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「髪長姫は最後に笑う。」 第六章(1)

第六章 「血と技」(1)

「茅……ごめん……」
 荒野は、躊躇せずに言い放った。
「おれたち……かなり高い確率で、この町にいられなくなる……」
「即答、かい……」
 佐久間現象、と名乗った少年は、うっそりと笑う。
「もう少し、悩むかと思っていたよ……。
 どうやら、君に対する評価を改めなくてはならないようだね……」
「……お前が本当の佐久間か、それとも、佐久間が操る傀儡なのかどうか知らないが……」
 荒野は、一歩前に出た。
「……これだけ大勢の前で、堂々と宣戦布告してきたんだ……。
 無事では、済まないものと思え……」
 静かな、口調だった。
 その時、緊迫した空気にそぐわない、軽妙なメロディが流れる。
 荒野は、そのメロディに聞き覚えがあった。
「荒野……テンから電話……」
 自分の携帯を耳に当てた茅が、荒野に伝える。
「あっちにも、敵多数。
 テン、倒しちゃっていいか、って聞いてきてるの……」
「……構わない」
 荒野は答えた。
「おれたち自体に向かってくる者は当然だが……この町の人たちに危害を加えようとするヤツらは、残らず、おれたちの敵だ……」
 茅は、静かな口調で淡々と話す荒野が、内心では怒り狂っているのを感じ取っていた。
 佐久間現象、と名乗る少年は「即答」といったが……判断に要した時間と、その判断を下す為に必要とした苦渋とは、必ずしも比例しない。
 茅は、その決断が、荒野にとってどれほど重いものであるのか、よく、知っている。
「わかった。テンには……メイドール3みたいに……正義の味方みたいに戦えって、いっておく……」
「……それでいい」
 荒野は、頷いた。
 茅の提案は、一見突飛なようでいて、実は的確だ。
「どうせ避けられないなら……せいぜい派手にやって、玉木や商店街の人たちを喜ばせてやれって……そういってくれ……」
 ガクとテンが、正義の味方のように戦うことができるのなら……地元の人たちを味方につけられる。前に、有働や玉木がいっていたことを、今、やるハメになったわけだった。
 予定より、かなり前倒しになった形だが……テンとガクがうまくやれば、いい、アトラクションにはなるだろう……。
 それが出来なかった場合は……。
『あいつらは、リタイアってことだな……』
 荒野は、そう考える。
 非情なようだが……どのみち、目の前に「佐久間」を名乗る者が来ている以上……むざむざ商店街にまで救援に行かせてはくれないだろう。
「そっちは……よほど人数が多いようだな……」
 荒野は佐久間と名乗った少年に、また一歩近づく。
「個別撃破は、基本中の基本だよ。
 君たちは、単体でさえ、呆れるほど高性能なんだ……。こっちは、数を頼むより他、ないじゃあないか……」
 荒野が近づいても、佐久間現象と名乗った少年は、特に身構えることはなかった。
『……やっぱり、傀儡かな……』
 荒野は、そう思う。
 その少年からは、熟練の術者特有の雰囲気を感じ取れなかったし……佐久間の能力を考えれば、「自分を佐久間だと信じ込んでいる分身」を作ることも、十分に可能なのだった。
「茅……」
 荒野は、茅のすぐ傍の窓を指さして、いった。
「そこの窓……全開」
 茅が即座に反応し、動いたのを確認して、荒野は一気に間合いを詰めた。
『反応が……鈍い……』
 顔がくっつくほど近づいても、少年の表情に変化はない。
「……荒神の真似……」
 少年が驚きの表情を浮かべる前に、荒野は、少年の体を窓の外にぶん投げた。
 少年の体は、軽々と窓の外に飛ぶ。

「茅、あと何人いる?」
 厳しい語調で、荒野が問いただす。
 荒野は、茅の「高感度センサー」としての性能を信頼している。
「今……見せる!」
 しかし、茅は、荒野が期待する以上のことをしてくれた。
 実習室内に、不意に十人ほどの人影が出現する。十代から二十代の男女が、なにが起こっているのか理解できずに、きょろきょろあたりを見渡している。
 荒野の感覚以上に、気配を絶つのが巧いヤツらを揃えたのか、佐久間の能力を使って姿を知覚できないように細工をしていたのかは知らないが……。
『ヤツらは……茅を過小評価している……』
 茅は、そうした細工を全て無効にした。
 前に、突然テーブルを消した時の応用だ。
「この人たち、今、何も見えないし聞こえていないの。完全な、闇しか感じられない……」
 こうなったら……どんなに優れた術者も、形無しだ……。
「うん。
 今、無力化する……」
 そういいながら、荒野は、近くに突っ立っている不審者から、順番に当て身を食らわせ、気絶させていく。
 それまで呆気にとられて事態の進行を見つめているだけだった、実習室に集まっていた生徒たちがようやく騒ぎ出すが、事情を知っている有働が率先して、「みんな、静かに。もうちょっと、静かに。後で加納君から説明してもらうから……」とか触れ回って、パニックになるのを防いでくれていた。

 荒野が次々に気絶させていった侵入者たちの手足を、茅が、本をまとめていたビニール紐で拘束していく。実習室内にいた侵入者全員を拘束した状態で実習室の後ろの床に、まとめて転がし終わると、
「加納先輩……説明、してくれますよね……」
 柏あんなが、仁王立ちになっていた。
 周囲に集まっていた生徒たちも、柏あんなの言葉に、「うんうん」と頷いている。

『……佐久間の野郎……』
 あっさり片付いた……ということは……目的は、宣戦布告や戦闘行為そのもの、よりも……。
『……こういう状況に、おれたちを追い込むこと……か……』
 これで……少なくとも、この場にいる生徒たちに対しては……荒野は、自分たちの正体を、かなりの部分、明かさなくてはならない羽目に陥った……。
 荒野は、あっさりと身の自由を奪われた侵入者たちに、視線を這わせる。
『こうなると……こいつらも、本当に術者だったかどうか……』
 佐久間、なら……一般人に暗示を与えて動かし……その姿を、荒野たちの眼から隠すことも可能なわけで……。
『初手は……すっかり、してやられたってわけか……』

 校庭を確認すると、「佐久間現象と名乗った少年」の姿は、消えていた。
 先ほど、「佐久間現象と名乗った少年」が侵入してきてから、まだ五分もたっていなかった。

[つづき]
目次

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Comments

書く場所間違えてもうた~

この前のコメントがここと間違えてもうた~ あと下のパスワードって何ですか?

  • 2006/07/11(Tue) 22:09 
  • URL 
  • 倉敷 文人 #-
  • [edit]

お気になさらず。

>間違えた
いや、タイミングと文面で言いたいことは分かるので、お気になさらず。
こんなブログのコメントなんて、あまり構えずに、お気楽に書いていいんですよ。
>パスワード
コメントを書くときに、このパスワード欄に半角英数字入れておくと、あとでコメントを消したいとき、消すことが出来るわけです。
コメントを書く人の為の安全弁。
まあ、議論バリバリの真面目なブログならともかく、こういうところのコメント欄では、あまり使う必要性っていうのはないとは思いますが……・。

  • 2006/07/11(Tue) 23:36 
  • URL 
  • 浦寧子 #-
  • [edit]

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

  • 2006/07/12(Wed) 18:16 
  •  
  • #
  • [edit]

□はチェックボックスですね。

□にカーソルをあててクリックすると、チェックできます。
「Yes/No」で答えられる質問をする時に、使用されるフォームです。
アドレスは、入れる必要があれば、上の「URL:
」の所に書き込むようになっております。

  • 2006/07/12(Wed) 20:21 
  • URL 
  • 浦寧子 #-
  • [edit]

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