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第六話 春、到来! 出会いと別れは、嵐の如く!!(147)
「すでにお気づきのこととは思いますが、あるいは、お気づきの上であまりお気に止めていないことと思いますが……」
正座した孫子が、奇妙な前置きを述べた後、やはり対面して正座した香也に滔々と語りかける。
孫子が、「少し真面目な話しがある」ということで、こうして二人で向かい合って正座をしているのであった。
「……わたくしたちは、現在、とても微妙なところにいます。加納も、一族の人たちも、楓も、テン、ガク、ノリの三人も、それぞれに頑張っていますけど……それでどうにかなるのか、正直、よくわかりません。
何故ならば、こちらを攻撃してくるかもしれない相手の正体や目的、実力や性質などが、目下のところまったく掴めておらず、対策のたてようがないからです。それでも、脅威の存在だけは確実ですから、むやみやたらと警戒を強めているのが現状です。
ここまでは、理解できていますか?」
孫子のそう水を向けられて、香也は一応、頷いてみせる。香也も、一通りの話しは聞いている。
「実感があるか?」と聞かれたら、かなり微妙な線だったが、「理解しているか?」という問われ方なら、考えるまでもなく頷くことができた。
「……加納と一族は、目下のところ、この土地全体を……それは、自分たちとこの近辺の一般人社会との関係を含めて、ということですが……防衛するための組織を作ろうとしています。
楓やテン、ガク、ノリは、加納や一族に協力しつつも……いざとなれば、すぐ目の前にあるものを守るために、動いてしまうでしょう。あの子たちは、どんなに強くても……今のところ、大局をみようとする意志がありません。意志があっても、目前の不幸をみすみす放置できる性格ではありません……」
この言葉にも……孫子がかみ砕いて説明してくれたから、という側面はあるが、香也は素直に頷くことができた。
確かに……あの子たちは、目前の不幸……例えば、学校の人たちや商店街の人たちが何者かに襲撃とかされていたら、後先を考えるよりも前に、行動に移ってしまうことだろう。
「……加納と加納が率いる一族は、少なすぎる戦力で広すぎる地域を防衛しようとしています。
当然、無理はあり、どこかしらに穴は出来てしまうでしょう。防衛網は、構築できたにしても、とうてい完全なものにはなりえません。おそらく、重要と思える拠点のいくつかに分散して人員を配置し、それが及ばない地域には監視網だけを整備して、何か事があればそちらに人員が移動する……という体制になるでしょう」
この箇所には、香也は頷かなかった。
孫子のいうことが理解できない……というわけでもないが、孫子の予測が妥当なものかどうか、そういうことをこれまでまったく考えてこなかった香也には、とうてい判断できない内容だったからだ。
頷かない、という香也の反応を予測していたのか、孫子は構わず先を続ける。
「……楓とテン、ガク、ノリは、そうした火急の際の遊撃隊としては、とても協力です。それぞれに、個人レベルではトップクラスの打撃力を持っていますから……」
この箇所には、香也はすぐさま頷くことができた。
彼女たちの凄さ、については、まったくの素人である香也には、容易に納得ができる。
孫子はさらに先を続ける。
「……さて、ここに一つ、問題があります。
彼ら彼女らが、あえて問題にしていない、大きな弱点を、わたくしたちは持っています。
あるいは、気づいていて、その上で、意識するのが怖くて、普段はあえて考えないようにしているのかも知れませんが……。
ここを衝かれると、わたくしたちはたちまち戦意を喪失し、総崩れになります……」
香也は、首を捻る。
荒野、楓、テン、ガク、ノリ……らが、見落としていてもおかしくない、あるいは、あえて見落としてしまいたい、大きな弱点……というのが、香也には、どうにも思いつかない。
その一人一人が……香也などには想像できないほど、強力な存在のはず、だった。
「……他ならぬ……」
……香也様です……。
孫子は、まっすぐに香也の目を見据えて、宣言した。
香也は、しばし、絶句した。
「……んー……」
しばらく考えて、香也はしどろもどろに反駁しようとする。
「でも……その、あの……ぼ、ぼくなんか……そんな……大それた……」
香也のそうした反応も、かなり正確に予測していた孫子は、深く一息をついてから、諄々と先を続ける。
「香也様ご自身が、ご自分をどのように思っているのか、評価しているのか、この際、あまり関係はありません。
問題なのは……加納にとって、楓にとって、テン、ガク、ノリの三人にとって……香也様が、どのような存在であるか、ということで……いってしまえばこれは、わたくしたちの、身勝手なエゴです」
孫子がいいきると、香也は全身を硬直してしまう。
おそらく、今、香也の頭の中では、孫子がいったことを消化しようとフル回転しているところなのだろう。
そう予測し、孫子は少し間を空けた。
「……想像をしてみてください。
ここに来るまで、加納は、単に、加納本家の長子というだけでした。どんなに強大な能力を持っていても、そこには役割があるだけで、加納荒野という個人の意志はありません。生まれもった境遇に順応して、周囲に期待されている役割をこなすだけの、器用な少年がいるだけです。
楓もそうです。楓など、ここに来るまでは、自分の意志をひたすら殺そうとしていました。そうすることが自分の存在理由であると、そう思いこもうとしていました。楓が現在の楓になったのは、ここに来て香也様に出会ったからです。もし、楓が、一番最初に間違いを犯さず、この家ではなく、直接、加納の元に赴いていたら……楓は、今もって、自分で自分の意志を殺し、誰かの道具であろうとすることで充足しようと……そんな無理を重ねていたかもしれません。
テン、ガク、ノリも、同様です。
あの三人は……ここに来るまでは、個性さえ未分化な、三人で一組の存在でした……」
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