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彼女はくノ一! 第五話(301)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(301)

 ノリの、香也が侵入しかけている部分が、ぼんやりと熱を帯びていた。
 実のところ香也は、まだ、ノリの中に亀頭が入りきったかどうか、というあたりで中の狭さに難儀して、それ以上、挿入できないでいる。
 だが、ノリの主観によれば、その事実に反して、かなり「入って」いるような気がしている。何しろ、股から全身が裂けているような錯覚を覚えるぐらいの痛みを感じているのだから。
 ノリは、痛みに耐えかねて、先ほどからだらだらと涙を流している。
「……ノ、ノリちゃん……」
 そんなノリの様子を間近に見ながら、香也は、慎重な口ぶりで提案する。
 正面から抱き合っているわけだから、香也とノリの顔は、至近距離にある。
「そんなに痛いのなら……別に、無理、しなくても……」
 香也としては、他の女性陣に囲まれている、という異常な状況下で完全に萎縮し、流されるままになっているだけで……決して自分の意思で、自主的に、行為に参加しているわけではない。
 どんな理由であれ、ここまで「止め」にしてくれるのなら、歓迎こそすれ、文句をいうつもりはなかった。
「……続ける……」
 ノリは、口をへの字型にし、涙目になりながらも、ぼつり、と、答えた。
 成長した容姿に似合わぬ、幼い表情だった。
「どうせ、はじめては痛いっていうし、おにーちゃん以外の人とはこんなことやりたくないし……」
「……んー……」
 香也は少し考えて、のんびりとした口調で、自分たちの股間を指さした。
「でも……まだ、いくらも入ってないんだけど……。
 今のでこんなに痛がっていたら……全部入れたら、かなり凄いことになるんじゃあ……」
 ノリは視線を下げ、香也が指さした先を見た。
 そして、
「……げっ……」
 という、あまり上品とはいいかねる呟きを漏らす。
「これで……まだ、全然……先っぽだけじゃんっ!」
 体感と現実の不一致……を、ノリは実感した。
「べ、別に……ノリちゃんが、どうのってわけじゃないけど……」
 香也は、できるだけゆっくりとした口調を心がける。
「その……こういうことしている女の子に、その最中に泣きわめかれるのは……ちょっと……。
 それに……こういうこと、別に、焦ってやらなけりゃあならない理由っていうのも、ないし……」
『……こーちゃん……。
 ぼーっとしているだけかと思ったけど……意外に、頭が回るんだな……』
 ……すぐ側で一部始終を見ていた羽生は、かなり失礼な感想を持つ。
 ノリを傷つけずに、止めるための口実を提示する……という香也の機転に、半ば関心し、半ば呆れた。
「か、体の方が準備できてないのに、無理に、こういうことすることはないと思うんだけど……」
 香也は、諄々とノリに向かって、諭す。
「……で、でもっ!」
 ノリは、猛然と香也に食ってかかった。
「放っておいたら、おにーちゃん、おねーちゃんたちと、どんどん、えっちしちゃうでしょっ!
 おねーちゃんたちはよくって、ボクたちは駄目って……絶対、不公平だよっ!」
 聞いていた羽生は……その場で頭を抱えて蹲りたくなった。
 やっぱり、ノリは……この子たちは……根本的なところで、男女間の機微を理解していない……。
「……そーだ、そーだっ!」
「このままぼっーとしてたら、おねーちゃんたちにおにーちゃん、独占されちゃうじゃないかぁー……」
 ノリの言葉に、テンとガクが賛同の声を上げる。
 香也の後にいた楓と孫子は? と、見ると……案の定、あかるさまに視線を逸らし、何もない空中に顔を向けていた。
「……いや……その……。
 あのね……」
 羽生が、おどおどとした口調で助け船を出そうとすると、香也が軽く手を挙げて、それを制する。
「……んー……。
 ……いや、その……確かに、楓ちゃんとか才賀さんとか……そういうえっちなこと、何回か、しているけど……」
 香也は、考え考え、ゆっくりとしゃべる。
「でも……こういうで責任転換できるとも思わないけど……ぼくの方から誘ったことは、一度もないし……えっちしたからっていって、二人との関係が変わったってわけでもないし……。
 あと……えっちしていても、していなくても……今、ここにいる人たちは……全員、ぼくにとって、同じくらい大事な人たちだし……。
 だから、その……そんなに、無理をする必要って、あんまりないと思う……。
 あの……無理をして、えっちしても……ぼくの気持ち、そんなに変わらないと思うし……」
 香也の抗弁を聞いているうちに、羽生は、今度は、
『……こーちゃん……。
 天然のジゴロになる素質、あるな……』
 とか、思いはじめる。
 これだけの裸の女性に囲まれて、「えっちしても、気持ちは変わらない」などと、平然と断言できる男が、いったいどれだけいることか……。
 今の香也とは逆に、女と見れば、隙あらば襲いかかってくるような男が大半なのではないのか……。
『……無欲、とはちょっと違うけど……』
 香也は、ごく自然に、性欲とその他の感情とを、区別している。
 女性全般に対する本能的な欲望と、特定個人に対する感情を、混合することがない。
 これは……。
『……本気で狙っている側にしてみれば……やりにくいといえば、かなり、やりにくい相手なのか……』
 目を白黒させている楓や孫子をみて、羽生はそう思った。
 色仕掛け込みの駆け引きが通用しない相手に対して……本気で愛情感じている側は……一体、どのようなアプローチをし、自分の気持ちを伝えればいいのか……。
 楓と孫子だけではなく、ノリも目を点にして、フリーズしている。
 無理もない。
 香也が今いった内容を翻訳すれば、
「ノリが無理をして貞操を捧げても、香也はそのことに価値を感じない」
 ということになる。




[つづき]
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