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隣りの酔いどれロリおねぇさん (4)

隣りの酔いどれロリおねぇさん (4)

「……ご、ごめんなさ……」
 あたりに酸っぱい匂いが充満する中、嘔吐の切れ目で、三島さんは、謝罪の言葉らしき断片をいいかけるのだが、すぐにこみ上げてくるものに押しな流されて、そのまま、げぇげぇと戻し続けるのだった……。

 ぼくができることいえば、彼女を背中から降ろして、玄関から風呂場までの短い移動させるくらいがせいぜいだった。基本的に、ぼくの部屋と同じような間取りなので、迷うことはなかった。こういうときのしんどさや情けなさは自分の経験に照らせばよくわかっているので、事故とか天災にでくわしたときに近い諦観があった。
 もちろん、自分の背中に吐かれたり、誰かの背中に吐いたり、とかいう極端な経験はないわけですが。今更、彼女を責めてもどうにもなるまい。

 風呂場と隣接するトイレに三島さんを押し込み、便器に顔をつっこむような姿勢にして、しばらく吐くだけ吐いてもらう。戻すだけ戻すと多少は落ち着いたのか、三島さんは顔を上げた。
「……本当に、ごめんなさい。服はクリーニング……いえ、弁償しますから……」
 みれば、彼女の服もぼくの服も、汚物まみれである。まあ、当然といえば当然なんだが。
 苦しそうにそういう三島さんの顔をみながら、「すこしは正気に返ったかな?」と思った。
 不幸中の幸い、なのは、汚物で汚れたのは彼女の部屋の玄関から洗面所にかけての短い廊下だけで、フローリングだから掃除も比較的楽だろう、ということだ。
「そういうはなしは、また明日にでも。
 今はとりあえず、シャワーでも浴びてぐっすり寝ましょう。明日はお休みなんでしょ?
 じゃ、そういうことで、さような……」
 ぼくがことさら明るい口調で、「さようなら。おやすみなさい」と逃げ……もとい、別れを告げて、きびすを返そうとした、まさにそのとき、……
 三島さんが、ガッシリと、背後からぼくの腰のあたりに抱きついてきた。
「ええ。それは、そうなんですが……」
 自分の醜態を恥じ入っているのと、吐くだけ吐いたことでかなり酔いが醒めてきたのか、うつむき加減になってはいるものの、ぼくの腰に回した両腕にはかなり力が籠もっている。じりじりとぼくの体を風呂場のほうに押し戻そうとしている。あんなちっこい体をしているのに、見かけによらず、かなりの力だった。
「あの。ここまできたら、ですね。ここで二人とも服を脱いで、一緒に体を洗ってさっぱりする、というのが、一番合理的だと思うのですが……」
 と、口調だけはしおらしい、三島さんのお言葉。
「……はい?」
 思わず、聞き返す。
「親切にして、そのあげくに反吐まみれになるなんて、とんでもない災難ですねよえ。ええ。でも、ここまできたら毒食えば皿まで。ちゃっちゃと服を脱いで一緒に洗いっこして、ついでにここに一泊していきなさい。是非していきなさい。そしたら、体でお礼いたしますから。たっぷりと。おねーさん、目一杯サービスしちゃうから。それはもう、猛烈に、らぶらぶに」
 そういいながらも、三島さんは、前に回した手で、手探りでぼくのベルトのバックルをちゃかちゃかとはずしにかかる。
「最近はすっかりご無沙汰だけど、こうみえても経験豊富だし、テクもそれなりのもんだから、ここは据え膳と思って遠慮なくいただいちゃってください!
 っつか、わたしがおいしく君をいただく。
 欲望、肉棒、浴場で欲情、ひっさびっさのー、わっかいおとこー!」
 へんな節回しをつけて歌うようにそういいながら、ぼくの服を手慣れた様子で手早く効率的に脱がせていく。

 あー。えーっと……。その……。
 ぼくの常識の斜め上をいく不測の事態に、ぼくの頭はなかなかついていけないでいる。
 ──ひょっとしてこれって、噂に聞く「逆レイプ」ってやつなのでは?
 ……そんなもん、AVとかの妄想的フィクションの世界のおはなしであって、実際にあるとは思わなかった……。
 ましてや、自分が当事者になるとは……。

「はいはい。最後に感じさせれば合意だもんねー。んっふっふっふっふ。今夜は寝かせないぞー。ってえか、あんまりぐずぐずしていると、服ごと洗っちゃうぞー」
 ついさっきまでげぇげぇ吐いていたとは思えない元気そうな弾んだ声でそういって、三島さんは、体ごとぶつかるような感じで、ぼくに抱きついてくる。ぼくは、半ば下ろしかかったズボンに足を取られ、その場で尻餅をついた。
 倒れたぼくの体に、向き合うような形で、でん、と腰を据え、三島さんは、しゅる、と、ぼくのネクタイをゆるめて、ワイシャツのボタンをはずしにかかる。
「酔うとね」
 三島さんは、ぼくの目をまともに見据えながら、意外に冷静な声でそういった。外見に似合わない、大人の、女性の声だった。
「欲しくなるんだよ。無性に」

[つづき]
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