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今は亡き友の妻 (16)

今は亡き友の妻 (16)

 おれのみている前で、片手にビデオカメラ、もう一方の手にまがまがしいまでの大きい真っ黒い例の道具をもった富美子は、そろそろと足音を忍ばせ、おれと抱き合っている響子の背中側からこちらに近づいてきた。おれは歯をむき出して威嚇して富美子の動きを牽制しようとするのだが(静かに嗚咽を漏らし続ける響子と密着した状態では、その程度のことしかできっこない)、そんなこけおどしが通用する相手でもなく、富美子はおれたちのすぐそばで立ち止まり、カメラアングルを調整してから、手にした大人のオモチャを振りかざし、響子の尾てい骨のあたりにそれが触れるか触れないかという所でスイッチをいれ、びゅいんびゅいんびゅいんとやかましいばかりの作動音をたてはじめたそれを響子の臀部に押しつけた。
 予期せぬ刺激を与えられた響子は、「うひゃぁ!」とか叫んで文字通り飛び上がり、富美子のほうに向き直って、「い、いったいなにを……」と誰何しようとする。富美子はその響子の胸元に自分の身を投げ出し、ふさがっている両手を響子のうなじにまわして身動きが取れないようにしてから口唇を奪い、ねっとりとディープな口づけを延々と続けた。
 最初のうちこそ「ん。ん。ん」と音にならないうめきをあげて富美子の抱擁をほどこうと試みていた響子だが、二分、三分、それ以上とその状態が続くにつれて抵抗も弱まっていき、それからさらにしばらくすると、今度は、響子の方から、富美子の首に自分の腕を絡めはじめた。
 その様子を間の抜けた顔をしながら見守っていたおれは、「……帰ろうかな……」とか「……実はおれ、この場に必要ないんじゃねぇの……」とか、忸怩たる思いもちらりほらりと脳裏に駆けめぐったりしたわけだが、あきれかえってその場から去ろうとすると、めざとくおれの制動をチェックしていた富美子に手で制されたので、しかたなくソファのうえに身体を投げ出して休憩することにした。
 やがて、そのながーいキスも、体力負けした響子が、おれのすぐ横のソファの上にくたりと身体を投げ出す、という形で決着がつき、おれはといえば火をつけ損なった煙草を弄びつつ、ジト目で富美子を睨みつけるのだった。
「はい。またさっき程度には暖めておいたから、気にせず続きをどうぞ」
 にたにたと笑っておれに言い放った富美子は、気のせいか、さっきよりも肌の色艶が良くなっているような気がする。
「そんな拗ねた顔しないの。これから先は体力仕事なんだからぁ、男性のお仕事」
 おれのジト目を意に介した様子もなく、富美子は平然と言い放ち、それでもおれが動こうとしないのをみると、「じゃあ、おねぇさんが出血大サービス!」とかいいながら、ピンクローター二つをとりだして、それを医療用の固定テープで響子の乳首に固定し、容赦なくスイッチを入れる。
 びぃびぃびぃびぃびぃびぃびぃ……、という振動音が響くと、ぐったりとしていた響子は「いやぁ!」といいながらソファから半身を起こしたが、富美子はその目前におれの身体を押しやり、つまり、なにかに縋り付きたい状態になった響子の直前におれがいることになり、おれは大人のオモチャの振動によって半ば強制的に性的な刺激を与えられて興奮状態にある響子に抱きすくめられる形になった。響子は髪を振り乱しながらおれに縋り、抱きつき、いやぁ、だめぇ、ダメなの、もうダメ、などと叫びつつ、遮二無二に自分の身体のそこここをおれの裸の上半身に押しつけ、やがて、形の良い乳房をおれの胸板に押しつけてこすりつけるような感じで少し静かにしていたかと思うと、「ぁぁぁあぁぁ!」と、首をのけぞらして細く尾を引く叫びを上げ、また、くたりと全身から力を抜いてソファの上にぶっ倒れた。
「ありゃ。また、逝っちゃったかな? 響子ちゃん、ほんと、感度良すぎ」
「っつか、無茶しすぎだろ。これは」
 流石に限度を弁えてないと、と判断したおれは、ぺちり、と平手で富美子の頭をはたいた。
「みてみろ、響子ちゃんの今の状態」
 口は半開きのままで、目の焦点もあってない。当然、よだれは口の端から垂れ流しの状態で、両腕は虚空に差し出され、掌はなにもない空間を掴もうとゆっくっりと開閉していた。
「いやなんか、二人で雰囲気だしているのみたら、なんかちょっと悔しくなって、つい……」
 おれにはたかれた後頭部をぽりぽりと掻きながら、すこしばかり悄然とした様子を見せて富美子がいった。おれがそれに返答しようと口を開きかけたとき、ぐいいっ、と、下の方から凄い力で引っ張られた。なんの気構えもない状態でいきなり引っ張られたおれは体勢を崩し、よろけてなにか弾力のある温かい物のうえに倒れ込む。そのなにか弾力のある温かい物が、おれの首を強引にねじ曲げ、おれの口唇を塞いだ。ねっとりとした硬い舌が強引に差し込まれ、おれの口内を掻き回す。同時に、誰かの手がおれの下半身に伸び、ちちちち、と社会の窓のファスナーを開け、ベルトをはずし始めた。

 ──せんぱぁいぃ……。
 長々と口唇を塞がれ、それから解放された直後、おれの耳元に、いつもよりずっと甘ったるい感じになっている響子の声が聞こえた。


[つづき]
目次






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