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髪長姫は最後に笑う。第二章(9)

第二章 「荒野と香也」(9)

 その夜、荒野はひどく夢見が悪かった。
 昼間にふて寝をしたのがいけなかったのかも知れないし、ここ数年、荒事ばかりをやって殺伐とした環境下にあった荒野が、急に、現代の日本の地方都市、という、刺激が少なすぎる、平和な環境へと移行してきたことに、精神面での順応が完全でなかったからかも、知れない。

 夢の中で荒野は、全裸で寝ていて、息苦しくなって、目を覚ます。
 目を覚ますと、荒野の体の上に全裸の茅が横たわっていて、肌をなすりつけるように蠢き、「こうや、こうや」と囁きながら、上目遣いに荒野の目を見上げている。茅の肌は、白くて、とても冷たくて、冷たさに耐え切れられなくなった荒野が、茅の体を振り払おうとすると、茅は荒野の腕にしがみつき、下腹部を荒野の腕に密着させる。茅の女陰は濡れていて、湿った蛞蝓のような感触を、腕に感じる。悲鳴を上げて、茅の体ごと腕をぶんぶんと振り回すと、茅の体は急激に重くなり、荒野の腕は下に引っ張られて、ついには身動きが取れなくなる。なんとか茅から逃れようと足掻くのだが、茅の腕は重くて硬く、どうにもならない。ついには、全身に汗をかき、息を切らして、足掻くのを諦める。すると、どこからか現れた全裸の樋口未樹が、身動きできない荒野の上にのしかかり、起立した荒野の男根を自ら導いて馬乗りになり、腰を振り始める。荒野の直ぐ横では、茅が瞬きもせず、じっと荒野の顔を見続けている。樋口未樹のあそこは、熱くて、蕩けで、ぎゅっと荒野の男根を締め付けている。とても気持ちがいい。茅が見えている手前、反応すまい反応すまい、と、頭の中でいいつづけるのだが、息を切らして荒野の上を跳ね回る樋口未樹の姿態、息づかいや、あそこの締め付け具合など、どれをとっても蠱惑的にすぎてとても我慢ができず、射精感がどんどん高まっていく。やめろ駄目やめてくれ茅がみている、などと叫び声を上げるが、荒野に絡まる全裸の樋口未樹は行為を中断してくれず、茅もまた黒目がちの大きな目を見開いて、荒野の目をじっと見続ける。ついに、荒野が射精すると、その瞬間、樋口未樹と茅の姿は消え去り、椅子に座った白衣を着た三島百合香が蔑みの籠もった目で、荒野を見下している。そして、思いっきり冷淡な声で、
「自業自得だ馬鹿」
 と、いう。

 目が醒めると、当たり前のように夢精していて、荒野は、重篤な自己嫌悪に駆られた。たしかに、茅と住みはじめてから、自慰もしていない。射精したのは、樋口未樹と寝た時と、この悪夢、いや、淫夢を見て、の都合、二回。若い男としての生理的な反応だから、恥じ入るようなことではないと理解してはいても、どうにも、情けない気分に襲われた。
 汚れた下着を替える気にもなれず、ベッドに寝そべったまま、明かりもつけず、しばらく天井を見つめる。

『……おれは、こんなところで、一体なにをやっているんだろう?』

 そう思う。
 荒野は、本来、たった一人の女の子に振り回されながら、一喜一憂するような、軟弱な男ではないのだ。一族の大人と比較しても見劣りしないだけの、剽悍さと戦闘能力を持っている。ハリウッド映画並のアクションも、スタントもCGもなしに、生身のままでやることさえ、できる。そんな荒野が、なぜ、たった一人の女の子の顔色をうかがい、びくびくとしながら生活しなければならないのだ……。
 荒野は、現在の自分の境遇を、理不尽だ、と思った。
 なぜならば、「茅を、心の底から笑わせること」という今回のミッションに関しては、荒野が誇る数々の突出した能力は、どれもこれも、見事になんの役にも立たないからだ。

『……おれは、無力だ……』

 そうも、思った。

 翌日の夜も、香也が夕食を終え、プレハブに籠もる時間を見計らって、荒野は隣家に忍び込んだ。正面から訪問しても良いようなもんだったが、夜分に真理に余計な気を遣わせたくないので、香也以外の住人には気づかれないように忍んでいく。荒野が観察するところ、香也は、荒野の訪問を、さほど気にかけていない。歓迎してもいないし、疎んでもいない。ただ、言葉をかければ、それなりの返答はしてくれる。
「なんだかんだいって……」
 荒野はいった。
「……君は凄いと思うよ。おれとたいして違わない年齢なのに、こんなにいっぱいの絵を描いている」
『おれは、壊したり、殺したりするばかりだった……』
「……なにか描いてないと……」
 香也はいった。
「自分が、どんどん薄くなって、なくなっていくように感じるんだ。だから、ぼくの絵は、一種の気休めというか、精神安定剤みたいなものだね。量がおおいばかりで、独創性もない。自慢できる出来でもない」
「それでも……」
 荒野はいった。
「なんにもしないよりは、よっぽどマシなんじゃないかな? 少なくともこの部屋には、君が生み出した絵で溢れている。出来とか独創性とかのことは、おれ、正直よく分からないけど、ここにある絵の枚数分、君は、世界を豊かにしたんだよ」
『おれがやってきたことは、世界からなにかを差し引くことばかり……』
「そんな大仰なもんじゃないさ」
 香也はいった。
「所詮、自己満足の域をでていないよ。ぼくのは」

 プレハブをでると、入り口の横で、松島楓が平伏して控えていた。
「……楓か……」
 たぶん、この辺りに何者かの気配を感じて出向いてきて、荒野がいると気づき、邪魔をしないようにここに控えていたのだろう。
「……お前、ここの人たち、好きか?」
 何故そんなことを言い出したのか、荒野自身にも、実はよく分からない。
「……はっ!」
「……そうか……。
 よかったな。おれも、好きだ。
 だから、あえて、加納の名においてお前に命じよう」
 一族の、特に、六主家の間で、家名において命じる、ということは、かなり重要な意味を持つ。
「おれがいいというまで、お前、全身全霊、全能力をかけて、この家の人たちを守ってみろよ。どうせ、当面お互い暇な身だし……。
 常識的に考えて、ここの人たちが、命を狙われる、なんてことは、まずないとは思うけど……」

 ところが週末になって、狩野家の息子、狩野香也が、狙撃されそうになる、という事態が起こる。よりによって、才賀鉄砲衆当主の跡継ぎ、と、目される人物によって……。

[つづき]
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