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彼女はくノ一! 第一話

第一話 ある日、くノ一が落ちてきて……。(0)

 ここ数日めっきりと寒さが増して、怠惰なその地方都市も、そろそろ年末の準備をはじめたような、そんな時分の、良く晴れた朝……。

 地上二メートルから三メートル、という半端な高さを飛ぶような勢いで駆け抜けていく、柿色の物体があった。
(……ううっ。風が冷たい! 寒いですぅ……)
 電信柱やケーブルの上を平均時速三十キロで疾走する、という常人離れした所行をしているわりに、凡庸な感想を抱いて流れ出ようとする鼻水をすすっているその少女は、名を松島楓という。
 内に鎖帷子を着こみ、その上には柿色の脚絆、手甲、頭巾、忍装束、と、まるで絵にかいたような典型的なニンジャ・ファッションに身を包んだ彼女は、昼日中の現代社会に現れれば間違いなく注目を浴びる存在だ。が、当の本人は、その恰好が一番、「人目を忍ぶのに適している」とかたく、信じ込んでいる。
 松島楓嬢が、この物語の舞台となる、平々凡々とした某地方都市の、少し前に流行った言葉でいえば「ファスト風土」な、特徴のない平均的な日本的景観の中にあって、あくまで今のところ、注目されていないのは、ひとえに、通勤、通学で忙しない時間帯に、「ぼけぇーっと、空を見上げている暇人がいなかった」から、たまたま「見つけた人がいなかった」ということに由来する。

 その存在が、わずか数分後には、白日の下、衆人環視の憂き目にあうと知らず、松島楓嬢は「お頭」に指示された住所まで、脇目も触れず、まっしぐらに走り続けた。……電線の上を。
 異変が起こったのは、よりにもよって、彼女が「目的地」としてい認識している住所の門前で、その地点で、彼女の足と、伝い走っている伝線との間に、不意に異物が発生した。
(え? あれ?)
 不測の事態に、それでも声を上げなかったのは、流石といえよう。
 しかし、その、常日頃からなされている「気配を消し去る」という教育を全うしたおかげで、下界にいた人間は、転倒して落下した彼女の存在に気づくこともなかった。
(あ! わひゃっ! 落ちている! 落ちちゃっているよ、わたし!)
 もともと、不安定な足場上で、全力に近い速度で疾走していた彼女は、不意に発生した障害物を見事に踏んづけて転倒し、そのまま地上へと、まっさかさかに墜落した。
 落下しながらも、自分の足下に出現した異物、らしきものを視認した(そこいらのコンビニや百円ショップで売っているような、ごく普通の安物の「黒ボールペン」だった)のは良しとしても、だからといってそれが、落下した自分を救うのになんの助けになるけでもなし……。

 お尻から落下した彼女は、なにか柔らかい物体に一度は受け止められはした。
「げほぉ!」
 という悲鳴が、彼女の下から聞こえる。
 が、落下した勢いはそのまますべて相殺されたわけではない。そのエネルギーを消費すべく、彼女は二、三回後転して勢いを殺し、勢いがかなり弱まったところで、上に、飛び上がった。
(よし! これで、最悪の醜態はさらさずにすんだ!)
 と、彼女が内心でガッツポーズを取ったそのとき、最後の最後になって、「例によって」彼女持ち前のドジ属性が炸裂、発動する。
 ……最後の着地地点に、先ほど視認した、落下の原因となった「黒ボールペン」が、たまたま足下にあったのだ。
 そのため、安心しきった彼女は、ものの見事に、よりによって平坦なアスファルトの歩道上で、すってーん、と、いう擬音が似合うような見事な転倒をして、地面に後頭部を強打する。
 
「きゃあー!」
「なに? なんで? 空から、人が!」
「こーやくん、大丈夫か!」

 ようやく上がった悲鳴や懐疑の声などを聞きつつ、(ああ。わたし、このままじゃ目立っちゃう)彼女は、そのまま気を失った。

 ……そして、少年と少女は(一応)出会い、物語が開幕する。

[続き]
目次

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Comments

ひさしぶりに読み返したら発見

「時速三十メートル」

遅い、遅いよ楓ちゃん!

  • 2006/11/09(Thu) 05:34 
  • URL 
  • かささぎ #-
  • [edit]

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