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はい(♀)×ろぅ(♂)×ろぅ(♀)  そのさんじゅうなな

そのさんじゅうなな 「破瓜」

 あんなちゃんの真っ白になりつつある頭の中に、
「もう。入れて。最後まで。奥まで。突いて」
 という自分の声が聞こえた。自分がそんなことをいった、という意識さえなかった。最初、めりめりと自分の中心に割り込んで侵入してきた雅史くんは、紛れも異物だったが、入り口に執拗に出入りをされるうちに、自分の神経がそこに集中するような気がしてきて、じきに、なにも考えられないようになった。
 ちゃっ、ちゃっ、ちゃっ、と、繰り返される音とともに、自分の中に出入りする雅史くんの感触だけが全てになっていって、なんだか自分が雅史くんを受け入れるためだけに作られた穴そのもの、であるような錯覚さえ、感じた。
「いいの?」
 穴である自分の存在理由=雅史くんの声が、どこからか聞こえる。ちゃっ。ちゃっ。ちゃっ。
「いいの」
 あなたに入れられるために自分がいるのだから。ちゃっ。ちゃっ。ちゃっ。
「きて」
 はやく来て。ちゃっ。ちゃっ。ちゃっ。
「奥まで」
 貫いて。ちゃっ。ちゃっ。ちゃっ。
「最後まで!」
 次の瞬間、あんなちゃんはズゴンと最後まで貫通されて、自分が完全に満たされたことを知った。痛みも、ある。もちろん。が、それ以上に、穴としての自分が、完全に仕様用途を全うした、呑み込むべきものを呑み込めた、ということへの喜びの方が大きかった。あんなちゃんは、自分が完全に埋め尽された、と、感じたとき、「きゅぅうっ!」という短い、悲鳴混じりの吐息をついたことも、背筋をピンとのけぞらしてしばらく硬直していたことにも、目尻からにじんできた涙がこぼれ落ちたことにも、深く侵入した雅史くんを離すまいと両足を雅史くんの腰に回してぎゅうっ、と、拘束していたことにも、気づかなかった。
 ただただ、真っ白になった意識の中で、十全な幸福感を感じて、その、幸福が怖くて震えていた。
「大丈夫?」
 耳元で、とてもとても大事な誰かの声が聞こえた。ええと、誰の声だっけ?
「このままで、しばらく」
 目を閉じたままそういうのが、やっとだった。その、誰か思い出せない声の人が、今自分の一つになっている、ということだけは確かだ。
 あんなちゃんは、その「とてもとても大事な人」の首に両腕を巻き付けて、力を込めて抱きしめる。


[つづき]
迷った人のための、「はい(♀)×ろぅ(♂)×ろぅ(♀)」の【目次】



 


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