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競泳水着の誘惑 (4)

競泳水着の誘惑 (4)

 栗田を引きずるようにして、大柄な舞花がずんずん進んでいく。
「ど、どこに?」
「女子更衣室。これでも次期部長でな。鍵は預かっている」
「……プール掃除は?」
「大清水先生の奥さんが予定よりも早く産気づいたとかでな。今日は中止だ。すでに教室を出ていたお前と柏にだけ、連絡が遅れた」
 あいかわらずぶっきらぼうな口調で、舞花は後ろの栗田をみようともせず、一気にまくしたてる。口調そのもは淡々とした感じだったが、後ろから見える横顔の舞花の頬に、うっするらと赤みがさしている。
「よろこべ。やっと、ようやく、二人きりになれるぞ」
 いわれて初めて、
 ……あ……。
 と、栗田は思った。一瞬、さっき部室の中で絡み合っていた柏と堺の姿が脳裏に浮かぶ。「二人きり」ということは、やはりそういうことなのだろうか……。
 舞花は、栗田の体を押し込むようにプールの女子更衣室に押し込むと、栗田に向き直り、
「これで、ようやく、二人きりになれたな」
 と同じ事をいい、栗田の顔に浮かんだ微笑に気づいて、すこしムッとした顔になる。
「なんだ、なにがおかしい?」
「いや、なんか、変わってないな、と思って」
「そうだ。体が育った以外は、あまり変わっていないぞ」
 と胸を反らす。と、大きな胸がぶるんと震えて、栗田は目のやり場に困る。なにせ、三十センチちかくも身長差があるから、まともに向き合うと、舞花の胸はちょうど栗田の視界に入りやすい位置になる。というか、正面間近にそんな刺激的な物体が位置すると、自然、そこから視線はそこから離れてくれなくなる。
 年頃の男の子としては健全な反応である。
「グラビアアイドル並」と噂されるプロボーションの体が、ぴっちぴちの競泳用水着に包まれて、真っ正面の目と鼻の先にあるわけで、血気盛んな年頃の栗田としては、結構困ったことになる。
「……セイッチも、体が育った以外は、あまり変わらないようだな……」
 しばらく栗田の反応がないのに舞花はふと怪訝そうな顔をしたが、すぐに栗田の視線の先を悟る。
 そして、迅速に栗田のバックをとり、
「そんなに、この胸が、気になるかー!」
 といいながら、背後から素早く腕を栗田の首に回し、二の腕で動脈を押さえるようにして、締める。なんとか、というプロレス技(の、粗悪な模造品)だったが、首の動脈を押さえられ、すぐに頭に酸素が行き渡らなくなった栗田には、咄嗟に技の名前が思い浮かばない。しばらくじたばたしたあげく、掠れた声で「チョークチョーク」というと、ようやく離れてくれた。
「いいか。男にはわからないだろうがなぁ、こんなもの大きくなっても、いいことなんかひとっつもないんだぞ。肩は凝るし、じろじろ見られるし、痴漢にはあうし……」
「痴漢!」
 栗田は小さく叫んだ。
「さわられたの?」
「……うん? なんだ。おまえもさわりたいのか? セイッチ」
 とってもイヤな笑い方をして、飯島先輩、もとい、「まーねー」がにじり寄ってくる。
 ……しまった!
 と、栗田は思った。
 ……対応を、誤ったらしい。

 栗田は、「まーねー」に頬をつままれて、「そういういやらしいことをいう口はこの口かこの口か」と力任せに引っ張られた。
「痛い痛い痛い! 子供ですかあなたは」
「逃げないか? 逃げない逆らわないなんでもいうことを聞く、と約束するのなら、放す」
「聞きます! なんでも聞きます! 本当に、痛い痛い痛い! んだから!」
「よーしいったな。なんでもいうこと聞くんだぞ。今から鍵をかけてくるからな」
 栗田が抓られて赤くなった頬に手を当て、さすりさすりつつ呆然としていると、舞花は神速ともいえるほどの身のこなしで素早く戸締まりをし、一分もかけずに、すぐに栗田の前に戻ってきた。
「これでもう逃げられはしないぞ、セイッチ。
 ……誰も助けにこれないし」
 ぼとりとなに気に物騒なことをいい、にたり、と肉食獣を連想させる笑みを浮かべ、
「さあ、これから、今までの数年間分の空白を埋めて、旧交を暖めようじゃないか」
 と、いった。
 栗田は「この人、外見以外は全然かわってねーよ」と、内心で思いつつ、これからなにをされのかと、かなーり不安に思った。とりあえず、「誰も助けにこれないし」というあたりの発言に、ものごっつぅ不穏なものを感じるんですが。


[つづき]
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