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彼女はくノ一! 第五話 (241)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(241)

 夕食を終え、テン、ガクと酒見姉妹が特に要望したので、食後のデザート、というには重すぎる気がしたが、荒野から渡されたケーキをみんなで食べることになった。羽生が人数分のコーヒーをペーパーフィルターでいれてくれ、甘いものが苦手な香也は、そのマグカップを抱えて、早々に庭のプレハブに退散した。三島も「苦手ってわけではないけど、どちらかというと酒の方がよろしい」と辞退し、しかし、酒を持ち出すわけでもなく、何もいれないコーヒーを啜っている。
「どうせなら、荒野と茅も呼ぼうか?」
 という意見も出たが、三島の「たまには二人っきりにさせとけ。今週は、忙しかったんだから」という鶴の一声で取りやめになった。指摘されてみれば……確かに今週、特に荒野はあちこちに呼ばれ引きずり回され、端から見てもそれとわかるくらいに多忙を極めていた。今日くらい、静かにさせておこう、という三島の意見には、頷けるものがある。
 テンとガクは一口飲んで顔をしかめ、コーヒーの味が分からなるくらい、ミルクと砂糖をごっそりといれて、ようやく満足に飲めるようになった。酒見姉妹と楓は、はやりミルクと砂糖を入れたが、テンやガクほど非常識な量ではなく、あくまで常識の範囲内での使用、羽生と孫子は、ミルクだけで、三島と香也がなにも入れないストレートで飲んでいた。
「コーヒーが悪いというわけではなけど、茅のいれてくれる紅茶の方がおいしい」
 というのが大方の見解だったが、それで羽生が特に気を悪くするということもなかった。茅が普通に使用する茶葉は、実はかなり高級品なのだが、この家でコーヒーを常飲するのは羽生のみであり、それも、徹夜などの時の眠気醒ましのがぶ飲み用、というのが主な用途である。つまり、羽生は、かなり安い豆しか購入しないので、茅の紅茶とそんな安物を比べることさえ不遜だ……と、羽生は思う。
「でもさ……甘いものには、多少苦いもののが、合うだろ?」
 と、羽生はいうのだが、テン、ガク、酒見姉妹は、目の前のケーキに夢中であり、そんな話しはまるで聞いていない。荒野からは一ダース入りの箱を渡されているので、テン、ガク、酒見姉妹の四人は、ケーキを二個づつ、与えられていた。
「……しっかし……お前ら……」
 三島が、四人の食べっぷりをしげしげと見つめ、感心したような、呆れたような声を出す。
「なんていうか……晩飯くったばかりで、よくそんなに入るな……」
「……だって、これ……」
「マンドゴドラのケーキって、今、プレミアなんですよー……」
 酒見姉妹が、実に幸福そうな顔をして、交互にそんなことをいう。
「こういうのは、別腹っていうし……」
 と、テンがいえば、
「おいしいものはおいしいんだから、しょうがないじゃないか……」
 ガクが、そう開き直る。
「……ま、いいけどな……」
 三島は、マグカップを置いて付け加えた。
「あんまり甘いものばかり食い過ぎると……太るぞ」
 その言葉に凍り付いたのは、ケーキに夢中になっている四人ではなく、楓と孫子だった。
「だだだ、だいじょうぶですよ」
 楓が、震える声でそんなことを言いだす。
「これくらい……普段、運動していますから、脂肪の燃焼効率が、いいんです……。
 決して……前より、丸くなんかなっていませんよ?」
 最後は、何故か疑問形だった。
「わたくしは……部分的に、もう少し太りたいのですが……」
 孫子は、敵意に満ちた視線を、楓の「丸くなった」部分に送る。
「天は二物を与えず……とは、よくいったものですわ……」
 そういって、えらく深刻な表情でため息をついた。
「二人とも……」
 そうした話題に関しては他人事である羽生が、楓と孫子に注意を即した。
「そういう……微妙な話題は……お子様体型の人が多い場所では……慎んだ方が……」
 そういう羽生自身は、食べても太らない、脂肪がつきにくい体質であり、故に、他人事である。
 テン、ガク、酒見姉妹、三島は、非好意的な視線で楓と孫子のボディラインを点検している。
 楓にしろ孫子にしろ、自分で心配しているほど貧相な体型ではない。どちらかというと、同性にうらやましがられる方に分類されるだろう。
 テン、ガク、酒見姉妹、それに、三島の五人は……極端にメリハリのない、俗にいう幼児体型であり、特殊な趣味の持ち主以外、あまり歓迎されることがない……と、一般的には、そういうことになっている。
「……ふん……」
 やがて、ガクがそんなことをいいはじめた。
「いいもんね、いいもんね。
 まだまだ成長の余地、あるもんね……」
「そ……そうだよ!」
 いつもは冷静なテンも、何故か口調が怪しい。
「これから先、ボインボインでバツンバツンなナイスバディになっていくんだから!」
「……成長の余地……」
「その、余地……あと、何年?」
 酒見姉妹は、なんだか黄昏れた表情になってしまった。
 二人はそういった後、三島の方を見て、
「「……仲間……」」
 と、手を差し伸べた。
「……そんなところでハモるなぁ!」
 三島が、絶叫する。
「それに……そんな、体型とかばかり気にしてもなぁ……。
 こればっかりは、ダテ食う虫も好きずきっていうか、割れ鍋に閉じ蓋っていうか……。
 ともかく!
 いい男ゲトしようと思っていたら、待っているばかりでは駄目だぁ!
 もはや吶喊あるのみ!」
「……おーい! せんせー!」
 羽生が、どこかしらけた顔をして、三島をたしなめる。
「他の所なら、ともかく……ここで、そういう発言、しゃれにならないから……。
 本気にしたら今後、何起きるかわかんないぞぉー!
 んでもって……そのツケは、うちのこーちゃんとこにいくんだぁ……。
 今でさえ、かなりややこしいことになっているんだから、あまり、無責任なたき付け方、しないでくれぃ……」
 そういう羽生の目は、どこか遠くを見ていた。
 いわれて……三島は、その場にいる連中の顔を、ゆっくりと見渡す。
「……そ、そうだな……」
 たっぷり数十秒、考えて、三島は前言を撤回した。
「あ……あんまり、無理なアプローチしちゃ、いけないぞ!」
「……あんた……。
 普段、無茶なアプローチして、男捕まえているのか……」
 羽生が、ジト目で突っ込んだ。




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