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彼女はくノ一! 第三話 (2)

第三話 激闘! 年末年始!!(2)

 翌日は日曜日だった。
 なんだか外が騒がしいようだったが、基本的に朝寝が好きな香也はそれには構わず、昼前にようやくのそのそと起き出した。軽く朝食を食べた後、さっさとプレハブに籠もる。昨日になってイレギュラーな作業が発生したので、この日のうちに、前々から羽生譲に頼まれていた同人誌の原稿を、仕上げてしまうつもりだった。
 明日の月曜から金曜までは期末試験があり、その後、試験休みと終業式を挟んで、冬休みに入る。試験の成績に関して、最初から諦めている香也は、「いつもより余分に自分の創作時間がとれる期間」としか認識していない。
 それでも、つい半年前まではほとんど登校していなかったことを考えれば、毎日学校にいくようになっただけ、それなりに進歩……社会適応してきた方、なのだろう。
 この変化については、毎朝のように香也を迎えに来る樋口明日樹の存在が、やはり大きい。彼女が香也に興味を示さなかったら、多分、香也は、未だにまともに学校に通っていなかった筈だ。
 その樋口明日樹は、定期試験の前後は自分の勉強に専念するため、香也の家に迎えにくるのをやめる。学年も違うし、試験期間中は部活も全面的に禁止されるため、明日からしばらくは、香也も樋口明日樹とは、顔を会わさないはずだった。
 ふと、
『……樋口先輩に才賀さんのこと紹介するの、遅れるなあ……』
 とかいう思いが頭をかすめたが、すぐに脳裏から追い払って、目の前の作業に没頭する。
 狩野家に、また、新しい住人……それも、楓とは違うタイプの、かなりの美少女が増えたと知ったら……樋口明日樹は、やはり大騒ぎするだろう。少なくとも、楓が来た時くらいには……。
 ということは、容易に想像できたが、基本的に人間関係の構築とか調整に関してとことん不器用で、かつ、根が面倒くさがりな香也は、あまり深く考えず、とりあえず問題を棚上げにして、なるべく先送りにすることを選択した。

 香也は、羽生譲が用意した見本の絵をタッチを極力真似て、絵コンテ(ネーム、という場合もあるらしいが、その辺の用語の使い分けについて、マンガにあまり興味のない香也は、よく理解できていない)の指示通りに作画をしていく。それらの原稿は、男性向けも女性向けもあったが、ほとんどはいわゆる「エロマンガ」であって、羽生譲によれば、この手のものを割り切ってうまく作れば、飛ぶように売れる、という。そこ言葉に違わず、年に二回、羽生譲は作った同人誌をほとんど完売させて、分け前としてちょいとしたボーナスを香也をはじめとする協力者各位に支給する。
 特に今回は「今年の冬はコミケに当選したぞー」と張り切っていて、いつもの五割り増しにあたる分量の仕事を用意していた。香也にとっても、盆暮れの時期にくるこの仕事は、貴重な現金収入を得る機会でもあったので、出来る限り積極的に協力するようにしている。絵の具などの画材は、これでなかなか高価なのだ。
 香也が関わるのは鉛筆描きの下書きまで。前にペン入れもやってみたことがあるのだが、紙にガリガリペン先が引っかかる感触がどうしても好きになれなくて、今では、「不慣れな作業に時間をとられるよりは」、と、下書き専門になっている。
 ペン入れやベタ塗り、トーン貼りなどは、羽生譲の学生時代のつてとかで、何人かの女性がこの家に泊まり込んで短期決戦で行うのが常だった。その、半年に一度の修羅場な数日間だけ、狩野家はどことなく華やかになる。今回、羽生譲は、最近増えた同居人も「戦力」として計算に入れて、いつもより多くの原稿を指定してきたのだろう。昨夜、三島百合香といっしょに商店街関係の仕事を采配していたように、あれで、プロデューサー的な資質も十分もっている人だから、その辺の見極めは結構正確である。こなしきれない仕事は誰にもやらせないし、採算のとれない仕事は、もっとやらない。
 香也は羽生謙は、クリエイターというよりも、仕切屋体質を活かしたプロジュース系の……例えば広告業界とか……の業種に行く方が、資質的にむいているのではないか、と、思っている。香也の養父、順也などは、「譲のスピリットと香也のテクが合体すれば、ほぼ無敵」などという言い方をする。が、今のところ、羽生譲と狩野香也の合作例は、コミケ向けの売らんかな意識満載のエロ同人誌だけである。

 黙々と作業を続け、日が暮れる時間になって、
「おー、こーちゃん。やっとるかー」
 と、羽生譲が入ってきた。
「庭にベニヤ持って来ておいたから、時間がある時、昨日いってたの、やっといて……」
「んー。……やっとくー……」
 香也は、手も休めずに生返事をする。
「それからさあ、これもやっといて。ポスター、一応、構図とか、アタリをつけておいたんだけど、仕上げはこーちゃんのが確かだし綺麗だから」
 と、ラフスケッチを渡される。
 そこには、

『聖夜の対決! サンタVSトナカイ
 生き残るのはどっちだ!』

 という、おどろおどろしい字体のレンタリングが、浮き上がっていた。
『……これで本当に人集めになるんだろうか?』
 と、思わないでもなかったが、例によって深く追求はせず、香也は、
「んー。……そっちもやっとくー……」
 と、やる気があるのかないのかよく分からない返事を、しておいた。

[つづき]
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