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競泳水着の誘惑 (6)
「馬鹿! こら! いきなり!」
突然抱きつかれて、当然、舞花は抵抗をした。が、栗田も、身長こそ低いものの、連日の部活動で鍛えているだけあって、なかなかふりほどくことができない。
「離せってば! こういうのは心の準備というものがだな……ひゃっ! そんなところを触るな! 胸に顔を埋めるな!」
「……まーねー……」
抱きついたまま、うるうると潤んだ瞳で舞花を見上げ、栗田がいった。
「……かわいい……」
「あ」
栗田に見上げられた舞花の顔が、みるみる赤くなる。
「あ……な……ば、馬鹿!」
舞花は渾身の力を振り絞って、ことさら乱暴に、栗田の拘束をほどく。
ほどかれた栗田は、その場に、ぺたん、と、尻餅をついた。
「そ、そ、そういうことをいきなりいうのは反則だ馬鹿者! いいか! わたしがセイッチを襲うのはいいが、セイッチがわたしを襲うのは今後禁止だからな!」
たいそう興奮した様子で、滅茶苦茶なことをいう。たぶん、自分でもなにをいっているのか、意味をよく自覚していないと思われる。
「いや、だって」
栗田は、「自分がなぜ怒られているのかわからない」という様子で、ぽかん、としばらく真っ赤な顔をして仁王立ちになっている舞花を見上げていたが、
「……今の飯島先輩、まーねー、すっげぇ……女らしくて、かわいいし……」
思わず『エロくて』といいそうになり、とっさに『女らしくて』に言い直す。さっきそういって頭はたかれたばかりだからである。
聞いていた舞花は、顔どころか肩のあたりまで真っ赤にして、俯いて、黙りこんだ。
栗田の中では、実は未だに「まーねー」と「飯島先輩」がうまく重なっていない。
「まーねー」は、強引で傍若無人な乱暴者。
「飯島先輩」は、長身とパーフェクトなプロポーション、それに、口数が少なく、大抵のことでは動じないクール・ビューティ。
両者が同一人物である、というのは、どうにか納得しかけた。しかけたが、納得しかけた途端に、当の本人から、真面目な顔をして、感情を込めて「襲うぞ」などといわれたら、……そっちの方がよっぽど「反則」だろう、と、栗田は思う。
で、その後、こんな真っ赤になって俯いてもじもじしている様子は、「まーねー」的でも「飯島先輩」的でもなくて……やっぱ「反則」だよなあ。どうみてもこれは。
「……かわいい……」
また、知らず知らずに、声が漏れていた。栗田の、率直な感想である。
「……本当か……」
俯いて視線を合わそうとしないまま、でも伏し目がちにチラリと栗田のほうを一瞥して、小さな声で、舞花が聞き返す。
「……本当に、そう思うのか……」
「うん」
栗田のほうは、素直に、思ったことを答える。
「今のまーねー……飯島先輩……あー。とにかく! すっげぇ、かわいい!」
栗田の中で「まーねー」という呼称と「飯島先輩」という呼称とが衝突して混乱している。今の舞花は、やはり、「まーねー」とも「飯島先輩」とも違うような気がするし……。
「……舞花と呼んでくれ。二人きりのときは……」
しばらくして、ぽつりと、舞花がいった。
……なんだか書いていて「てめーら勝手にやってろってんだ! けっ!」という気分がこみ上げてきて、このまま放り出したくなるんですがなにか?
それでも、
[
つづき]
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