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彼女はくノ一! 第六話(52)

第六話 春、到来! 出会いと別れは嵐の如く!!(52)

「……このポスターも、そのうち、町のあちこちに貼るわけだしぃ……それに、春休みには、商店街のシャッターに絵を描くことも約束しているんよ、この子……」
 玉木は、香也について、そう説明を続ける。
「この子は、もう、あすきーちゃんだけが囲っていた子じゃないしぃ……それに、いろいろな人とつきあった方が、この子にとっても、いい筈だしい……」
「……この子、この子、って連呼しないでよ……。
 下級生といっても、一年しか違わないんだから……」
 明日樹は、憮然とした表情になって、小声でそう返した。
 香也が、自分の手から離れていくように、明日樹が感じている……という、玉木の観測は、おそらく、正しい……と、そばで二人のやりとりを見ていた楓は思う。
 そうなると……明日樹から香也を遠ざけたのは、他ならぬ、楓たちだ……ということに、なるわけだが……玉木がいうとり、それは、決して悪い傾向ではない……と、楓も、思う。
 明日樹も、それはわかっていて……わかっていても、ただ……寂しいのだろう……。

 その時、玉木と楓、それに孫子の携帯が、着信音を響かせた。三人は、それぞれの、携帯を取り出して、受信したメールをチェックする。
「……撮影班から連絡。
 今日のテストの解説は収録し終わったって。
 沙織先輩も茅ちゃんも、そのまま期末試験の予想問題解説、はじめたそうだけど……。
 わたし、ちょっと今まで収録したデータ、取りに行って、それもってパソコン実習室にいって、編集作業にはいる……」
 と、玉木はいい、立ち上がった。
「……あっ。
 それじゃあ、ぼくも、校正が終わった分、印刷屋さんに持っていきます。
 狩野君。
 今日は、ご苦労様でした。続きは、またの機会に……」
 有働も、立ち上り、携帯を取り出した。
「……撮影班の中から何人か、放送室に呼び戻しましょう」
「……こっちは、柏さんからですね……。
 勉強のお誘い……というより、一緒に地獄に堕ちよう、とか、いってますけど……」
 これは、楓。
「飯島からです」
 孫子がいった。
「加納……もう一人の荒野と一緒に、二年生有志で、一年生の勉強をみているそうです。そちらの、加勢を頼まれました……」
 孫子は、明日樹に話しかける。
「そちらの弟さんもつき合わされているそうですし……この時間から部活というのも、半端でしょう……」
「……そう……ね……」
 明日樹は、不承不承、といった形で、頷く。
「それでは、参りましょうっ!」
 楓が、香也の右腕をがっしりと掴んだ。
「参りましょうっ!」
 明日樹も、香也の左腕をがっしりと掴む。
 二人がかりで持ち上げられ、椅子から立たされた香也は、そのままずるずると引きずられて、放送室から出ていく。当然のように、孫子も、その後についていった。

「……で、結局……いつもの面子か……」
 香也が取り巻きの女生徒たちを引き連れて、というか、取り巻きの女生徒たちに引きずられて指定された教室に入ると、開口一番、荒野はそうぼやいて見せた。
 二年生の教室を、適当に選んで使わせてもらっているらしい。
「こっちは、見たとおり……茅の解説を聞いても、ちんぷんかんぷんだった連中を連れてきて、面倒見ている。
 あれだ。基礎を覚えてないから、かなりさかのぼって教えなくちゃならない連中、ってことだが……。
 ま、二年生が何人か来てくれて、助かったよ……」
 柏あんなと樋口大樹が、飯島舞花と栗田精一、それに、堺雅史に囲まれて、頭を抱えている。
 舞花は頻繁に席を外して他の一年生の様子も見に行ったりしているが、栗田は大樹に、堺はあんなに、ほとんどつきっきりになっていた。
「……状況は、把握しました」
 周囲を見渡して、孫子は頷き、早速鞄から筆記用具を取り出して、手近にいた一年生の集団に近づいた。
 明日樹も、大樹と栗田に近づき、栗田の向かって、
「どーもー……。
 うちのバカがお世話かけちゃったみたいで……」
 とかなんとか、話しかける。
 香也と楓は顔を見合わせ、とりあえず、顔なじみのあんなと堺の隣に陣取った。
 堺が、
「あんなちゃん、これまで、ちょっとさぼりすぎ……」
 とかなんとか、しきりにぼやいている。
 楓と香也が、ごそごそノートとか教科書を広げていると、荒野が近寄ってきた。
「……まあ、あれだな。
 生徒によっては、茅の解説も理解できないくらいに、基本的な知識を覚えていない連中がいるってことで……しかも、どこまで何を覚えているのか、っていうのが、一人一人、ばらばらだから、こうして個別に見てやった方が結局は、効率が良かったり……」
 ……こうしてみると、先生の苦労が忍ばれるよ……と、荒野は、大仰な動作で天井を仰いで見せた。
「好きだの嫌いだのいう前に、消化すべきタスクとして、淡々と消化していけばいいのです。
 量的に、少しは多いとはいえ、三年間で修得すべき知識は有限のですから、計画的に学習していけば、そうそう困ることはありません」
 いつの間にか、こちらに近寄ってきた孫子が、荒野に向かっていう。
「おれ……よく知らないけど、日本の学校っていうのは、そういう計画性とかいうのも、生徒に教えているのか?」
 荒野が、孫子に尋ねた。
「……そういう学科は、ありませんわね……」
 孫子が、軽く眉をひそめてみせる。
「いわれてみれば……そう。
 そういうのは、生徒各自の才覚とか自主性に、任されています……」
「……なるほど……」
 荒野が、ため息をついた。
「マニュアルと目標は与えるけど、途中の過程は、自分で制御しなけりゃならないのか……。
 それじゃあ……生徒の生まれ育った家庭環境とかで、かなり有利不利が決まってしまうんじゃないのか?
 プランニングとかのノウハウ、教えてくれる人が周囲にいる環境の生徒と、そうでない生徒には、かなり差があると思うけど……」
「そう……ですわね。
 格差が世代を越えて、確定する……ということも、最近、いわれはじめています」
 孫子は、肩を竦める。
「親の年収が高い人ほど、学歴も、収入も高くなる傾向がある……というのは、案外、その辺に理由があるのかも知れません」
 実のところ、孫子は、ここに越してくる以前は、庶民の家庭環境や暮らしぶりについて、知る機会も持たなかった。なので、その辺の事情については、書物などから間接的に知った表層的な知識しか持たない。知識はあっても、実感はない……という点では、どっこいどっこいだった。
「……そんな、感じか……」
 荒野は、少し考え込んだ。
「なあ、楓。
 スケジュールやタスク管理のソフトって、組めるかな?
 いや、専用のソフトでなくても、表計算ソフトのマクロ程度でいいと思うんだけど……。
 学校の教科を、適当な単位に区切って、生徒ごとに達成度とか、表示できるようにする、とか……。
 そうすると、各生徒ごとに、進行度や理解度がチェックできるし、それに、自分のペースで学習できるだろ……。
 才賀がいったとおり、この学校で覚えるべき知識の内容や総量は、あらかじめ確定しているんだから……後は、どうやって効率的に、そいつを覚えていくか……って、ことだろ?」




[つづき]
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