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第五章 「友と敵」(112)
学校に通い出して半月以上も経てば、それなりに友人、知人もできる。
荒野がよく話しかけられるのは、席が近くで少し気が強い所がある本田さん、それに、クラス委員で野球部所属の嘉島君、その他、男子生徒はだいたい荒野の存在に慣れてきて、「おい!」と気軽にため口を聞いてくるようになっていた。
以前はマンドゴドラのCMのイメージが強かったため、「おい! ネコミミ!」、最近ではそれもマンネリになってきたためか、「おい! ガイジン!」と呼びかけられることが多い。
荒野が誰にでも愛想良く対応するとこ、割合に気安い態度を一貫してとっていたこと、などが原因で、だいたいのクラスメイトは、荒野を特別視することはなくなっていた……と、荒野は思っていた。
この前、本田に、荒野の存在は、「明らかに、目立っている」と指摘されるまでは。
目立ち方、にもいろいろある。
荒野は日本人の中に混じれば否が応でも目立つ風貌を持っていたので、「完全にとけ込む」のは難しいだろう、とは、以前から予測していた所、ではあるが……本田が、そして、その後の放課後、孫子や玉木が、わざわざ荒野の目の前でわざとらしく荒野本人の噂話しをしてくれたことから、荒野も、自分に向けられる視線に対し、以前よりも注意を払ってみたのだが……。
確かに、荒野は、予測もしない「目立ち方」をしているらしい……と、結論づけるよりほかないような証拠がいくつか、観測できた。
基本的に荒野は、自分に向けられる視線に関しては鈍感である……その視線が、敵意や殺気を含んでいない場合は。
ことにこの国は、住人のほとんどがモンゴロイドで、なおかつ、意識のうちでも、よくいえば同質性を重視し、悪くいえば排他的な文化を持っている。荒野のような外見のものが奇異の目で見られるのは必然的な成り行きだ……と、思い、今までことさら気に止めないようにして来たのだが……。
当然のことながら、その気になれさえすれば、荒野にとって、自分に向けられる不自然な視線をそれとなく辿ることは可能であり……そして、実際に辿ってみた結果……そんなことに気を止めた自分の軽率さを後悔した。
荒野に向けられた不自然な視線の主は……ほぼ例外なく、同じ学校に通う女生徒だった。
『……気づかなけりゃよかった……』
荒野は、軽い自己嫌悪に陥った。
自分の顔がそれなりに整っていること、それに、この国の中では珍しい、エキゾチックな風貌を持っていること……などは、十分に分かっているつもりだったが……それを、自分が、同年代の異性に与える影響、として意識しないのが、荒野という少年である。ついこの間まで殺すの殺されるのとかいう殺伐とした世界で何年間も暮らしていたのだから、どうしてもそっちの方面の感働きが鈍くなってしまう……。
荒野は自分を「特別な眼」で見ていた女生徒たちを、彼女たちには気取られないようにさり気なく観察する。そうした真似に関しては、荒野は非常に得意だった。
『……各学年に、十名以上……』
マジかよ……と、荒野は思う。
荒野に特別な目線を送る女生徒たちは、一人で、というのはかなり希で、大抵は二人とか三人づつ固まって、荒野が通りかかった後などに肘でお互いの体をつつきあったりしながら、笑いを無理に堪えているような、なんとも微妙な表情を形作る……。
『……勘弁してくれよ……』
いわゆる、恋愛感情以前、の、ものなのだと思う。
この年頃にありがちな、ムービースターやロックシンガーなど、少し離れた世界にいる異性にあこがれる気持ち、とでもいおうか……。
その証拠に、そうした少女たちの誰一人として、荒野に話しかけてきたり、具体的なモーションをかけてくる様子はなかった。
『そういや……』
部活の時、やけに見学者や部員の友達が遊びにくるとは思っていたが……。
『彼女たちが、入れ替わり立ち替わり、来ていたのか……』
荒野がチェックした少女たちの顔にどうも見覚えがあったのは……そういう理由だった。
『そういうの……おれには似合わないんだけどな……』
自分が置かれた立場に改めて気づかされた荒野は……正直な話し、かなり困惑していた。
『こんなこと……誰にも、相談できやしない……』
と、思い、そこで荒野は慄然とする。
特に茅には……茅に知られたりしたら、絶対に……拗ねる。
最悪……何日か、口をきいてくれなくなるかもしれない……。
荒野が内心で冷や汗をしている間に、時間はあっという間に経過し、放課後になった。
今日は部活も掃除当番もない日だったが、なんとなくいつものように商店街に寄ってマンションに帰る気にもならず、下校するのを遅らせる理由を探してしまう。
時間稼ぎにトイレに寄ってから鞄を取りに教室に帰る途中で、
『あ……例の、ボランティア!』
その話しするついでに、それとなく玉木に、荒野を物陰から見守る少女たちについて、確認してみよう……。
荒野はそう思い、放送室に向かいかけたが、その途中で今朝、登校中に、玉木が香也に声をかけていたことを思い出す。
そっか。今の時間だと、美術室にいる可能性が大きいか……と、荒野はきびすを返した。
確かに、玉木と有働は美術室で香也と話していた。しかし、その三人以外に、茅と樋口明日樹、それに楓もいる。
楓は何故か、椅子から立ち上がろうとする玉木の肩を上から押さえつけ、押し戻そうとしている最中だった。
樋口明日樹は香也と同じ美術部に所属しているから、ここにいるのはむしろ当然だったが、茅と楓がここにいる理由を、荒野は理解できなかった。
しかし、しばらく会話をしてみると……なんのことはない。
荒野と同じで……茅と楓も、独自の判断で、ボランティア活動のことについて、話しにきただけだった。
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