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「髪長姫は最後に笑う。」 第六章(397)

第六章 「血と技」(397)

「先輩は、別に、一般人として後輩の相談に乗るだけだから、心配はいらないと思うの」
 荒野の、内心の狼狽を見透かしたように、茅が横合いから口をはさんだ。
「仮に、なにかの間違えで巻き込まれたとして……先輩には、源吉がついているし……万が一の時は、そこの酒見姉妹を護衛につけてもいいし……」
 茅の言葉に、源吉が重々しく、酒見姉妹は、少々戸惑った様子で、それぞれに頷く。
 困ったことに、というべきか、それとも、重畳なことにいうべきか……今度の春から、沙織と酒見姉妹とは、新入生として同じ学校に通いはじめる予定になっていた。
 護衛としてみると……これほど、便利な人材はいない……ということになる。少なくとも、荒野が沙織の介入を……沙織がこおさらに深入りしてくるのを禁止する……という口実を、無効にする理由には、なった。
「ま、いいけど……」
 茅に凝っと見つめられて、荒野は、結局、折れることにした。
 本音をいうならば……ただでさえ、十分にややこしいことになっている現在の状況下に加え、さらに沙織のような一般人にまで、こちら側の領域に、あまり深く入り込んで欲しくはないのだが……。
「イザベラの連絡先は、さっきシルヴィに教えてもらっていたから……あと、現象とかは、昼間工場にいけば、会える確率が高い……か……」
 荒野は、そんなことを小さくつぶやき始める。
 仲介の労をとろうにも、どうやら、荒野が出来ることは少ないらしい。
「別に、いいから。
 そんな細かいことは、こっちで考えるから……」
 沙織が、苦笑いを浮かべながら、荒野に告げる。
「荒野君は荒野君で、いろいろと大変なんでしょ?」
「大変っていうか、気苦労だけは多いっていうか……」
 今度は荒野が、苦笑いをする。
「……実際のまとめ役みたな人たちが、以前に比べると増えて来ているんで、実務的な部分ではそれなりに楽をさせてもらっていますけど……まあ、気楽、では、ないですね……」
 荒野の口調は、あまり歯切れがいいものではない。
 実際のところは、各々勝手に動き始めた末端の様子を、荒野があまりよく把握できていない……という側面もある。
 試験休みに入ったら……と、荒野は思った……少し、自分の足を使って、いろいろと見て回らなければな……と、荒野は思った。
 なにかしらトラブルがあったら、荒野の耳には入ってくる筈であるから……最近、荒野の周辺が静かである、ということは、言い換えれば、どこかで多少ごたごたがあっても、その場で解決して周囲に延焼していない、ということなのだろう……と、荒野は楽観的に考えることにしている。頻繁に視察みたいなことをして、この土地に自分の意志で流れてきた一族の者たちを、必要以上に萎縮させたくなかった。
 仮に、「加納荒野が、頻繁に見回りをしている」ということにでもなれば、一族の者たちは、「それだけ不安定な状況になっているのか」と不必要な緊張をする。それが容易に想像できたので、荒野は、特に学校に通っている間は、できるだけ「普通の学生」の域を出ないよう、自分の行動を制限しているつもりだった。荒野自身の自覚や「つもり」としてはともかく、「一族の中」では、「加納荒野」の名は、幾分の畏怖を発生させる固有名詞なのである。
 だが……長期休みに入ったら、ぶらりと散歩にいきがてら、あたりを見回ったとしても……さほど、警戒されることもないだろう。
「……荒野君は、心配しすぎよ。
 わたしは、なんか面白そうな人たちがいるみたいだから、勝手にかぎまわるだけ。
 本当に、ただそれだけなんだから……」
 荒野が少し思案顔になったのを誤解したのか、沙織がそんなことをいい添える。
「いや……もう、それは止めやしませんけど……。
 その、こういってはなんですけど、うちのやうらって、本当、変わっているのが多いですよ」
 しぶしぶ、といった感ではあるが、荒野は、沙織がこちら側に近づいてくることを認めてしまっている。正確に言うのなら、積極的に反対すべき理由がないから、反対できない。
「期末試験が終わったら……」
 荒野の気持ちはおそらく推察しているのだろうが、表面にはそんなそぶりを感じさせない茅が、沙織にいう。
「……先輩を、徳川の工場に案内するの。
 あそこは、今、一族の溜まり場になっているから……」

 夕食が終わり、沙織と源吉が帰る。
 残った酒見姉妹と茅とが夕食の後かたづけを行い、その後、連れだってマンションを出ていった。今夜は、週に何度かある「佐久間の技」の講習がある日だった。
 これは別に何曜日、とか固定して決まっているわけではなく、メールなどで連絡を取り合って、集まる日を決めているらしい。今ではテン、ガク、ノリの三人もそれなりに多忙であり、毎日夕食の時間にはお隣の狩野家に帰っているらしい。が、そこにまで仕事を持ち帰ることも、少なくはないらしかった。
 また、この日はテン、ガク、ノリの三人と一緒に行動するわけであり、荒野も、茅のことを心配することなく、安心して送り出すことができる。
 茅と酒見姉妹を送り出し、久々にひとりになった荒野は、早速ノートパソコンを立ち上げ、一族が管理するサイトにアクセスする。昼間約束した、「ジュリエッタを暇にしないため」、斡旋する仕事を見繕うつもりだった。
 ハイリターンではあるが、同時に、ハイリスクでもあり、結果、供給過多になっているたぐいの「仕事」は、常時それなりの数、存在する。その中からジュリエッタ向けの……言い換えれば、荒事、それも、繊細な判断能力はさほど必要とはせず、力技のごり押しでなんとかなるたぐいの荒技だけを選別して、ピックアップしていく。
 必然的に血なまぐさいものが多くなったが、ジュリエッタあら、その辺のことはあまり気にはしないだろう。
 いくつか見繕った候補をプリントアウトして外出の支度をした荒野は、そのままマンションを出て静流の家に向かう。茅はまだまだ帰ってはこない筈だし、なにかの用事が出来て荒野が遅くなるようだったら、メールででも連絡すればいい……と、荒野は思った。

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