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彼女はくノ一! 第三話 (47)

第三話 激闘! 年末年始!!(47)

 蕎麦をすすって一休みすると、誰からともなく「初詣に行こう」という話しになった。近くの神社まで、だから歩いていくらもないのだが、基本的に人混みが嫌いな香也はあまり乗り気ではなかったが、「茅と楓が振り袖に着替える」というので、少し興味を引かれた。香也は楓が荷物をといた時、ちらりと生地の柄をみただけだが、あれだけ綺麗な生地を実際に人間が纏うとどういう風にみえるのか……というのは、かなり、好奇心をそそられる。
 茅の着物も加納老人から送られたものであるのなら、茅の着物も、楓の着物に匹敵するなのだろう……。
 それを着た二人が並んでいる様子は、かなり、絵になるはずだった。

 加納兄弟がティーセットを持ちって着替えに一旦マンションに引き上げる。
 楓と女性の何人かも、着つけを手伝いに家の奥に消える。
 香也と樋口明日樹、樋口大樹、飯島舞花、栗田精一の四人が残った。
「……なんだ、樋口は手伝わないのか……」
「あれだけ人数いるし……わたし、着物の着つけなんてできないし……」
「同じ同じ。着物なんて、浴衣ぐらいしか着たことないよ、わたしも」
 ……庶民だからねー、うちらの家。
 その場に残った女性二人は、そう頷きあった。
「……んー……そういや、飯島さんたちって、いつも一緒にいるけど……」
 香也が珍しく、他人に関心があるようなことをいう。
「そ。つき合っている。ってか、知らなかったのか?
 結構有名だと思ったんだがなあ……」
 そういって、飯島舞花は、隣りに座った栗田精一の肩を抱き寄せて、密着した。抱き寄せられた栗田のほうは、顔を赤くしながら「人前でやめろよ、まーねー」などと抗っている。
「わたしらと、一年の柏と堺……この二組は、学校では結構有名だけどな……」
 ……そういわれてみれば、この間の同人誌合宿の時、そんな噂を小耳に挟んだような気もする……。
 その時、香也は気にも留めていなかったが……そうか、堺と柏も、そういう関係なのか……。道理で、仲がいいと思った……。
 昼間来た二人の様子を思い返し、香也は一人で納得した。
「こっちの香也君も、だんだん普通の男の子並になってきたな……」
 そういって、飯島は意味ありげな視線を樋口明日樹に送る。
「……なんでそこでわたしのほうを見るのよ……」
 明日樹のほうは、憮然とした表情を作っていた。

 しばらくして、振り袖に着替えた松島楓が他の女性たちに取り囲まれて戻ってくる。着つけを手伝った女性たちは、楓の着物姿を口々に褒めていた。まったくのお世辞ではない……と思う。赤系統の光沢のある生地に、花とか鳥とか、花札の柄のような画風の微細な染め物がなされたその振り袖は、派手な色彩の割には、しん、と内に秘めた重心を持っているように思え……楓に、よく似合っていると、香也は思った……。
 当の楓は、はにかんだような、照れているような顔をして、香也に、
「どうですか? この恰好?」
 と聞く。
「……んー……似合う……」
 香也が短く答えると、楓はさらに照れたような表情を浮かべ、顔を背けた。耳朶まで、真っ赤になっていた。

 みんなで寄ってたかって楓の着物姿を褒めているうちに加納兄弟も帰ってくる。
 加納茅の着物は、青い地に鯉とか蓮とかが描かれていて、これはこれで茅の雰囲気に合っているように思えた。ときおり、突拍子もない言動をすることがあるが、黙って立ってさえいれば、腰まで届く黒髪の茅は、どこかの令嬢であるかのように、稟とした雰囲気を纏っている。
 楓がどこか柔らかい、人を引き込むような印象を与えるのとは、対照的だった。

 茅と楓の着物姿の絶賛大会が終わると、みなで外出の準備をして、どやどやと初詣に出かけた。旅行かた帰ったばかりの真理だけが残るといい、後の全員で夜の町に繰り出す。
 クリスマス以来、松島楓、才賀孫子、加納茅の顔はこの近辺では知られていて、案の定、道を歩いていると、なんどか他の通行人に指さされたりしたが、十人でわいわい騒ぎながら固まって歩いているのが幸いしたのか、誰に話しかけられることはなかった。今まで海外で過ごしたという荒野は、この人手や初詣、除夜の鐘などの風習が珍しいらしく、しきりに周囲の者に質問をしている。それに、大体飯島舞花が答え、他の者も説明を補足したりしている。その問答は、端で聞いていると漫才みたいでそれなりに面白く、おかげで神社まで、あっという間についたような気がした。
 お参りをすませ、お神籤を引くと、荒野が「大凶を引いた」と騒ぎはじめ、周囲のものたちが「ここに結べば……」などと取りなしている。香也が引いた者は「吉」で、ただし、恋愛運の項目に「異性関係に注意」うんうんと書かれていた。「なにげにあたっているかも……」と香也は思い、先ほど「家内安全」を祈願しておいてよかった、とも、思った。そんなものは気休めにすぎない、とも、思っていたが……。
 飯島舞花と羽生譲と才賀孫子が「大吉」、松島楓、栗田精一、樋口大樹が香也と同じ「吉」、加納茅と樋口明日樹が「凶」で、飯島と明日樹は、「四月から三年で、受験なのに……」縁起がいい、悪いとかしきりにいいあっていた。

 神社から帰る途中、周囲の人々がしきりに自分たちのことを気にしているのに香也は気づいた。そのことを羽生譲に告げると、
「……そりゃあ、まあ……こんだけの美形が団体でぞろぞろ歩いていればなぁ……しかもそのうち、二人は振り袖だし……」
 と、いい。
「ま、そのうちイヤでも慣れるから、あまり気にするな」
 と背中を叩かれた。
 加納兄弟、松島楓、才賀孫子、飯島舞花……それに、羽生譲を加えてもいい。
 この人たちは人目を引くほどの整った容姿で……一人二人が歩いてる程度なら、さほど人目を引かないかも知れないが、団体で歩けば、確かに目立つだろう……。
 と、香也も改めて認識した。
 そして、香也自身……新学期から、そんな人たちと一緒に登校する筈……なのだった……。

 神社から帰ってしばらくするとカウントダウンが始まり、その年は終わった。
 加納兄弟はマンションに帰っていき、両親が旅行に出かけて留守だという樋口兄弟と飯島、栗田のカップルは、真理に引き留められる形で残った。
 彼らを引き留めた真理も、「疲れているから、失礼させていただいて……」と自室に退き、居間に残ったものたちは、だらだらといつまでもどうでもいいようなことを話し続けた。才賀孫子と樋口明日樹が突っ込み、飯島舞花がぼけと突っ込み兼任、ほかの連中がぼけ役、といった案配で、どうでもいい、内容のない会話が、以外に面白く、いつまでも転がっていくのを、香也は炬燵にあたりながら他人事のように眺めていた。

[つづく]
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