茅の背後に陣取った。
「……姫。
 こちらは気にせず、そのまま続けください……」
 ……考えてみれば、源吉だって、第一線で活躍していた「佐久間」なんだもんな……茅たちが構築しているシステム程度なら、書きかけのコードから、おおよその内容を推測できてもおかしくはないか……と、荒野は内心で勝手に納得する。
 知力が売り物の佐久間が、現代のコンピュータシステムに無知なわけもないか、と。
「……加納くん!」
 沙織が、今度は少し強い語気で、荒野を咎めた。
「……はいはい」
「はいは一回。
 加納くんは、どうやら文法関係が苦手なようだから、その辺を重点的に……」
 古文の話し、だった。
 確かに、荒野の言語に関する素養は、オラール・コミュニケーションを重点に教育されている。荒野は、何種類かの言語で日常会話を不自由なくこなせたが、古典文学の知識が豊富というわけでもない。現代語と似て非なる古語や古い言い回しなどに関しては、かえって混乱するばかりだった。日本語も、例外ではない。
「……活用形、って……。
 おれ、こういう言葉の覚え方をしたことないんですど……」
 古文の教科書を広げながら、荒野が軽くぼやいてみせる。
 それは、学校の英文法教育にも、荒野が共通して抱いていた「違和感」だった。
「でも、それを覚えることが、今の君の仕事なの」
 沙織は少し怒った顔をつくって荒野を軽く睨んだ。
「それに、文法である程度頼りになる法則性を覚えておくと、それなりに便利なのよ」
「はいはい」
 荒野は、せいぜい真面目な顔をして頷いてみせる。
「はいは一回」
 沙織に、また窘められてしまった。
「それでは、加納くん。
 テキスト五十八ページから、本文を読んでみて……」
 荒野は慌てて視線を落とし、沙織にいわれるままにたどたどしくテキストを朗読してみせる。
「……ええ、と……。
 ぎ、ぎおんしょうじゃのかねのおと……」
「かねのこえ、です」
 荒野が読み方を間違えると、すかさず、荒野の言葉を遮って訂正する。
「……加納くん、文法だけではなく、漢字の読みも弱いのねぇ……」 
 呆れたような感心したような声だった。
「まあ、一応帰国子女ってやつですから……」
 新聞や雑誌程度なら、荒野も難なく読みこなせる。
 が、平家物語や方丈記が相手になると、まるで勝手が違った。
「日常生活では困らないから、目立たなかった……というわけ、か……」
 沙織はほんの一、二秒ほど何事か考える表情になり、すぐに、
「これは、茅ちゃんが手こずるかぁ……茅ちゃんだと、なんだかんだいって加納くんにはあんまり強く出られないでしょうし……。
 わかりました。
 この際、徹底にやりましょう……」
 と、改めて荒野に向き直る。
「……え?
 だから、今、こうやって試験勉強を……」
 荒野が、戸惑ったように声をあげる。
「そうじゃなくて……いえ……試験や学校の勉強も大事だし、これからしっかりとやるつもりますけど……。
 それ以外に、加納くんは少し、見えにくいところで日本のことがわかっていない部分があるようだから、そういう面を少しでもフォローできるよう、学習していきましょう……」
 そういう沙織の表情は、意外に真面目である。
 オブラートにくるんだいいかたをしているが、沙織は「荒野に、日本人として基本的な素養が抜け落ちている」……と、いいたいらしかった。荒野にしてみても、そうした意図くらいは、容易に察することができる。そもそも、この町に来た当初は、三島百合香に「お前には乗しきってもんがない」と毎日のようにいわれていたこともあり、まるで自覚がない、というわけでもない。
 ここ最近では、自分よりも非常識なのが大挙してやってきて、その尻拭いばかりやっていたので、自分の特殊さについて、荒野の認識が甘くなっていたのも事実だった。
「……よろしくお願いします……」
 荒野としては、殊勝な様子でそう頷くより他、なかった。


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彼女はくノ一! 第六話 (124)

第六話 春、到来! 出会いと別れは、嵐の如く!!(124)

 自分の分身を包み込んでいる粘膜が複雑に蠢く感触を得て、香也は、むず痒いような気持ちがいいような、複雑な気分になる。強い刺激ではないし、また、つけ慣れていない避妊具のひきつれるような感触を経由してもいるので、このままでは射精に至る心配はない。
 ないのだが……何かこの先に進まなければならないような焦燥感に駆られて、自分の腿の上に乗った楓の臀部に手をかけて前後に揺り動かしはじめる。
「……んっ……。
 ふっ……」
 生暖かい楓の吐息が、裸の香也の肩から胸にかけてを滑りおち、みょうなくすぐったさを覚える。
 香也の腿の上に乗った楓が、その動きに合わせ、小さな喘ぎを漏らしはじめる。ごくゆっくりとした動きだったので、楓の喘ぎもさほど大仰なものではない。また、楓は意外に小柄な方なので、香也の腿にかかる負担もさほどではなかった。
 膝の上に楓を乗せていると、上気した楓の頬を上から、至近距離で覗き込む体勢になる。また、間近に、香也の腕の中にいる楓は、うっすらと汗ばんでもいるので、楓を抱えている香也の鼻孔は、もろに楓の体臭を否が応でも嗅ぎとってしまう。
 避妊具越しのあやふやな感触よりも、楓の体臭とか体温とかの方に、香也は楓の「存在」を感じてしまう。
 そう。
 こうしていると……「気持ちがいい」というより、こんなに近くに楓がいる、という実感が持てて、嬉しい……という気分になってくる。
 そうした気分がどういう感情から由来してくるのか、などと自省する習慣は、幸か不幸か、現在の香也にはない。
 しばらく、膝の上に乗った楓がじれたように腰を前後に揺さぶっていた。が、次第に楓の体を支えている香也の腕が、若干、だるくなってきた。
 ゆっくりとした動きのおかげか、急速に昇りつめるということもなく、ゆるやかな官能を愉しんでいた楓も、すぐに香也の腕から力が抜けてきたことを察し、さりげなく香也の腕から逃れて、結合したまま香也の上体を蒲団の上に押し倒し、その上に自分がのしかかる体勢になる。
「……このまま、お好きに……」
 そうして顔が至近距離になると、まともに視線をあわせるのが気恥ずかしいのか、楓は香也から目線を逸らし、楓は後半を省略して呟いた。
 実はこれで、楓は今の自分たちの状況を、かなり恥ずかしく思いはじめている。
「……んー……」
 そんな楓の内心を知ってか知らずか、呑気な声を出した香也は、楓の腰のあたりに軽く手を当てて、寝そべった格好のまま腰を軽く前後させ、楓の中で挿送しはじめる。楓が自分の腰を軽く浮かせて空間を作っているため、香也はあまり負担を感じずに腰を前後させることができた。
 事前にじっくりと時間をかけて愛撫を施されていた楓のソコはすでに充分に潤っていて、香也の動きに合わせて、「ちゃっ。ちゃっ」という小さな水音をたてはじめる。
「……ふぁっ……。
 あっ。あっ。あっ……」
 ここしばらく、少しは落ち着いていた楓だったが、香也が稚拙で単調な動きをしはじめると、すぐにまた昇りつめはじめる。それまでの行為のせいで全身が敏感になっている、というのもあるし、相手が香也であるから、と心理的な要因もある。
 香也は、自分の動きにあわせるようにして、楓の吐息が自分の頬や顔にかかる感触に、新鮮さを覚えている。香也の方は、避妊具をつけている関係で、今までより鈍感になっているし、余裕があるくらいなのだが、楓の方はというと、決してそうではない。それどころか、回数を重ねるごとに敏感に反応するようになっている、という自覚さえある。
「……んふっ。んふっ。んふっ……」
 いつしか、また鼻息を荒くしはじめた楓は、下から香也の肩に腕を伸ばしてのけぞり、
「……あうぅっ。
 あうぅっ。
 あうぅっ。……」
 と、知らず知らずのうちに声を上げはじめている。
 香也は、自分の膝の上で仰け反った楓の身体が後に倒れないよう、慌てて腕を楓の背中に廻して抱きしめ、楓の体重を支えた。
 結果、仰け反った楓の喉のあたりに、顔を押しつける。向き合って密着する格好となった。
 楓が、結合したまま香也の腿の上に座っている形に、つまり、最前の対面騎乗位の体勢に戻った形だが、ほぼ同じ体勢でも、両者のボルテージは、さきほどよりかなり上がっている。
 特に、楓の方が。
「……ぅっ。
 ううっー……」
 香也が自分より冷静でいる、ということに気づいた楓が、香也の肩にしがみつきながら、すねたような甘えたような声を出した。
「……狡い、ですぅ……」
 そういいながらも、楓は香也の腿の上で、自分の体をリズミカルに前後に揺する動作をやめようとはしない。
「……んっ」
 前後に動く楓とは別に、香也が下から突き上げるように、自分の腰を動かした。
 リズミカルな楓の動きとは違い、一回突き上げては休み……といった態の、不規則で断続的な動きだったが……。
「はっ。
 ……あっ……」
 楓は、さらに腕に力を込めて、香也の肩に抱きつく。密着するように、しがみつく。
 その予測のつかない動きに、かえって感じるところがあるようだった。
「……深い……ところまで……。
 ああっ!」
 いよいよ感極まってきた楓は、上気した顔を香也に押しつけ、香也の口を強引に割って自分の舌を滑り込ませた。
 香也も、本能的な動きで楓と舌を絡め、二人はお互いに口の中を舌でなぶり合う。
 そうしながらも結合部分を中心とした二人の動きは止まらず、しかし二人とももはやまともな思考をする余裕もなく、一体になったままもつれ合いながらも布団の上に倒れ込み、激しく動かし蠢き続ける。
 ここまでくると、二人とも、わけもわからず刺激を求めて本能に身を任せ、刺激を求めて滅茶苦茶に相手の体を貪っているような状況だった。
 忘我、というのがふさわしい。
「……すごい。
 すごい……ですぅ……」
 二人が折り重なった状態でぐったりと動かなくなるまで、小一時間ほどの時間を必要とした。
 流石に、香也よりも先に息を整えた楓が、それでも切れ切れに、そういう。
「……こんな……」
 そういって続く言葉を止めた楓は、香也の胸に頬を寄せ、さらに体中を密着させる。
 香也の方はというと、ぜいぜいと荒い息をついて仰向けに寝そべっているばかりだったが、楓がいいかけた続きは、容易に予想がついた。
『……こんなに、気持ちがよくなれるなんて……』
 今ではそれなりに……そっちの方面では人並み以上の経験を、短期間にしてきた香也にしても……今回の楓との情事から、予想外の快楽を覚えていた。
 


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