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彼女はくノ一! 第六話 (111)

第六話 春、到来! 出会いと別れは、嵐の如く!!(111)

 テン、ガク、ノリの三人にホン・ファとユイ・リィの二人を加えた五人を送り出してからしばらくすると、服を着た舎人が居間に入ってきた。
「……二人はまだ寝ているし、こっちにいた方がいいかな、って思ってな……」
 そういって炬燵に入る舎人に、ごく自然な動作で静流がお茶を用意する。
「……ちょうどよかった……」
 シルヴィが、舎人に向かって意味ありげに笑いかける。
「問題児の保護者の先輩として、何かアドバイスでもない?」
「……問題児の保護者……ねぇ……」
 舎人は、ずずず、と熱いお茶を啜りながら、ぴくん、と片方の眉を跳ね上げる。
「おれが頼まれているのは現象の監視で、保護者になった覚えはないけどな。
 あと、そういうの先輩、ってことなら、それこそ、あの先生が元祖だろう……」
 ここでいう「あの先生」とは、一応、名目上の「荒野と茅の後見人」である、三島百合香のことである。
「あのセンセイが、有用な助言をしてくる……って、本気でそう思うの?」
 シルヴィは、実に楽しそうな表情になった。
「……まともなこといわねーだろうな、あの先生なら……」
 舎人は苦笑いを浮かべて、ゆっくりと首を左右に振る。
「しかしまあ、気づけば随分とおかしなことになっているよな、ここも……。
 最強はいるは、野呂の姫さんはいるは……あげくに、姉崎まで集まってくるし……」
「わたしたち、佐久間もです」
 今度はそれまで黙っていた梢までもが、口を挟む。
「前例のない、未曾有の事態だということは……わたしも、理解しています」
 梢が「わたしも」……と、わざわざ断ったのは、「佐久間である」ということと、それに「まだ若い梢が」という二重の意味を強調したかったからだろう。年齢だけで判断するのなら、梢は、保護するよりもされる側に分類される年頃だった。
 それだけ優秀で、佐久間の中でも信頼されているのだろうな……と、舎人は思う。長くはないこれまでの付き合いからも、梢の真面目さ、慎重さを思い知る機会は、少なくはなかった。
「で、その、前例のない、未曾有の事態っていうのに対して、わたしたち大人はどういうスタンスで取り組んでいくか、っていうのが、問題になってくるわけねー……」
 あくまで軽い口調で、シルヴィは続ける。
「……いつまでも、コウ任せ……ってわけにも、いかないでしょ?」
「……荒野は、よくやっていると思うぜ」
 ……これが、本題だな……と、舎人は直感する。
「正直、別の大人が出張っても、あいつよりもうまく、今のこの事態を捌けるとは思えない」
「そ……そう、です……」
 静流が、舎人に同調する。
「わ、若は……若以外の方が仕切っても……み、みんな……い、今ほど、大人しく収まっているでしょうか?」
 静流のいう「みんな」とは、最近、この土地に流入してきた一族の関係者、すべてのことだ。
「……コウは、サラブレッドだからねー……」
 シルヴィも伏し目がちになって、軽くため息をつく。
 加納本家の直系であり、「最強」荒神の一番弟子……血筋と実力を兼ね備え、なおかつ、今まで信頼を損なうようなポカをしていない。さらにいうと、一族の、人を評価する時の一般的な価値観は、実力主義的な見方に偏っているのだが……荒野は、若年にもかかわらず、十分な実戦経験も積んでいる。
 ……ということから、一族における荒野の人望と評価は、かなり高い。荒野自身がそうと自覚しているよりは、よっぽど高い。特に、荒野と同年配の若年層には、絶大な人気を誇っていた。
 また……荒野自身はそうした自分の人望を、よく自覚していないのか、あるいは、自覚していても、あまり重要視していないのか……ともかく、平然と無視している、という側面もあった。
 荒野自身は、どうも、茅やあの三人娘目当てだけで、一族の若者たちがこの土地に流入してきている……と、本気で信じ込んでいる節がある。
「確かに……コウがいなかったら、ここまで人が集まってくることも、なかったんだけどねー……」
 シルヴィの言葉に、その場にいた全員が頷く。
 例え、茅たち新種がいたとしても……荒野がいて、自分の正体を晒した上で、一般人と共存しようとしている……という事実がなかったら、ここまで人は集まってこないのだ。
「……あいつも、天然で、自己評価が低いからなぁ……」
 舎人が、ため息混じりにシルヴィの言葉を引き取る。
「例えば現象なんぞ……。
 荒野という重しがなかったら、もっと好き放題にしているぞ……」
 舎人は、暗に「自分や梢だけでは、現象を抑えきれない」といっているわけだが……特に韜晦してそういっている様子でもなかった。
「現象が大人しくしているのは……」
 梢が、舎人の言葉を補足する。
「ひとつは、加納の若が、抑止力となっていること。
 あとひとつは、うまくいきかけているこの土地の様子をみて、今までとは違った希望を見いだしたこと……」
「……だから、さ……」
 シルヴィが、その場にいる全員の顔を見渡して、いった。
「保護者、っていい方があれだったら、大人が……と言い直すけど……。
 ようするに、わたしたちがコウたちに出来ることが何か……っていうことよね、問題は……」
「……何が出来るか、って……」
 舎人は、にやりと笑う。
「別に、何もやらなくていいんじゃねーのか……。
 その、何も問題がなければ。
 このままで……」
「か、仮に……な、何か……」
 静流が、先を続ける。
「……も、問題が起こったとしたら……」
 何らかの理由で、新種たちが暴走し……一族や一般人にとって、有害な存在になった場合。
 それに、荒野が「悪餓鬼」と呼ぶ未知の存在などが介入してきた場合。
 現在の状況を破壊する要因として、内因性と外因性、大きく分けて二つの「危険要素」があるわけだが……。
「止めるな」
 舎人は、平然とした顔で言い放つ。
「何が何でも、止める。
 力ずくで、止める」
 舎人の言葉に、大人たちは一斉に力強く頷いてみせた。


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