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彼女はくノ一! 第六話 (89)

第六話 春、到来! 出会いと別れは、嵐の如く!!(89)

 それから孫子は、ノートパソコンを持ち出してきて、楓を相手になにやら込み入った相談をしはじめる。配送ルートがどうの、人員の配置状況がこーとのいうことで、要は「どうしたら一番、仕事の無駄を省けるか」という相談らしい。細部についてはよく理解できないながらも、香也は、楓と一緒にノートパソコンの画面を覗き込む。画面には、周辺地域の地図とか、どうやら配送する荷物の物流量を示すものらしいグラフ、それに重なるようにして、時間の推移によって作業員の出入りを記録したグラフ……などが表示されている。
「……ご覧の通り、このサービスは、開始してから間もないにも関わらず、クチコミで利用者が倍増している状況です……」
 ありがたいことに……と、前置きして、孫子は、そう話しだした。
「利用状況に応じて、手数料をかなり割安にしたり、定額制を導入したり……と、回数券やポイントカードの発行などをして、料金を透明化し、ライフスタイルに合わせて利用方法を選択できる料金体にしたのが、評価されているのではないか……と、分析しています」
 孫子によると、当初、このサービスは、日用品の買い物をしている時間がない、一人暮らしをしている人々をメインのターゲットに想定していたのだが、意外に主婦層の利用も多い、という。
「……かさばる荷物を、格安の料金で、指定した時間に運んでくれる……というので、まとめ買いをしたり、休日に買い物をしてから、そのまま遊びに出かけたり……という使い方をする人が、徐々に増えてきました」
 当然、商店街でも、食料雑貨などの日用品や消耗品が、じわじわと売り上げを伸ばしている。
「……でも、そうなればなったで、負担が増えるのは、サービスを提供する側で……」
 顧客の細かい注文に応じるためには、作業員の人数も、余裕を持って確保しなければならない。それに、流通する物流量が増える、ということは、それだけ倉庫の床面積も必要となる。資金にはまだ余裕があったが、それでも、利益率を上げるためには……。
「……極力、無駄を省かなくてはならない……わけですか……」
 楓は、孫子が示した資料をチェックしながら、頷いた。
 今のところ、赤字ではないが……このまま、利用者が増え続ければ、そのせいでかえって経費がかさみ、経営が破綻する……ということも、十分に想像できる資料だった。
「好評だから赤字化する、というのも、本末転倒ですわね……」
 孫子はそういって苦笑いをする。
 孫子は、実家で経営やロジスティックについて、一通りの知識やノウハウを詰め込まれているが、個別の家庭や個人を相手にする物流と企業を相手にする物流とでは、かなり勝手が違う。
「……今、すぐできることは、顧客ファイルの整備をして、過去の利用状況から、近い将来の利用状況を予測し、必要になる人数の予測を立てること……くらいでしょうか……」
 この会社での楓の専門は、データの処理だった。
 当然、過去の統計から、人件費などを最適化する……などの発想になる。
「それも、いいのですが……」
 孫子は、ため息をついた。
「確保していた倉庫が、予想外に早く……もう、キャパシティ・オーバーになりつつあります……」
 孫子はこの近辺の地図に重ねて、赤と青、二種類の矢印を表示してみせる。
「荷物の出入りが激しいのは、業務上、まことに結構なことなのですが……」
 このまま勢いを落とさないまま顧客が増え続けた場合の、一月後の配送ルートを示したデータだった。青の矢印が、配送が全うできているルート、赤の矢印が、荷物がオーバーフローして、実質、麻痺してしまうであろうと予想される、配送ルートだった。
 青の矢印よりも、赤の矢印の方が、断然、多い。
「もちろん、作業員を多く確保して、人海戦術で処理に当たれば、その場はしのげるわけですが……」
 そうなると、今度は、確実に採算割れになる、という。
 なるべく早く、根本的な部分から、システィマティックに合理化を推進する必要がある……というのが、孫子の考えだった。
 楓は、資料にざっと目を通す。今まで、孫子に相談され目を通していた資料と重複するところが多い。地図と現実の物流量の推移データを頭の中で重ね合わせるうちに、楓は、今までにもやもや感じていた違和感の正体が、だんだん明瞭になって来る気がした。
「……あの……」
 楓は、遠慮がちに片手をあげる。
「荷物って……どうしても、商店街から、運ばなければならないんですか?」
「……そのことは、わたくしも考えました」
 孫子は、楓の言葉に頷きながら、返答をする。
「他のものはともかく……生鮮食料品に関しては、注文したものと違うものが届くのは、トラブルのもとです」
「では……それ以外の日用品は、倉庫や工場から、お店を通さずに、個別に直送するルートを作っても大丈夫ですよね?」
 楓は、売れている商品の品目別にチェックしながら、孫子に向かって、そういう。
「量的なことをいえば……そうした生鮮食料品よりも、それ以外のものの方が、ずっとかさばります。
 日用雑貨や鮮度があまり重要視されない加工食品などは、別の倉庫にストックしておいて、注文がありしだい配送する……という形にすれば……」
「……商店街で扱う商品のうち、かなりの部分をカタログに落とす作業が必要になってきますわね……」
 孫子も、楓のいわんとすることを理解して、頷いた。
 楓は……商店街を丸ごと、いっそ、ショールームにしてしまえ……といっている。
「……これから確保する倉庫も……少し、不便なところを選べば、それだけ経費がかからないわけですし……」
 いいながら、楓は、パソコンを操作し、商店街から直接配送しなければならない商品と、そうでない商品とを区別し、その物流量を比較しできるように、表にして孫子に見せた。
「……かなり大雑把な分類で、あまり正確ではありませんが……」
「その方向で行きましょう」
 孫子は、あっさりと頷く。
「導入時に、かなりのマンパワーと資金が必要になりますが……将来的なことを考えると、それしかないと思いますわ」
「もうすぐ、学校がお休みになりますから、そうしたらわたしも、準備を手伝えます」
 楓も、頷く。
「必要な人手は、いくらでも確保できるのですが……肝心の倉庫は……」
 孫子が、少し考え込む様子をみせる。
 すると、
「……んー……。
 心当たり、あるけど……」
 意外なことに、それまで黙って二人の話しを聞いている一方だった香也が、片手をあげて、そんなことを言いだした。




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