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彼女はくノ一! 第五話 (135)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(135)

 その後、楓とガクが放課後、徳川の工場に行って、投擲武器の量産化についての打ち合わせもかねて、工場内でさっそく体術の習練を行う、という。
 この近辺で人目につかず、ある程度の広さがある場所、というのは限られており、楓や孫子はまだ足を運んだことはないが、徳川の工場は、条件的に適合している、という。
 居間でその話しを聞いていた孫子は、それなら自分も一緒に工場へのいきたい、と申し出た。
 近場に射撃場を確保する、という問題についても徳川と話し合いたいし、それ以外に、場合によっては孫子は個人名義の資産と徳川の持つ技術力を使って、新しい事業を起こせるかもしれない。
 ボランティア活動も、掛け声だけで終わらせるつもりはなかったし、だとすれば、確実な資金源は必要である。徳川と孫子が手を組めば、寄付に頼らず、合法的な方法で資金源を構築することも可能に思えた。
 そのためにも孫子は、徳川が投資するに値する能力を持っているのか、事前調査をしておきたかった。
 ここ数日、毎日のように工場に出入りガクとテンは、工場への出入りは既にフリーパス状態であり、楓や孫子に関しても、「徳川に一声かけておけば、特に問題ないだろう」、ということだった。

 孫子は朝食を終えると、メールで徳川に「放課後、工場を見学したい」という希望を伝え、同時に才賀家の執事、渋谷に連絡し、今動かせる孫子自身の資産の具体的な金額と、それに起業や特許関係に強い弁護士のリストアップすることを命じて登校の準備をした。
 資金と法律の専門家は、現在、孫子が考えている事業を実際にはじめる際に必要となるものであり、特に後者は、ある種の専門馬鹿の気がある徳川にとって、大きな助けになる筈であった。

 登校の準備を終え、いつものようにマンション前に集合すると、狩野家の人間以外は、まだ誰も集まっていなかった。狩野家の三人も普段はもう少し遅くまで家にいるのだが、どうした加減か三人とも、今朝に限っていつもよりかなり早く目を覚ましている。
 それでも五分も待たないうちに飯島舞花と栗田精一、樋口明日樹と樋口大樹の兄弟、それに、加納荒野と加納茅が顔を見せた。
 樋口明日樹は来るなり香也に近寄ってきて、「風邪、ひいていたんだって? 体調、もういいの?」と声をかける。
 飯島舞花は荒野と、茅は楓と、なにやら話し込んでいる。
 週末にいろいろあったが……どうやら、いつもの通りの登校風景だ……と、孫子は安心した。

「……え? 茅様も、体術を……ですか?」
 顔を見せるなり、茅が近づいてきて、楓にとって予想外の依頼をしてきたので……楓は、思わず聞きかえした。
「そうなの。
 基礎体力はだんだんできて来たから、初歩的なところから、少しづつでも、教えてもらいたいの……」
 茅は、そういって、楓に頷いてみせる。
「……お、教えるのは、構いませんが……」
 楓は、飯島舞花と話し込んでいる荒野を横目でちらりと見る。
「加納様は、知っていらっしゃるんだろうか?」、という疑問とか、あるいは、「やってみるは構わないと思うけど……成果を出すのは……」とか、いろいろ思うところはあったが……とりあえず、楓は、引き受けてみることにした。
「……今日の放課後、徳川さんの工場で、ガクに稽古をつける予定なのですが……茅様も、見学、してみますか?」
 と、いった。
 見学するだけなら……特に実害はないだろう。それで、あきらめるかもしれないし……。
 ごくごく軽い気持ちで、楓は引き受けた。
「……わかったの。
 今日の放課後、一緒に行くの」
 茅も、楓の言葉に頷く。

「風邪、ひいていたんだって? 体調、もういいの?」
 顔を合わせるなり、樋口明日樹は心配そうな顔をして、香也にそう尋ねてきた。
「……んー……」
 香也はいつもの癖でそう前置きを置いてしまう。
「……大丈夫……」
 もともと、一晩ゆっくり寝た程度で復調する程度の軽度の風邪だった。他の同居人が騒ぎ過ぎるくらいで……と、思いかけ、香也は慌てて自分の思考を打ち消す。
 みんな、自分を心配してくれているのではないか、と。
「……そう……よかった……」
 香也の返事を聞いて、樋口明日樹は、目に見えて安心した顔をした。
「本当に、よかった……」
 ふ、と……香也は、思い出す。
 一年前、今の学校に入学したばかりの頃……自分をこんなに心配してくれる友人は、いなかった。
 今は……どうした加減か、こんなに多くの人に、囲まれている。
 この差は……一体、どういうことなんなんだろう?
 いつもの面子でぞろぞろと学校に向かう集団の最後尻で、談笑しながら歩く皆の背中を見ながら、香也は思う。
 いつの間に……自分の周囲には、人が増えて来てしまった……と。この集団の一員として、当然のような顔をしてここにいる自分……というを、香也はひどく不思議に思う。
 少し前なら……まったく、想像もできないことだ……と。
 しかも、この集団は……ひどく、人目を集めていた。
「……気のせいか、と思ったんだけど……」
 樋口明日樹が、声を潜めて香也に囁く。
「いつもにも増して……今朝は、注目されているんじゃない?」
「……んー……」
 香也は、明日樹の意見に同意した。
 年末のイベントは別にして、学校がはじまってからの事を思い返しても……加納兄弟がケーキ屋のCMビデオに出演したり、孫子の囲碁勝負をネット中継されたりで、この集団は、地元では割りと顔をしられている。
 だから、集団で通った後、指さされたり、ひそひそ噂話をされたりすることは、珍しくはないのだが……。
 今朝は、その頻度が、いつもの二倍以上になっているような気がするし……それ以上に、普段、投稿する時の倍以上の人が、自分たちを待ち構えているような気配がしていた。
「……なんだ、ねーちゃん……知らなかったのか……」
 樋口大樹が、塀に張ってあるポスターを指さして、香也と明日樹の疑問に答えてくれる。
 大樹の指先には、アニメかゲームかなにかのキャラクターを模した、けばけばしい色彩の衣装を着た荒野、茅、楓、孫子、テン、ガク、ノリ……の写真が大写しになっていた。
 商店街も協賛している、地元活性化ボランティアのポスターだった。
 その後、香也たちの集団が通りかかると、勝手、かつ唐突にシャッターを切って逃げ出して行く集団にも何度か遭遇し……「自分たちは注目されている」という気配が、「気のせい」ではないことも証明された。

[つづき]
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