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「髪長姫は最後に笑う。」 第六章(173)

第六章 「血と技」(173)

 その日の朝、甲府太介は、荒野たちが住むマンションを訪れるところだった。昨日、面接のつもりで紹介された家庭にいったら即座にそのまま歓待され、「そのまま住んでいい。家族同然のつもりでいなさい」などといわれ、ご馳走責めにあって一日中引き留められたため、荒野への事後報告が遅れていた。みんな、意追い人たちだった。また、太介は携帯電話を所持しておらず、荒野や茅の電話番号も聞いていなかったため、直接出向く以外に連絡をする方法がなかったため、この時間まで報告することができなかった。日曜の朝、というのは、荒野の家に訪問する時間としていかがなものか、と、太介自身も思わないでもなかったが、逆に言うとその時間なら、確実に荒野たちは捕まる、とも思っていた。
 そして、荒野のマンションの前で、どうにも胡散臭い風袋の若い男にでくわした。
 この近辺のような住宅街ではなく、都会の繁華街にでもいた方が似つかわしい、軽薄な空気を漂わせた男が、荒野たちの住むマンションの隣の民家からとぼとぼと出てきた。この時間帯、まさかセールスマンということもあるまい。スーツにコート姿だったが、堅気の勤め人、という雰囲気ではなく、それこそ、怪しげな飲み屋か風俗店の呼び込みでもしていた方がよっぽどしっくりくる雰囲気を漂わせている、たゃらちゃらした格好の、軽薄そうな若い男だった。ただし、隣の家から出てきた時は、何故か悄然と肩を落とし、いかにもしょぼーんとした感じで、覇気がしぼんでいるようにみえた。
 反対側から歩いてきた太介と、マンションの前で鉢合わせする。太介は、その男と眼を合わせるのを避けた。そして、太介がマンションのエントランスに体の向きを変えるのと同時に、その男もマンションの方に向きを変えた。
 太介とその男は、肩を並べるようにして、マンションのエントランスに向かう。
 エントランスの共用入り口には、防犯のため、パスワードを入力しなければ扉が開かない作りになっていた。男は、その入り口に脇に設置してあるテンキーに慣れた動作で指を走らせ、入り口のロックを開ける。
 ……このマンションの住人なのかな……と、その男の正体を推測しながら、太介はその男のすぐ後に続いて、太介は入り口をくぐった。
 驚いたことに、その男はエレベータに乗った後も、荒野たちの部屋のあるフロアのボタンを押す。
 ……フロアまで、同じなのかよ……と、太介はその偶然をいよいよ訝しんだ。
 そして、いよいよ、荒野たちの部屋の前まで来ると、その男は、荒野たちの部屋の前でたちどまり、インターフォンのボタンを押す。その男の方も、ぴったりと後に張り付いてくる太介のことが気になるのか、ちらちらと太介に視線を走らせていた。

 茅の提案メールにいち早く反応したのは、有働勇作だった。茅のメールに「今、チャットいいですか?」と返信し、茅は承諾すると、仲間内で使用することが多い、比較的メジャーな無料メッセンジャー・ソフトを立ち上げ、手短に打ち合わせを開始する。有働と茅がチャットで話し合っているうちに、他にも何人かのメンバーがログインし、顔文字混じりで意見を交換していく。大方の意見は、「放置ゴミの処理は、今の時点では下準備が不足している」ということと、「人通りが多い場所だけでも、雪かきしておかないと危ない」という意見が多く、茅の意見に賛同する者がほとんどだった。
 特に反対意見を出す者がいない、ということが判然とすると、有働が即座に「予定変更の告知メール」を、ボランティア活動に登録した全メードアドレスに送付するよう手配し、その間にも、茅はスケジュールソフトが置いてあるサーバにログインし、登録者の住所や年齢、性別などのデータを元にして、集合場所と仕事の割り振りをはじめた。
 せわしなくタイピングを行いながら、茅が荒野に解説した所によると、こういう急な変更の時のためのマクロも、あらかじめ用意してあるので、特に不都合はない、という。
 事実、茅が提案の同報メールを出してから、全ての手配を終えるまで、十分とかけずに全ての作業を終え、茅はノートパソコンの電源を切ってしまった。
「……ええっと……今ので、全部、終わり?」
「登録者は全員、メアドを記入することになっているし、そのメアドを変更していなければ、連絡漏れはない筈なの」
 そのあっけなさに、思わず荒野が確認すると、茅は平然とした顔で頷いた。
「もちろん、これは強制ではないから、連絡した人が全員くると決まったわけではないけど……」
 茅はそう付け加える。
 それでも……数百名への連絡が、これだけの手間で片付いてしまうことに対して、荒野は素直に関心した。
 その時、インターフォンのチャイムが鳴って、来客があったことを告げる。
「おれが出るよ。
 茅は、早く服着て……」
 荒野はそういって立ち上がり、茅は物置代わりにしている部屋に姿を消した。
 荒野が玄関に出向いてみると、東雲目白と甲府太介が肩を並べて立っている。二人とも、何故か憮然とした顔をしていた。
「……珍しい組み合わせだな……」
 とりあえず、荒野はそういった。
 この二人のうち、東雲の方は、ついさっき別れたばかりである。今更、「おはよう」というのも、なんか違うような気がした。
「お前ら……知り合いだったの?」
「……まさか」
「違います!」
 二人の声が、重なる。
「……さっきから、わたしの後をついてくるんですよ、この餓鬼……」
「たまたまそこで一緒になっただけです。初対面だし、口をきいたこともない」
 また、二人の声が、重なる。
「……あっ。いや、いっぺんにしゃべろうとしないで……」
 荒野は眉間のあたりを指で軽くもみながら、二人を中に入れた。
 とりあえず、二人をキッチンテーブルに通して、椅子に座らせる。
「……二人とも、自己紹介をするとなるとそれなりに長くなるんで、まずおれが指名する順番に話してくれ……」
 と、荒野は前置きし、
「まず、太介だ。
 昨日、あれからどうなった?」
 と、太介に話しを振った。
 東雲の方は、さっき別れたばかりだし、小埜が一緒でない所をみると、なんとなく事情も推察できるというものだ。
「ええ。あれから、いった先で、ですね……。
 非常にいい所を紹介してくださった、というか……」
 太介は、そこまでしゃべった後、荒野の背後をみて、ぽかんと口を開ける。
 みると、東雲も、太介と同じく、荒野の背後をみて、何やら感心したとうな、呆れたような……なんとも微妙な表情をしている。
「……いらっしゃいませ、なの」
 荒野が振り返ると、メイド服を着た茅が、優雅に一礼する所だった。
 その時……また、インターフォンのチャイムが鳴った。
 ……この場で何を順番に説明するのが最上なのか、迷っていた荒野は、これを幸いと無言のまま席を立ち、玄関へ向かう。
「おはようございます、加納様」
「今朝は、おみやげを持ってきたのです」
 そっくり同じゴスロリ服に身を包んだ、そっくり同じ顔をした酒見姉妹が、マンドゴドラのロゴが入った箱を荒野に差し出しす。





[つづき]
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