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彼女はくノ一! 第六話 (139)

第六話 春、到来! 出会いと別れは、嵐の如く!!(139)

 休み時間になるたびい、茅は廊下に出ていった。別に香也が茅のことをことさらに注視していたわけではなく、この頃になると、特に、試験が近づくにつてれ、茅の周辺には常に何人かの生徒たちがたむろしている状態だったので、茅の動向は自然と人目にたつようになっていた。
 一つの試験が終わるたびに、茅は、自分の問題用紙に赤ペンで模範解答をざっと書きつけ、周囲に集まる生徒の誰かに適当に押しつける。そして、その茅の模範解答が回覧されている間に廊下に出て、ある三年生と落ち合う。もともと他人の顔などろくに記憶していない香也は、その三年生についてもまるで知らなかったわけが、同じクラスの生徒たちがサクマセンパイとか囁きあっていたので、なんらかの理由で有名な人なのかも知れない。ネクタイの色から判断すると、そのサクマセンパイは三年生の女生徒なわけで、卒業間際のセンパイと茅とがどういう経緯で知り合いになり、試験が終わるたび落ち合っているのか……香也には想像がつかない。
 廊下でそのサクマセンパイと合流した茅は、その場で携帯を取り出して、サクマセンパイが持参した紙の写真を撮る。すると、サクマセンパイは、そのままきびすを返して一年の廊下から去っていく。その間、ほとんど会話らしい会話もない。二、三、軽い挨拶や必要最低限のやりとりがあるくらいだった。二人が一年の教室の前で合流することは、事前に詳しく打ち合わせしてあった……としか、思えないこうけいだった。
 そのサクマセンパイが去った後、教室に戻ってきた茅は、先ほどから回覧されていた自分の「模範解答」を取り返し、これも、携帯に付属しているカメラで撮影。その後、携帯を操作して……どうやら、メールを発送しているらしかった。
 茅の一連の行動が、どういう意味を持つのかは、完全に香也の想像の外になる。
 香也にもわかることといえば……。
『……茅ちゃん、みんなに囲まれている……』
 ということだった。
 メールを送信し終えた茅は、周囲に集まってきた生徒たちに乞われるままに、先ほどの試験の解説をしたり、次の試験の予想をしたりしている。
 以前、茅が学校に通う前、荒野は、「茅が学校生活に適応できるか」と、傍目にもわかるほど気を揉んでいたものだったが……今の茅は、香也などよりは、よっぽど、学校生活に適応しているように思えた。

 業者が実施する偏差値を測定するための試験も含め、その日の試験がすべて終わると、香也はそそくさと帰り支度をする。試験期間中は課外活動はすべて禁止されているので、いつもなら楓と一緒に帰宅するところだが、その楓は掃除当番に当たっていて、少し遅くなる、ということだった。
 香也は二年の孫子が合流してこないうちに、と、帰りを急いだ。別に孫子のことを嫌っている……ということもないのだが、孫子のような自分とは不釣り合いな少女と二人っきりで歩く……ということに、香也は気恥ずかしさを感じてしまう。楓やテン、ガク、ノリのような親しみやすさがあるタイプだと抵抗感もかなり薄れるのだが、どこか凛と張りつめた雰囲気を漂わせている孫子と香也のようなぼーっとしたのが並んでいると、ミスマッチさで余計に目立つような気がした。
 そんなわけで少し早足で昇降口までいく途中、階段のころでその孫子からのメールが着信する。楓と同じく、掃除当番に当たっているので、先に帰ってもいい、という内容だった。終わるまで待っていてくれるとありがたい、ということも丁寧な文面で書かれていたが、香也は当然、その部分は無視する。
 先週の経験から想像をたくましくすると、どのみち帰宅したら午後の半日をべったりとひっつかれて過ごすことになるのだ。帰り道くらい、ひとりでゆっくりと歩きたかった。

 試験期間中は全学年が一斉に下校するので、昇降口付近はそれなりに混雑をしていた。その雑踏の中に、香也もよく知っている顔が集まってなにやら話し込んでいた。
 荒野と茅、それに、サクマセンパイとかいう人の三人だった。
 荒野はすぐに近くを通りかかった香也に気がつき、声をかけてくる。しばらく四人でいろいろと話し込んで、香也が適当にあいづちをうっているうちに、何故か知らないが、香也はこれか試験期間中、放課後、荒野のマンションに集まって勉強をする……ということになってしまった。どうやらこのサクマセンパイという人は、希代の「教えたがり」らしい。
 荒野のついでに、香也の勉強も見てくれる……と、いう。
 仮にその約束がなくても香也は同居人の少女たちから入れ替わり立ち替わり面倒を見られている立場であり……それよりは、荒野たちの中に入って勉強する方が、いくらかでも気分が楽、ではある。よくよく考えてみれば、香也にとっても、決して悪い話しではないのであった。

 荒野たちとはマンションの前で分かれ、いったん自宅に戻った香也は、着替えた後、真理がつくってくれた簡単な昼食を食べる。その途中で楓と孫子が前後して帰宅し、一緒に昼食をとる形となった。
 そこで香也は、午後いっぱい、荒野のマンションで一緒に勉強をすることになった……という件を、二人に話す。
 楓と孫子は、唐突な話しにかなり驚いていた様子だったが、荒野と茅、それにサクマセンパイという人が一緒だからというと、不承不承、といった態で納得をしてくれた。
「本当は、一緒にいきたいところですけれども……」
 孫子は、そういう。
「あんまり大勢で押しかけても、迷惑ですものね……」
 一部屋がかなり広めの間取りではあったが、荒野のマンションは、二LDKでしかない。特に必要もないのに多人数が詰めかければ、確かに、迷惑にはなるだろう。
「茅様が一緒なら、間違いはないですね……」
 そういいながらも、楓は、露骨に残念そうな顔をしている。
「わたしなんかが教えるより、よっぽど確実ですし……」
 どのみち、楓にしろ孫子にしろ、香也がいなければいないで、やることはいくらでもある身だった。二人とも、香也と同じ学生でもあるわけで……自分の時間があれば、自分自身の勉強にあてることになるのだろう。
 また、そうしてくれたほうが、香也自身の気持ち的にも、かなり楽でもあった。


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