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彼女はくノ一! 第一話 (20)

第一話 ある日、くノ一が落ちてきて……。(20)

 羽生譲は喉の乾きを覚えて目を醒ました。
『……うーん……ひさびさに飲み過ぎたかなー』
 などと思いつつ、ノロノロと起きあがり、どてらを羽織って台所へと向かう。
『お?』
 途中の廊下で、寄り添うように仲良く肩を並べている二人の背中に遭遇した。
 香也と楓。
『ありゃー。今日会ったばかりなのに……こりゃ、あすきーちゃんピンチかなー』
 とか、思う。
「夜分おそれいりまーす!」
 そんなことを思っているうちに、玄関のほうで誰かが訊ねてきた気配があった。

「夜分おそれいりまーす!」
 という張りのある声で、狩野真理は目を覚ました。
 炬燵でうとうとしているうちに、本格的に寝入ってしまったらしい。
 こんな時間に誰だろ、といぶかしみながら、狩野真理は、玄関に向かい、鍵を開ける。
「あらあら。加納君じゃないの。どうしたの、こんな時間に」
 数年前、某国の内乱騒ぎに巻き込まれそうになった夫を、助けてくれた人々の一員で、数日前にお隣りにマンションに越してきた、加納荒野クンだった。
「いやなんか、うちのじじ……祖父から言付かりまして、本日からうちの手の者がこちらでお世話になるそうで、その、ご挨拶です」
 といって、持参の菓子折を差し出す。
 うちの香也より一つ上だというが、随分しっかりした子だ……と思った狩野真理は、ようやく、あることに気づいた。
「……えっと……その、加納君って、今朝うちに電話してくださった、あの加納さんのお孫さん……?」
 三島先生で接触してきて、過分な謝礼を条件にくノ一ちゃん……松島楓をこの家に住まわせることを打診してきた渋い声の持ち主と、目の前の少年とが、なかなか結びつかなかった。
『あの電話の方は、ニンジャのずっうっーと、偉い人で、この荒野クンは、その人のお孫さんで……。
 ……っていうことは、この子……ニンジャさんたちの、次期首領?』
 のろのろと真理がそんなことを考えていると、どやどやと他の同居人たちも、玄関に集まってくる。

「改めまして。
 おれ、加納荒野といいます」
 身長は百七十ほど。細身でありながら、どこか精悍な雰囲気も放射している、プラチナ・ブロンドの少年はいった。
「え?」
 と声を上げたのは、狩野香也のおさがりのパジャマを着たくノ一ちゃん、松島楓だった。困惑した表情をありありと浮かべて、隣りに立っている『この家の』コウヤの顔を見上げる。

「ぼく、狩野香也」
 かろうじて身長は加納荒野と同じくらいで、同じように細身だが、こちらの少年には「精悍さ」の欠片もなく、全体に柔和……を通り越して、ぬぼーっとした得体の知れない雰囲気を放射している。
「ええ?」

「おれ、かのうこうや」
「ぼく、かのうこうや」
「えええ?」
 おろおろと狼狽しまくって、松島楓は二人の少年の顔を、交互に見比べるため、顔をふり続ける。そして、自分の頭を抱え、
「……えええええ……?!」
 と、叫んだ。

「ここぞというところでポカをする」天然ドジっ娘体質故に「仕える相手」を勘違いしたまま処女まで散らしてしまった彼女の受難は、まだまだ始まったばかりだった。

   [第一話・完]

[つづき]
目次

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