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彼女はくノ一! 第四話 (39)

第四話 夢と希望の、新学期(39)

 羽生譲に即されて母屋に戻った楓は、手渡されたエナメル・レザーのボンテージ・スーツに着替える。何というか、露出度がやたらと高い恰好で、脇の下から脇腹にかけては前後のレザーを紐で結んでいるだけで、上から下まで肌が直接露出している。体のラインがモロにでているのはもちろんだが、この構造だと下着を来ていると脇から見えてしまうので、全裸になって直接身につけないとならない……というのが、まず恥ずかしい。不幸中の幸いとして、レザーがかなり厚手のものだったので、下着をつけなくても乳首などが浮き上がっていない……という事があげられたが、だからといって楓の羞恥心が軽減されるものでもなかった。
 一度、自分の全身を鏡に写してつくづくと見る。
 ……確かに、以前羽生が指摘したように……出る所は出て締まるべき所は締まっている楓のポロポーションが、一層強調される恰好だった。
 見ているだけで照れ照れになった楓は、肩にジャケットを羽織り、部屋を出て玄関に向かう。編タイツに包まれた足を、コスチュームの色に合わせた真っ赤なブーツに突っ込み、ブーツの紐を慎重にしめる。その間も、顔が自然に火照ってくるのを自覚できた。
 そのまま庭にでると、既に着替え終わっていたフリルとかリボンがふんだんにあしらわれた黒いノースリーブのブラウスにミニスカート、背中に小さなコウモリの羽の作り物を付けた才賀孫子が、羽生となにやら話し込んでいた。
「おー。くノ一ちゃんも来たかー……」
 どてら姿の羽生は、楓の姿に気づくと片手をあげて楓を招き寄せた。
 庭には顔なじみになっている放送部員たちが何人か集まってきていて、楓のほうに目礼したり片手をあげてきたりする。楓はジャケットの裾で自分の体を極力隠しながら、挨拶を返しつる、羽生のもとに歩み寄った。
「……しかし、くノ一ちゃんも孫子ちゃんも……こうしてみると、足、長いよなー……」
 羽生は無遠慮に楓たちの腿のあたりに視線を這わせる。ハイレグのレザー・スーツ姿の楓はもとより、孫子のスカートもかなり短いので、二人とも足の根本まで、大部分が剥き出しになっている。楓がむっちりと肉感的な、孫子がすらっとシャープな輪郭をもっていた。
「くノ一ちゃん……露出度的にはあれだけど、それだけスタイルいいと、そういう恰好もよく似合うよ……」
 羽生は真顔で楓に請け合った。まんざら、お世辞、でもないらしい。
「もちろん、孫子ちゃんも……」
 いまいち羽生の言葉を信用していない楓とは対照的に、孫子は、称賛されて当然という顔をして頷いた。
 それがきっかけになって、回りにいた放送部員たちがわらわらと集まってきて、楓と孫子の容姿を熱心に褒めはじめた。自転車で乗り付けた玉木珠美が制止するまで、楓と孫子は彼らに包囲されて身動きがとれなかった。
 そのうち、写真館のご隠居、羽生譲がどこからか連れてきたメイクさんやら美容師さんやらが集まってきて、手際よく楓たちの見栄えを整えていく。ちょうど、楓と孫子のセットが終わったあたりで加納兄弟も合流してきて、撮影が始まる。

 楓にとっての撮影は、やれ、と言われたことを次々にこなしているうちにあっと言う間に終わったような感じで、一日がやけに短かった。羽生とかご隠居とかのオーダーに応じることに夢中になって、自分が恥ずかしい恰好をしていることも、すぐに意識から消えて、自然体で、言われるままにポーズをとったり他のモデルたちと戯れたりしているうちに、気がついたら日が暮れていた。他人の言われるままに体を動かしていくのはそのままなにも考えずに過ごせるから、楓にとっては楽な状態だった。
 途中、昼の休憩の時に、昨日の囲碁対決の時に流した映像を庭に持ち出したノートパソコンに表示させると、孫子が慌てふためいて自分の体を使ってその画面を隠したこととか、例によって香也が即興で撮影に使う背景を描いたこと、などがポツン、ポツン、と記憶に残っている。昨日配信した孫子の映像は、才賀鋼蔵から送られた映像を玉木が編集したもので、その冒頭に、生後一年くらいの孫子がオールヌードで水浴びをしている映像もあった。

 そんな感じであっという間に夕方になり、みんなが引き上げて、狩野家の住人だけが残る、途端にそれまで感じる余裕がなかった疲労を感じ始め、ぐったりとなった。ほぼ一日体を締め付けるような衣装を身につけていたので、妙な疲れ方をしている。楓は自分の部屋に引き上げる途中、狩野真理に「お風呂が沸いているから」と言われたので、衣装を脱いでバスタオルを体に巻いただけの恰好で替えの下着だけを持ち、ふらふらと風呂場に向かう。どうせ家の中、という安心感もあったし、夕食前に香也がプレハブから出てくることは滅多にない。窮屈な衣装から解放されたばかりで、自室から風呂場までの僅かな距離を移動するのにパジャマを纏うのも、今はひどく億劫だった。
 脱衣所の床に下着を置いて、その上に体に巻き付けておいたバスタオルをはずし、畳んで重ね、シャワーを浴びてから、ゆっくりと湯船につかってウトウトしていると、入り口の戸が開き、「孫子か羽生かな」と思って視線をあげると、全裸の香也が呆然とつったっていた。

 今日は庭が騒がしかったため、いつものように集中できなかった香也は、早めに切り上げて母屋に戻った。玉木珠美は残っていて羽生譲の部屋で一緒に動画の編集作業に勤しんでいるようだった。孫子と楓は自室に籠もってのか、居間にはいなかった。真理は台所で夕食の準備をしている。
 夕食までまだ間があり、居間に誰もいなかったので、早めに風呂に入ることにする。脱衣所に畳んだバスタオルが置かれているだけであることを確認した後、香也は服を脱ぎはじめた。多人数の女性と同居している関係上、香也が風呂に入れるタイミングは以前よりも図りがたくなっている。脱衣所に誰かの服が置いているのに気づいて慌てて風呂場から去った「ニアミス」も、何度か体験していた。だから、「空いている時にさっさと入っておく」、というのが、最近の香也の風呂に関する習慣になっている。
 だから、脱衣所に衣服が見あたらなかったのにも関わらず、戸を開けると湯船の中に楓の頭部が浮かんでいるのを見つけた時……香也は、軽いパニックに襲われた。
「……あ。あ……」
 ごめん! とでも叫んで咄嗟に後ろを向いて入り口の戸を閉めれば、なにも問題は起きなかったのかも知れない。
 しかし、香也が戸惑ったわずかな時間に、楓は動き出していた。
 楓は楓で、驚きもし、戸惑いもしたが……いつもとは違い、脱衣所にバスタオルしか置かれていない現状にすぐに思い当たり、咄嗟に香也の声を塞ぐことにする。
 間違いにせよ何にせよ……この状態で騒がれるのは、まずい。
 そう思って、常時喉の奥に仕込んでいる針を吹き出して、香也の喉元に突き刺す。
 図らずも、以前と同じ風呂場で、同じように香也の声を封じ、声帯を麻痺させた。以前と同じ、声がでないようにするツボだった。
 香也が突っ立ったまま自分の喉元に刺さった針を呆然と見下ろしているのを確認してから、楓は湯船から上がって恥ずかしげ気なく見事な裸体をさらし、香也の元に歩み寄る。
 考えてみれば……これは、好機、なのではないか。
 呆然と立ったままの香也の肩にしなだれかかり、耳元に息を吹きかけるようにして、
「……騒がないください……。
 他の方に知られると、いろいろ面倒です……」
 と囁く。

[つづき]
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