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競泳水着の誘惑 (最終回)

競泳水着の誘惑 (最終回)

 急速にしぼんで力を失った栗田自身を舞花の中から引き抜くと、どろり、と驚くほど多量の白濁液が、舞花の中から溢れでてきた。栗田が吐き出した白い液体と、舞花が裂けた証拠である赤い液体が入り交じっている。
「うぁあ。血だよ血」
「初めてだったんだから、出血くらいする。
 それより、二回分とはいえ……こんなに出るもんなんだな」
「いつもは、こんなに出ないけど……痛くない?」
「痛い。でも、セイッチがまだ中にいるみたいだから、痛いのも悪くはない」
「……舞花、ときどき真顔ですっごい恥ずかしいこというよな……。
 そうだ。ティッシュティッシュ。そこ、拭いてあげようか?」
「ば、馬鹿者! 駄目! 却下! 自分でやる!」
「……ケチ……」
「そういう問題じゃない! いいからあっち向いてろ!」

 などというやりとりがあった後、なんとか身支度を終えた二人が女子更衣室の鍵を開け、まだ日が高い外に出ていくと、
「おそーい!」
 一応水泳部副顧問の肩書きを持つ三島百合香養護教諭が、カラフルなパレオ付きのビキニの上に白衣を引っかけ、顔の半分を覆うほどの大きなサングラスにサンバイザー、肩には浮き輪、手には扇、というなんともミスマッチ極まるふうたいで、童顔に似合わない仏頂面を作って仁王立ちになっていた。
 その後ろ、シャワーが据え付けられているあたりの日陰に、柏あんなと境雅史の二人が、仲良く並んで正座している。バツが悪い思いをしているのか、露骨に視線を合わせないようにして、あさってのほうに顔を向けているが。
「嬉し恥ずかし初体験は無事済ませたかバカップルズ二号。大清水先生から連絡があってプールを独占しよう、もとい、念のために様子みにきてみればあっちであんあん、こっちであふんあふんと盛大に発情しておってからに。学校をなんだと心得ておるこのバカップルズ一号および二号。やるんならやるでもう少し慎ましく最低限ばれないような工夫をしろこのお馬鹿ども。このクソ暑い最中馬鹿面さげて外でぼうっとおのれらが事を終わるまで待ち続けたこっちの身にもなってみろ。そもそもこんな防音もなんもなんところで派手に声たてやがってからにこのアホたれらめ。丸聞こえだったぞ。うらやましいじゃなくっていくら校庭の外れとはいってもまだまだ校内には部活の生徒とかそれなりに人はいるんだから気づかれるかも知れないとか思わなかったのかこのうすらとんかちズ。もう少し用心しろ。わたしだからまだよかったがこれがほかの先生方に見つかってみろ。お前らは停学程度で済むかも知れないが、こっちは連日の退屈な職員会議を召集されて強制参加。ろくな男もおらん職員室で不毛な時間を長々と過ごさねばならんのだ。そんなもんに付き合わされるこっちの身にもなってみろ……」
 身長百三十五センチ、体型つるペタ(愛称・みにら)。童顔のため、下手をすると生徒以下の年齢に間違われることもままあるが、実際の年齢は、日差しの厳しい季節には厳重な紫外線対策を必要とするお年頃。栗田精一よりも背が低く、柏あんなよりも胸がない、そんな三島百合香養護教諭の嫉心混じりの説教は、何度も何度も脱線を繰り返しながらし延々と続いた。
「……第一、こっちはもう何年も男日照りだというのに、柏にせよ飯島にせよ、学生の分際でさっさと特定の男を捕まえているのが気にくわない! お前らの男、少しはこっちに貸せ!」
 えんえんと続けるうちに三島百合香養護教諭がそんな本音をぽろりとこぼすと、
「却下だ!」
「嫌です!」
 間髪いれず、三島百合香養護教諭の目前にたちふさがった巨乳と微乳の女生徒二人が胸を反らして棒立ちになり、無言のまま養護教諭を威圧する。無言とはいっても、その威圧感はただごとではなく、巨乳のほうは、たしか、男女を問わずよくプロレスごっこの相手を捜しているし、微乳のほうは、幼少時から空手の道場に通っている、とか聞く……。
「……ぅ……ぅ……」
 気迫に圧され、背をのけぞらせ気味の姿勢のままで固まって、絶句したまま、しばし冷や汗を流していた三島百合香養護教諭は、
「うわーん。生徒たちがいぢめるー!」
 と叫びながらプールのほうに駆けていき、教育者にあるまじきことに、そのまんまなんの準備運動もせず、どっぽーん、と盛大に水飛沫をたて、プールの中に身を踊らせた。

 それから飯島舞花と栗田精一はシャワーで汗とその他の汁をきれいに洗い流した後、プールで水遊びをしている三島百合香養護教諭、柏あんな、境雅史の三人に合流。
 でも、そのうち三島百合香養護教諭が、教育者兼「女の先輩」として柏あんなと飯島舞花の両名に、避妊や性病の正確な知識を独演しはじめ、それはすぐに質疑応答の形へと変化、さらには、心身両面における男性のうまい操縦の仕方、とか、具体的なセックスの技法とかの身も蓋もない内容へと変遷していく。
 興味津々な様子で熱心に話し込んでいる女性三名とは別に、そうしたあけすけな内容を聞くことに居心地の悪さを覚えた男子生徒二名は、少し離れたレーンで所在なげに泳いだりぷかぷか水に浮いたりして、「柏家のあいのあわおどり」とか「かつやくきん」とか、意味不明だったり不穏当だったりする単語は、いっさい聞こえないふりを決め込んでいたそうです。

 まあ、見方によっては、「教育的な」時間では、あったかも知れない。

 まだまだ残暑が厳しい九月初旬の、土曜日の昼下がりのことだった。


[おしまい]
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