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「髪長姫は最後に笑う。」 第六章(162)

第六章 「血と技」(162)

 結局、このままお湯の中に浸かっていてはのぼせる、ということになって、浴槽の縁に荒野が腰掛け、その上に茅が座る、という体位になった。荒野としてはさっさと体を洗って風呂をあがってから、快適なベッドで改めて楽しみたい所だったが、茅がそれを承知しない。どうやら、自分は何回も行かされているに、荒野は一度も射精していない、というのが、茅のお気に召さないらしい。
 かといって、適当なところでお茶を濁そうとしても……妙なところで敏感に荒野の心理を見抜いてしまう茅を誤魔化しきる自信は、荒野にはなかった。
 その茅は、荒野に背を向けて荒野のものを掴み、自分の箇所にあてがっている所だった。
「……んっ……」
 と、吐息を漏らしながら体重をかけ、にゅるん、と、荒野の膝の上にすっかり腰を降ろす。
『……確かに……』
 少し前より、脂肪がついてきているよな、と、荒野は冷静に思う。
 茅のお尻がクッションになって、この体位だと荒野のものが根本まで入りきらない。それは、とりもなおさず、茅の体が女性らしくなってきている、ということなのだが……。
「……それじゃあ……」
 荒野はそういって、茅の腿を両手で掴み、持ち上げ、力を抜いて茅を自分の膝の上に落とした。
「……はぁっ!」
 と、茅が、小さな悲鳴を上げる。
「……大丈夫? 茅……」
 ……これでは、さっきの二の舞ではないか……と、そう思った荒野は、そう声をかけた。
「……だい、じょうぶ……なの……」
 茅が、鼻にかかった声で返答する。
「大丈夫だから、荒野の好きなように、続けて……」
 それを聞いた荒野は、わざと荒っぽい動きで、茅の体を上下に揺さぶった。多少、胸や腰回りに脂肪がついたとはいっても、茅の体はまだまだ軽い。荒野の腕の力なら、存分に動かすことが可能だった。
 荒野に貫かれたまま、茅の白い背中が踊る。
 茅は、以前のように矯正をあげまくったが、荒野の動きを制止する、ということはなかった。それどころか、びくびく全身を震わせ、甘い声をあげながらも、きゅうきゅうと荒野自身を締めあげてくる。それが意識的な動きなのか、それとも、無意識的な収縮なのかは、経験の浅い荒野には、何とも判断できない。
 最初のうち、ただ嬌声をあげるだけだった茅は、そのうちに「こうや、こうや……」と荒野の名を連呼するようになった。
「……荒野っ!
 ……荒野の顔を、見ながら……」
 と苦しそうな息の下で、切れ切れに茅がいうので、荒野は一度手を休め、茅の体の向きを変える。
 向かい合わせになった格好で、結合したまま茅の腿を抱え、上下に揺さぶる。
「……んっ! んっ!」
 耳まで真っ赤にした茅が、何かを耐えるような吐息を漏らし続けるのを、荒野は比較的冷静に見下ろした。
 こうして茅を抱きかかえて揺さぶっていると、茅の顔は、すぐそこだ。
「茅、気持ち、いい?」
 荒野が、尋ねる。
「……いいっ!」
 少し間をおいて、茅が答える。
「この格好だと……違うところが、擦れて……」
 そう答えた後、茅は、とろんとした目で荒野を見上げ、
「……荒野は?」
 と、聞き返してきた。
「……すっげぇ……気持ち、いい……」
 荒野は、素直に答える。
「茅のアソコ……きゅうきゅう締まってきて……激しく揺らしても、ぴったりとくっついて……」
 荒野が答える間にも、茅は「……あっ。あっ。あっ……」と、声を漏らしている。
「荒野の……また……大きく、硬く……」
 茅がいうとおり、荒野の奥底からぐらぐらと沸いてくる感触がある。
 今までの性交で感じたような、瞬時に上り詰める感触ではなく……体のそこから、ゆったりと満ちてくる感触を、荒野は感じた。
「……茅……おれ……もう少しで……」
 荒野が掠れた声でそういうと、茅はその意味を察して、「来て!」と叫んで、荒野の体にしがみついた。
「荒野の熱いの……出して!」
 荒野にしがみついた茅が叫んだ瞬間、荒野の中心から、熱いものが噴出する。一度解き放たれたそれは、いつまでも出て続ける……ような錯覚を覚えるほど、長々と出続けた。
「……はぁ……わぁ……わぁ……」
 茅は、荒野にしがみつきながらも、背筋をピンと硬直させて、目を見開いた。
「……熱い……荒野の……どくどく、でてる……」
 茅の中に出してしまったな……と、荒野は、ぼんやりとそんなことを考えていた。
 射精に伴う快感が、今までになく強烈だったので、荒野の思考も半ば麻痺している。
 なんで、茅の中は……こんなにも、気持ちよいのだろう……と、荒野は、そんあことをぼんやりと思った。
 シルヴィとした時も、やはり快楽はあったわけだが……茅の中で出した今、この時の気持ちよさとは、ぜんぜん、レベルが違う……。
 荒野は、しばらくぼんやりと茅を抱きかかえたまま、動かないでいた。
 茅が口唇を求めてきたので、のろのろと茅を床に降ろす。
 茅は、足に力が入らなかったので、ふらふらとよろけ、荒野は反射的に茅の体を支え、そのまま抱擁し合って長々と接吻した。
 結合していた時も、そうだったが……茅とやっていると、時間の感覚が、なくなるよな……と、荒野の醒めた部分が、そんなことを思う。
 抱き合っているうちに、茅が息を整え、足にも力がはいってきたので、荒野は腕を放し、まだ茅の中に挿入したままだった自分の分身を抜く。
 どろ、とした、驚くほど濃い白濁液が、茅の中からしたたり落ち、茅の股間から腿に伝わった。
「……きれいに、しないとな……」
 荒野はぼんやりとそういって、シャワーのノズルを手に取り、お湯を出して温度を調節する。茅は、荒野の肩に手をかけて、荒野のするがままになっていた。
 少し熱めのお湯をかけながら、茅の中に指を入れて、中をきれいにする。できるだけ丁寧に、ゆっくりと動かしたつもりだが、それでも茅は、時々呻いた。
 自分が放出したものを茅の中から掻き出しながら、荒野は、
『……歯止めをかけなかったら……おれ、ずっと茅とやりまくるかも……』
 とか、そんなことを思いはじめている。
 やはり……茅との関係は、数日に一度の割合くらいで、ちょうどいいのかも、知れない……。
 と、荒野は、思った。
 茅の体は……荒野には、気持ちよすぎた。





[つづき]
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