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競泳水着の誘惑 (5)
「そんなに怖がるな」
そんな栗田の様子をみて、舞花が目を伏せた。
「まるでわたしがセイッチをいぢめているみたいではないか。
それでなくとも、この体のせいで皆から敬遠されがちだというのに」
「そんな馬鹿な!」
思わず、栗田は叫んだ。
「女子にも男子にもあんなに人気あるじゃん、まーねー!」
どちらかというと、男子よりも女子に騒がれているような気もするが。
「おお。ようやく自然に『まーねー』と呼んでくれたな」
栗田の頭をなでなでしつつ、舞花はいった。
「あのなあ、女の子が、女子にそういう騒がれ方をしてうれしいと思うか?
バレンタインのたびに同性からも異性からも目の敵にされるのはたまったものではないぞ。おまけに、言い寄ってくる男どもときたら、わたしのバックドロップもドロップキックもフライングボディアタックもボディプレスもまともに受けきれない軟弱者揃いで、まともな遊び相手にならないし……」
……いやそれは、付き合い方が大きく間違っているような気がします。第一、現在の舞花の体格で、ボディプレスを受けるのは、誰が相手でも厳しいんじゃあないか……などとと、栗田は思ったりもするわけだが、
「昔っから、ごくごく普通に接してくれた友達は、おまえくらいなものだ」
と、すごーくしんみりとした調子で続けられると、二の句が継げなくなってしまうわけで……。
「……なのにこの半年、感動の再開にもまるで気づいた様子もなく、今までことどこく無視しくさってからに……」
ぼそぼそと怒気をはらんだ口調でさらに続けられると、今度は戦慄のために口をパクパクさせてなにもいえなくなってしまう……。
「さて、数年分のブランクを埋め戻すために、たっぷりと遊ぼうな!」
あの、正面からまともに見据えられてにっこり笑いながら指をぽきぱき鳴らされると、すっごく怖いんですが……。
「あ、あのさぁ……」
額に冷汗を流しながら、栗田は、しどろもどろになりながらも、なんとか言葉を絞り出す。
「思い出せなかったのは、悪かったと思う。けど、でもね、まーねー、すっごく変わったし。ほら、綺麗になった。見違えちゃったし。
それに、あれ、普通、男女二人きり、というのなら、もっと違ったことをするもんじゃあ……」
「……ほぉ……」
舞花の目が、すぅっと細くなる。
「『もっと違ったこと』とは、あれか。柏と堺がやっていたような事を指すのか?
セイッチは、このわたしと、『そういうこと』がしたいのか? できるのか? ん?」
「できるよ! したいよ! まーねーすっげぇエロい体してるし!」
「最後のはいらん!」
間髪を入れず、思いっきり、頭をはたかれた。
「冗談だ。セイッチがあまりにも緊張しているのでな。からかいたくなった。
なあ、せいっち。。」
かなり真面目な顔をして、飯島舞花は、栗田精一の顔を、目を、改めてまともにのぞき込んだ。
「おまえさえよければ、その……こちらから、本当に、襲っちゃうぞ」
その言葉を聞いた途端、栗田は反射的に舞花の体を抱きしめていた。
[
つづき]
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