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彼女はくノ一! 第五話 (242)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(242)

 しばらく女同士の雑談が続いた後、
「……そんじゃあ、今夜はそろそろ帰るわ……」
 と、三島が腰をあげた。それを機に、酒見姉妹も立ち上がり、帰る態勢になる。
「……今日は……」
「どうも、ご馳走になりました……」
「……あー。たいしたお構いもできませんで……」
 この家の最年長である羽生が、とりあえず立ち上がって型通りの挨拶を返し、その後、
「……って、もうこんな時間か……意外に時間がたってるし……」
 といって自分の肩を揉みほぐした。
「ま、いいんじゃないか? たまには、こういうのも……」
 そういうと三島は、自分の上着を取ってすたすたと玄関へと向かう。酒見姉妹も、それに倣う。
「どうだ?
 お前らも、勉強になったろ? ん?」
 三島は不意に振り返って、後についてきた酒見姉妹に声をかけた。
「……勉強になった、というか……」
「……楽しかった、です……」
 酒見姉妹は、三島にそう答えた。
 三島は、「そいつぁ、よかった」と素っ気ない口調でいなして、さっさと玄関にでて、靴を履いた。
 そして、一歩外に踏み出して、「……おっ……」と、声をあげる。
「……やけに冷えると思ったら……」
 三島は、掌を上に向けて、天を仰いだ。
「……降ってきたよ……」
 酒見姉妹は、三島の視線を追って、天を見上げる。
 夜の空に、夥しい白い物が、ふわふわとただよっていた。
「ああ……。
 雪……」
 見送りに来た羽生も、暗い中、ちらほらと舞い降りる白い物に気づき、誰にともなく呟く。
「……ボタ雪やミゾレじゃないから、明日の朝あたり、積もりそうだな……」
「……何なに?」
「……へぇ……。
 これが、雪ってやつかぁ……」
 漏れ聞こえて来た声に反応して、テンとガクも外に飛び出して騒ぎはじめる。
 ……そういえば、この子たち、暖かいところで過ごした……とか、この前言っていたか、と、羽生は思い出す。
 ひょっとしたら、これが、生まれて初めてみる雪なのかも知れない……。
「……はいはい。
 雪で遊ぶのは、また明日な……。
 もう遅いから、あんま騒ぐとご近所に迷惑だ……」
 羽生は、テンとガクの肩に手をかけて、やんわりと家の中に戻す。
「……この冷え込みだと積もるだろうし、しばらく溶けないだろうから、今夜は控えておいて……。
 そんな薄着で外に出てると、寒いだろ……」
 テンとガクは、素直に羽生の言葉に従い、「寒い、寒い」と連呼しながら、家の中に入っていく。
「……んじゃ、先生と双子さんたち、また今度……」
 二人が家の中に入ったのを確認した後、羽生は、帰路につく三人に向き直って、手を降った。

 三島と酒見姉妹を見送った後、羽生は家に入ろうとする。と、玄関から出ようとしていた、楓と孫子と鉢合わせになる。
「……どこいくん?」
 羽生が、尋ねる。この雪だし、それに、外出するのも、半端な時間帯だ。
「……プレハブに……」
「今日の分の勉強が、まだですので……」
 ……愚問だったか……と、羽生は思った。
 この二人が行動を共にする用事、といえば、大方は香也絡みなのである。
「……あー。そーね……。
 昨夜はあんなんだったし……こーちゃんも、今日一日、たっぷり籠もっていたから、ちょうどいいか……」
 羽生はそういって、庭の方に回る楓と孫子を見送った。
 羽生は、香也の成績のことを気にしたことはないが、悪いよりは良くなる方がいいと思っているので、楓や孫子の行動を邪魔しようとは思わない。学校の勉強もそれなりに必要だが……羽生は、香也には、もっと広い世界を見て欲しい、と思っている。
『……ま、それも……』
 放っておいても、自然と解消されるだろうけど……とも、思いはじめても、いるが。
 なんだかんだいって、香也の周りには、様々な個性を持った人たちが集まるようになっているし、香也もマイペースでそうした人たちと係わりあうようになってきている。
 あのまま、楓や荒野たちが来ないでいたら……香也の世界は、今そうである環境よりも、ずっと狭いものになっていた筈で……どちらの方が香也のためになるかといったら……その解答は、羽生には、自明のことであるように思える。
 そんなことを考えながら居間に戻った羽生は、炬燵に手足を突っ込んで丸くなる。
『……後、問題があるとすれば……』
 ……こーちゃんの、女性関係だよな……と、羽生は思う。
 今の不自然な状況は……そうそう、長続きは、するものではないだろう……。
 香也は、極度に潔癖でもないが、複数の異性を手玉にとるような器用さも甲斐性も、持ち合わせてはいない。今のところは、楓や孫子の積極的すぎる攻勢に流されている形がだ……こんな不自然な関係は、そのうち、どこからか崩れて行くだろう……と、羽生は予想する。
 楓にしろ孫子にしろ、香也を独占したくなるのは、時間の問題だと思った。さらに、テンやガクたちまでもが、香也を、異性として意識しているらしい……。
『……なんだかなー……』
 と、羽生は思う。
 香也は……世間との関わりを最小限にして、できればずっと、一人で家に籠もって、絵を描き続けたい……と、そう思っているのに違いないのだ。
 でも……その願望もまた、現実的なものではない。
 いつまでも現実から逃避し続けている訳にはいかないから、否応無く、香也と世間との関わりを増やして行く傾向にある現在の状況は、それなりに歓迎すべきだとは思うが……。
『……それにしても……』
 変化が早すぎる、というのはあるよな……とも、羽生は思うのだった。
 香也があの通りのマイペースだから、なんとかバランスが取れているようなものだが……もし、香也が他人の顔色を極端に気にかける性格だったとしたら……ノイローゼになっていても、決して、不思議ではない。
 例えば、香也が、荒野ほど他人を気遣う性格だったとしたら……かなり、悲惨なことになっているような、気がする……。
『そういう意味では……』
 現在の状況は、いい塩梅なのかも知れない。
 もう少し、香也の例の「……んー……」で、みんな、ごまかされてくれるだろう。
 ああいう、「どうとでも解釈できる、曖昧な態度」にも、それなりに利点はある……ということだった。
 この先、香也が誰を選ぶのか、今の時点では、まるで予測がつかないのだが……いずれ、その時が来たら……香也に選ばれなかった子は……。
『……盛大に、泣くのだろうな……』
 そうなったらなったで……みんなで、盛大に残念会でもやろう……と、羽生は思った。

 羽生がそんなことをぼんやり考えているうちに、香也を連れて居間に戻って来た楓と孫子が、三人で炬燵に入って、教科書やノートを広げはじめる。
「……お風呂にでも、入るか……」
 羽生は独り言をいって、立ち上がった。




[つづき]
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