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彼女はくノ一! 第六話 (129)

第六話 春、到来! 出会いと別れは、嵐の如く!!(129)

「最初は、足を止めて相手の出方をみて……」
「……師父の時と同じパターンだ……」
 ホン・ファとユイ・リィは日本語でそんな会話をしている。師父からも、普段から出来るだけ現地の言葉を使えといわれているし、この土地での身元引受人であるシルヴィからも念を押されている。
「……わたしと違って、外見的にはあんたちは日本人と区別がつかないんだから、そのままとけ込むように心がけなさい……」
 とのことだった。
 ホン・ファとユイ・リィの日本語は、アクセントに多少難はあるものの、日常会話程度なら問題のないレベルだった。
「……最強の弟子は……まだまだあんなもんじゃねーぞ……」
 フー・メイとジュリエッタの「じゃれあい」、それに、楓と荒神の「練習」の両方をみたことがある現象が、二人の会話に口を挟む。
 その時の現象の額には、冷や汗が浮かんでいた。
「……楓さん、そんなに凄いん?」
 今度は太介が、現象に問いかけた。一応、現象の方がひとつ年上だったが、舎人から練習相手を頼まれている関係もあって、砕けた口調でのやりとりとなっている。
 この場にいる人間で、「楓の本気」、つまり、荒神を相手にした修練を実見した者は、実のところかなり限られている。
 毎朝の河原での運動程度では、楓が本気を出す必要はまったくないのであった。
「……反則だ、あれは……」
 現象はそう答えた後、「……なんで六主家の出でもないあいつが……」とか、ぶつくさ小さい声で独り言を呟きはじめる。
『……この間みたのが、トラウマになっちまったかな……』
 背後でそのやりとりをみていた舎人は、顎を撫でながら少し考え込む。
 もともと現象は、抜き差しならないコンプレックスを多く抱えている。
 佐久間本家の直系である、という自負と、一族の人間としても、一般人としても、不完全な教育しか受けてきていない……という負い目とがない交ぜになって、現象の中に渦巻いている。
 その現象にしてみれば……。
『血統的には一族の出ではないのに、突出した才覚を示す楓は……』
 サラブレット的な出自とそれにふさわしい能力を示す荒野とは違った意味で、複雑な思いを抱いてしまう相手……に、なってしまうのだろう。
「あの人はこの前、接近戦は避けて飛び道具を使用する、といっていましたが……」
「それが通用しない、となったら……どうするのでしょうか?」
 ホン・ファとユイ・リィは、誰にともなく、そう問いかける。
「……楓おねーちゃんなら……」
 二人の問いに、答えたのは、ガクだった。
「どうすればいいのかわからない相手にぶつかった時、楓おねーちゃんなら……たぶん、もっとわけのわからない……誰も想像しないような手で、対抗してくるとな……」
「同感」
 ノリも、ガクの言葉に同意する。
「臨機応変に、どんな事態でもなんとかしちゃう、ってのが、楓おねーちゃんの強みだもん。
 孫子おねーちゃんの出方なら、なんとなく想像つくけど……楓おねーちゃんの場合は、こっちの想像以上のことをしてくると思う……。
 ほら……」

 六角の残数が心細くなる前に……臑の痛みがまだ我慢できるうちに……楓は、ジュリエッタに向かっていく。
 肩が柔らかく、平然と背後にも長剣を振るうジュリエッタには、死角がないのも同然だった。だからこそ、楓はジュリエッタの背後から、六角を打ち込みつつ、突進した。
 間合いを詰める数瞬の間に、ジュリエッタは後ろも見ずに、楓が投擲した六角を両手の長剣で正確に弾いていく。
 そう。それでいい……と、思いながら、楓は、無造作にジュリエッタに近づく。

「……あっ!」
 ユイ・リィが叫び声をあげる。
 上半身鎖帷子だけの半裸になった楓が、忍装束の上衣を、ジュリエッタの剣にぶつけて絡め取ろうとしていた。
 背後に腕を回していたジュリエッタは、急に発生した負荷の原因を探ろうと首を巡らし……そこで楓がやろうとしていることに気づき……一瞬、あっけに取られた後、破顔した。
「……はっ!」
 楓は、ジュリエッタの長剣二本をまとめて自分の衣服を包んで刃としての性能を殺し、しっかりと握りしめている。
「……はっはっはっ……。
 楽しーねー……」
 ジュリエッタは、本当に楽しそうに笑いながら、ぶん、と、楓が握ったままの長剣をものすごい勢いで「上」に振りあげる。
「あっ!」
 ジュリエッタの剣を離すまい……と力を込めていた楓は、不意に思わぬ方向に振り回され、軽々と頭上方向に舞い上がる。

「……本当だ……」
 太介と高橋君の目が、点になっていた。
「予想の、斜め上をいっている……」
 口々にそういった後、どちらともなく、
「でも……」
「有効だよな、対応策としては……」
 力なく呟いて、こくこくと頷きあった。

 上空に放りあげられてすぐ、楓は、鍵爪つきのロープをジュリエッタの長剣に投げつける。長剣を取り上げることはできなかったが、ジュリエッタの二振りの剣は、楓の上着に絡め取られ、ひとまとめになって刃物としては役目を果たさなくなっている。
 狙い違わず、ロープの先についた鍵爪が、布地が巻き付いた剣に、さらに巻き付く。
「ほいほーいっ!」
 それでも、ジュリエッタは焦らない。
 楽しそうな声を上げながら……。
「……うひっ!」
「ほほーいっ!」
 無用の長物になったはずの長剣を振り回して、ロープの端を握っている楓を、軽々と振り回しはじめる。

 ホン・ファとユイ・リィの下顎が、がくんと下がった。
「やっていることは、高度なのに……」
 シルヴィが、誰にともなく呟く。
「全然シリアスに見えないのは…何故?」

「ほいほーいっ!」
「うひぃぃぃー!」
 ジュリエッタに二週から三週……くらい、振り回されたところで、ようやく、楓の足が地についた。
 ここぞとばかりに、楓は、自分の足で猛然とジュリエッタの周囲を回りはじめる。
 うまくいけばロープでジュリエッタを拘束することができるはずで、そううまくはいかない場合でも、ジュリエッタに得物である剣を放棄させることができる筈……だったのだが、ジュリエッタは、剣を投げ捨てなかった。
 結果、ジュリエッタは、剣ごと、体にロープを巻き付けていく。


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