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彼女はくノ一! 第六話(55)

第六話 春、到来! 出会いと別れは嵐の如く!!(55)

 家に帰ると、そうそうに風呂を勧められた。楓と孫子は、着替えると真理を手伝うため、すぐに台所に移動し、三人娘と羽生は、まだ帰宅していなかった。
 夕食の支度が整うまでのわずかな時間では、プレハブに籠もっても出来ることはたかがしれているので、香也は真理の勧めに素直に従い、ひさびさに一番風呂を使うことにする。制服をラフな部屋着に着替え、すぐに風呂場に向かう。湯加減を確認してから脱衣所に戻り、服を脱ぎ、かかり湯をしてから湯船に入り、手足を伸ばす。
 すぐに下校中に冷えた身体が暖まり、萎縮した毛細血管が弛緩し、手足の隅々まで血流が駆け巡る感覚に、香也はながながとため息をつく。
 ふと、香也は……どんなに周囲の状況が変化しようが、こういう感覚だけは、変わらないな……などと思い、周りがどんなに変わっても、自分自身は、何にも変わっていないよな……とも、思う。
 昨年からいろいろなことを経験したが……香也自身は、実のところ、あまり変わっていないような気がする。
 楓や孫子は……変わっていない部分と、変わった部分がある。
 楓は、以前よりも素直な笑顔をみせることが多くなった。以前、この家に住みはじめた当時の楓の笑顔には、どこか陰があったように思う。その陰が、時間が経過するにつれ、どんどん薄れてきている……というように、香也の目には映った。
 孫子は……変わった、といえば、孫子が一番、変わった。当初、香也のことを露骨に警戒し、敵視していたように見えた孫子は……今では、香也の前では、異常に思えるほど、べたべたしてくるようになっている。
 テン、ガク、ノリの三人に関していえば……変化がどうこいうことができるほど、香也は三人とのつき合いは長くない。だが、変化や成長……というよりも、ごく短期間のうちに、この周辺の環境にうまく適応しているように、見えた。
 彼女たち、それぞれの個人的な変化だけではなく……彼女たちや荒野、茅などの存在が、周囲に及ぼす影響が……今では、誰の目にも、無視できないものになっていた。
『……これから……』
 自分たちは、いったい、どうなってしまうのだろうか……と、香也は思う。
 僅か半年前の香也に、現在の香也の姿が想像できなかったように、現在の香也には、僅か数ヶ月後の自分の……自分たちの姿が、よく想像できなかった。

 香也が風呂から上がったのと前後して、羽生とテン、ガク、ノリの三人が帰宅し、普段通りの賑やかな食事になる。
 三人組は、相変わらず、シルバーガールズの準備に余念がないようだ。ここ数日、今の時点でできる撮影とか、将来の下準備とかの話題がよく話題に登る。羽生が時折、質問をはさみ、真理は、おだやかに微笑んで、かわるがわる昼間の出来事を話す三人をみつめている。
 その三人組は、夕食の後、そろって外出をする予定だという。それも、今夜だけではなく、しばらくは、続くという……。
「……今日も?
 昨日も、そんなこといって、ご飯の後、三人でていったろ……。
 撮影かなんかだと思ったけど……それ、例の、カッコいいこーや君がらみのか?」
 不審に思った羽生が、尋ねる。
「そんな感じ。
 ……っていうか、正確にいうと、かのうこうやがらみというより、佐久間がらみなんだけど……」
 ガクが、元気よく答える。
「佐久間さん……っていうと、日曜に来た、現象君とか梢さんのところ?」
 真理が、首を傾げる。
「そう。
 茅さんと一緒に、あそこに、佐久間の技を習いにいってるの……。
 ボクたちは、実際にやってみないとモノになるのかどうかわからないけど……茅さんとテンは確実に修得できるだろうって、いってた……」
 ノリが、真理に答える。
「……そう。
 佐久間さんたちのお家に、お邪魔しているの……」
 真理は、思案顔になる。
「……もっと早くにいってくれれば、何か用意したのに……」
「……あー……」
 どうやら真理が、連日、夜中におしかけていくこと心配しているらしい……と、悟った羽生が、助け船を出す。
「買ってきたものを渡すより、手作りの総菜かなんかのが、かえって喜ばれるんじゃないっすか?
 向こうさん、確か、寄り合い所帯とかいってたでしょ? 食べ物は、いくらあっても邪魔にならないと思いますけど……」
「……それも……そうね……」
 真理も、羽生の言葉に頷く。
「日曜には、あの大きな人に、おいしいものいっぱい作って貰ったし……今日のところは、冷蔵庫の中の作り置きを詰めて、持っていって貰いましょうか……」
 人数も多く、不意の来客も頻繁にある狩野家では、年少の住人たちの料理の練習もかねて、普段から日持ちする総菜を、かなり余分に作り置きしてある。
「で……その、佐久間さんたちのうちって、近いの?」
 羽生が、三人に尋ねた。
「住所でみると……ここから、結構あるみたいだけど……」
 三人を代表して、ガクが、答えると、羽生は、即座に真理に尋ねた。
「じゃあ……真理さん、車、借りられますか?
 この寒い中、みんなでとぼとぼ歩いていくことないよ……」
 どうやら、運転手を買ってでるつもりらしい。

 夕食後、ほどなくして茅が玄関に姿を現す。
 それを機に、羽生は車庫を開けて車を出し、三人組は冷蔵庫にあった総菜をタッパーに詰めて抱えて、外出した。
 香也は、それと前後してプレハブに向かう。今日は、放課後に学校でかなり時間を割いていたので、帰宅後の勉強は放免されている。つまり、これから寝るまでの時間、香也は、絵に専念できた。
 灯油ストーブに火をいれてしばらくすると、昨夜の同じように、すぐに荒野がプレハブにはいった。荒野は、一声、香也に声をかけてから、香也の邪魔にならない位置に移動し、そのまま香也の背中を見守りはじめる。
 荒野に続いて、風呂上がりの楓や孫子もやってきた。二人は、荒野の姿をみてももはや驚くことはなく、それぞれ、壁に立てかけてあったパイプ椅子を広げ、後ろに下がってそれに座った。
 三人とも、なんとなく定位置というものが出来はじめていた。
「……茅も、あの三人も……まだまだ、成長の途中だ。それに加えて、全員、学習意欲は高い。貪欲といってもいいほどに、高い」
 誰に聞かせるでもなく、荒野が語りはじめる。
「……おれは……最近まで、自分が何をやりたいのか、よく理解できていなかった。
 でも、最近、こう思うんだ。
 彼ら、新種や一族……それに、悪餓鬼どもや、一般人……。
 それぞれに、微妙に異質な部分を持つ人たちの摩擦を緩衝し、間に入って調整するのが、おれのすべき仕事なんじゃないかな、って……」
 しばらくは……誰も、荒野の言葉に答えることが出来なかった。
「……でも、それは……」
 しばらくして孫子が、この少女には似つかわしくない、妙に沈んだ声で、荒野の言葉に反応した。
「とても……困難な仕事ですわ。
 ほとんど、不可能といってもいいくらい……」
「……わかっている」
 荒野は、首を振る。
「わかっているよ。
 だけど、おれは……」
 ……できるだけ、いい結果を出したいんだ……と、荒野はいった。




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