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暗闇で、いきなり手首を掴まれて…… (2)

 おれが息を呑んだのが伝わったのだろう。
「……やっぱり、こういうの……駄目?」
 不安そうな声をあげ、女が、上目遣いにおれを見た。
「わたし、もう……普通の人と、普通にえっちできないのかなぁ……」

 女の陰部をひとのみにしようと大口を開けている蛇の頭部は、鱗の一枚一枚まで、克明に描かれた刺青だった。色合いからいっても、描写の克明さからいっても、最近流行りだした西洋風のTattooではなく、純和風の……それも、しっかりした腕のある彫り師の手によるもの……に、見える。
 おれにしても別に、そっちの方面に詳しい知識がある、というわけではないのだが……しみ一つない女の真っ白い肌の上で、黒々とした陰毛に向け、口を開けている蛇は、素人目にも鮮やかな出来に見える。

「……さっき……なんでもするっていったよな……」
 おれは、かすれた声で、言った。
「それから……やばい病気もない、って……」

「う、うん……」
 女は、不安そうな顔のまま、頷く。
 必死になっておれの表情を探ろうとしているのが、わかった。

「じゃあ……おれのを、勃たせてみせろよ……。
 今、すぐに……」
 おれがそういうと、女の表情がいきなり明るくなった。
「そうしたら……ここに、ぶちこんでやる……いやというほど……」
 そういっておれが女の陰毛の中に指を突っ込むと、女は鼻を鳴らして身をよじりながら、おれの股間に手を伸ばす。
「早くしろよ……。
 こんな狭い場所に、長居したくないから……」
 女は狭い個室の中で苦労して床にひざまずき、ジッパーを開けて取り出したおれの陰茎を口に含んだ。
 それなりに経験はあるのだろうが、お世辞にも熟練している、という咥え方ではない。
 女がこれまでどんな人生を辿ってきたのか……おれは、考えることを止め、女が咥えている部分の感触に、神経を集中させた。
 女は音をたてておれの陰茎をしゃぶっている。しゃぶりあげている。
 狭い個室の中で跪き、おれの股間に顔を密着させ、懸命に下と頭を揺り動かす。その様子はまるで、何かに祈っているような真摯さがあった。
 やがて、女はおれの腰をさり気なく肩で押して向きを変えさせ、おれを、蓋をしたままの便座に座らせる。座らせて、ベルトをはずし、おれの下半身から衣服をはぎ取る。
 おれのを咥えているうちに女もその気になってきたのか、頬が上気している。
 おれは女の胸に手を伸ばして、まさぐった。
 案の定、乳首が勃っている。
 おれが服の上から乳首を強く摘むと、女は「あん」という甘えたような声を出した。
「……お前も、脱げよ……」
 おれはそういって、女の肩に手をかけて、服を上に引っ張る。
 女は腕をあげて、おれのされるがままになった。
 これでおれは下半身が裸、女は上半身ブラだけにミニスカ、という恰好になる。 
 女は一旦身を起こしておれのズボンをドアについているフックに引っかけ、自分の上着もその上にかけた。
 それから、
「……もう、十分、硬くなっているけど……」
 と、おれのものを指さす。
「どうする? すぐにいれちゃう?
 それとも……」
「脱げよ、これも……」
 そういっておれは、女の乳房をブラの上から鷲掴みにすると、女は、
「……っんふっ!」
 と媚態とも苦痛の声ともとれる呻きをあげる。
「見たいんだよ、お前の刺青……」
「……いいけど……。
 脱いだら、本当にやってくれる?」
「いやらしい女だな。そんな、何度もしつこくせがむなんて……」
 いいながら、おれは、そのまま、女の胸を揉みしだく。
「……あんな強引な誘い方をして……そんなに男が欲かったのか……」
「……やっ!
 ……んっんっ!」
 おれの乱暴な揉み方に声を上げながら、女は、いきりたったおれのものを強く握る。
「そう……なの……。
 暑くなると、これが欲しくなるの……」
 いいながら、女は、左手を背中に回し、ブラのホックをはずす。
 おれがさんざん乱暴に揉みしだいていたため、かなり緩んでいた女のブラは、ホックをはずしただけで、簡単に下に落ちる。
「……みて……」
 下半身を丸だしにして便座に座っていたおれの腿の上にかがみ込むような姿勢をとっていた女が、そういって立ち上がり、剥き出しなった乳首を誇らしげにおれの目の間につきつける。
 女の乳房にも、蛇がいた。
 左右から顔を見合わせるようにして、二匹の蛇が下から大きく口を開け、下から釜も首をもたげて乳首を食べようとしているように、見える。
 女の肌は白く、写実的に描かれた蛇の鱗が、汗に濡れていた。
 乳首と乳輪は、小さくて色が濃い。
 おれは、その突起のひとつにむしゃぶりつき、軽く歯を立てる。
 んっ……と、女のうめき声が、頭上から聞こえる。
 女の体臭が、少しきつくなったような気がした。
 そのまま腰を抱き寄せと、便座に座った体制でいきり立ったおれの先端に、女のスカートが触れた。
 女は両腕でおれの頭を抱いて引き寄せ、自分の乳房におれの顔を押しつけてくる。

「そのまま、座れよ」
 おれがいうと、女は、右手を下に回しておれの逸物の位置を調整し、その上に、座り込む。
 んっ、んっ、んっ、といいながら、女は、おれの太ももの上に徐々に体重をかけ、おれのものを飲み込んでいった。

 女のそこはすでに湿っていて、きつく、おれを締め付けながら、飲み込んでいく。 
 女が体重をかけ、腰を沈めていく。
 まっすぐに上を向いたおれ自身が、女の肉を貫いていく。
 ……んっ、くっ、くっ、と、呻きながら、女は腰を降ろしきり、ふうぅ、と、満足そうにため息をつた。
「……これ、大きくない?」
 向き合って、おれの膝の上にのっかった女は、なぜか不満そうな表情をつくる。
「それに、んっ、硬いし……中で、反り返っている……」
 話すたびにおれの顔に女の息がかかるほど、至近距離でにらみ合っている形だ。
「……知らんよ……」
 おれはわざと素っ気なくいい、身じろぎをすると、女は、「……んっ、んっ、んっ……」と鼻息を荒くする。
 結合部から漏れた液体が、おれの腿に滴り落ちはじめた。

「ちょ、ちょっと、タンマ!」
 女は、おれの肩に手をついて、上体をそらす。
「ちょっと、休ませて……。
 具合、よすぎ。少し休んだら、自分から動く……。これだと、すぐにいっちゃうよ……」
 女は、ぺろりと舌をだした。
 その表情をみて、はじめて女を可愛いと思った。
「……少し休んだら……たっぷりサービスるから……」
「駄目。休ませない……」
 いって、おれは女の尻の肉を両手で鷲づかみにし、下から激しく突き上げ始める。腰だけではなく、腕の力も使って女の体を上下に揺さぶり、その動きと腰の動きを連動させる。
 こういう力業はやる方としては非常に疲れるのだが、結合部の擦れ具合がダイナミックになる分、感じる物もそれだけ大きくなる。
 自分の体重もかけて、奥の奥まで入り込む度に、女は、のけぞって「がはっ」とか「ぐはっ」とか息を吐いた。もちろん、結合部からは、女の愛液が大量におれの股間にしたたりおちてきている。
 しばらく、激しく女の体を揺さぶると、流石に腕がだるくなってきたので、激しく動かすのはやめ、代わりに、手で腰を抱くようにして、結合部を中心にゆっくりと回転させる。おれのモノを包んだ女の粘膜が、ひくひくと複雑な伸縮をしている。すっかりいきりたったおれのモノは、かえって刺激に鈍感になっているようで、女の肉の蠢きを泰然として受けている。
 女が喉をのけぞらせたので、おれは汗に濡れた女の喉に舌と唇を這わせる。
 女の背を腕で支えながらさらに反らせて空間を作り、音をたてて乳房にも食らいつく。
「もう……強引なんだから……」
 ようやく呼吸を整えてきた女が、荒い息の下から、そう囁いた。
「……お前が、いうか……」
 おれは苦笑いをしながら、答える。
 そしてまた、腰と腕を動かしはじめる。
 すると、女は、
「……だ、駄目……」
 などといいだした。
「そんなに激しくされると、声、でちゃう……」
 ……そういえばここは、映画館のトイレだったな……と、いわれて初めて、おれは思い出した。
 とはいえ、上映は始まったばかりであり、そもそも、客の入り自体、さほど多くなかった。もうしばらくは、誰かがこのトイレに入ってくる頻度は、そう多くはないは筈だ。
 しかし、おれは、女には、あえてこういう。
「今にでも、誰かが入って来るかもしれな……」
 すると、女は、 いやいやをするように首を振った。
 おれが激しく腰をうちつけると、亀頭の先が女の奥にあるいき止まりの部分にぶつかり、女が、声をたてまいと口を硬く結びながら、それでも、
「うっ!」と声を漏らす。
「……なんだ……こういうの、感じるのか?」
 おれはそういって、なおさら激しく腰をうちつける。
 女は、体中をびくびくと大きく振るわせた。
「映画館でみず知らずの男にいたずらしてくる痴女だもんな!」
 女の耳元で囁いて、女の中をわざと乱暴な動きで円を描くように、動く。
「……誰かに見つかるの、期待しているのかもな!
 こういうの、好きな変態なんだろ! お前!」
 女の耳元で囁きながら、おれはさらにグリグリと腰を蠢かせる。
 女は下唇を強く結んで、懸命に声を上げまいとしている。
 おれは女の中に根本まで押し込みながら、これみよがしに、ことさら先端を中で円を描くように動かしてやる。
 女は眉間に皺を寄せながら目を閉じ、おれの背中にしがみつきながら、首を振る。
「……よし……。
 じゃあ、絶対に声を立てるなよ……」
 おれも意地になってきた。
 女の腿を両手で抱え、大きく股を広げさせると、すぱん、すぱん、すぱん、と小気味良い音をたてて女の中を蹂躙する。
 女は、おれにしがみつきながら、いつの間にかおれのネクタイを口に強く咥え、強く瞼を閉じて、必死になって声を出すまいとしている。
 そうするとおれもなおさら意地になってさらに激しく動くようになる。
 次第に俺にしがみついてくる女の重量が邪魔に思えてきたの、どうせならば、と、女の尻を両側から掴み、よっこらしょ、と、繋がったまま女の体をもたあげた。
「……んんっ!」
 目を閉じていた所でいきなり持ち上げられた女は、驚いた顔をして両目を大きく見開き、両手両足にさらに力を込めて、おれにしがみついてくる。
 おれは、女が状況を把握する暇も与えず、そのまま激しく上下にがくん、がくん、がくん、と女の体を揺さぶりはじめた。
 女は、振り落とされる恐怖に顔をひきつらせながら、おれの体にしがみついてくる。だが、何度もおれが上下に揺さぶるうちに、今までとは違った角度に深く突き刺さるため、女の顔は、明らかに愉悦によって歪んでくる。
 ここぞ、とばかりに、おれは女の体をさらに激しく揺さぶった。
 女が汗まみれの乳房をおれのワイシャツにおしつけ、大きく頭をのけぞらせて白い喉をおれに見せる。
 女は、肌の上に玉の汗を無数に浮かべており、それは顔から喉、それに、精緻な蛇身がとぐろをまいてる乳房にまで続いている。
 おれが女を揺さぶる動きにあわせて女の胸に渦を巻いている蛇も身悶えする。おれの腕は不慣れな重労働ですぐに痺れてきたが、緻密な絵が入った女の肌をまじまじとみつめるうちに、そんな痺れも意識の外に置くことができた。
 刺青の方に目がいっていたので今まで気づかかなかったが、よくみると、女の乳首はつんと上を向いており、大きさも形も申し分がなかった。
 おれは、腕が痺れてきたのと女の乳首にむしゃぶりつきたい衝動に駆られたのとで、乱暴に体の向き反転させ、女の体を便座の上に降ろした。
 そして、女がないか反応する前に素早く女の乳房に飛びつき、乳首を強めに甘噛みしながら、あいた手で片方の乳房を鷲掴みにして、力を込めて揉みしだく。
 おれが便器に座る半裸の、というよりは、辛うじてスカートを腰の周りにまとわりつけただけの女にのし掛かり、パンパンパンパン、という肉と肉を打ち付ける大きな音がするのにも構わず腰を激しくピストン運動させながら、乱暴に女の乳房を揉んでいる。女は必死になって声を押し殺しておれの背中に爪を立て、口を硬く結んで頭をのけぞらせていたが、おれのほうにしてみれば、ここまでくればもはや痴漢扱いされることもあるまい、という気持ちがあったので、人目を気にする気持ちはない。むしろ、女を責め立てて反応させ、そのせいで他人に気づかれたら、いったいこの女はどう対応するのだろうか? という嗜虐混じりの妄想を持ちはじめていた。おれが腰を打ちつけ、乳房を掴んだ手に力を入れる度に、女は体や手足をビクビクと振るわせ、首を、いやいやをするように左右に振る。おれの手の中で、蛇がとぐろを巻いている女の乳房が歪む。女の皮膚が、汗でじっとりと湿りはじめる。
 どうせ、もう生で挿入しているんだから……このまま中で射精しようかな?
 と、おれは思いはじめる。
 射精感が高まってきている、ということではなく、女の反応が良好すぎるため、かえっておれの意識は冷静になっていたりするのだが、この女を困らせたい一心で女の子宮におれの精液を注ぎ込みたい欲求に駆られる。
「……おい……」
 おれは、便器とおれの体に挟まれ、体をくの字型にしてひくついている女に、声をかけた。
「このまま、中にだしちまっても……いいか?」
 女が困惑する様子をみたかったので、わざと口に出してそういい、女の返事を待たずにさらに腰をうちつける。
 女が返事をしようと口を開いたところで、おれは女の股間の、おれとの結合部の上にある突起を親指で押しつぶす。女の陰核を指で押さえ、女の中にあるおれのものと指で押しつぶしながら、さらにおれは女の中を掻き回す。
 女は「うひっ!」とか「うひゃっ!」、みたいに聞こえる声をあげる。
「……返事がない……っていうことは、このまま出しちゃっていいんだよな……」
 そういっておれは、女の腿と手首を両手で抱え、女が大股開きになるように、女の足を高々と掲げる。そのまま、女の腹に女の足を折り曲げるようにして密着させた体勢で女の動きを制限し、じゃ、じゃ、じゃ、と、激しく腰を動かし続ける。
「イクからな! このまま中でイクからな!」
 と譫言のようにいいながら、ついにおれは女の中に長々と放出した。
 おれの熱い白濁液を体の奥に受け止めた女は、
「……うふぁっ!」
 と、小さく叫んでのけぞり、そのまましばらく硬直してから、
「……あっ……熱い……のが……中に……」
 と、うっとりとした表情で目を細め、ビクビクと体を細かく痙攣させていた。
 女の呼吸に従って上下する胸と腹の表面では、青黒い蛇たちが女の呼吸にあわせて鱗を振るわせている。
 気づけば……女もおれも、全身に汗をかいて、体全体がじっくりと湿っている。ほとんど裸の女は皮膚の表面が濡れている程度だが、上半身はワイシャツのままだったおれは、濡れたワイシャツがべっとりと肌に張り付いている状態になっている。
 動きを止めてしばらくすると、肌に張り付いたワイシャツが冷房で冷え、悪寒を感じるようになった。射精して気分が落ち着くと、おれは、女と抱き合っている理由もなくなって、女から身を離し、いそいそと身支度を調えはじめる。身支度を調えながら横目で女をみると、両脚を広げてぱっくりと開いた陰部を丸出しにしながらトロンとした虚脱した目つきで、荒い息をついて休んでいる。女の肌を今になって良く確認すると、青刺の蛇が数匹、女の胴体に絡まっており、緻密、かつ、迫真の描写と、汗に濡れていることなどが相俟って、まるで本物の蛇が女に巻き付いているような錯覚さえ、覚えた。
「……ねぇ……」
 おれと目が合うと、女が、いきなりそんなことをいって、黒い物体を取り出した。
「……これ、なーんだ……」
 女は、いつの間にか、おれのパスケースを手にしていた。
 その中には、定期券、免許所、社員証などが入っている。
 おれが、女の掲げるパスケースを取り戻そうと身を乗り出すのと同時に、女は、パスケースを持っていない方の手で、携帯電話を素早く操作し、おれのパスケースを開いて、その中にあった定期券、免許証、社員証などを撮影しはじめる。
 おれが、パスケースを取り戻そうと女に身を寄せると、そのままおれの首に抱きついて、おれたち二人が顔を密着させているショットまで撮影した。
「……はい……これで、メール送信、っと……。
 これで、携帯の写真消してもどうしようもないし……もう、逃げられないから……」
 おれの顔のすぐ横で、笑いを含んだ、女の声がした。
「……こんな恰好のわたしとツーショットの写真とってたら……誰にも、いいわけは、できないと思うし……」
 女は、おれに晴れやかな笑顔をみせて、
「……一度きちんと時間を作って、今後のことを話し合いましう……」
 と、いった。

[完]

■初出: ウラネコの徘徊
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