第六話 春、到来! 出会いと別れは、嵐の如く!!(124)
自分の分身を包み込んでいる粘膜が複雑に蠢く感触を得て、香也は、むず痒いような気持ちがいいような、複雑な気分になる。強い刺激ではないし、また、つけ慣れていない避妊具のひきつれるような感触を経由してもいるので、このままでは射精に至る心配はない。
ないのだが……何かこの先に進まなければならないような焦燥感に駆られて、自分の腿の上に乗った楓の臀部に手をかけて前後に揺り動かしはじめる。
「……んっ……。
ふっ……」
生暖かい楓の吐息が、裸の香也の肩から胸にかけてを滑りおち、みょうなくすぐったさを覚える。
香也の腿の上に乗った楓が、その動きに合わせ、小さな喘ぎを漏らしはじめる。ごくゆっくりとした動きだったので、楓の喘ぎもさほど大仰なものではない。また、楓は意外に小柄な方なので、香也の腿にかかる負担もさほどではなかった。
膝の上に楓を乗せていると、上気した楓の頬を上から、至近距離で覗き込む体勢になる。また、間近に、香也の腕の中にいる楓は、うっすらと汗ばんでもいるので、楓を抱えている香也の鼻孔は、もろに楓の体臭を否が応でも嗅ぎとってしまう。
避妊具越しのあやふやな感触よりも、楓の体臭とか体温とかの方に、香也は楓の「存在」を感じてしまう。
そう。
こうしていると……「気持ちがいい」というより、こんなに近くに楓がいる、という実感が持てて、嬉しい……という気分になってくる。
そうした気分がどういう感情から由来してくるのか、などと自省する習慣は、幸か不幸か、現在の香也にはない。
しばらく、膝の上に乗った楓がじれたように腰を前後に揺さぶっていた。が、次第に楓の体を支えている香也の腕が、若干、だるくなってきた。
ゆっくりとした動きのおかげか、急速に昇りつめるということもなく、ゆるやかな官能を愉しんでいた楓も、すぐに香也の腕から力が抜けてきたことを察し、さりげなく香也の腕から逃れて、結合したまま香也の上体を蒲団の上に押し倒し、その上に自分がのしかかる体勢になる。
「……このまま、お好きに……」
そうして顔が至近距離になると、まともに視線をあわせるのが気恥ずかしいのか、楓は香也から目線を逸らし、楓は後半を省略して呟いた。
実はこれで、楓は今の自分たちの状況を、かなり恥ずかしく思いはじめている。
「……んー……」
そんな楓の内心を知ってか知らずか、呑気な声を出した香也は、楓の腰のあたりに軽く手を当てて、寝そべった格好のまま腰を軽く前後させ、楓の中で挿送しはじめる。楓が自分の腰を軽く浮かせて空間を作っているため、香也はあまり負担を感じずに腰を前後させることができた。
事前にじっくりと時間をかけて愛撫を施されていた楓のソコはすでに充分に潤っていて、香也の動きに合わせて、「ちゃっ。ちゃっ」という小さな水音をたてはじめる。
「……ふぁっ……。
あっ。あっ。あっ……」
ここしばらく、少しは落ち着いていた楓だったが、香也が稚拙で単調な動きをしはじめると、すぐにまた昇りつめはじめる。それまでの行為のせいで全身が敏感になっている、というのもあるし、相手が香也であるから、と心理的な要因もある。
香也は、自分の動きにあわせるようにして、楓の吐息が自分の頬や顔にかかる感触に、新鮮さを覚えている。香也の方は、避妊具をつけている関係で、今までより鈍感になっているし、余裕があるくらいなのだが、楓の方はというと、決してそうではない。それどころか、回数を重ねるごとに敏感に反応するようになっている、という自覚さえある。
「……んふっ。んふっ。んふっ……」
いつしか、また鼻息を荒くしはじめた楓は、下から香也の肩に腕を伸ばしてのけぞり、
「……あうぅっ。
あうぅっ。
あうぅっ。……」
と、知らず知らずのうちに声を上げはじめている。
香也は、自分の膝の上で仰け反った楓の身体が後に倒れないよう、慌てて腕を楓の背中に廻して抱きしめ、楓の体重を支えた。
結果、仰け反った楓の喉のあたりに、顔を押しつける。向き合って密着する格好となった。
楓が、結合したまま香也の腿の上に座っている形に、つまり、最前の対面騎乗位の体勢に戻った形だが、ほぼ同じ体勢でも、両者のボルテージは、さきほどよりかなり上がっている。
特に、楓の方が。
「……ぅっ。
ううっー……」
香也が自分より冷静でいる、ということに気づいた楓が、香也の肩にしがみつきながら、すねたような甘えたような声を出した。
「……狡い、ですぅ……」
そういいながらも、楓は香也の腿の上で、自分の体をリズミカルに前後に揺する動作をやめようとはしない。
「……んっ」
前後に動く楓とは別に、香也が下から突き上げるように、自分の腰を動かした。
リズミカルな楓の動きとは違い、一回突き上げては休み……といった態の、不規則で断続的な動きだったが……。
「はっ。
……あっ……」
楓は、さらに腕に力を込めて、香也の肩に抱きつく。密着するように、しがみつく。
その予測のつかない動きに、かえって感じるところがあるようだった。
「……深い……ところまで……。
ああっ!」
いよいよ感極まってきた楓は、上気した顔を香也に押しつけ、香也の口を強引に割って自分の舌を滑り込ませた。
香也も、本能的な動きで楓と舌を絡め、二人はお互いに口の中を舌でなぶり合う。
そうしながらも結合部分を中心とした二人の動きは止まらず、しかし二人とももはやまともな思考をする余裕もなく、一体になったままもつれ合いながらも布団の上に倒れ込み、激しく動かし蠢き続ける。
ここまでくると、二人とも、わけもわからず刺激を求めて本能に身を任せ、刺激を求めて滅茶苦茶に相手の体を貪っているような状況だった。
忘我、というのがふさわしい。
「……すごい。
すごい……ですぅ……」
二人が折り重なった状態でぐったりと動かなくなるまで、小一時間ほどの時間を必要とした。
流石に、香也よりも先に息を整えた楓が、それでも切れ切れに、そういう。
「……こんな……」
そういって続く言葉を止めた楓は、香也の胸に頬を寄せ、さらに体中を密着させる。
香也の方はというと、ぜいぜいと荒い息をついて仰向けに寝そべっているばかりだったが、楓がいいかけた続きは、容易に予想がついた。
『……こんなに、気持ちがよくなれるなんて……』
今ではそれなりに……そっちの方面では人並み以上の経験を、短期間にしてきた香也にしても……今回の楓との情事から、予想外の快楽を覚えていた。
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