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彼女はくノ一! 第六話 (153)

第六話 春、到来! 出会いと別れは、嵐の如く!!(153)

「でも、今回の試験、香也様、調子いいですよね……」
 通学時に、楓が話しかけてくる。
 楓は昨日も、休み時間のたびに香也の席を訪れては試験の答え合わせをしていたので、香也の成績についても自然と詳しくなっていた。
「……このままでいくと、三学期の成績も、かなりあがると思いますけど……」
「……んー……」
 香也は、内心「それは、あれだけ盛大に手伝ってもらえば、いくらなんでもあがるよ」と思わないでもなかったが、例によって生返事をするだけにとどまった。
「……そうかも」
 それに、客観的に見て「今までが底辺すぎた」という事実もあるので、香也は素直に喜べなかった。
「少しばかりあがったところでようやく人並み」、というが、自分の成績についての香也の評価であり、この香也自身の評価は客観的に見ても割と公正なものだったりする。
「まあ、成績があがること自体は、いいことだとは思うだけどね……」
 樋口明日樹は、香也の気のない様子を目の当たりにして、複雑な心境になる。
 香也自身は、そこのことを喜んでいるのだろうか……と。
 学校の成績とか、そんなことは……香也にとっては、本当はあまり関心のない、些末事なんだろうなぁ……と、明日樹は思っている。いや、知っている。
 香也にとっては、絵以外のことがらがすべて、「どうでもいい、些末事」なのだ。少なくとも、明日樹が知っている香也なら、そう考えているはずだ。
「……狩野君がいやがっていないんだから、とやかくいう必要もないか……」
 明日樹は、誰の耳にも入らない程度の小声でつけ加えた。
 香也の心境はさておき、将来的なことを考えると、学校の成績もそれなりに重要なわけで……周囲の人たちが香也の面倒を見ることも、明日樹は、一概に責める気にもなれない。
 そんなわけで、「香也を取り巻く人々」に対する樋口明日樹の感情は、日々複雑なものになっていくのであった。

 二日目の期末試験も、香也はかなりリラックスした状態で受けることができた。香也は自分の成績に関してあまり思い入れがないため、あがりようがないということもいえたが、それ以上に昨夜、孫子とのあれやこれやで肉体的に疲労し、ぐっすりと熟睡することができた、という点が大きい。おかげで目が冴えた状態で静まり返った教室内に座っているわけだから、答案用紙に解答を書き込むしかすることがない。香也は、絵を描くときと同じくらいに、試験に集中することができた。

 そんな感じで午前中の日程をあっという間に終え、香也は帰宅の準備をする。いつもなら誰かしらが一緒に帰宅するパターンが多いのだが、この日、香也の世話を担当する楓は掃除当番なため、ひさびさに一人で帰宅することになった。もともと香也は単独行動の方がデフォルトなので、一人で帰宅することを苦にしたり寂しがったりする、ということはない。むしろ、こうして一人で帰宅するのもひさしくなかった感じで、香也はとてものびのびとした心持ちになりながら、家路についた。
 帰宅し、着替えて真理の用意してくれた昼食を軽くすませてから、荒野たちのマンションへと向かう。
 基本的には、昨日と同じような感覚で進行したわけだが……サオリセンパイが休憩のおりなどに、何かと「香也自身」について尋ねてきたきた点が、昨日とは違っていた。
 そういえば、楓が、「サクマセンパイのサクマは、現象とか梢とかのサクマで、センパイ自身は一族ではないけどセンパイのおじいさんは生粋のサクマだ」みたいなことをいっていたっけかな……と、香也はぼんやりと考える。
 そもそも香也は一族とか佐久間というのが「すごい存在だ」ということはわかっていても、どのようにすごいのか、ということに関しては、なんら具体的なイメージを持っていないので、いまいち実感がわかないのであった。
 あれこれと香也のことを聞いてくるサクマセンパイの姿をみて、荒野が、なんだか呆れているような風に見えたのだが……それは、香也の気のせいだったかも知れない。
 楓のいうところの「生粋のサクマ」であるところのセンパイのおじいさんも、昨日に引き続き同席していた。
 とはいっても、おじいさんは孫であるセンパイよりは茅とばかり熱心に話し込んでいるようで、昨日はまだ、話しあっているだけだったのだが、今日に至ってはノートパソコン二台を二人で占有して忙しくキーを操作しながらなにやら難しくて込み入った風な話しを延々と続けている。内容が込み入っている上に専門用語らしき単語の占有率が高い二人の会話は、香也には難しすぎて聞き取れても内容がまるで理解できなかった。しきりにネットワークがどうのとか組織とかリアルタイムとかワークシェアなどの単語が飛び出し、その程度は香也にも聞き取ることができたが、二人がいったい何について熱心に話し込んでいるか、香也には皆目検討がつかなかった。第一、そっちの方に気を取られているとすぐにサオリセンパイから「はいはい。勉強の方に集中して」と注意をされる。
 センパイは紅茶を片手にゆったりとくつろいでいるようにみえて、香也や荒野のことをかまなり細かく観察しているようで、二人の集中力が途切れるとすぐに柔らかい叱責の声が飛んできた。
 教科書も何も見ずに、香也と荒野、一年と二年の二学年分の内容を、傾向と対策む含めてしっかりと指導している、ということのすごさについては、香也はあまり実感を持って意識していない。茅とかテンとか、頭抜けた記憶力の持ち主が身近に存在しているため、「そんなもんか」あるいは「センパイもそういう人か」程度の認識しかしていなかった。
 これまでの環境が環境だけに、香也にとってその程度の異能は、「そういう人もいる」程度の感覚しかもたらさなくなっている。何しろ、まわりがまわりである。
 雑談の折りに、サオリセンパイが荒野に向かって、
「荒野の周りにいると、いろいろと個性的な子たちとあえる」
 といっていたのが、香也には印象的だった。
 確かに、その通りだな……と、「荒野の周囲の人々」の顔を思い浮かべ、香也はサオリセンパイの言葉に深く納得したわけだが……その「個性的な子」の中に自分が含まれている、という自覚は、香也にはなかった。


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