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「髪長姫は最後に笑う。」 第六章(163)

第六章 「血と技」(163)

 一度荒野が射精したことで満足したのか、茅はその後、おとなしく体を洗い、いつものように荒野に手伝わせて丁寧に髪も洗う。
 風呂からあがり、体を拭いて茅の頭にバスタオルを巻いてから、二人でベッドルームに移動、そこで茅を鏡台の前に座らせ、頭のバスタオルを解き、改めて髪を拭いながら、時間をかけてドライヤーをかけ、ブラッシングを行う。
 これまでにも何度も繰り返し行っている作業なので、この頃には荒野も、かなり手慣れてきていた。
「荒野……」
 ブラシとドライヤーを手にして茅の髪と格闘している荒野に、茅が声をかける。
「さっきの茅……シルヴィよりも、よかった?」
「よかった」
 荒野は手を休めず、しかし、即答した。
「すっげぇ、よかった。
 やばいくらいに、よかった」
 おおげさな言い方だったが、荒野が本気でそういっていることが伝わったのか、茅は無言で頷く。
「気をつけないと……溺れて骨抜きにな。るな、と、思った……」
 荒野は、茅の髪をすきながらそういい、鏡越しに茅の目をみる。
「茅は……おれにとっては、麻薬みたいなもんだ……」
「そんなの……」
 茅は、すました顔をして、答える。
「茅も、ずっと前から、同じ……。
 荒野は、茅にとっての麻薬なの。とても……」
「頼むから、その先はいわないでくれ」
 荒野は慌てて茅を制止する。
「恥ずかしいこというの、禁止」
 放置しておくと、とどめもなく聞いていて気恥ずかしくなるようことを、言い出しそうな気がした。
「……荒野の吝嗇……」
 途中で言葉を遮られたことには不満そうな顔はしたが、それでも、茅は荒野の言葉には従い、その話題を中断する。
「でもな……マジな話し……こんなことばっかりやっていると、嵌りそうで怖いよ。
 茅の感触は、体は……おれには、刺激が強すぎる」
 荒野は、真顔で続ける。
「茅の体は……気持ちよすぎる。歯止めをかけずにやりはじめたら……おれ、猿になってやりっぱなしで、他のことが手につかなくなる。
 だから、当分は……やっぱり週末だけに限定するとか、自主規制は必要だと思う」
「……そんなに、なの?」
 鏡の中で、茅が首を傾げた。
 荒野の表情から、深刻さを感じたらしく、茅も真剣な面持ちに変わっている。
「そんなに、なんだ」
 荒野は、真面目な顔をして頷いた。
「この前、やったときは普通に気持ちよかっただけだけど……今日のは、なんかレベルが違ってた……。
 肌が触れあう感触からして、全然違うし……中に入ったら、もう、それだけで……理性が蕩けそうになる……」
 荒野は、先ほどの感触を思い出しながら、茅にも分かりやすい説明の仕方を考えつつ、ゆっくりと説明する。
「前とはレベルが違う、っていうか……その、茅は茅なんだけど……前の茅とは、少し違ってきているような……」
 荒野の話しを聞くうちに、茅は、なにやら考え込む表情になった。
「……わかったの」
 数十秒、無言のままなにやら考え込んで、茅は、ようやく口を開く。
「今、自分の体を計測した。
 確かに……数日前とは、体臭、汗の成分、肌の皮質など……が、微妙に、異なっているようなの……。
 体のサイズは大きく変わっていないから、今まで気づかなかったけど……」
 荒野は、鏡越しに、茅の顔をまじまじと見る。
「……どういう……ことだ?」
 結局、茅の言葉の意味を図りかねた荒野は、素直に聞き返すことにした。
「一見しただけでは、そうとは分からない……微妙な、生化学的な変化が、ここ数日で、茅に起こったの」
 茅は、訥々と語り出す。
「具体的にいうと、体表部や汗腺から分泌する成分が……記憶にあるものより、微妙に、変化している……。
 荒野の、今の反応から推測すると……この変化は、荒野のみを誘惑し、性的な興奮を示すための変化……ひどく俗っぽい言い方をあえてするなら……荒野個人に最適化された、性的な誘導効果持ったフェロモンを茅の体表部から、壜筆するように、変化している……」
 荒野は、茅の言葉をゆっくりと咀嚼する。
 それが茅の冗談ではないとすると……比喩ではなく文字通り、荒野に効果を限定した、麻薬、みたいなものではないか……。
「その変化の原因も……推測が、つくの。
 荒野が、シルヴィと寝たから。
 茅の深層心理は……荒野が、茅から離れていく可能性を警戒し……より一層、荒野を捕らえておくために都合のいい方向に……茅自身の体を、作り替えたの……」
「……そんなことが……」
 しばらく動きを止めていた荒野は、呆然と呟く。
「原理的には……可能なの。生化学的な変化、といっても……ごく微量の変化ですむ筈だから……体内の代謝系に、ほんの少し、変化を与えるだけで、いい……。
 荒野。
 さっき、茅とした時、他にも何かおかしなことに気づいた?」
「……いや……」
 荒野は、懸命に先ほどの狂態を思い返す。
「……ええっと……別に、ないと……。
 ちょ、ちょっとまって!
 いや、あることには、あるか……でも、あれも、そんなに異常なことではないといえばそうだし……」
 ぶつぶつと独り言のように呟きだす荒野。
「……些細な変化でも、いってくれるとありがたいの」
 鏡の中で、茅は寂しげに笑った。
「今後、茅がどんな変化を起こすのか……推測する材料になるし……」
「……そうか……」
 茅にそういわれて、荒野は、不承不承、といった感じで、頷く。
「じゃあ、参考になるかどうか分からないけど、念の為にいわせて貰う……」
 と、前置きし、荒野は、
「……さっきの茅のアソコ……前にした時よりも、ずっと締まりがよくなってた。
 おれのをぎゅうっと柔らかく包み込んで、優しく締めあげる感触で……すっげぇ、気持ちよかった……」




[つづき]
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