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彼女はくノ一! 第五話(253)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(253)

「……はいはい。
 ぐずぐずしない。当たろうが当たるまいが、どんどん雪、投げて、弾幕を張って……」
 その女性は、テンとガクをけしかけた。
「直撃は無理でも、向こうの足を鈍らせる役にはたつから……。
 攻撃とは、詰まるところ、嫌がらせだ。相手が嫌がることを、どんどん積極的にやること……」

『……素直に、逃がしてはくれないか……』
 背後から急に攻撃がはじまったので、楓は余計な迂回行動を余儀なくされる。自分の背中を遮蔽物で遮ったり、それが無理なら、いきなり塀やフェンスの上に飛び乗ったりして、高低さをつけ、一時も狙いが定まらないようにする。
 弾幕の密度から察するに、今のところ、新参の女性は攻撃には加わっていないようだが……テンとガクの動きに、粘りができている。
 それまでの二人なら、攻撃する時は、直接的にダメージを与えることしか考えない。直接的なダメージにはならないけど、間接的な攻撃を連続して相手を疲弊させる……とい迂遠な方法は、それまでの二人の発想にはないものだ。
 ……仕方がない……。
 本格的に、疲弊する前に……対策を、講じておくか……と、楓は思った。
 路地から塀の上に飛び乗り、そこをダッシュ。数十メートルの距離を一気に稼ぎ、そこで踏み込んで、跳躍。歩道橋の手摺の向こう側ヘと姿を消す。歩道橋の手摺に、楓の背中に向け、テンとガクの投じた雪玉は空しく手摺にぶつかる。
 楓はかがみ込んで、歩道橋の階段に積もっていた雪を掬うと、素早く握りしめて固め、手摺の上に頭と手だけ出して投じ、投げた雪玉がどうなったのか、確認もせずに駆け出す。
 楓が投じた雪玉は、狙い通り、何本か併走して走っていた太い電線に命中、その上に積もっていた雪が、直線状に落ちていく。その下には、楓を追って塀の上を走っていた、テンとガクがいた。そのうちガクは、落ちてきた雪を避けるため、塀の上から歩道に飛び降りる。テンは、何故かその場に立ちすくんで、両腕で頭の上をかばった。
 そのテンの上に、電線の上に積もっていた雪が落ちてくる。
「……テン……」
 なんで、避けようとしなかったのか……と、地上に降りてそれを避けたガクは、いいかける。
 が、その言葉をいい終えるよりも早く、ガクの上に、テンの頭上に降ったの量に数倍する雪がどさどさどさっと落ちてきた。
「……こっちが側は建物があって行けないし、そっちに降りると、樹があったから……枝の上に積もった雪が、一気に落ちるかな、って……」
 テンは雪まみれになったガクに簡単に説明し、
「じゃ、先に行っているね……」
 と、いい残して、楓の追跡を再会した。
 ガクの降りたった歩道には、街路樹が植えてあり、その枝に積もった雪が、楓が落とした電線上の雪、という負荷を受け、一気に落ちてきたのだった。
 テンに続いて、少し離れて後を付けてきていた白いダウンジャケットの女性が、塀の上を駆け抜けていく。
 それを見届けた後、ガクはようやくのろのろと雪の小山からの脱出を開始した。

『……素直に、逃げてはくれないか……』
 最初、迂回行動を増やしただけだった楓が、反撃をしつつ、の、逃走行為に転じたのをみて、その女性は楓のセンスを評価する。
 楓は、それまでも頻繁に遮蔽物に身を隠していたのだが、今度は、その遮蔽物から出てくる時に、素早く雪玉を投げてから逃走するようになっている。その狙いも……。
『……二人に、集中している……』
 三回に一回は、命中する。それだけ、二人の足が止まり、歩調が乱れる。
 現在、楓がしているように、頻繁に進路をかえつつ、こうした足止めを食らうと……。
『……最悪、ロストする……』
 マニュアル通りの対応だが、それだけに効果があった。
 それに、楓の狙いは、完全にこちらを振り切ること、ではなくて……。
『……こちらの足並みを乱して、捕捉されないようにすること……』
 この二人も、実戦経験がないからか、勘所が働いていないだけで、「戦力」としては申し分ない。今のままでも、並の術者よりはよほど「使える」。
 油断をすれば、楓だってあっという間に捕まるだろう。
 でも……。
『……あの子は、油断しないな……』
 その女性は、心中で頷く。
 あの素直さは……いっそ愚直さ、といい直していい。相手が誰であれ、手を抜くことはないだろう。あのタイプは、常に、最善を尽くす。
 慢心から一番縁遠い人種だ……。
 そして、天賦の才に優れた、優れた資質を持つ者よりも……時として、ああいう努力家タイプの方が、敵に回すとかえって厄介だったりする。
『……荒神さんが、気に入るわけだ……』
 現在の一族の術者は、自分の能力の上に胡座をかいているタイプが多い。どうあがいても、一般人を圧倒する能力を、先天的に持っているからだ。
 そのため、自分の能力をフルに使いきる「謙虚さ」に欠ける傾向があり……時に、そのことによって、足元を掬われる……。
 その女性は、持てる力をフル稼働させて逃げ続ける楓の背中と、必死になってそれに追いすがっていくテンとガクとを、見守る。
 一族から出たわけではないのに、並の一族以上の働きができる少女と、一族以上の能力を持ちながら、戦う術を仕込まれてこなかった子供たち……。
 ……いい、組み合わせじゃないか……と、その女性は思う。
 そして、口に出しては、こういった。
「……ほら、子供たち。
 向こうさんは、こちらの足を停めながら、河の方に誘導しているみたいだよ……」
 そこでなら、思いっきりやりあえる……と、いうことなのだろう。土地勘のないその女性にも、その程度のことは、予測ができた。楓は、蛇行しながらも、明らかに橋の方に向かっている。
 テンやガクの追撃も、次第に手慣れてきたのだがこの近辺の地形を熟知している楓は、巧妙に背後からの攻撃をカわし、隙あらば反撃に出る。柔軟で臨機応変な牽制のおかげで、楓との距離は、一向に縮まなかった。
 やはり、一番、敵には廻したくないタイプだ……と、その女性、小埜澪は思う。





[つづき]
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