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彼女はくノ一! 第六話 (134)

第六話 春、到来! 出会いと別れは、嵐の如く!!(134)

 ともすれば、がっくりと力が抜けて、その場に崩れそうな楓の体を、前後左右から同時に差し出された手が、支える。
 見物に回っていた、一族の者たち、だった。彼らの間には、実力によって序列をつける気風が残っている。ジュリエッタとの勝負でその実力をみせつけた形になる楓は、彼らから尊敬の目で見られる資格は、十分にあった。
 疲労で意志がはっきりとしていない楓の耳に、楓を賞賛する大勢の人の声が入る。が、体内に酸素を取り込むのに忙しい楓は、その声が耳に入っていても、その意味するところを、実感を持って理解してはいない。
 言葉の意味は、わかるのだが……そこまで大仰に誉めたたえられる、といった経験が皆無であった楓には、自分が賞賛されている、という実感が、いつまでもわかなかった。
「はいはい、どいてねー」
「楓おねーちゃん、こっちで休ませるからー……」
 テン、ガク、ノリの三人が、人混みをかき分けて、楓に近づき、楓の体を抱えるようにして、どこかに運んでいくのにも……楓は抵抗せず、されるがままになった。
 とにかく、全身が重く……なにも、する気力が起きない。
 三人は、楓の体を抱えて、工場内のプレハブに入る。
 そこで、例によって一連の動きをすべてビデオに撮影してモニターしていた徳川に声をかけ、さらに奥へと進んだ。
 楓は、ここまで奥に入ったことはないのだが、毎日のように工場に通っている三人にとっては、お馴染み場所だ。
「楓おねーちゃん、シャワーで汗流したい?」
「その前に、マッサージしようか?
 全身に乳酸、溜まっているだろうし……」
「すぐスポーツドリンク持ってくるから……」
 楓の体を、とりあえず、応接セットのソファの上に下ろし、三人はかいがいしく楓の世話をはじめる。
「……なんだったら、このまま寝ちゃっていいよ……」
「着替えとか家まで運ぶの、ボクたちでやるし……」
「ほら、たっぷり汗かいているんだから、これ飲んで……」
 楓がぐったりしているのをいいことに、三人は、手際よく服を脱がしてタオルで汗を拭っていく。もちろん、徳川はその前に室外に追い出されている。
「……あっ」
 楓の服を脱がせて汗を拭っている途中で、ガクは、あることに気づいた。
「この匂い……」

 次に楓が目を覚ましたのは、タクシーの中だった。いつの間にか寝てしまったらしい。三人が着替えさせたのか、忍装束ではなく普段着になっていた。
「あ。目が醒めた?」
 テンが、いち早く楓が目醒めたことに気づく。
「徳川さんがタクシー呼んでくれた。
 もうすぐ、家につくから……」
「ん」
 楓は、言葉少なく返事をする。
 とりあえず、体中から「だるさ」が抜けきっていなかった。
「帰ったら、すぐに夕食だって。真理さんが……」
 ということは……時間的には、いくらも眠ってはいなかったらしい。
 ぼんやりと聞き流しながら、楓はそんなことを思っている。

 タクシーが家に着く頃には、多少のだるさが残っているものの、楓の体調はほぼ回復していた。
 居間で炬燵にあたっていた香也と台所の真理に挨拶するのもそこそこに、みなに勧められるままに風呂に入る。楓が一番風呂を貰う、というのも珍しいことだったが。
 殊勝なことに香也は、あれからずっと自習をしていたらしく、炬燵の上に教科書やノートを広げていた。香也の勉強を見るようになってから気づいたことだが、香也は一度手をつけると、それなりの集中力を発揮するタイプだった。これまで、絵を描く課程で培った集中力、ではあろうが……一度、「入る」と、そのことにのめり込む……という性質は、学習する際には有利に働く……。
 そんなことを考えながら、楓はゆっくりと湯船につかる。先ほどのジュリエッタとの対戦やその前後のことは、この時の楓の意識から、きれいに抜けきっていた。
 楓は……良くも悪くも、自分自身のことを、あまり重要視しない気質の持ち主だった。
「……楓おねーちゃん、入るよー……」
 脱衣所の方で、ガクの声がする。先に誰かが入っていても、時間が空いている人から順に入る……ということは、香也以外全員女性であるこの家では珍しくはない。脱衣所の様子を伺うと、声をかけてきたガク以外にも、何人かの気配がした。複数名での入浴もいつものことなので、楓は生返事をしただけで聞き流す。
 しばらくして、裸になったガクと孫子が、入ってきた。テンとノリは、真理の手伝いでもしているのだろう。
「……聞きましたわ。
 今日のこと……」
 かかり湯をして湯船に入ってきた孫子が、前置きも抜きして楓に話しかける。
「今日のは……なんていうか、成り行きで……」
 てっきり先ほどのジュリエッタとの一件のことだろう……と思いこんだ楓は、不明瞭な答え方をする。自分自身のことを誇らしげに語るのは、楓の性格では難しい。
「成り行って、あなた……」
 孫子の眉が、ピクリ、と跳ねる。
「……そんなに軽々しい言い方は、なさらないで欲しいものですわ……」
「あの……」
 妙に不機嫌な声で孫子にいわれ、楓の声がますます小さくなる。
「……すいません……」
 ……何か、孫子の機嫌を損ねるようなことを、最近、しただろうか……と、楓は自分の記憶の中をほじくり返しはじめる。
「……今日は日曜だから、楓おねーちゃんが何をしようと自由なんだけどさ……」
 今度はガクが、どこかふてくされた風の声を出す。
「もう少し、その……加減、ってものを考えても、いいんじゃないかなー、って……。
 あんなに、思いっきりやってくれちゃってさぁ……」
 ……え? え? え?
 と、ここで、楓はかなり戸惑いはじめる。
 ジュリエッタさんの時……もう少し、遠慮した方が、良かったんだろうか……とか、楓は思いはじめていた。
 でも……下手に手を抜ける相手でもなかったし……そのことは、実際にその場で見ていたガクにも、分かることだと思うのだが……。
「まったく……」
 孫子が、ぎり、と、奥歯を噛みしめた。
「……他の子たちが忙しいのをいいことに、何度も何度も……」
「……忙しい?」
 楓は、気の抜けた声を出す。
「何度も……何度も?」
 これまでに感じていた違和感が、明瞭になった気がした。
 この会話は、どこか決定的なところで、噛み合っていない……。
「何度も何度も何度もっ!」
 孫子が、大きな声をあげた。
「したんでしょう! 香也様と! 今日!」
 ああ……そっちのことかぁ……と、楓は、どこか他人事のような心境で、納得していた。



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