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彼女はくノ一! 第五話 (136)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(136)

「……年末からこっち、いろいろあって十分に顔が知られていたのに加え……」
 例によって商店街から合流してきた玉木珠美は一同にそう解説してくれた。
「……ご本人さんたちの承諾もめでたく得たところですし、商店街のイベントもまずは順調。昨日の説明会で、ボランティアの参加希望者も膨れあがり、校内の希望者だけでももう少しで三桁に届きます。
 映像素材は確保しているし、この勢いを消さないうちに、早め早めに手をうった所でして……」
「……随分と楽しそうだな、お前……」
 荒野は玉木に、憮然とした表情で答える。
 文句はいいたい。けど、こちらから頼んだことを忠実に実行してくれているだけなので、面と向かって文句をいうことは出来ない……というジレンマが、ありありと表情に表れていた。
「そりゃあ、もう……」
 玉木珠美はケラケラと笑った。
「おかげ様で放送部員一同、多忙を極めておりますが、全員はりきっております!」
「……そのエネルギーを、もっと学生らしいことに燃やせよ……」
 面と向かって文句をいえない手前、荒野は、はっきりしない小声でボソボソと呟く。
「……その、学生らしいこと……なんですがね……」
 玉木は、不意に真面目な顔になった。
「この間、ちょっと話しがでていた自主勉強会、本当にやれないっすかね?」
「学校使って……って、やつか?」
「そうそう。
 ぶっちゃけ、放送部員の中にも、わたしをはじめとして成績に不安がある人多いし、ちゃんと勉強もしているんだぞ、ってポーズを学校側に示すことにもなるし……理系はトクツー君、英語は楓ちゃん、総合的な所では茅ちゃん……あたりに観てもらえれば、かなりいい感じになるかな……と。
 あと、皆さん、結構身内で固まっていることが多いから……気にかかっているけど、声をかけずらいって生徒さんたち、多いんっすよ……。
 そういうニーズにも、応えておきたいな、と……」
 荒野は楓や茅の方を振り返った。
 茅の表情は相変わらず読みにくいし、楓は、困ったような顔をしている。
「……まあ……悪いことではないと思うけど……。
 それぞれの都合もあるから、個別に口説いてみれば……」
 そういって荒野は、二人の方を指さした。
 自身の判断は保留し、玉木に下駄を預けた形だ。
「……ではでは……さっそく……」
 玉木珠美は揉み手しながら、二人の方に向き直る。
「茅は、構わないの。
 でも、今日の放課後は、もう予定があるの」
「あ……わ、わたしもです……。
 今日は、茅様や才賀さんと一緒に、徳川さんの工場に行く予定で……」
「……あー……。
 そっかぁ……今日は、そっちか……」
 茅と楓の返答を聞くと、詳しい事情をきく前に、玉木は一人で納得のいった顔をした。
「じゃあ、勉強会の方は、明日以降ってことで……。
 わたしを含めた放送部何人か、ついていってもいいっすか?」
「……ビデオカメラ担いで、っていうことかしら?」
 孫子が、玉木に確認する。
「……そういうこってす」
 玉木は、孫子の言葉に頷いた。
「すぐに公開できないかも知れませんが……有働君は、ボランティアの立ち上げにてんてこまーいって感じなんで、代わりに、素材は確保しておきたいな、と……」
 有働は、荒野たちの動向を記録し、いずれ発表したいと希望している。その有働が身動きできない間は、玉木が代わりに動く……というのが、玉木の中では、当然の発想になっているようだった。
「その映像……公表する前に、ちゃんとこちらに確認してくださいね……」
 そういって孫子が頷くと、茅と楓もそれにならった。
「ええ。そのへんは、もう……」
 玉木も、頷く。
「でも、お前……あのポスターの話しは、事前に聞いてなかったぞ……」
「……えー?
 ……そうでしったっけ?」
 荒野が町のあちこちにに貼られているポスターについて確認すると、玉木は頭を掻いてごまかしはじめた。
「……でも、撮影する時、こういう利用のされ方をするって説明は、あったわけでしょ?」
「……ま、いいけどな……」
 荒野は、深々とため息をついた。

 写真を撮り逃げ去る団体に何度か遭遇しながら、ようやく校門前に着くと、人だかりができていた。
「……ああ……抜き打ちの、持ち物検査だな……。
 ……そうか、バレンタインが近いから……。
 もう、そんな時期か……」
 と、飯島舞花が説明してくれた。その途端、楓の顔色がさっと青ざめた。
「……も……持ち物検査って……」
「校則では、学校での活動に関係のないものは持ち込んではいけない、ってことになっていし……ほら、今日発売の少年ゼンブとか、普段は黙認だけど、今日はあんだけ取り上げられているだろ?
 携帯なんかは、防犯上の都合もあるから許可されているけど、MPプレーヤーなんかは、みつかったらアウトだな……」
 荒野と「バレンタインが~」どうこうと話しはじめた飯島舞花に変わって、玉木が楓に解説してくれる。
「あれ? 楓ちゃん、顔色悪いけど……ひょっとして、なんか校則に触れるようなの、持っている?」
「あれ? どうした、楓ちゃん……青い顔して……。
 まさか、チョコ持ち込んだんじゃ……」
 楓の顔色の変化に気づいた舞花が、玉木と同じように楓に聞いてきた。
「……い、いえ……チョコは、ないんですけど……」
 楓は、心持ち震えた小声で、そう答える。
「……ちょっと……校則に引っ掛かりそうなものを……」
 楓は踵を返して逃げようとしたが、後ろにはすでに他の生徒たちがぎっしりと列を組んで並んでおり、一度抜け出したら確実に遅刻しそうな案配だった。
 楓が、持ち物で引っかかるのと遅刻とを秤にかけている間に、前の生徒たちの検査が終わり、早々と楓の順番が回ってくる。
 楓は観念して、自分の鞄を開いて差し出した。

 楓の鞄から次々と無骨な金属片……六角やら、手裏剣やらが出てきて、文字通り山と積まれるのを、女子の所持品検査を担当した岩崎先生は、目を丸くしてみていた。
 真面目だ、と思っていた楓の鞄から、一目で凶器と分かる物品が大量に出てきたことで……最初、目を見開いていて驚いただけの岩崎先生は、段々、顔から血色を無くしていった。
 異変を感じて、他の先生方や生徒たちも、楓の周辺に集まって、鞄から出てきた武器の山をみている。
「……松島君……」
 集まってきた教師の一人、大清水先生が、首を振りながら、楓に尋ねた。
「……これは……なんなのかね?」
「ええっと……だ、大丈夫ですよ!
 どの手裏剣も、刃渡りは極めて短く、銃刀法にひっかからないように作られていますから……。
 あは。あははははは……」
 大清水先生は、なにもいわずにじっと楓の目をみる。
「……これ……わたしの、武術の道具でして……し、知ってますか?
 手裏剣術って、歴とした武術の一種で……」
 二、三の問答の後、大清水先生は、楓が所持していた武器を全て没収する、と告げた。
 楓は、没収された自分の持ち物を、自分の手で、職員室に運ばねばならなかった。

 この日から、松島楓は、校内で「くノ一ちゃん」のニックネームを奉られることになる。

[つづき]
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