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彼女はくノ一! 第五話(319)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(319)

 そんな事情説明やら、奇妙な成り行きではじまることになった「当番制」のことなどとかを相談している間にも、時間は過ぎていく。堺雅史と柏あんなは、香也の話しを驚きと呆れが入り交じった複雑な表情で聞きつづけ、しかし、香也に対して有効な対策とか意見とかをいうこともなかった。彼ら、聴衆二人の関係はきわめて良好であり、この手のトラブルに関する経験もないから、有用なカウンセリングもしようがない。
「……どうもぉ……」
 コート姿で鞄を持ち、すっかり下校の支度を整えた楓が、美術室に入ってきた。
「もうそろそろ、帰る時間ですけど……。
 あれ?
 堺君、途中でいなくなったと思ったら、こんなところにいたんですか……。
 それに、柏さんも……」
 堺とあんなは、今まで話していた内容が内容だけに、バツが悪くて楓の顔をまともに見返すことができず、「い、いや……」とか、「そ、そうだねっ! 帰る支度をしなけりゃっ!」とか、しどろもどろな口調で適当なことを口走って、ばたばたと足音も荒く、美術室の外に出ていった。
「……なんなんですか?
 あの二人……」
 事情を知らない楓は、挙動不審な二人の様子に、ひたすら首を捻っている。
「……んー……」
 香也は、のんびりとした口調で答えた。
「なんでも、ない……」
 ……今日は、結局、まるで絵に手をつけられなかったな……と思いながら、香也は、後かたづけをはじめる。
「すぐ終わるから、ちょっと待ってて……」

 楓と連れだって校門前まで出ると、そこには昨日よりは人数が少ないが、人だかりが出来ていた。
 茅、ノリ、それにカラフルなメイド服の酒見姉妹が談笑している。酒見姉妹プラスαのお出迎えはこれで二日目だが、この時間まで居残っている生徒の顔ぶれは、部活などの関係で、昨日とは違ってきている。中には、酒見姉妹の奇態な格好に足を止め、茅や楓の顔を確認し、「……そういうことか……」と納得した顔をして去っていく生徒もいる。
 どうやら、「彼女らの知り合いなら、どんな変な奴がいてもおかしくはない」というコンセンサスが、校内で出来つつあるようだ。
 香也の顔をみかけると、ノリが駆け寄ってきて、「……おにーちゃんっ!」と香也に抱きついてきた。香也は、当然のことながら、「……んー……」とかいいながら、優しくノリの体を引き離す。
 そこに、自転車を手押しした柏あんなが通りかかり、ぼそり、とした口調で、
「……ロリコンは、ビョーキです……」
 言い残して、去っていく。
 堺雅史が、
「あんなちゃんだって……どちらかというと、ロリ系なのに……」
 とかつっこんでから、香也たちに頭を下げて、あんなの後を追っていった。
「……そういうことだから、少し離れて……」
 香也はここぞとばかりに、ノリの体を引きはがしにかかる。
 柏あんなの言動については、「あれで、彼女なりの香也支援なのだろう」と、納得することにした。柏あんなは、以前から香也の環境を好ましく思っていないということを隠していなかったし、女性としてそうした感情を持つことは、香也にしてみても、それなりに想像できる。今日、成り行きで詳細な説明を聞いたからといって、すぐに気持ちの切り替えが出来るわけもなく、そうした形でそっけなく香也に手を貸してくれるだけでも、香也にしてみればありがたかった。

 往来で抱きつかれたりするのは勘弁して欲しいが、かといって別にノリのことを邪険にしたいわけでもなく、帰るみちすがら、香也はノリの話しをおとなしく聞いていた。今日、ノリは、登校時に話していたように、荒野たちと集まってチョコ作りをしていたそうだ。登校時のメンバー以外に、野呂静流と柏あんなの姉、柏千鶴も合流して、かなり賑やかな様子になった……と、いう。
『……彼は……』
 さぞかし、居心地が悪かったろうな……と、香也は思う。大勢の女性たちに囲まれて苦笑いしている荒野の顔が、香也にはありありと想像できた。
 ノリの話しを聞いて、酒見姉妹も、
「「……わたしたちも、行きたかった」」
 と声を揃える。
 二人は確か、今週から日中、商店街でビラ配りのバイトをしている、といっていた。
 どちらかというと、甘いものが苦手な香也は明日のことを考えて、少々憂鬱になる。山盛りになったチョコを目の前にして、顔色を悪くしている自分の姿が、ありありと想像できた。できれば、長い時間をかけて、ゆっくりと食べていきたいものだ……と、香也は思っていたが、彼女たちは、それを許してくれるだろうか……。
 せっかくの気持ちなんだから、さあ食え、その場で食えとせっつかれる自分の姿は、さらに鮮明に想像できた。
 かといって、どこにも逃げ場はないし、明日のバレンタインは確実に来るのだった。
 結果、香也は出来るだけ明日のことを考えないようにした。

 家の中に入ると、甘さを連想するカカオの香りがまだ残っているような気がしたが……おそらく、それは香也の気のせいだろう。
 来客たちはすでに帰った後とかで、家の中はしんと静まり返っている。
 ノリはそのまま台所に入り、流しに残っていた片づけものに手を着けた。チョコを調理した後の片づけは済んでいたが、その後、みんなでお茶を楽しんだ後の茶器が、香也たちの下校時間が差し迫っていたこともあって、そのままになっていた。
 その時、狩野家の住人はノリしかおらず、三島たちはこぞって留守番と片づけを申し出てくれたが、ノリの方が「お客さんに、そこまでやって貰うのは……」と遠慮して、みんなを外に出して施錠した、という。
 その辺、三人は真理にしっかりと躾られているのだった。
 三島が再び車を出して、野呂静流と柏千鶴を送っていったようだ、と、ノリは付け加えた。
 着替えてから楓もノリに合流し、そのまま二人で夕食の支度をはじめた。




[つづき]
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