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はい(♀)×ろぅ(♂)×ろぅ(♀)  そのろく

そのろく 「夏休み開始から数日後の午後」

 こんこん、と、雅史くんの部屋の窓をノックする者がいた。あえて、「ノックする者がいた」などと書いたが、二階にある雅史くんの部屋の窓に、あえてはしごをかけてまでノックしてくような存在は、お隣りのあんなちゃんくらいしかいない。本人の弁によれば、「玄関のインターフォンを通すよりは早いから」とのことだが、それなら携帯に電話なりメールなりをしたほうが、早いし確実なはずなのだ。あんなちゃんも雅史くんも、不在がちな両親たちから、「非常用」という名目で、かなり早い時期から携帯を持たされているし、当然、番号もメアドも交換している。
 真相は、「数年前の大晦日の大掃除の時、雅史くんの家押入れの奥から発掘された古いラブコメマンガに影響されて」、の行動なわけで、そのラブコメマンガでは「家が隣同士の幼馴染の少年少女が、お互いに行為を持ちながらなかなか素直になれなくて」という、ありがちを通り越して手垢にまみれたような設定の、「もじもじ」が「もじもじ」のまま一進一退を繰り返し、何十巻と巻数を重ねる大河日常ラブコメ(注: 特定のモデル作品があるわけではありません)だったわけだが、そのマンガが描かれた当時は、今とは違って、そういう設定が新鮮だったのかもしれない。
 とにかく、そのマンガでは、隣の「彼氏・彼女」の部屋にいくのに、ベランダを伝わっていけることになっていて、どうもそういうシュチュエーションが、あんなちゃん的には来るものがあったらしく、なにかしら用事があるときは(ほぼ毎日のようにお隣りに食事を呼ばれている雅史くんの境遇からいえば、そうした用事はかなり頻繁にあるわけだが)、わざわざ梯子を伸ばして二階の雅史くんのサッシ窓がノックされるようになったわけだ。
「暑いー!!」
 窓を開けると、文字通り転がり込んでくるあんなちゃん。窓際にベッドが配置されていることをあらかじめ知っているから、雅史くんが窓を開けるなり冷房の効いた室内へ前転しつつ転がりこんでこれるわけだが、よく日に焼けた細い手足と、ホットパンツのすそとかタンクトップの根元の部分の、対照的に白い肌の部分との対比とを隠そうともしていないのは、雅史くん的にはちょっと刺激が強すぎたりする。
「行儀が悪いな、相変わらず」
 内心の動揺を隠しつつ、いつものようにあんなちゃんの足からゴムのビーチサンダルを脱がしてあげながら、雅史くんがいう。
「部活じゃなかったの?」
「午前中いっていたから、午後はパス。それよりおねぇちゃんがスイカ切ったって」
「それじゃあ、一緒に行こう。それから、さりげなくそんな雑誌広げない」
「けちー」
 あんなちゃんが広げようとした、ベッドの際のデスクの上においてあった雑誌を取り上げる。総合パソコン情報誌、という触れ込みの雑誌だったか、ファイル共有ソフトやアングラサイトの情報、それにアダルトサイトなども紹介されている、ちょっと大人向けのものだった。
「はいはい」
 雅史くんは、脱がせたばかりのあんなちゃんのビーチサンダルを押し付けるようにしてあんなちゃんに渡し、背を押すようにして、二人で部屋をでた。


[つづき]
迷った人のための、「はい(♀)×ろぅ(♂)×ろぅ(♀)」の【目次】








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