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彼女はくノ一! 第六話 (130)

第六話 春、到来! 出会いと別れは、嵐の如く!!(130)

 剣ごとジュリエッタの体をロープでかんじがらめにした楓は、そのまますぐに紐で数珠繋ぎになった六角を取り出す。
 一連の六角を楓が一振りにすると、六角を繋いでいた紐が一気にばらけ、数十個の六角が回転しつついましめられたままのジュリエッタの方への飛んでいく。
 楓自身も、自らが放った六角の後を追うように、ジュリエッタへ向けて殺到する。
「焦ったな」
 仁木田が、ぽつりと呟いた。
 ジュリエッタは、両腕をいましめられたまま、足と腰のバネだけで助走もつけずその場でトンボを切る。
 ちょうど、楓が放ったばかりの六角を飛び越え、楓の頭上に勢いよく踵を振り落とすような形となった。
 楓は、慌てて横飛びに避ける。
 何の障害物にも当たらずにまっすぐに飛来する六角……の方向で見物していた一族の者たちが、慌てて飛びすさって周囲の者と衝突、ちょっとしたパニックとなった。
 不意打ちとはいえ、流石に流れ弾丸の六角を自分の体でまともに受けるほど鈍い者はおらず、楓の六角はそうとう離れた場所にある廃材につっこんでやかましい音をたてる。
 ジュリエッタは、一度着地してしゃがみ込むと、すぐに横に避けた楓を追うように再度、跳躍。
「とぉうっ!」
 とかいいながら、楓に向け、ドロップキックをかます。
 楓は、避ける隙もなかったので、とっさに両腕を立てて体重の乗ったジュリエッタの「足」を受け止め……切れずに、背後にごろごろと転がる。楓はそのまま、見物してた一族の者たち数人を巻き込んで転がった後、ようやく停止した。
 いかんせん、大柄なジュリエッタと楓とでは、体重差がありすぎ、このように「体全体」を武器にされると、防御としての行為が防御として機能しない状態だった。
 ジュリエッタの一連の動作は極めて俊敏であり、楓の予想を完全に越えてたものだった。楓でなくとも、両腕をかんじがらめにされた者がまるで戦意を喪失することもなく、平然と向かってくる……という自体は、想像の外にあろう。
「……わはははははっ……」
 ドロップキックで楓を吹き飛ばしたジュリエッタは、実に楽しそうな笑い声をあげながら、こきこきと首を左右に傾けて音を鳴らし、
「ほいっ!」
 と一声叫んで体全体を揺すった……かと思うと、ジュリエッタの両腕ごと体をいましめていた縄が、ばざっ、と、落ちる。続いて、乾いた音をたってて、楓の服に包まれた剣も、地面に落ちた。
 それからジュリエッタは、ぶらん、不自然にぶら下がった両腕を、遠心力を利用して振り回す。
「よっ!」
 ごき、という音とともに、一本が元通りに「つく」と、もう一本は、たった今、正常に「ついた」ばかりの手で肩間接を元に戻した。
 どうやら、ジュリエッタは、肩の間接くらいなら、ある程度自在に外したり継げたりできるらしい。

「お前ら。
 前言、撤回だ」
 仁木田が、もっともらしい顔をしていう。
「お前らは、こいつらの真似をしようと思うな」
「真似できるかっ! こんなのっ!」
 言葉尻をとらえるように、現象が叫び返す。

「……日本、本当にたのしーねー……」
 ジュリエッタは油断なく周囲を伺いながら、素早く楓の服に包まれた自分の剣を取り上げる。
 奇妙なのは……蹴りとばした楓の姿が、ジュリエッタの視界に入らないことだ。
 先ほど、ドロップキックを避け損ねた時の感触では……楓は、ほんの数分前に持っていた機敏さを、若干失っているように見受けられた。
 体力の限界か、負傷か、それとも……ジュリエッタを油断させるための、芝居か。
 いずれにせよ、ジュリエッタが気を抜いていい理由にはならない。楓の姿が見えない……ということは、まだ楓が、ギブアップしていない、ということを意味する。
 次の瞬間、
「……おぅっ!」
 珍しく、ジュリエッタは本気で、感嘆の声を上げることになる。
 どっと、見物していた一族の者たちが、ジュリエッタの方に殺到してきていた。

 実際のところ、ジュリエッタがドロップキックで楓をぶっ飛ばしてから、ジュリエッタが自分の剣を拾い上げるまでは、ほんの一、二秒の出来事だった。
 その間に、蹴りとばされた楓は、忙しく周囲の状況を確認し……そして、この場で一番使いようがある武器、をみつけた。
 考えてみれば、楓ほどではないが、そこそこの練度がある一族の者たちが、この場にはひしめきあっている。
 彼らを利用することに、楓は、なんらためらいを持たなかった……ので、首尾よく人垣の中につっこみ、何人かの体を吹き飛ばした末、抱きとめられた後、すぐ、楓はすばやく六角を繋いだ一連の紐(これが、現在、楓が所持している最後の武器だった)を振るい、周囲に居合わせた者どもの足下を掬う。
 なんだかわからないうちに足下に横合いからの力を素早く加えられた者たちが、楓を中心として半円状にバランスを崩し、思い思いの方向に倒れていく。
 そして、一度バランスを崩せば、後の首尾は、楓にとってはかなり容易なことだった。
 何度となく荒神に投げ飛ばされている楓は、ごく小さな力で人間を投げ飛ばす、という技を体得している。
 がっしりと両足を地面につけている人間をいきなり投げ飛ばすことは、楓にしてもかなり難しいのだが……すでにバランスを崩し、浮き足立っているところにちょいとした力を加えて大きく浮かせる……くらいのことは、今の楓にとっては容易に実行できた。
 結果。
 ジュリエッタがロープを解き、自分の剣を拾っている間に、楓を中心として、ばたばたと一族の者たちが外に向かって投げ飛ばされて、そばにいた一族の者たちにぶつかっていく……という連鎖が発生する。そして、巻き添えをくらった者たちも、何がなんだかわからないうちに、また楓に投げ飛ばされる。
 倒れていく者、倒れてきた者の巻き添えを食った者たちが、この事態の本質を理解する前に……それに、こちょいとしたパニックの中心にいるのが楓だと、ジュリエッタが気づく前に……。
「……うわぁぁぁぁぁぁあっ!」
 楓は、とんでもない大声を発した。
 何が何だかわからないながらも、あるいは、漠然と楓の意図を理解していた者も少なからず、いたのかもしれないが……とにかく、その大声から反射的に遠ざかろうとして、一族の者たちは、一斉に動く。
 その大声から遠ざかろうと……つまり、ジュリッタのいる方へと、殺到した。


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