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彼女はくノ一! 第五話 (137)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(137)

 香也たちと別れて一人で職員室により、職員たちの好奇の視線にさらされながら、邪魔にならないお気場所を尋ねる。職員室の隅の、物置き場になっている片隅に没収された武器を置いて、とぼとぼと自分の教室に向かう。
「……楓ちゃん、ニンジャなんだって?」
「違うよ、もとさん。ニンジャなのは、なのなのちゃんのお兄さんの方で、楓ちゃんは怖かっこいいお兄さんの子分。
 そうなんでしょ? 楓ちゃん……」
 教室に入った途端、さっそく、待ち構えていた牧本さんと矢島さんの二人に捕まった。
「……あは。あはははあは……」
 楓は、とりあえず、笑ってごまかしておいて、その時間でめぐるましく思考を回転させる。
 矢島の推測は……意外に、真相に近かったのだが、荒野からは「自分の正体は秘匿せよ」と命じられている。しかし、楓は今朝のポカで、自分が平凡な女学生ではないことを、自ら明かしてしまったようなもので……。
 そこで、楓は可能な限り自分の能力を低く見せる、という手段を選択した。
「わたしは……茅様の護衛、ただ、それだけの者です。
 加納様の足元にも及びません……」
 楓は、近くの席にすわっていた茅を指さして、そう答える。まるっきり嘘というわけでもないが……泥縄に近い対応だ……と、楓自身も、思う。
「やっぱり、関係者だったの……」
「転入して来た時期が一緒だし、家も近いし、それに、一緒にいること多いし……そんなんじゃないかなーって思ったけど……」
 矢島さんと牧本さんは、そんなことをいいあっている。
 二人だけではなく、教室内にいる生徒達も聞き耳を立てている気配を、楓は感じた。
「……ねーねー……。
 それじゃあ、さ……」
 牧本さんが、無邪気に尋ねてくる。
「……楓ちゃんも、二年の加納兄みたいなことできるの?
 二階とか三階の窓から飛び降りてって、びゅーんとすごい早さで校庭駆け巡ったり……」
「……そ、そなことは……」
 楓は視線をそらしながら、狼狽気味に答える。
「……できませんよ。で、できるわけ、ないじゃないですか……」
 視線が、泳いでいた。
 根が素直な楓は、嘘をつくことや駆け引きが、徹底的に、不得手だった。
「……ふーん、そっかー……。
 秘密にしろ、って言われている訳ね。
 そりゃ、そっか……昨日の説明会だと、この町や加納さんたちを狙っている悪者がいるってことだし、こっちの戦力普段からバラしても得なことないもんね……」
 何気に鋭い牧本さんだった。
 牧本さんが口にした憶測に、周囲にいた生徒たちまでが「……そういうことか……」と納得した顔をして、うんうん、頷きはじめる者の多い。
 楓は、落ち着きなくなって、きょろきょろあたりを見回しはじめた。
 助けを求めるように茅の方をみると、茅は、黒目がちの瞳をこっちに向けて、じっとなりゆきを見守っている。
『み、見てないで……助けてくださいよ~』
 楓は、内心で悲鳴を上げていた。
「……いいー! みんなー!
 そういうことだから、くノ一ちゃんは、普通の生徒だらねー。
 くれぐれも、特別扱いしないよーにー……」
 楓がわたわたしている間に、勝手に納得した牧本さんと矢島さんは、教室中に響くような大声で通達する。
「……わかったわかった!」
「公然の秘密ってやつだね!」
「いいか、松島がくノ一ちゃんだってことは、秘密だからな!」
「頑張れよ! くノ一ちゃん!」
 ……ここまでくると、単にノリがいいのかそれとも楓をからかっているのか、判断に困るクラスメイトたちであった。
『……こ、……これで……いいんだろうか?』
 楓は、こっそり冷や汗をかいた。

 その後の授業中は、取り立てて変わったことはなにも起こらず、平常どおりの授業風景が展開された。昨日、教員二名を含めた大人数に向かって荒野の正体が説明されているのだが、学校側のリアクションはほとんどなかったので、楓は拍子抜けするくらいだった。
 まぁ……生徒の一人が、現役のニンジャです……と、いきなりカミングアウトされても、なにも問題を起こしていない以上、特に問題視する必要もない……ということなのかもしれないし、あるいは、もっと単純に腰が重いだけで、それなりの動きをとるための意思統一が、教員の中でとれていないだけ……なのかも、知れない。
 さらにいえば、大清水先生や岩崎先生が、昨日知り得た荒野の周辺情報を他の教員たちに伝えず、自分たちのところで止めている……という可能性も考えられたが、生徒間でこれだけ公然とささやかれ、今朝、楓が証拠物件となりうる武器類を成す術もなく没収されているのだから、おそかれはやかれ、自分も含めた荒野の一党……関係者の処遇は、問題になるだろう……と、楓は推測する。
 仮に、平時に置いて、自分たちの存在は問題視されない……という決定がくだされたと仮定しても……そんなものは、無辜の一般人を平気で巻き添えにする敵、が、本気で攻勢をかけてきた時に、あっけなく反故にされるに決まっている……と、楓は、思う。
 荒野が再三、指摘しているように、「自分たちがこの場にいようとしなければ、この土地の人々が巻き添えを食らうことはない」のだ。
 そして、実際に巻き添えをくらった、第三者の被害者が出たとしたら……その時こそ、自分たちは、この土地にいられなくなるだろう。
 被害者自身、あるいは、被害者の身近な人々は……直接手を下した者と、そして、その災厄を呼び込んだ楓たちを、いっしょくたに憎む筈だった。
 理不尽だ……とは思うが、それが、人間の感情として、正常なありかた、である。
 つまり、楓や荒野たちは……自分たちは、ばかりではなく、学校の関係者や近所の人々の身の安全まで、確保し続けなければならない……それも、能力も人数も、いつ、どういう手段で襲いかかってくるのかもわからない、不明の敵から、半永久的に、かなり広範囲な人員を守らねばならないわけで……。
 いうまでもないことだが……これは、かなり分の悪い戦いだった。
 早期解決を望むとすれば……。
『相手を……敵を、こちらの手の届く範囲に、引きずり出すよりほか、ない……』
 こちらが疲弊するより前に、根本的な解決を図らないと……どんどん泥沼にはまって行くような気がした。
『……そのために、わたしにできることって……』
 ……なんだろう? と、楓は考えはじめる。
 戦力の増強と補給線の確保、の算段は、なんとかつきはじめている。地元との協調、ということに関しても、玉木たちの尽力のおかけで、今のところいい線いっていると思う……。
 その他に、足りないもの……といえば……。
 楓は、ふと、茅の席に目を向ける。
『……あった……』
 茅は……別段、クラスの中で孤立している、というほどえもないが……それでも、クラスメイトから、少し距離を置かれている。
 茅自身は、あまり気にしていないようだが……それでは、いざという時に……本気で身を案じてくれる人が、身内以外にいるのといないのとでは……やはり、違うのだった。
 これから先、なにがあったとしても……茅を、孤立させてはいけない……。
『茅様に……友だちを、つくる……』

[つづき]
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