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彼女はくノ一! 第三話 (26)

第三話 激闘! 年末年始!!(26)

 商店街のはずれにあるマンドゴドラから駅前までの道のりは、昨日、一昨日にもまして混み合っていた。
「……なあ。あの、楓とか才賀とか、そんなに話題になるようなやつらなのかなぁ……」
 その人手をみた加納荒野が、誰にともなくいった。
「……最初の方は、たしかチラシ配りのサンタとトナカイが、どうもショッピング・センターで暴れてた子たちらしい、っていう噂がネットで流れて……確か、その時、アップされた画像とか映像が、一斉に削除されたんだよね。どうも、どっかから圧力かかったみたいで……。
 それで、かえってなんかあやしい、ってことになって、某巨大掲示板でスレがいくつか立って……」
 詳しい説明は受けていないが、なんとなく「いろいろ裏があるらしい」ということは知っている飯島舞花が答えた。
「……その真偽を確かめに来た閑人経由で、なんか変に芸達者な可愛い子がいるぞ、みたいな噂がぱーっと広まっちゃって、そうこうするうちに、最初のほうのショッピング・センター疑惑のほうは下火になっていって……。
 あと、『地元経済活性化の実例』なんたら、みたいな感じで、ローカルTV局から取材したい、ってオファーもあったそうだけど……そっちは確か、ソンシちゃんの実家のほうから圧力かかってウヤムヤのうちに取りやめになった、っていう噂も、聞いたことある。
 それで、『ソンシちゃんが実は、さる財閥のご令嬢らしい』って情報に信憑性あたえちゃって……ソンシちゃんもその辺は隠そうとはしてないし、普段の態度からしてああだから、これは、まあ、いいのか……
 でも、見た目が綺麗とか可愛い、とかだけだったら、多少噂になってもあまり注目されずに終わったと思うけど……二人とも、芸があるのに加えて、独特のオーラ放っているからなぁ。直に見た人の印象に残るし、他に人にも見せたい、って気持ちになるの、わかるよ……」

 人混みの中で、二十代前後の男女が十四、五人くらいの団子になっていて……。
「いや。本当だって。あのトナカイ、カメラには写るけど、人には見えなくなる時間が、たしかにあって……」
「……んー。それ、本当だったとしても……その場にいなかった人には、証明不可能なんじゃないですか?
 あー。猫耳君だー!」
 その中から、ぶんぶん手を振りながら出てきた人がいた。若い女性で……柏(姉)、こと、柏千鶴さんだった。

「柏さんも来てたんですか?」
 加納荒野は、その大学のなんたららかなんたなサークルがなにを問題視しているのか、かなーり具体的に推測できたが、素知らぬ顔をして柏千鶴に話しをふった。
「そうなのです。妹と違い、クリスマスに相手してくれる男性もいない姉は、一人でとぼとぼと萌え集めの旅に出かけているのです。これで三日目かつ最終日なのです。残念無念なのです。
 うん。あの人たち、大学の、席でだけは置いているサークルの人たちでね。たしか、軽文化都市伝説……なんたららかんた……比較研究会……だったっけ?
 でも、いいのです。あの人たち、重箱の隅を突くような些末ことにしか興味のない人たちだし……こっちの可愛い子たちと合流して、一緒に歌姫たちを愛でる方が数倍有意義なのです。
 だって、聞いてくださいよー! あんな可愛い子たちが歌って踊っているのに、あの人たち、それそっちのけでトナカイちゃんが不思議ちゃんだ! とか、真面目に議論しているんですよ! あの人たちの心には萌え心がないのです! 可愛いは正義なのです!」
 そのまま香也たちに合流してきた柏千鶴さんは、相変わらず、鋭いのかずれているのかよくわからないことをまくし立てた。
 駅前のイベントがある三日間、ずっと通っていたらしい、ということはわかった。
 その他の部分は……やっぱり、よくわからない人だった。
「あー。そういえば、マンドゴドラのCM、ついさっきお正月ヴァージョンに変わってましたねえ。
 黒猫ちゃんは、今日も乱入するんですかぁ?」
 しかし、チェック厳しい。ついさっき切り替わったばかりなのに……。
「黒猫ちゃん」こと加納茅はこくこくと頷き、コートの前を開いて中に着ているメイド服を柏千鶴にしめしてから、ポケットの中から猫耳カチューシャを取り出した。柏千鶴は「わぁ。めちゃ可愛いのです萌えなのです」とかいいながら、加納茅を抱きしめて、頬ずりする。
「……なんなんだ、この人は……」
 初対面の飯島舞花が唖然としている。
「一年の柏のお姉さん。千鶴さん。それに、憶えてないの? あんたも、昨日ミニラ先生とうちの大樹に同じ事してたんだよ」
「……え?」
「頬ずり。飯島って、意外と酒癖悪いんだね」
 飯島舞花の顔から、さーっと血の気が引いた。
「……わたしが……ミニラ先生と大樹君に……頬ずり……」
「うん。そのままキスしそうな勢いだった。気をつけな。あの調子だと、起きたら隣に見知らぬ人が裸で寝ていた、ってことも充分あり得ると思う。飯島、男性にも女性にももてるから、ドサグサ紛れに強いお酒とか飲まされたら、何でもありになっちゃうよ……」
「……わたしが……ミニラ先生に……う、嘘だ! 誰か嘘だといってくれ!」
「本当。みんなみてる」
 栗田精一が、実に嬉しそうな顔をして引導を渡した。普段、頭が上がらない相手が狼狽する様子を見みられて、かなり嬉しいらしい。
「……あの、この頭抱えてのけぞっている大きな萌え萌えさんは……ひょっとして、飯島舞花さん? あんなちゃんの先輩の……」
 取り乱している飯島舞花を指さして、柏千鶴が、誰にともなく尋ねる。
「……おっきな美人さんと、ちっさい男の子のカップルがいるって聞いているんですけど……そっかぁ……君たちがそうかぁ……」
 飯島舞花は、慌てて側にいた栗田精一を抱きしめた。
「セイッチはやらないぞ! これ、わたしの!」
「……えー……。でも、そっちより、わたし、舞花ちゃんのほうが萌え萌えだと思うんですけど……」
 そういって、栗田精一を抱きすくめている飯島舞花の体に、柏千鶴が密着して腕を回す。
「……萌え萌えなのです!」

「……先、いってようか?」
「……んー……つき合って、らんない……」
 三人を放置して先行し始めた加納荒野と狩野香也の後ろを、残った者たちがぞろぞろついていく。加納茅は団子になっている三人を興味深そうに観察していたが、加納荒野が半ば強引に手を引いていた。

「ああ! 見捨てないでぇ!」
 慌てて、取り残されかけた三人が後を追う。

[つづき]
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